◇第十六話 大人しくしてろ!!
シシスゴマンダーの生息地までは約10km。途中から険しい森の中に入り、その先にシシスゴマンダーの生息する洞窟がある。
途中から周りに人気はなくなり、一応肩に乗るバリスとトロワに陰身魔法を解除した。エルフお姉さんには魔力をあまり消費しないほうがいいと言ってくるけれど……無限なんだよな、と呆れてしまう。
「ここから結構遠いから私はケルピーで行くけど……君はカーバンクル?」
「え?」
あ、そっか。今までは移動するとなるとアグスティンだった。けれどエルフお姉さんはアグスティンを認識出来ず知らない。なら、バリスに頼んだほうがいいな。
『え、俺? 俺の出番? やったぁ!』
「いい?」
『任せろ!』
わくわくと巨大化したバリス。だいぶやる気満々ではあるけれど、大丈夫だよな? とちょっと不安になってくる。
対してエルフお姉さんは地面に膝をつき、祈るかのように両手を組んで目をつぶり、何かを唱え始めた。聞こえてはいるけれど、何を言っているのか意味は分からない。エルフの言葉、なのか?
そして、彼女の目の前の地面に出現した青色の魔法陣。その上に青白い光が集まり出し……形を作った。
ついさっき言っていたケルピーか。白い馬で、額に長い角が生えてる。カッコいいな。
けれど、気が付いた。ケルピーがこちらに顔を向けた瞬間、後ずさりしているような……? あちゃぁ、とエルフお姉さんは気まずい表情を浮かべている。もしかして……
『これだから低級は。どいつもこいつも腰抜けね~』
……やっぱり、こいつらか。最上位精霊の二匹がこっちにいるから驚いたってところか。というかトロワ、お前睨んだりとかしただろ。ビビってんぞ、ケルピーさんが。
「じゃあ先導するわ、着いてきて」
「分かりました」
いいか、絶対追い越さずに付いていくんだぞ。よ~くそう言い聞かせ、バリスの上に乗った。うん、まぁ乗り心地はいい。アグスティンよりは。あれ結構お尻痛いんだよなぁ。こっちはふわふわしてていいな。
と、余裕ぶっこいていた俺が馬鹿だった。
めっちゃ早かった。
「こらっバリスっ!!」
『やっふぉ~!』
「追い抜かすなっつったろ!!」
力のあり余った子供ってか? こういう聖霊は一番野放しにしちゃいけないタイプだよな絶対。
先導するはずだったエルフお姉さんを追い越してどうすんだよ、全く……
「そこの森に行って!」
「すんません!!」
まぁ、こうなる事を予測していなかった訳ではない。期待を裏切らないな、お前は。
すんげぇ苦笑いだぞ、エルフお姉さん。
なんて事を思いつつ、森の手前で止まらせた。今日のメシ分けてやんねぇぞ、で停まるのもどうかと思うが……しょうがないな、本当に。更にはトロワにまで怒られてしょぼんとしてしまう始末。
はぁ、先が思いやられるな……と遠い目をしつつケルピーに乗ったエルフお姉さんを待った。ここからは険しい森だからちゃんと後ろをついていかないといけない。
「ちゃんと付いていかなかったらコロッケもなしな」
『えっ!? やだやだやだ~!!』
『バリス、アンタの分は私が貰ったわよ』
『酷い事言うなよ~!!』
どんだけ食いたいんだよ、お前らは。食いっぷりもいいし。お腹空かないんじゃなかったのかよ。
『ルアンに乗ってもらえてるからって生意気よ!』
『お前はただ肩に乗ってるだけじゃねーか!!』
「喧嘩すんならどっちもナシだぞ」
『してないも~ん!』
『してないしてない!』
お前ら、仲が良いんだか悪いんだか。まぁ喧嘩するほど仲が良いって言うしな。
それにしても、頭上にいるアグスティン、じっとして黙り込んでるな。エルフお姉さんがいるからといっても離れている時には少し喋ってもいいだろうに。ごめんな、こいつらのコロッケお前にやるからそれまで我慢な。
そして、大きな洞窟に辿り着いた。
覗いてみたら……なんか、変な匂いがするな。魔力、なのかどうかは分からないけれど、エネルギーみたいなのを感じる。これがシシスゴマンダーのエネルギーなのか?
「ここからは歩きで行くよ。静かにね」
「は、はい」
昨日、ここにはシシスゴマンダー以外の魔獣はいないと聞いた。まぁ、弱肉強食という言葉がぴったりだろう。そもそも魔獣の間ではこれが当たり前なのだそうだ。
バリスにはいつも通り小さくなり肩に乗ってもらい、エルフお姉さんと中に進んだ。
森も少し寒かったけれど、ここも肌寒いな。今着てる半袖じゃなくて、長袖にすればよかったかも。
「……感じる?」
「え?」
「身体、ビリビリするでしょ。これは、シシスゴマンダーの魔力よ。シシスゴマンダーの魔力が洞窟内に溢れ出してるの」
……ビリビリ、するか? ただ寒いだけなんだけど。
確かにエネルギーのようなものは感じるけれど、ビリビリはしない……と、いうところで目の前にシステムウィンドウが出現した。
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防御力:∞
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あぁぁぁぁぁ、こいついたよ!! 無限のやつ!! チートステータス!! だから肌がビリビリしなかったのか!!
はぁ……恐ろしいな、本当に。じいちゃんのステータス。
「そう、なんですか……」
……とりあえず、顔には出さないよう気を付けよう。
「ここからは注意していこう」
「あ、はい」
そろそろシシスゴマンダーがいる部屋に到着するらしい。気を引き締めて行かないとな。
シシスゴマンダーか。確か、竜だったよな。A級のお姉さんでも倒せないらしいから、となるとその上のS級以上のランクって事になる。
でも、最上位の精霊二匹とアグスティンまで付いている。だから、恐らく大丈夫だと思う。まぁ他力本願というわけではないけれど、身は引き締めていかないとな。
「そろそ……!?」
「え?」
お姉さんが、そう言いかけた。けれど、言い切らずに止めた。
何かに気が付いた。いや、悪寒がしたんだろう。
俺も、頭の中で警告音がしたような気がした。
スローモーションが起きた様な、そんな感じがした。
そして、俺達のいる道の壁が……
ドッカァァァァァァァァァァン!!
そんなデカすぎる音と共に、崩れ去ってしまった。




