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上からの手紙

作者: まーら
掲載日:2026/01/29



朝、いつも通り目が覚めた。

薄暗い部屋で、窓から入る光は弱い。


階段を降りると、母が魚を焼いていた。

黙って座り、焼いた魚を食べる。

しばらくして、母が言った。


「帰りに肉、買ってきて」


私は頷いた。


着替えて家を出る。

外は横から光が差しているけれど、頭上は葉で覆われている。

島の中央には、大きな木が立っている。

どれだけ高いのかは分からない。上は見えない。


道を歩きながら、ぼんやり考える。

ここで生きるのに困ることはない。

ただ、少しだけ息苦しい。


肉屋で鳥の肉を買い、帰り道を歩いていた。


途中、道の端に白いものが落ちているのが見えた。

紙だった。


こんなところに紙が落ちているのは珍しい。

拾い上げると、短い文が書いてあった。


「今日は風が強い」


それだけ。


裏返すと、もう一行あった。


「空がよく見える」


しばらく、その言葉を見ていた。


ここでは、空は見えない。

海に行けば見えるけれど、日常の中にはない。


誰が書いたのかは分からない。

名前も、印もない。


私は紙を畳んで、ポケットに入れた。

捨てる理由もなかった。


家に帰り、母に肉を渡す。

それで用事は終わりだ。


自分の部屋に戻り、床に座る。

天井は低く、相変わらず暗い。


さっき拾った紙を、もう一度広げる。

文字は丁寧で、少し丸い。


同じ年くらいの人が書いた気がした。

根拠はない。


ただ、なぜかそう思った。


空が見える場所で、

風の強さを気にしている誰かがいる。


それだけのことなのに、

胸の奥が少しだけざわついた。


紙を引き出しにしまい、灯りを消す。


明日も、同じ一日が始まる。

肉を買い、家に帰る。


それでも、

頭上の葉の向こうに何もないとは、

もう思えなくなっていた。


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