第9話 死神講座・4
「……んじゃっ、早速仕事その1。君の武器、大剣・大刀のコト光に教えたってよ」
エルはそういい、新たにガムを口の放り込んで噛み始めた。
「ふむ、ここへ戻されて早々また酒を飲むというのもいささか無遠慮だろう。よかろう、大剣と大刀についてlectureしてやろう」
……なんかチョット、上から目線な物言いだな。
まあ、教えてもらっている立場でそんなこと言えるはずもないのだから思うだけ無駄なのだが。
ということで、短い青髪と青い瞳、2m近い長身の男は俺に説明を始めた。
「僕の武器、大剣と大刀は、その名の通り巨大な剣や刀のことだ。
破壊力は通常の剣や刀以上にあるが、素人や腕力に自信の無い者には少々この重量は難だろう。無理に振り回してしまえば自分が吹っ飛び、自滅を招いてしまうからな。最も、力量のないものでも上手く力加減の方法を習得できれば壊滅的なダメージを与えられることも出来るし、自滅することなく任務を遂行できるのだがね。
……まぁ、大剣や大刀は運用のための力量以前に剣や刀の扱い方を学ばねばならないものだ。そのため、最初は剣もしくは刀を修練し、慣れてきたところで大剣・大刀に転向するのが最もオーソドックスだがね」
……うん、多分、てか確実に無理だろ。俺、そこまで力あるわけじゃねぇし。
俺がそう――心の中で――結論を出すと、再びショウが口を開いた。
「……次は、と。徒手空拳だな。武器じゃぁないが、空手かなんかの一種と思ってくれりゃぁいい。
コイツはまぁ……拳と足と、身体全体を武器として扱うヤツで、武器の中では唯一敵の身体全体に作用する"気功"ってのを修得できる。なんでも、拳か蹴りかを叩き込んだ折にチャクラ……だっけか? そんなのを体内に流し込んで内部破壊するらしいぜ。その分、修得・精進どちらもキツいらしいがな」
あ、却下。無理無理。俺、不良に絡まれて適当にボコって圧勝みてーなことは何度もあるけど、そーゆー型じみたものをハメこむって無理だから。俺、基本的に我流だし。
「最後が、大剣・大刀の原型である剣や刀だ。俺的にはこれが一番オススメだな。
両方とも扱いやすいっちゃぁ扱いやすい。重量もないしな。接近戦が基本――技によって様々だが――だから油断してると傷を負いやすい分、普段からの鍛錬が重要なヤツだ。
2つの違いは……まぁ、剣は両刃、刀は日本刀が基本で、片刃。打刀っつー刀が多いな。剣か刀にするんなら、どっちを選んでもいいと思うぜ。
……大体こんな感じだが。どーする?光」
数秒の思案の後――というか、もうどれにするかは決まっていたのだが、一様――俺は口を開いた。
「……刀にするわ、俺」
一番コレが俺にはあう、と思ったのだ。
部活で竹刀なら使いなれている。これなら少なくとも0からのスタートではない。
「おっけぇ。んじゃ、アイル、あたしの部屋からアレとってきて。その間にロザリオ・手帳の話するから」
「承知いたしました」
アイルがエルに一礼すると、エルが俺に向き直った。おいおい、ブーツはいたまんまでソファーの上のるなよ。
「……あ。今の誰だってカオだネ。
さっきのはアイル、アイル・リローラ。あたしの秘書で第一級だが、実際は第一級よりか階級・実力共に上さね。多分カオあわすこと多いと思うから、仲良くしたげてねー」
「分かった」
俺が頷くと、エルがまた指をパチンと鳴らした。
うお、今度は教壇がでやがった。
エルはソファーからぴょんと飛び降りると、今度は教壇に飛び乗って腰掛けた。足も組む。
「え~とまずはロザリオからかな……」
……死神講座、まだまだ続くようだ。