第23話 新春から熱い?(佐々木)
「う~、佐々木ぃ~」
「なんだよ……中原」
「風邪ひいたよ~」
となりで、マスクをしながらレジに立っている中原は、やや辛そうだ。
「休んでも良かったのに」
「それじゃあ、佐々木がワンオペになっちゃうじゃんかぁ~」
「たいへんだけど、仕方ないじゃん?」
「それに、金欠だしさぁ~」
「なんだよ、それ」
あたしは、はあ、と息を吐く。
「正直、週に一度しか会えないから、佐々木目当てでもあったんだけどさ~」
「うっ」
中原は、さりげなく恥ずかしいことをいう。
「なんだよ、佐々木~、嬉しいのかぁ~」
「違うよ。それより、初詣の時に手袋してなかったのがまずかったんじゃないの?」
「そうかも~」
「うつすなよ」
「うん。気を付ける」
どう気をつけるというのか。
「でも中原」
「ん? なに、佐々木?」
「そんなに金欠なのか?」
「そうなのよ。聞いてくれる?」
「あんまり飛沫飛ばすなよ」
「あたしの高校、お嬢様高校じゃん」
「それがどうしたんだ」
「一部の意識高い系の女子がさ、南米ベネズエラがアメリカに攻撃受けて、子ども達がかわいそうだから募金しよーなんて言い出したんだよ」
「意識たけー」
「ちょっとだけお金寄付すればいいのかと思ってたら、みんな紙だよ!」
「紙言うな」
「お嬢様学校だかんなー。みんな金持ちだかんなー」
「でも、気持ちだから、できる範囲でいいんじゃね?」
「それがダメなんだよ。誰がいくら寄附したか、メモられるんだよ」
「マジ?」
「マジ!」
「どういう魂胆だよ」
「ほら、神社とかでも、誰がいくら寄附したか、書かれるじゃん。ここで、序列が決まっちゃうんだよ」
「中原、いくら募金するんだ?」
「栄いっちゃんよ」
「栄いっちゃんって、1万円?」
「そう。栄一が~。栄一は女好きなんだろ~。行かないでおくれよ~」
「すぐにいなくなるんだよな。栄一は」
「ところで、栄一をお年玉にするのはマナー違反になったよな」
「急に話題変わったな。何それ?」
「知らないの? 栄一は女癖が悪いから縁起が悪いって言って」
「じゃあ、お年玉に一万円入れるなら、どうするんだよ」
「諭吉が再登場するんだって」
「なかなか、手に入れるの大変そうだな。銀行からくる紙幣、ランダムだろ」
「そう。マナーって、なんなんだろうなー」
「もういっそ、電子マネーでいんじゃね?」
「それなー」
「でも、寄付か」
「まったく、新年早々トランプもやってくれたよ。トランプの裏面は確実にババだよな」
「今年も、何があるんだろうなー」
そこで、しばらく中原が咳をはじめた。
「ゲホ、ゲホ、まあさ」
「なんだよ」
「わたしは、今年も佐々木と楽しくバイトやれたら、いいや」
「うっ」
中原はまたしても不意をついてくる。
「どうした佐々木、顔赤いぞ? 佐々木も風邪か?」
「うっ、うるさい」
あたしも、熱が上がりそうだ。




