第10話 死神講座・5
「えぇ~っと。あたしら……っつーか、新人の死神は、第六級になるとその階位にあわせてロザリオをもらうんだ。以後は昇格の度にリニューアルしてく。
ロザリオってのは、まぁ所謂身分証明書みたいなもんだよ。装飾は人目で見たときそうだと分かるよう、階位が上がるごとに豪華になってくから。ちなみにコレがあたしの~」
のんびりと言いつつエルが懐からごそごそと取り出したのは、確かにロザリオ。だが、中心に光の加減でだろうか、色が変わって見える宝石がハメこまれているところが通常のロザリオとは違う。また、ロザリオの先のほうには一つずつ、中心の宝石と恐らく同じものであろう宝石の小さめのものがつけられている。レオが腰につけていたのはこれだったのかと納得すると同時、それがレオのよりサイズが一回り大きいことに俺は気付いた。
「因みに。五聖蘭以上の階位になると、こんな感じに宝石がハメこまれてるものをあげてるの。
それぞれの宝石の色は五聖蘭の場合、司る属性の色で違ってるんだ。レオは水・氷と叡智を司るから青のサファイア。ショウは闇と暗躍を司るからオニキス、マリアは「お待たせぇ~」……緑と擁護を司るからエメラルド。ツバキは雷と栄光を司るからトパーズ、創聖蘭のあたしは光と全てを司るからオパール。後、今は空席の五聖蘭・死神紅聖蘭の場合は炎と憤怒を司るからルビーだよん。
お気づきの通り、五聖蘭の"ルビー"やら"サファイア"やらの呼称は宝石の名前からね。
……おかえり、マリア」
「昇格試験については話したのぉ~?」
「!」
恐るべし洞察力というか、勘の鋭さである。勿論まだされてはいない。
「あっちゃー、忘れてたわ。ショウ、しゃーないからしたって」エルはぴしゃり、と己の額を軽く叩いた。「やっちゃった」という感じである。
「ち……しゃーねーな」
あ、コイツ今チョット『してやったり』というか、『サボれた』みたいなこと思ってたんだろーな。軽く舌打してエルに睨まれていた。
「死神界の死神は、エルがそうだからなんだが、徹底的に実力主義でな。エルの命令は絶対って他にそれが平気でまかり通ってる世界だ。賄賂なんて使おうものならエル直々の制裁が飛んでくんだろ。
従って。必然、試験も戦闘での選抜になる。審判は主に第一級だの第二級だの、そこらへんだな。
トーナメント形式で行われてて、最後に勝ち残った5人が次の階位へと昇格する。……つっても、第一級に結構な人数がいるんだけどな、今んとこ。なんせ五聖蘭がたった5人だし、空席はなかなかうまらねぇし。
……でだ。一つの階位――第一級をのぞいて――に平均して25人くらいいるわけだから……5分の1か。それくらいの割合で昇格できるな。もちろん、それ相応の実力が必要なわけだが。
昇格試験については大体これくらいだ」
「一つ忘れてない? 五聖蘭昇格の時の」レオのツッコミ。ショウは再び舌打だ。
「……五聖蘭昇格の時は、現五聖蘭と創聖蘭の監視・監督の下、五聖蘭のいずれかのメンツと五聖蘭の座をかけて戦う。見事勝利すると、相手の座が挑戦者に渡るわけだ。こうすれば大概ハズレはでねぇしな。
他にも、今までの功績や知識……魔物についてや戦い方についての試験もあるな。
まぁ本命は戦闘だから、知識試験が多少悪くても戦闘が良ければ大体受かる。審判は大体アイルが務める。判断や判定はまぁ、戦っている奴以外の五聖蘭だ。
……ハイこれで俺の出番はしゅーりょー。後はよろしく頼むぞー」
強引に身を退くショウ。……結構図太い奴だな。
講座は長いですが……これをしっかり見ておかないと後々混乱するかと思います。ので、あと2話ほどの辛抱を(; ・`д・´)