第4話 始りから終りまで 因果関係
「おっまたせぇ~♪」
「!!!!!!」
先程の部屋へと通ずる扉から出てきたのは、どう大きく見積もっても中3・・・・・・15歳くらいの少女だった。断じてさっきの声の女とは思えない。
「お久しぶりです、エリシエ様」
・・・・・・と言いつつ、丁重に礼をするレオ。うええ・・・・・・!?
「やーやー。んな堅苦しくしないでよー、レオちゃん。仕事ん時はともかく、プライベートではおカタいの大嫌いだから~」
レオに反し、メチャメチャフレンドリーな少女。そのカオはニコニコ顔そのものだ。
絶句する俺を差し置いて、挨拶を交わす女二人。
「おう、遅れたな」
「遅い!!」
次に入ってきたのは、俺を車で轢いたであろう男だった。
"あろう"という曖昧な表現しか出来ないのは、俺の語彙が足りないのでは断じてなく、面影はあるものの前に見た姿とは思い切り違っていたからだ。俺がバカだからって訳じゃねぇぞ!
不精髭はさっぱり剃られ、雀の尻尾と化していた髪は解かれてメガネもとっている。唯一変わっていないのは口にくわえた煙草だけだった。
服も、白衣姿から一変紫と白の二色で構成されたロングコートと黒のタンクトップ、ジーンズになっていた。そして、ロングコートの下の腰には銃身が見え隠れしていた。
「! うぇっ!?」
炎や雷ではなく、今度は鈍器のような氷が男――――確かショウといったか――――の頭上に落ちた。
・・・さっきから思ってたんだが、お前は魔女なのか。レオ。
「あ、あの・・・・・・ッ」
やっとのことで声を絞り出した俺は、そこでエリシエという名の少女の姿を見て硬直した。
「話は大体わかっている。大方、ショウがお前を車で轢きでもしてレオにここへよこさせたのだろう。・・・・・・"死神となりえる者"光よ」
そういって俺の名前を呼んだのは、黒髪の少女ではなく燃えるような鮮烈な真紅の髪をした大人の女だった。声までも変わっている。・・・・・・。先程の女の声だ。
「っ、何で俺の名前・・・・・・!?」
「そりゃわかるよ。だって、創造神様だもの」
元の姿――――今の姿はなんだったのか、皆目見当もつかないが――――に戻ったエリシエがあっけらかんと答えた。
「あたしはエリシエ。エリシエ・ミストリエ・・・・・・全世界全生物全秩序の長であり、死神を統べる者。・・・・・・ま、手っ取り早く言えば神様、ってコトかナ。ちょいと次元は違うけど」
肩をすくめて、エリシエ。
「・・・・・・あー、人間界でお前を轢いたのは俺だ。わかってんだろーけどな。
改めて、俺はショウ・ローゼンアイゼル。人間界では櫻川 翔として医師をやってる。レオの同僚、死神紫聖蘭だ。よろしくな」
少し居心地の悪そうに、ショウが言った。
「よ、よろしく・・・」
おずおずと答える。なんだかもう、アリエナイことばかりで頭がおかしくなりそうだ。
「んー、ぶっちゃけた話、光、あんた今頭大丈夫~?」
超能力者なのかお前はと突っ込みたくなるくらい正確無比な問いだった。
「あ、先いっとこう。あたし、意図的に相手の思考、読むことが出来るから。防衛は出来ないけどね。普段はプライバシー上の問題、そんなことしないケド。
・・・・・・で? 大丈夫なの?」
「・・・・・・ぶっちゃけヤバい」
俺の答えを受け、エリシエはぶっきらぼうに答えた。
「あっそ。じゃ、順を追って話していこうか」
エリシエのこの言葉によって、俺の死神講義は始まったのだった。
連チャン掲載3話目ですな。