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第二話:村の外れにて

辺境の村で暮らす少年・セロは、世界の理に反発するような感情を抱えていた。母の言葉が、ただの理想論ではないと知る日は近い。だがその時、彼はまだ知らなかった──。

朝焼けが村の屋根を照らす頃、セロは一人、村の外れにある崖へと足を運んでいた。

そこは村全体を見下ろせる静かな場所で、彼が思索にふける時によく訪れる場所だった。

風が草をなで、遠くからは鳥のさえずりが聞こえる。


「……何が“自然と共に”だよ」

セロは呟き、腰を下ろした。

母の言葉が胸に引っかかっていた。

なぜか、それがただの理想論には思えなかった。


──ふいに、背後から声がした。

「おまえ、またここにいたのかよ」

振り返ると、幼なじみのユンが立っていた。


「今日は配達手伝うって言ってただろ」

「ああ……わりぃ、忘れてた」

「まったく……」


ユンはため息をついたが、すぐに隣に腰を下ろす。

「何かあったのか?」

セロは少し黙ってから、昨日の講義のことを話し始めた。


「母さんは、“強さ”じゃなく“心”だって言う。でも俺は、強くならなきゃ何も変えられない気がしてさ」

ユンは空を見上げて笑った。

「セロ、おまえってほんと不器用だな。でも、そういうとこ、嫌いじゃないぜ」


セロも、思わず笑みを漏らす。

「……ありがとな、ユン」

「なに真面目な顔してんだよ、おまえらしくないぞ?」

「うるせぇ」


セロが肘で軽くユンの肩を突くと、ユンも笑いながら応戦する。

「おーっと、ケンカか? 不器用同士の喧嘩は見てて面白いな」

「誰が不器用だ!」

「おまえが言ったんだろ!」


二人の笑い声が崖の上に響き、やがて風に溶けていった。


少年の小さな違和感が、やがて世界の理に挑む動機へと変わっていく。ユンとの軽妙なやり取りが、この物語にささやかな温度を与えてくれました。次回、闇が村を覆い始めます。

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