序話
※2010.12.28.修正済
「はぁ……」
幾度目かわからない重暗い溜息を吐くと、俺はぐしゃっと握りつぶしてしまった数学のテストを見た。
0点。
それが、赤ペンでこれでもかというくらい名前――天音 光の横にでかでかと書かれている数字である。
ご丁寧にも「勉強しろ」という先生の叱咤をも殴りかかれており、万国共通・お怒りマークまでついている……。恐怖この上ない。
ちら、とカバンの中を見てみると、俺は明日が命日な重病人もかくやというほど顔面蒼白になった。
中には大して見てもいない教科書、ラクガキが9割を占めるノート、友達から返された漫画、それとあともう数枚、数学同じく0点が堂々宣言されている各種テストが入っている。
ヤバイ、これは確実に母さんに殺られる。
何か、家に帰らずに済む方法なんて無いかなぁ、なんて考えながら車道の真ん中なんて通ってたから悪かった。
ここの通りはほとんど車なんて通らないから、と油断してた。
ドカァッッ!!
「っっっ!?!?」
物凄い衝撃が、俺の身体を貫いた。訳もわからず数メートル先までスッ飛ぶ。
「……あっちゃー。どーしよ。ヤベェ、アイツらにブッ殺される」
男の声。全っ然「どうしよう」なんて思っていないような口振りだ。なんかスゲェムカツク。
どうやら、俺は車で思い切り轢かれたらしい。霞み始めた目の端に、紫の車が映った。恐らく今独白している男の物だろう。
「オイ、どーしてくれんだ俺の車。ベッコベコじゃねーか」
オイ、こっちの方がどーしてくれんだよ。多分お前の車よりベッコベコだぞ俺の身体。
……と言いたいところだったが、痛みで口を開けない。微かに顔を歪めるだけで精一杯だ。
「死神が民間人殺してどーすんだって話だよなぁ……。ったく」
……は? 死神?
男の顔はよく見えないが、身に纏っている白衣と口にくわえた煙草だけは見えた。"死神"という現実感ならぬ非・現実感を漂わせる単語に違和感を覚える。
と、そこで男は一度俺を一瞥した。俺は男が一瞬目を見開くのを見た。
「……しゃーねぇ、レオに任せるか。……おい、そこで死にかけてるボウズ」
俺のことか。つか、"レオ"って誰だよ。
「お前は"死神となりえる者"らしい。だから心配しなくてもいいよな」
いや、それ心配しなくていい理由にはなんねーから。つか意味わかんねーし。よな、と言われましても同意できませんて。
……いや、っつーか、その前に"死神となりえる者"ってなんだよ。
死神なんてゲームや物語の中だけのような単語……ヤバイ、ちょいクラクラしてきた。上下感覚をもなくなってきたし、意識が飛びかける。
俺……………………、死ぬ?
それを自覚した途端、猛烈に嫌悪の念がトんできた。
いやだぁぁぁぁぁ!! 18で俺、死にたくないっ!!
そんな俺の嫌悪を感じ取ったか、男は飄々と意味不明なことを告げた。
「何、受諾すりゃまた生き返れるさ。……死神界へと向かう列車、せいぜい楽しむこったな」
死神界……?
疑問に思ったのも束の間、俺の意識は早々に水底へと沈んでいった。
別ブログにて連載中、現在更新停滞中のモノです。
こちらは男主人公、「神様は結構適当らしい。」略して「神適。」との連携も考えておりm(ry




