第27話 税金(佐々木)
お客さんがタバコの番号を言う。
あたしはタバコを一つ取り出して、これでいいかと尋ねる。
お客さんは小銭を金額通り出して、レシートも受け取らずに店を出て行った。
店を出てすぐに、今買ったタバコのビニールをむいて、中のタバコを吸い始めるのが見えた。
「ねえ佐々木」
隣のレジで見ていた中原が呼びかける。
「なんだ中原」
「いまのお客さん、タバコ一つしか買っていかなかったね」
「それがどーした?」
「最近、カートンで買う人少なくなったよね」
「まあな。ライターもらえなくなったから、一つずつでいいって思ってんじゃね?」
「そうだよねー。別にたくさん買えばオマケ付けるよって販売、悪くないと思うんだけどねー」
「まあ、売る側もたくさん買ってくれるから、winwinだったのになー」
「それにしても、タバコって、ほとんどが税金なんだよね」
「そうだよな。嗜好品は税金取られるよな」
「お酒も、かなり税金持ってかれるみたいだよね」
「おいしいからなのかな」
「佐々木は、将来おタバコとかお酒やる?」
「どうだろ。でも、あんまり想像できないな。高いし」
「だよねー。わたしも、お菓子買うのでも、結構迷うもん」
「そうだよなー。最近値上げラッシュで、高くなったもんなー」
「そうそう。コンビニでなんか物買えないよ。格安スーパー一択だよね」
「中原、それコンビニの従業員が言うセリフじゃないぞー」
「佐々木、今週末、選挙じゃん」
「話題唐突に変わったな」
「いやいや。ほとんどの政党、消費税減税するって公約にしてるじゃん」
「そうだな」
「わたしの高校でも、選挙権持ってる3年生がさ、誰に入れたら減税してくれるか、って話で盛り上がってんの」
「高校生が減税って、世知辛いな」
「でもさ、減税しても、どこかできっと割を食うじゃん」
「まあ、そうだろうな」
「そこで、わたしは考えたんだけど」
「なんだよ」
「タバコとかお酒に税金かけられてるじゃん。次は、お菓子にかけられるんじゃないかって」
「マジで?」
「マジ」
「荒唐無稽ってやつだな」
「いやいや佐々木。考えてもみてほしい」
「なんだよ、評論家みたいだな」
「タバコもお酒も嗜好品だけれど、それ以上に、共通するものがあるのだよ」
「何、悪ぶってるやつが使うとか?」
「ちがーう。もっとよく考えてみたまえ」
「なんか、腹立つな」
「タバコもお酒も健康を害すのだよ」
「お前、それ愛好家の恨みを買う発言だぞ」
「タバコなんて、箱にあれだけでかでかと、ガンのリスクがとかたくさん書いてあるのに、みんなよく吸うよ」
「愛煙家から殴られるぞ」
「とにかく、体に悪いものから税金を取るのは、みんな納得するじゃん」
「まあ、そうなのかな」
「そこで、お菓子だよ。お菓子も、食べ過ぎると、肥満のリスクが高まるじゃん。最終的には肝臓ボロボロ。心筋梗塞脳梗塞。日本人の三大疾病まっしぐらだよ!!」
「妙に熱が入るじゃん」
「そこで、お菓子に税金をかける余地が出てくるのだよ。体に悪いから、税金をかけて規制するっていう大義名分ができあがるんだよ!!」
「でも、妙に説得力あるな」
「でしょ。消費税減税されても、お菓子の値段があがったら、本末転倒だよ」
「まあでも、今は何が起こるか分からないから、あり得ないとは言えないよな」
「これは由々しき事態だよね」
中原は、一人でウンウンと頷いている。
「でもさ、中原」
「うん?」
「その理屈で言えば、体に悪いものに税金かけられるんだよな」
「そうなるね」
「じゃあ、たいていおいしいものに税金かけられるじゃん」
「うん。おいしいものって、コレステロール高いもの多いからね」
「結局、消費税あった時と変わらないじゃん」
「…………」
「減税ってなんだろうな」
「パフォーマンス?」
「選挙できる年になったら、投票行こうな」
「そうだね」
吹雪の中、選挙カーが爆音を轟かせて走っていった。




