第1話 列車内と列車外の邂逅
第1章 綴られ始めた物語
2010.12.28.修正済
「ん……」
俺は目覚めると、何故か列車の中に居た。
異常な事態に立ち上がりかけたが、『ん? ちょっと待てよ?』と思い俺は座りなおした。
『死神界へと向かう列車、せいぜい楽しむこったな』
何故か脳裏に蘇った先程の男のセリフで、俺はある事実に気付いた。
列車? つまり、この列車が男の言ってた"死神界へと向かう列車"って、ことか? ん? いやちょっと待て。もっと大事なことが無いか?
数秒の思案の後。俺はさる結論をはじき出した。
…………てか、俺…………………………………………………………死んだの?
全くといっていいほどそんな感じしないんですが。
呆然としてがったごっと列車に揺られながら、ふと窓の外を見やる。
「!!」
思わず窓のふちに手をつき、外を食い見る。
そこには――俺の視線の先には、果ての見えぬ銀河が広がっていた。
「うわ……すげぇな……」
上を見ようが下を見ようが左右を確認しようが、星、星、星。闇、闇、闇。
闇の広がる銀河の中には、星の自然光だけが優しく輝く。最近の町では滅多に見られない光景だ。
……というか、線路らしきものすらない。おい、これは流石にヤバイんじゃないのか?
つーことはだ。この列車……何の支えもなしに走ってる……ッテコトダヨネ?
てか、これ絶対俺たちの住む世界じゃないよな。絶対そうだよな。アリエナイよなコレ。
俺たちの世界に星と闇のニ要素しかない所は存在しません! せめて地面はあるだろう。
なんて心の中で今実際に見えている場所の風景を根底から否定してみるけど、状況は1ミリも動かない。全然音沙汰ナシだ。くそー、0.1ミリくらい動けよコノヤロー。進展見せろよコノヤロー。
進展でも退化でもどっちでもいいから、もう早くこの状況どーにかしてくれよコノヤローと他力本願をしていたところ、列車の後方から誰かの声がした。
「……で? あんたの轢いた少年っての、全然見つからないんだけど? ふざけんじゃないわよ」
女の声……それ、俺のことなのか。
列車の窓を開け放って(いいのかという疑問は無視で)声のしたほうを見る。
「……はぁ? "死神となりえる者"……ですって? だからすぐわかる? それならあんたがいきなさいよ、このエセ医者! どーせ暇人なんでしょ!」
『エセじゃねぇ! 立派な医者だ!』という怒鳴り声が、離れていた俺でも聞こえるほど大音量で声の持ち主である少女の携帯から出た。少女は「うるせ」という表情で携帯を耳から離した。
「っるさいわね! こっちが学校だったらどうするのよ!」
少女は時折立ち止まって列車へと目線をやりつつ、どんどんこちらへと近づいてきた。
「……ったく、もう1号車よ? そんな人、全然いないじゃない! 寿命で逝った年寄りばっかよ!?」
そう携帯片手に喚いていたのは、青い髪と瞳、ピアスに指環の超絶美少女だった。
「(うわ……すっげー美人……)」
あんなのがクラスにきたら、転校初日でクラスのマドンナ確定だろう。確定事項だ。
「だーから、全ッ然見つかんないんだってばっ! あんたの見間違いか感じ違いか勘違いでしょ!
……って、あら?」
突然少女は言葉を切り、今頃気付いたかのように俺のほうを見た。
……て、あの服、露出多くねーか……!?
少女の豊かな胸を覆うブラウスは谷間が見えそうなほど……というか、下着がチラチラ見えるほどあいており、細い腕はブラウスを捲くっているせいで露出。手首にはロングの髪を縛るためであろう髪紐が二本。携帯を耳に押し付けている右手の中指には銀色の指環をつけている。
「……もしかして。あんたが"死神となりえる者"?」
空いている左手を腰に当て、目を細めて美少女が言った。
俺はダンマリ。というか、美少女の脚に目を奪われて答えるどころじゃなかった。
美少女のハーフパンツからのびるスレンダーな脚。足首細っせぇ~。
……ん? アレ? 何か、ハーフパンツのベルトのところから、チェーンでロザリオがつけられてるぞ。……クリスチャンなのか? こんな奇抜で露出の多い服装して。
「人の質問に答えないで生脚ばっか見てんじゃないわよ」
ボォッ
「!! うわっちっ」
突然目の前で、紅蓮の炎が燃え上がった。え、なんで?
慌てて身を引くと、こちらに左手を向けて相変らず空に浮かんでいる美少女が青筋を立てていた。
正直物凄く怖い。
「もう一度訊くわ。あんたは"死神となりえる者"なの?」
……あれ? なんかきいたことある単語だゾ……って、意識失う前にあの男が言ってたやつだ。
「そうっちゃ……そうらしいんすけど」
おそるおそる答えると、少女は呆れたようにはぁ、と溜息をついて答える。
「曖昧ね。……まぁいいわ。じゃ、このまま列車に乗って、死神界に向かって。着いたら私が声をかけるわ、それまで駅に居てね。じゃ」
一方的に少女は俺に告げると、また携帯相手に喋り始めた。
「ショウ? ショウ! あんたもさっさとこっちにきなさい! エルにどう説明するつもり? "死神となりえる者"っていったって、相手は民間人よ? それに死神が守るべき人間を殺してどーすん……」
此処から先は聞こえなかった。少女が、列車の向かっている方向に向かってしまったからだ。
"ショウ"という人物は恐らく、昼間俺を轢いた男だろう……多分。
じゃあ、"エル"という人物は? そもそも人間なのかも怪しいところだ。
ここまで考えたが、わからないことばかりで頭が疲れたため思考をやめた。
窓を閉め、俺は列車の揺れに身を任せ、一人座席のシートに沈み込んだ。
煌々と光る星の光を眺めながら。
ハイここで新たな人物とーじょー。
なんとも回らない頭の持ち主ですな、光君。
コレが後々活躍してくるから侮れn・・・(ry