第18話 クリスマスケーキ予約販売受付中(中原)
コンビニに着き、店の制服に着替える。
隣で佐々木も着替えている。その間に引き継ぎ日誌を見る。
「うげっ」
つい声を漏らしてしまった。
「どうした中原ー」
「佐々木ー。ちょーめんどくさいこと書いてあるよー」
佐々木がグイっと顔を近づける。
「クリスマスケーキ予約販売開始。必ず予約の有無を聞くこと。目標、一人10個。一つも売れなかった人は一つ買取……」
わたしと佐々木は顔を見合わせる。
「なんだよこれー、従業員舐めてんのかー!!」
わたしは悪態をつく。もちろん、佐々木の突っ込み待ちというのもあるが、半分は本音だ。
「まあ、これが日本の自転車操業マーケットなんだよ……」
佐々木が、ヤレヤレという顔をする。
「まあー、でもー、この中原ちゃんにかかればー、10個なんて余裕よー!」
わたしは、冗談交じりで言ってみた。
「なんだよ、それ」
佐々木は苦笑いする。
「よーし、どっちがたくさん売れるか勝負しよ!」
わたしが佐々木に持ちかける。
「なにかける?」
「かけるのかよ……。でも、あたしはやんないよ」
「なんでだよー」
「だって、負けるの見えてんじゃん」
佐々木は、そう言うと、すっとレジに向かっていった。
わたしは、はっとした。迂闊だった。
佐々木は、とてもいいやつだ。とてもかわいらしい。でも、やはり初対面の人は、どこかのスタンが付く国出身の父親を持つハーフの佐々木の見た目は、どうも怖く見えてしまうらしい。
わたしは、佐々木を追いかけてレジに向かう。
「あの、佐々木」
あやまらなくては、と思って声をかけるが、佐々木は客の対応中だ。
何やら、公共料金の支払い用紙の期限が切れているようで、長時間のやりとりになりそうだ。
そんなうちに、わたしのレジにも客が来る。
今日はやけに客がやってくる。
必ずわたしか佐々木のどちらか一方は、客の対応をしている時間が続く。
すると、ある女子大生の集団がやってきた。女子大生の集団はアイスやら甘ったるそうなドリンクやらを買い物カゴに入れている。
わたしのレジには、これまた公共料金の支払いをしにきた老人がいる。
「えーと、支払額は29万円です……。えっ、もう一枚あるんですか。これも29万円です。まだあるんですか。同じのが、あと3枚……。全部で145万円です……。あのー、まさか詐欺とかじゃないですよね……。違う。失礼しました……」
いまだかつてないくらいの1万円札を数える。
さきほどの女子大生は、佐々木のレジに並ぶ。
わたしがお札を数えていると、女子大生が突然、キャーっと、黄色い声を上げた。
「えー、なにあなたー、高校生なのー」
「うそーまだ1年生ー! スタイルいいー」
佐々木が珍しく顔を赤らめている。
「何々ー、ケーキの予約ー! いいよー買ってあげるー!」
「わたしも、今年は彼氏とやるんだけど、今買おーっと!」
隣のレジで佐々木が女子大生にモテている!!
わたしは佐々木の顔をチラチラ見る。恥ずかしがっている佐々木の顔、なんだかかわいい。
わたしの前で老人が咳払いをする。
「す、すみません。はい、145万円ちょうどお預かりしましたー」
払い込み書の控えにスタンプを押し、老人にわたす。
佐々木の方も、終わったようだ。
「ねえ佐々木、なんか、すごかったね」
「うん。中原……。ケーキ、5個も予約取れた……」
「すごいじゃん」
「これなら、中原と勝負しておけばよかったな」
「なんだよそれー」
今まで見たこともない、はにかんだ佐々木の顔を見るのは、なんだか嬉しかった。




