第114話:クリスの過去
「ジュリア・グラファのことなら、嫌いになったことはないよ」
クリスはハッキリと言いきった。
「前世も、今も。ワガママだけど寂しがりやの君を、たくさん甘やかしてあげたかった。……まさか、僕が励まされるがわになるとは思わなかったけど」
困ったように眉を下げて、口もとに笑みを浮かべながら、彼は客室のドアを開けた。2人はそっと、部屋に入る。
「前世の年齢って、聞いてもいいか?」
ドアが閉まって、ジュリアは遠慮しながら切りだした。クリスはなんとも言えない顔で、目をそらす。
「……30才」
「えっウソ、アネキより上?!」
思わず声を上げてしまう。そんなジュリアを見て、彼は少し落ちこんだ。
「……君にとってはおばさんでしょ。どうせなら、同じくらいの年の子が良かったよね」
「あっ。……いや、その、あの……」
「無理しなくていいよ。いい年して恋愛ゲームにハマるとか、自分でもキツいのわかってるし」
戸惑う彼女に、クリスは笑いながら言った。引け目を感じていることが、ひと目でわかるような表情。
「ふざけんな!」
一瞬で、ジュリアの心に火がついた。彼女は壁に手をついて、彼女に詰め寄る。
「年がどうとか、関係ねえだろ! アネキだって言ってたぞ、アプグラは大人向けのゲームだって。好きだったんだろ! なら、誇れよ!!」
「…………うん」
クリスの中にいる日奈は、目を見開いて黙っていたが、しばらくしてから小さくうなずく。
「でもさ、彼氏もいなかったから、よけいに気にしちゃうんだよ」
「……彼氏、いなかったのか」
ジュリアが不思議そうにする。クリスはため息をついて続けた。
「今とは違って、見た目にあまり気を使わなかったからね。だから前世で会ったとしても、会話は合わなかったと思う」
「そっか」
クリスティアンは、男の目から見てもイケメンだと思える。だけど。
「……ジュリアにとって、お前は憧れの王子様だったんだ。好きかどうかは、わかってなかった。オレが混ざって、クリスティアンの中にいるお前のことを好きになったから、こうして前に進めたんだと思う」
彼の青い目を見つめて、ジュリアは懸命に思いを伝えた。クリスは目を見開いて、その後に微笑む。
「……僕も、君のことを格好いいと思えたのは初めてだったよ。どうにか助けてあげたいって気持ちだけじゃなく、自分の手で、君を幸せにしたいと思ったのも」
「良かった。なら、お似合いだな、俺たち」
顔を近づけた状態で、彼女が綺麗な笑みを浮かべる。クリスはジュリアの手を引いて、そっと唇を重ねた。




