第16話 属性指導と時限の狭間
「……で? 目ぇ覚めた? レオやマリアがやんなかっただけ、マシとお思い」
風呂上り、俺たちは先ほどの部屋――白を基調とした、清潔な部屋――にて、エルさまの青筋ピクピク、そんなお達しを頂いていた。
14歳の少女(つっても本人曰く俺たちより遥か年上らしいが)にコテンパンにされたなんてゆったら。たぶん友達や家族にはしばらくの間散々な称号で呼ばれることになるだろう。
だが、直撃させるつもりはなかったらしく、現に俺たちには一つのかすり傷もないのだった。創造神さまの成せる業である。
っつーか、エルって魔術も使えたんだな。
なんてことを思ってると、エルさまお得意の読心で俺の感想を悟ったか、憮然として答えた。
「あー、あたしの使う魔術は、レオの使う魔術とはちぃとばかし毛色が違うんだよネ。
レオは五大属性、即ち炎・氷・雷・風・地の魔術を行使し、さまざまな現象を発現させるけど、あたしはあたし独自の魔術"裏表魔術"を使ってるんだ」
「裏表? 表裏一体、みたいな?」
「そそ。 光と闇、その二大属性をコインの裏表に例えて、そのコインそのものを掌握する。陰陽道では陰陽さね」
「へぇー……」
魔術なんて到底わかりそうにないので、俺はまぁ適当にうなずいておいた。エルもこれ以上は何も言わなかった。
そして口を開いたのは、ちょっとしてからだった。
「さてじゃあまず、人間界に戻る方法を教えようか。マリアー」
呼ばれたマリアさんは「わかったわぁー」とこっくりうなずき、俺を見据えて口を開いた。
「人間界に戻るにはねぇ、光君、きみが乗っていた列車の通ったところ――"時限の狭間"を通るしかないのよぉ~」
「え」
ちょっとしたヤな予感を察知した俺は、顔を引きつらせつつ、エルのカオを見やる。
「そゆこと。落ちる確率なんて、その辺にゴロゴロしてるってことだよん」
「ご、ゴロゴロ……」
なんという凄まじさ。俺なんてたぶん一歩踏み出した途端まっさかさまだぞ。
カオを青くする俺なんて露知らず、マリアさんはのほほんと言う。
「だから、一人前の死神になるまでは必ず上級の死神がつくことになってるのよぉ。
光君の場合は、エルかレオちゃんなんじゃないかしらぁ~?」
マリアさんが小首をかしげたのと同時、エルは言う。
「ま、そゆことね。今回は特例として、教官のあたしとレオが同伴するよ。
ショウはどうせ戻るから一緒に行くとして……アイル、しばらく創聖蘭代理ヨロシク」
「かしこまりました」
「ツバキとマリアは引き続き仕事を」
「わかったわぁ」「了解した」
アイルの気持ちは知ってか知らずか。次々指示を出すエルに、出されたほうは一も二もなく頷く。エルの信望が見えるようだった。
一通り指示を出し終えたらしいエルは、俺たちを振り返って堂々いった。
「さてじゃあ、人間界へとLet' go――――!!」
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