第十三話:訓練と創界の深淵
黒い羽根が示したものは、未だ謎のまま。だがセロは、より深く創界と自分を知るために、新たな一歩を踏み出す。
翌朝、セロは村の裏手にある小さな訓練場へと向かっていた。そこには既にイーヴァの姿があり、木剣を手に構えていた。
「起きるの、遅かったわね」
「昨日の疲れが残っててな」
軽口を叩きながらも、セロは真剣な眼差しで木剣を構えた。
訓練は、基本の型から始まり、徐々に魔力を込めた動きへと移行していく。セロの動きは粗削りながらも、以前よりもはるかに安定していた。
「体の使い方が変わったわね。渓谷で何かを掴んだ?」
「……少しだけ、わかった気がする。力って、ただ振るうもんじゃない。自分の“核”がなきゃ、意味がないんだって」
イーヴァは満足げにうなずいた。「それがわかったなら、次に進めるわね」
訓練後、イーヴァは一枚の地図を取り出した。創界の階層構造が描かれたそれは、中心へ向かうほど魔力密度が高まることを示している。
「私たちがいるのは“調和階層”。その内側に“理力階層”がある。創界の核心に近づくほど、法則も常識も変化する。だからこそ、外縁にいる私たちが自らを鍛える意味があるの」
「つまり、中心へ行くためには……ここでできることを積み上げるしかないってことか」
イーヴァは笑った。「その通りよ、セロ」
セロは訓練用の剣を握りしめ、空を仰ぐ。
彼の中で何かが、また一歩動き出していた。
創界の深さと広がりが、セロに新たな視座をもたらします。次回、彼の訓練は思わぬ人物の登場によって、大きな転機を迎えることになります。




