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(元)走り屋の私が婚活した結果。  作者: あじ


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第3話:私を箱根に連れてって

1.待ち合わせの衝撃


土曜日の朝、東京の駅前で待ち合わせる藤原美香(32歳、アパレル会社事務)と高橋涼真(34歳、IT会社勤務)。


美香は淡いベージュのフレアワンピースに薄手のカーディガン、白のフラットシューズ、ナチュラルメイクの清楚な雰囲気を意識して、少し緊張気味に立っている。


やがて、目の前の乗降専用スペースにシルバーの4代目プリウス(レンタカー)が静かに滑り込む。涼真が降りてきて、美香を助手席にエスコートする。


涼真「美香さん、待ちました?どうぞ、乗ってください」


美香は、独特で奇抜なデザインのプリウス(4代目)に内心で少し引き気味。


美香(心の声)「うわ…来た…! 歌舞伎顔プリウス…!涼真さんの優しさはうれしいけど、 初デートでこれに乗るなんて、想像してなかった…!」


作り笑顔を浮かべ、助手席に乗り込む美香。


美香「わぁ…キレイな車ですね!(棒読み)」


涼真「はは、レンタカーなんで。燃費いいし、楽かなって選んじゃいました(笑)」


美香(心の声)「燃費…!? 男ならハイオク満タンで…いや、ダメダメ! 清楚キャラ、キープ!」



2.ドライブ開始


プリウスの小さなシフトノブを操作し、静かに発進する涼真。車内はハイブリッド特有の静けさに包まれる。


美香(心の声)「この…電子制御のシフト…Hパターンじゃないなんて…! ああ、クラッチを踏んで、ガチャッとギアを入れるあの感覚…恋しい…!」


無意識に窓の外を見つめ、走り屋時代の記憶がよぎる。つい、ぽろっと独り言が漏れる。


美香「…マニュアルが恋しい…」


涼真「え、なんか言いました?」


美香「っ! な、なんでもないです! 景色、キレイですね!(慌ててごまかす)」


涼真(心の声)「普通の都内の景色だけど…。なんだか緊張してるみたいだな」


涼真は少し不思議そうな顔をしつつ、穏やかに微笑む。


美香「ところで、どこに向かってるんでしたっけ?」


涼真「箱根までドライブしようかと。芦ノ湖畔におしゃれなカフェがあるみたいなので、そこでランチを食べましょう!」


美香(心の声)「箱根!?走り屋時代、何度も走って頭の中に地図が入ってるけど…。今日は涼真さんの運転だし、お淑やかにしなきゃ…」


美香「わ〜。箱根いいですね!楽しみ〜♡」


車内は和やかな雰囲気で会話が進み、車は首都高C1から東名高速、箱根ターンパイクへと順調に走っていく。



3.美香の走り屋癖、発動


峠の山道を走るプリウス。涼真の運転は安全そのもので、一定の速度でヘアピンカーブを曲がる。だが、美香の身体は無意識に反応してしまう。脳内でZ33を操るイメージが蘇り、足がエアクラッチを踏む動きを始める。


美香(心の声)「よし…2速、回転数合わせて…クラッチ、ガチャッ! シフトダウン! コーナー侵入!」


右足が空中でクラッチを踏む動作を繰り返し、左手はシフトレバーを握るように動く。助手席で微妙に身体が揺れる美香を、涼真がチラッと見る。


涼真「…あの、美香さん? なんか…足と手、忙しそうですけど…大丈夫?」


美香「え!? あ、あの、これは…リズム! 音楽にノってるだけです! ノリノリ!(顔が真っ赤)」


ラジオからはm.o.v.eの「Gamble Rumble」が流れている。


涼真「へぇ、そうなんだ(笑)。なんか…楽しそうなリズムですね」


涼真は少し驚きつつも、天然な笑顔でハンドルを握る。美香は内心で冷や汗。


美香(心の声)「やばい! 『白銀の稲妻』が漏れそう…! 落ち着け、私! 清楚なカフェ巡り女子、ここで崩れるわけにはいかない!」



4.カフェでの出会い


芦ノ湖畔近くのカフェに到着。テラス席の窓からは湖と緑豊かな景色が広がり、テーブルにはインスタ映えするスイーツメニューが並ぶ。美香は車内の緊張から解放され、目を輝かせる。


美香「わぁ! 抹茶パフェに季節限定のパンケーキ!? どっちもめっちゃ美味しそう〜!」


スマホを手に、パフェや景色を夢中で撮影する美香。走り屋の片鱗は消え、無邪気な笑顔がこぼれる。


涼真(心の声)「さっきまで車内で謎の動作してたのに、この無邪気さ…。同一人物とは思えないな。…でも、このギャップ、なんかいいかも」


テラス席でスイーツとコーヒーを前に、会話が弾む。美香は清楚なワンピース姿で、涼真と和やかに話す。


涼真「美香さん、その服、めっちゃ似合ってるよ。なんか…モデルみたいだね」


美香(心の声)「ドキッ!やった、清楚ポイントゲット! 完璧!」


美香「やだ、涼真さん、照れますよ〜(笑)」


二人の会話が弾む中、近くのテーブルに座っていた、女性が美香の声に気づいて振り返る。元走り屋仲間の佐藤玲奈(33歳、主婦)が、美香に向かって声をかける。カジュアルな服装で、笑顔を浮かべ手を振る。


玲奈「お! 美香! 『白銀の稲妻』、やっぱ輝いてるね! あのZ33、まだガレージに?」


美香の顔から血の気が引いていく。


美香(心の声)「玲奈さん!? なんでここに!?」


慌てて玲奈をカウンター付近に連れ出し、小声で囁く。


美香「玲奈さん!お願い、静かにして!」


玲奈「まだ隠してんの?(笑) でもさ、あのZ、最高だったよね。箱根の峠で美香と一緒に朝まで走って…」


美香「ストップ! 婚活中なの! もしバレたら…。親も『孫の顔が見たい』ってうるさいし、今度のチャンス逃したら終わりなの…!」


玲奈はニヤッと笑い、涼真の方をチラッと見る。


玲奈「あの人が彼氏?へー、結構カッコいいじゃん!」


美香「ちょっと!色目使わないでよ!あんたには旦那がいるでしょ!」


二人が小競り合いをしているのを、涼真は不思議そうに見て、コーヒーを飲んでいる。


玲奈「今度会ったらどこまで進んだか聞かせてよ!あたし相談乗るから!じゃあ、またね〜」


玲奈が会計を済まして店を去る。美香が席に戻ると、涼真が興味津々といった様子で微笑む。


涼真「美香さんの友達?なんか…美香さんってミステリアスだね。稲妻とか何とか、めっちゃカッコいいあだ名じゃん!」


美香が冷や汗をかきながら、コーヒーのカップをガタガタさせる。


美香「え、ただの冗談だってば! 私、陸上部で『関東のウサイン・ボルト』って言われてたから!(嘘)ほら、コーヒー飲みましょ!」


涼真は天然な笑顔でコーヒーを手に取り、話を続ける。美香は内心でホッと一息。


美香(心の声)「ふぅ…なんとかごまかせた…? でも、玲奈さん、タイミング悪すぎ…!」



5.和やかな時間と帰路


テラス席でスイーツを頬張る美香。パフェのクリームを口の端につけてしまい、慌ててナプキンで拭う仕草もどこか愛らしい。


涼真「ふふっ(笑)」


美香「な、なんですか? 変な顔でした!?」


涼真「いや、楽しそうだなって。なんか、こっちまで楽しくなりますよ」


美香「……だって、ほんとに楽しいんですもん(照れ笑い)」


二人は景色を眺めながら、たわいもない会話で笑い合う。美香の心に、初めて「普通の恋」の温かさが広がる。


美香(心の声)「最初に迎えにきたプリウスを見た時は…正直、めっちゃ物足りないと思った…。でも、涼真さんとこうやって一緒にいる時間、悪くない。…ううん、すごくいいかも」


カフェを後にし、プリウスに戻る二人。乗り込む前、美香はふと空を見上げる。かつて仲間たちと夜の箱根を駆け抜けた記憶がふと蘇るが、すぐに気持ちを切り替える。


美香(心の声)「私は『白銀の稲妻』…だったけど、今はただの美香。この人の隣で、普通の幸せを感じたい…」


涼真は助手席の美香を見て、優しく微笑む。


涼真「美香さん、また一緒に行きましょう。次はもっと色んなカフェ、探してみますね」


美香「……はい、ぜひ!(頬を赤らめる)」


プリウスが静かに走り出す。美香は窓の外を流れる景色を見つめながら、そっと心に誓う。


美香(心の声)「過去はガレージに封印したまま、涼真さんとの未来を大切にしたい…!」


だが、遠くを走るスポーツカーのテールランプが視界に入り、美香の心が一瞬だけ高鳴る。彼女の「走り屋の血」は、完全には抑えきれていないようだった…。(つづく)

用語解説


・プリウス…1997年から販売され続けるトヨタのハイブリッド車の代名詞的存在。4代目(2015〜2023年)はフロントフェイスの独特なヘッドライトのデザインなどが、自動車メディアなどで「歌舞伎顔」と評された。


・ハイブリッド…エンジンと電動モーターを併用し、燃費の良さや静粛性を実現する。トヨタ・ハイブリッド・システム(THS)を搭載したプリウスは代表的なハイブリッド車。


・ハイオク…オクタン価(エンジン内部でのノッキング(異常燃焼)の起こりにくさを表す値)がレギュラーより高いガソリン。スポーツカーはハイオク指定が多い。


・Hパターンシフト…マニュアルミッション(MT)の車のシフトレバーで、クラッチ操作と共にシフト操作することで、ダイレクトな運転感覚を味わえる。


・箱根ターンパイク…神奈川県小田原市から箱根山芦ノ湖南東部の大観山・湯河原峠に至る有料道路。私道のため貸切可能で、長寿番組「カーグラフィックTV」の撮影が行われるなど車好きの聖地。


・m.o.v.eの「Gamble Rumble」…映画「頭文字D Third Stage」オープニングテーマ。


・ウサイン・ボルト…人類史上最速のスプリンターと称された陸上選手。稲妻を意味する「ライトニング」の愛称で有名。

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