テンプラ・ファイター・スシゲイシャ
ヤテオ・ツラバヤはニンジャだ。
ラーメン小屋でナルトを食べていたところへ足元から黒子によって伝えられた情報に、彼の影分身が止まる。
「なんだと……? 宇宙人が第七形態に進化しただと!?」
黒子は彼の足元で、足を組んで頬杖をつき、優雅にうなずいた。
「ガライヤさんに報告だ!」
ニンジャはラーメンの上にナイフとフォークを横に揃えてごちそうさますると、立ち上がり、ライフルを肩から下げた。
「そしてソン・ゴムウにも伝えるんだ! 戦力で敵を圧倒するぞ! 我らが正義だ!」
表では忙しくなく戦車や輸送車が行き交っている。その中を世紀末覇者のような、あるいはヘビメタのような格好をした男がマシンガンを背負って堂々と歩いていた。
「あのニンジャの名前、何と言ったかな……」
男は一人、歩きながら呟いた、誰かに話しかけるように。
「日本人の名前は発音が難しくて覚えられん」
「マテオ・ツラガタマじゃなかった?」
ちいさな羽虫の声が答えた。
「ぼくもよく覚えてないけど」
「なぁ、パック」
男が羽虫にまた問いかける。
「俺たちアメリカ人って最近、元気がないよな。もっと昔みたいに堂々としてていいと思うんだ。我らが世界正義だ! みたいに、傲慢なぐらいにな。オタクが増えすぎたよ。すぐ自国を卑下しようとする、昔の日本人みたいにな。そのくせ自分自身には根拠のない自信をもっている。しかしそれは劣等感の裏返しとしての自信満々なんだ。だからすぐにリベンジとかしようとする」
「映画監督の大半がナードだから、仕方がないんだよ」
その時、突然に、本当に突然に、ジョン・ランポーの上から宇宙人が飛びかかってきた。
影を見てわかっていた。ランポーは背中のマシンガンを抜くと、空に向かって乱射した。
宇宙ニンジャだった。地面に映る影はまやかしだ。
「ホホホホ! あなたが主人公よね?」
ミスター・レディーは黒い唇をニヤリと笑わせ、爬虫類のような身体をしならせ、分身しながら襲いかかってきた。
「あなたを殺せばこの物語は終わる!」
ミスター・レディーは片目に装着していたスカウターで相手の戦闘力を覗いていた。
「150万……か。成長途中のピッ○ロさん程度ね」
自分の戦闘力は24だった。
ぐしゃ──
「さすがは伝説の傭兵──。第七形態まで進化していた宇宙人を虫のように容易く葬るとはな」
横からした声に振り向くと、そこに日本人がたくさん立っていた。
「みんな同じ顔に見える……」
男はマシンガンを背中にしまうと、言った。
「アニメのキャラなら区別がつくのに」
ニンジャSays「テンプラ・ファイター・スシゲイシャを探してくれ」
「なんだ唐突に?」
「不思議に思ったことはないかね? なぜ、アメリカ人が、誤った日本人像を描いても許されるのに、日本人が誤ったアメリカ人像を描いたらバカだと笑われるのか?」
「とりあえず洋楽アーティストが昔、日本の音楽番組に出て好きなものを聞かれ、『フジヤマ、スシ、ゲイシャ』と答えたらバカにされていたと聞いているぞ?」
「くそったれ!」
テンプラ・ファイター・スシゲイシャが隣で激怒した。
「俺をバカにしやがって! 殺してやる!」