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死神Days☆  作者: 月森 薫
第1章 綴られ始めた物語
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第14話 死神訓練、死ぬ。

「……ちゅーこーとでーん♪ 早速訓練開始としようか♪」

 にっこりと満面の笑みで言うのはエル。場所は彼女曰く修練場だそうだ。確かに、周囲には刀やら槍やらなんやらを振り回している人達がたくさんいた。

 制服のまま、刀を――竹刀のように――肩に担いでやってきた俺。

「っつーか、エルの専門って鎌じゃなかったっけ」

「バーカ、50億も時間持ってるやつが、鎌だけを極めるようなモッタイナイことするわけないじゃん。

 苦情処理と魂昇天と時たまの魔物討伐を全てこなしても、時間は腐るほどあるんだよ? 一応、ヴァイオリンと短銃と刀と、一通りの武器は扱えるんだから……もちろん格闘技もお手の物」

 あっけらかーんとスゴいことを述べるエル。それに驚かない周囲の人もアレだが。

「あっそう……。

 じゃあ、具体的には俺に何をさせるつもりなんだ?」

「体力・身体強化と、技術向上だよ。キミの場合、ある程度のモトはできてるはずだから――男のコだもんね――、まずは刀に慣れることから始めるよ。体力があったとしても、しょせん刀は道具だから、使い慣れてないとダメだし。

 ってぇこーとでぇ♪ まずは木刀で素振り500本♪」

 いつの間にか手にした木刀片手に、にっこり笑って死刑宣告。

「……部活並みの量だ」

 ぼそっと呟いたのを耳ざとく聴かれたか、ン? とエルが小首をかしげた。

「てっきり絶望にかられてそこらへんでのた打ち回るかとおもったのに、つまんないのー」

「お前ドSだろっ」

「ご名答♪ ……でもなんで驚かないの~? しかも部活ゥ~?」

 素早く突っ込んでおき、俺ははぁと溜息をつきつつ答える。

「……お前、今『部活マジメにやるよーなガラじゃねーだろー』みたいなこと思ったろ。

ところがどっこい、俺様実は剣道部の部長兼主将だ」

「え゛ぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!? マジでぇぇぇぇええ!?!?」

「……おい。そこまで驚くことねーだろーよ、なぁ?」

ここまで驚かれてしまうと、実は結構ショックだった。勉強は不真面目だが部活にはかなり真面目だぞ、俺。

 存分に驚いた後、エルはこほんと咳払いをして、

「ならまぁ、ある程度の体力はあるんだから、そこのグラウンド10周も追加ね!」

「えー…………」

「文句言わないっ!」

 ということで、俺の地獄の訓練は始まったのだった。




「はー……はー……はー……」

 ここまでやらされると人間、逆にもっとやりたくなってくるものである。

としみじみ感じた俺だったが、肉体の方が「無理」と悲鳴を上げていたのでハードトレーニング自主的に第二弾はやめておいた。

「お疲れ~♪」

 というのーてんきな声がしたあと、ひやりとした修練場の床にぶっ倒れていた俺の右隣で突然炎が燃え上がった。その炎の中からは、焦げた様子もないエルである。……暑苦しいから炎はヤメロ。

「これから毎日、学校の後にグラウンド10周あーんど素振りは50本ね。部活でやる分はとーぜんナシ! 日々の地道な積み重ねが一番効果的なんだから」

 なんだか体育の先生のような言い分である。

「へいへい……」

 辟易しつつもとりあえず返答をし起き上がると、エルの顔が間近にあった。少し顔が赤くなるのが自分で分かった。

「……よしっ! これで今日の分はしゅーりょー! 明日またやろっ♪」

「えっ? これだけでいいのか?」

「もっと増やしてあげたっていーんだけどっ?」

「イエ……遠慮シトキマス」

 満面の笑みで言われては、目を逸らして答えるしかない。目線を逸らした先には今度は中腰になったことで強調されたエルの谷間があったからたまったもんじゃない。

「でしょ? あたしだってそりゃぁ、"鬼神の如し"とか言われたことはあるけど、マジもんの鬼じゃないし.ね、キミのできる範囲でOK」

 と、そこで俺はある違和感に気付いた。

「がっ、こう……?」

「そぉ。っつーか、反応おっそー。

 ……まーさかァ、学校サボって毎日訓練訓練ッ、なんつーたまんないこと想像してたんじゃぁあるまいな?」

「……イエ……ソノ……」

 図星を付かれて目線を大海原へと泳がしていると、後方――扉の方から声が聞こえた。

「私だって普段は学生やってるし、ショウだってこれでも医者なのよ。死神オンリーって人は、逆に少ないの」

「これでもってなんだよこれでもって」

 レオとショウの声である。その後ろにはツバキ、マリアさん、アイルの三人もいる。

「タオルですよぉ~、これで汗ふいてねぇ~」

「久しぶりに戻ってきたのでね。風呂に入るのだから、早くしてもらえないかな」

「バスタオルや着替えは既に手配済みです」

 それぞれの性格が濃く表れた言葉を聞きつつ、マリアさんに手渡されたタオルで汗をふいていると、レオに汗に塗れた腕をつかまれた。既にブレザーは脱いでおり、シャツは捲くってあるために素で触れられ、ちょっとドキッとしてしまった。

「ちょ……ッ」

 危うくつんのめりそうになると、エルに笑われた。

「ほら、急いでっ!」

 レオに引き摺られつつ、忘れ去られそうになったブレザーを回収すると、俺は慌てて6人を追った。

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