とある始まり
それは雨の日だった。
その少女はその土砂降りの雨の中を傘もささず、まるで何もないかのように歩く。
それでも実際は雨は降っているわけで、その少女は濡れて、さらには服すらも透けているようだった。
ただ・・・それでも、少女は何も気にしていないのか、はたまた雨が降っているのにも気づかないほどの何かがあるのか。
亡霊のようにただ一歩、また一歩と進むその姿はまるで機械のようにも感じられてしまう。
目の前にある、どこか不気味でそして神秘的とも思える神社。
少女は何の躊躇もなく、神社の鳥居をくぐり、境内へと足を進める。
偶然か、必然か。
神社の中には参拝客は一切おらず、さらに言うと神主や巫女といった人もいない・・・人気がなくガラリとしている。
そのせいだろうか、この神社がより薄気味ぐらい、悪い雰囲気のようなものがしてならない。
そんな中を関係ないと言わんばかりにその少女は歩く。
その足取りは一歩一歩が重く、ゆっくりだった。
歩いて、歩いて、歩いて―——、拝殿の前で少女は足を止めた。
そして・・・その次の瞬間、その少女はただ懇願する。
「————————」
か細い声で、
雨の音で消え去ってしまうような・・・小さな声で。
ただ・・・何度も、何度も、何度も―――。
その何か、願い事を口にして――――—————。
最近では毎年のように聞く、異常気象による猛暑の日。
いつものようにその日もその気温は30℃を簡単に超えてしまっていた。
教室の中は冷房が付けられているというのに、全く涼しくならず、皆揃えてうちわや扇子などを使い、涼もうとしていた。
そんな日のことだった。
「———上代優美です、えっと・・・よろしくお願いします」
こんな辺境の町の学校に転校生がやってきた。
最初の印象は少しの緊張か、不安か、少しだけ暗い印象をしている子だった。
そんな突然の転校生に教室の中がざわついていた。
可愛い女の子でうれしいだの、どこから来たんだろうだの、なぜこの学校に転校してきたのだの―――。
その中身のほとんどは当たり障りのないものばかり。
ざわついた教室の中を担任の先生は一言、
「うるさいぞ」と注意をすると、一瞬にして静まり返った。
「えー、上代は初めての環境で戸惑ったりしているんだ、もし困ってることがあるなら助けてやってくれ、以上だ・・・上代、お前の席は窓際の・・・あそこの結城ってやつの後ろの席だから・・・・・結城も、上代のこと色々と助けてやってくれ」
「・・・・・・あー、はい・・・わかってます」
”結城”、それは私の名前。
どうせ関係ないだろうと思い、話を聞いていなかったら、突然名指しで言葉をかけられ、
咄嗟にそんな言葉で返してしまう。
「よし、それじゃあ一時限目の授業の準備でもして待ってろよ、それじゃあ解散」
どこか雑で他人事のようにそう言い残すと、
自分たちの担任の先生はその教室を後にするのだった―――。
それからの転校生、上代優美は質問攻めを受けていた。
上代優美の様子を見る限り、突然大量の質問に迫られ、困っているのが見てわかる。
「・・・・・・あほらしいなぁ、ほんと」
小さく・・・そして息を吐くようにスッと、私の口からはそんな言葉が出てくる。
それと同時、居心地の悪さを感じたのか、
結城は立ち上がると、授業が始まりそうだというのにも関わらず、その教室から出て行ってしまうのだった―――。
キィーーンコーーンカァーーンコーーン
思わず耳を覆い隠したいと感じてしまうほどの大きな授業を始めるチャイムが鳴り響く。
毎度、毎度・・・このチャイムだけは慣れることができない。
「うるさいなぁ・・・ここの先生たちはほんと、耳が遠すぎるんじゃない?」
そんな愚痴をこぼしてしまうぐらいの音。
下手したら騒音ともいえるぐらいだ。
・・・今頃、授業は始まっているだろう。
そんな他人事のように、結城は思う。
実際、結城からしたら他人事だろう。
だからこそ、私は眠るためにも目をつぶる。
屋上ということもあり、風通しもよく、眠りに入るのもそう時間はかからず、
いつの間にか、結城は眠り、寝息が聞こえてくるのだった。
初めての学校は少し・・・というよりかなり不安だった。
知らない土地の知らない場所。
そんなところにいて・・・もしも避けられてしまったらどうしようと。
もしもいじめられることになったらどうしようかと。
ただ・・・そんな心配は一瞬にして消え去ることになった。
転校初日、上代は話していた上代自身ですら感じてしまうほどのぎこちない自己紹介をしてしまう。
緊張と不安、その二つに押しつぶされた自己紹介。
上代自身ですらぎこちないと感じてしまった。
他の人たちから見たらそれはひどいものになったのだろう。
だが、思っていたよりも他の生徒たちからの上代の評価は高かったのか。
はたまたただの好奇心や興味からか。
クラスどころか、他の学年やクラスからも私を一目見ようと来るほどだった。
多くの生徒に囲まれ、様々な質問を受ける。
それはどこか尋問のようにも感じられた。
「ごめんなさい、少し・・・お手洗いに行って来ても?」
それは・・・拒絶と逃亡だった。
今はとりあえず、誰もいない場所に行きたいという思いだった。
一切の悪気もなく、
「私が案内しようか?」
という親切な言葉でさえ、今の私には逃げようとするモルモットを監視するためについてこようとしているのかと思ってしまった。
「いえ、場所はわかるので大丈夫です」
私はそう言うと、逃げるようにして少し足早にその教室から離れることにするのだった。
それから上代はトイレではなく、どこかわからない場所にまで足を進めてしまっていた。
辺りは少し薄暗く、学校の備品などをたくさん置かれ、完全な物置になっているようだった。
そんな場所に来てしまったのも、それは単純に人の目から逃げるようにした結果と言えるだろう。
実際に今、上代がいる場所には人どこからその気配ですら感じられない。
「・・・・・・ここは、どこ?」
少しだけ、かえって不安に感じてしまう。
訳も分からない場所でたった一人でいるというのはここまで不安に感じてしまうものなのかと思ってしまう。
そんな時だった。
キィーーンコーーンカァーーンコーーン
・・・と、そんな授業の始まるチャイムが鳴り響く。
「あー、最悪」
入学初日から初めての授業でまさかの遅刻・・・
どう言い訳をすればいいのだろうか。
「・・・・・・いや、今はそんなことよりも」
ここはどこで、どう教室に帰ればいいのか。
できるだけ、人のいない場所へと必死になっていたこともあって、
ここまでの道のりを私は覚えていなかった。
「どうしよう・・・早く戻らないと」
そう思い、どうにかして帰ろうと焦りながらも考えていた時だった。
ヒューーー。
何やら、風の鳴る音が聞こえてくる。
上代は少し反射的にその風の音が聞こえる方向へと振り向く。
「・・・・・・扉?」
周囲が薄暗いせいなのか、またはただの無意識的なものなのか。
私は吸い寄せられるようにしてその扉のドアノブに手をかけて―――。
その音に、扉が開き、そして誰かが入ってきた気配に・・・私は目を覚ます。
扉のほうへと視線を向け、その姿を見て、私は少しの笑みを浮かべる
「・・・・・・・・あれ、授業始まってるでしょ?どうしてここにいるのかな?転校生」
その瞬間、その言葉、その出会いが、
きっと・・・きっと・・・結城栞という世界が動き出した瞬間だった―――――――――。
少しの考察?伏線?要素。
このお話を読んだ方ならわかると思いますが・・・結城と上代、その二人でなぜチャイムの音の聞こえ方が違うのでしょうか?
結城が言うにはそれは耳を覆い隠したいほどでかい音。
ただ上代からしたら普通のチャイムとして聞こえたらしく、そこまで大きくはないらしいですね。
まぁそもそもとしてそんな大きな音だったら、苦情がすごいでしょうし・・・
それはなぜでしょうかね?
他にも色々と考察や伏線?の要素などをいくつか書いておりますので良ければ考えてみてほしいです。
(最後の結城の発言等々)
次の投稿はできるだけ早くいたします。




