第13話 死神ノ儀
「!! なんだココ!」
「しっ。動かないで、落ちるわよ」
俺はエルに飛ばされたあと、周りに広がる風景に思わず後ろへ下が――ろうとした。が、レオの叱声を受けてかろうじて踏みとどまる。
俺が立っていたのは、光り輝く法陣の中心。そして、その下は――銀河。果ても底も見えない。
「くすっ、驚いた? ここは人間の言う所謂"宇宙空間"に似たような空間ってとこかな?
勿論、限りとか底とか地平線とか、そんなものここには存在しないから、あたしらが見失ったら君の命はそれっきりだよ♪」
なんてエルが笑いながら言うがそんな笑顔に騙されちゃいけない、内容はひたすらにトンデモナイぞ。
周囲には、俺の正面にエル、(俺から見て)エルの右隣がレオ、左隣がショウ、レオの右隣がツバキ、ショウの左隣がマリアさん。そして、俺を挟んでエルの対面にいるのが先ほど『代理』といわれたアイルだ。おそらく、あそこが"欠番"だというルビーの位置なのだろう。六人全員が円の中に立っており、その円は互いに直線で結ばれ、俺がいる法陣はつまり六芒星の中にあるのだった。
円や直線は全て虹色。そして、俺がそれらをぼぉっと見ていると、一際強くそれらが輝き始めた。
"これより、死神ノ儀を始める――――"
エルが一転して真剣な面持ちで告げる。空気が先ほどより引き締まった気がする。
"汝、責任を負うことを覚悟するか?"
ショウの問い。
「か……、覚悟、する」少々歯切れ悪く答える。
"汝、人間達を守ることを誓いますか?"
マリアさんの問い。
「誓、う」内心の動揺を落ち着ける。
"汝、全世界の平和を望むか?"
アイルの問い。
「望む、」よし、だんだん落ち着いてきた。
"汝、魔物を狩り続けることを思うか?"
ツバキの問い。
「思う」はっきりと断言。
"汝、世界の調停を想うか?"
レオの問い。
「想うっ」さぁ、次が最後だ。
勢いよく答えると、法陣全体が更に強く輝き始め、エルが薄く笑んでいった。
"よろしい。その心意気、しかと受け取った。では死神の名の元に、汝を死神と認めよう。
そして、汝は真に死神となることを望むのか?"
息を少し吸って、俺は言い切った。
「望む!」
"よかろう。では、精進するが良い。等しき生と祈りを以って、真の死神へとならんことを"
エルは俺の答えに満足げに笑んだが、一転してまじめな顔になるとそのか細い両腕を広げてそう告げた。途端、下方から――宇宙に上も下もあるのかという話だが――強風が吹きつけてきた。
思わず両腕で顔を庇い、風がやむと俺は腕を下ろした。
そこに広がるのは、広大な宇宙ではなく、先ほどまでいた白を基調とした清潔な部屋だった。
「これであんたは――正式じゃないけど――死神だ。さっきの空間は、あんたが乗ってた列車が通った、"時限の狭間"だよ。
で、気分はどお?」
「あ。あ、ああ…………」
展開が速すぎて頭の処理が追いつかない。納得もいったんだかいってないんだか。
「エル」
「あん?」
ショウがエルを呼んだ。に対し、エルはあまり女の子らしいとはいえない答え方で暗黙のうちに先を促す。
「あと一ヶ月くらいで確か、昇格試験だよな。どーすんだ?」
「!! まさかっ…………」
ヤバイ、次のオチが読めてしまった。当たらないことを微妙に願う。
「んぁ? ああ、ソレね。もち、光には死神第六級昇格のために、実習生に混ざって受けてもらおうと思ってる。
そ・こ・で・だ! 光には残り一ヶ月間、このエル様直々の特殊訓練を受けてもらう!」
「……っ、当たったぁ……」オチ確定。
「ん? ちぃと予想してたのかな?
……あっ、もう一つ宣言しておこう。因み、これ決定事項だから♪」
マジで。
最早声すら出なかった。先が思いやられる。
すげぇキツかったらどうしよう。まぁ、エルのことだから効果はあるだろうが…………。
あまりにキツすぎてマゾに目覚めたらどうしよう。はっはっは、そんなことになったら末代までエルを呪いそうだ。
なんて思ってると、エルがぱちんと可愛くウィンクして、
「だぁーいじょぉーぶだぁって。ん~なキツくはしないから♪ 手取り足取り教えてあ・げ…………る♪」
谷間強調しながら言ってきた。
色仕掛けに既に半分参りつつも、俺はひそかな悪意を感じずにはいられないのだった。
はい、あけましておめでとうございます。新年初の投稿です。
2011年も月森をよろしくお願いしますoyz