表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第8話 上に立ちたい?

 レジに若者5人の旅行客が入ってきた。


「この系列のコンビニにはメロンアイスがある。そっちの飲料コーナーにも北海道限定のものがある。おいおい、それじゃない。右側のだ」


 一人がしきりに指示を送っている。


「そろそろ時間だ。もう1時間くらい予定から遅れている。選んだら早くいくぞ。レジ袋はもったいないから、エコバック持ってるやつと共有しろ」


 あたふたと旅行客は買い物をして帰っていった。


「なあ佐々木」


「なんだ中原」


「今の人、かなり仕切ってたな」


「グループには必要だろうけど、ちょっとウザかったな」


「そういえば、高校に入ってさ、リーダーになりたいやつ現れるようにならなかった?」


「そういや、いるよな」


「中学の時まではさ、学級委員長決めるときとか、みんな下向いて、誰もやりたがらなかったからさ、時間かかったよなー」


「わかるな、それ」


「でも、高校に入った途端、学級委員長なんて、すぐに決まってさ。それどころか、わたしのクラス、三人も立候補してんの」


「多くね? でも、中原の高校、お嬢様学校だから、そういう前に出たい人いるんじゃない」


「だよなー。ちょっとした大きな企業の令嬢も多いからなー。佐々木の高校はどうよ」


「あたしのところも、一人、学級委員長やりたいって、手を挙げたやついたなー」


「やっぱ、高校になると、そういう人、出てくるんだろうなー」


「このコンビニもそうだよな。妙に仕切りたがるおばさんいるじゃん」


「ああ、渡辺のババアな」


「ババア言うなよ」


「あの人と同じシフトになると大変だよなー。手が空いたらすぐに掃除しろだな、棚の整理しろだのって、行きつく暇もないよ」


「とくにかく、指示を送りたい人っているもんな」


「えーと、佐々木は、大丈夫か?」


「急に、何?」


「いや、あんまり言いたくないんだけど、その渡辺のババアがさ、佐々木って見た目が悪いから、客が怖がる売り上げ落ちるーとかって、馬鹿なこと言ってたことあるんだよ」


「ああ、まあ、あたしの見た目が悪いのは、その通りだからさ」


「えー、なんだよ、それ。佐々木はかわいいのに」


「ちょっ、お前、だからそういうこと、さらっと言うなよ」


「だって、佐々木かわいいだろー」


 佐々木は顔を赤くする。


「まあ、たしかにあたしにはちょっと当たりがキツイかな。あたしのレジにきた子供が、突然泣き出したことがあったんだ。理由があたしの見た目なのか、他にあるのかは分からなかったんだけど。その時、渡辺さんに、あんた、お客さん泣かせて何やってるの、って怒られたことがあったよ」


「なっ、なんだよ、それ」


「まあ、夕暮れに道歩いていると、職質受けることたまにあるし、慣れてるよ……って、中原」


「まったく、みんな見る目ないよな!」


 中原は顔をぷくっとしている。


「ありがとな、中原」


「別に、お礼言われるほどのことじゃねーし」


 そこへ、中年のおじさんが週刊誌を持ってレジにやってきた。総裁選を争う政治家を特集した雑誌だ。


 中原がレジを打つ。


「総裁選で毎日政治家が戦ってるけど、あの人たち、自己承認欲求の塊じゃね? よくもまあ、そんなに偉くなりたいもんだよな」


「まあ、肩書があれば、通せることが増えるっていうのもあるんだよ、きっと」


「そういうものかなあ」


「ああ。たとえば、中原はお嬢様学校の肩書があれば、すんなり通る事多いだろ」


「うーん、あんまりわかんないな」


「例えば、ここのコンビニに応募したとき、どうだった?」


「えっ、すぐにいつから働ける? って聞かれて、すんなり働かせてもらえたけど」


「ほら」


「???」


「あたしは、過去に悪ことしたことないかとか、万引きの経験はあるのか、とか、保護者はどんな仕事してるのかって、根掘り葉掘りきかれたし」


「……なんか、ごめん」


「いや、別にそういうことじゃないよ。ただ、肩書とか、外見で、人って態度が変わるんだよ。それが分かってきた人が、上に立ちたいって思うんじゃない?」


「権力の座に就くってことかぁ」


「そうだな。権力さえあれば、何でも思いのままなんだよ」


「権力って、なんか、イヤだな」


「それが現実なんだよ」


「まあ、総裁選でも、少しでも、不公平をなくせるような人が当選すればいいよな」


「それは、人の言葉を話せる猿を見つけるのと同じようなことだよな」


「無理だな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ