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死神Days☆  作者: 月森 薫
第1章 綴られ始めた物語
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第11話 死神講座・6

「ハイハイお疲れさん。……んじゃ次っ、手帳と制服の話しやがれツバキ。つぅぅぅか逃げてんじゃねぇ」

 おざなりにショウへと労いの言葉をかけたエルは、そろ~っと部屋を出ようとしたレオ兄・ツバキに手に持っていた白棒向けると、どんな仕掛けか突然白棒が伸びて、ごつん、という凶悪な音と共にツバキの後頭部に入った。

「あだっ」……あれは痛い。

「逃げてんじゃねぇつってんだろーがバカモノ。ったく、その逃げ癖と酒乱と女好きを直してくれればちったぁマシになるんだが……って、グチってる隙に逃げてんじゃねーよ、ぶっ殺すゾコノヤロー!」

 今度は伸びまくっている白棒でガンガンとツバキの頭を小突いている。やりすぎじゃね?

「あたたたっ、たっ……分かった分かった分かりましたからやめてくれたまえエル!」よほど痛かったのか、結構あっさり脱出をあきらめたツバキだった。

「よろしい。最初から素直に引き受けりゃぁいーんだよ、バカ」べぇ、と舌を出して憮然と言うエル。

 ツバキは小突かれた後頭部をさすりつつ、俺への講義を始めた。

「つつ……、手帳はロザリオ同じくして身分証明となるものだが、そこには今までにこなした任務の詳細なども記される。第六級に上がると同時に支給される。

 制服は任務へ赴くときの服装で、基本的なデザインは全階級同じだが、左胸のロザリオはそれぞれの階級に応じて変わり、ロングコートやスカート、スラックスなどの形態はある程度選べる。女性の場合はミニスカートがオススメだが……ガハァッ」

「ふざけんじゃないわよ変態兄貴っ!」

 おおう。ツバキが言い終わらぬうちに、レオの鋭い蹴りがツバキの腰のあたりに決まった。

ツバキの身長は2m超えだろうに、その腰を蹴れるとは……よくそこまで足あがるな。

 と、無意味な感心をしている俺の目の前で、二人は兄妹喧嘩を始めてしまった。

「とか言いつつレオ、お前だってミニスカだろう」

「それとこれとは違うのよ!」

「それとこれとどう違うというのかね?」

「違うっつたら違うのよ! 何? また私に蹴られたいわけ? マゾ兄を持つと苦労するのね、妹って!」

「……あー、あの二人の兄弟喧嘩は気にすんな。あの二人が揃えば必ず一回は見られる光景だからな」

 ……俺といえば茫然自失の体だ。タバコをすっぱーとふかしつつ、俺の斜め後ろのショウが言った。「あ、ああ……」と呻くように返答する俺。エルといえば「やれやれ」といった風で微かにニヤニヤしつつ二人のやり取りを見ている。マリアさんはマリアさんで「仲がいいわねぇ、二人ともぉ~」と呑気なことを言っている。

「エル様。これでよろしかったでしょうか」

「!?」

 後ろから突然、なんの前触れもなくアイルの声がした。あまりの衝撃に一瞬心臓が止まりかける。心臓に悪いことこのうえなしだ。

「ん、アイル。……おっけーおっけー、光にはそれが一番ピッタリかもね。さんきゅー」

 エルはアイルが手に持っていた品――刀か?――を一度凝視すると、すぐに目を離してニッコリ顔でそういった。

「……これ、刀か? しかも、俺にピッタリって……」

「まぁやっぱそう思うよネ。

 えぇと、この刀は"神刀・紅蝶蘭しんとう・こちょうらん"つって、あたしが丹精込めて作り上げた刀。炎を通しやすいつったらオカシイけど、そんな材質でできた刀だから、君には使いやすいかもね。

 あたしお手製の刀、だ・い・じ・に・扱えよ?」

 意味深なことを言うエル。"君には使いやすいかもね"って、そんなこと分かるもんなのか?「あたしにはわかるもんだよ~、そんなん。だって神様だもん」

「!!」

 口には出してない……はずだ。なのに、何故分かった……? 未知の生物に出会ったかのように、身体が勝手に身構える。

「(あー、一様いっとこう。コイツの洞察力は異常だ。何隠しててもすぐバレちまう。しかも地獄耳ときた)」

 ショウの耳打ち。心なしかショウの顔色が悪いような気がするのだが……。

「ン? 今チョット"地獄耳"なんて言葉がきこえたんだけど? 気のせいなのかナ?」

 さっきとはうってかわった影のあるニッコリ顔。メチャメチャ怖い。

しかもバックに般若がいるもんだから怖さも倍増どころじゃない。

「「き……気のせいだと思いマス」」

「あっそう。ならいいわ」

 ショウとハモって答えると、般若は結構あっさり消えた。と同時に身体に入っていた力が抜ける。

「この刀を使って戦いな。あんたにとってとても大きな力に……そして、以後もっと強大な力になること間違いなし、だよ。それも……キミがその持ち主なら……ひょっとしたら、世界を変えうる、諸刃の力となるかもしれない」

 "世界を変えうる諸刃の力"? そんなもの、この俺に扱えるんだろうか……。

誰だって思うであろうことを当然の如く思った俺に、気付くとエルは優しく微笑んでいた。

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