第十二話:境界の羽音
カルナの渓谷からの帰還。だが、そこで拾った黒い羽根は、セロの心に深い問いを残していた。村に戻った彼を待つのは、報告と新たな決意──。
霧の境を抜けたセロとイーヴァは、夕暮れ時の村へと戻ってきた。
家屋の修復はかなり進んでおり、人々の間にわずかながらも安堵の空気が戻っているようだった。
「ただいま戻りました」
イーヴァがそう告げると、広場にいた村長と数人の長老が出迎えに来た。
「おかえりなさい。無事で何よりじゃ」
セロは、自分の胸ポケットにしまった黒い羽根の感触を確かめながら、小さく頭を下げた。
「渓谷には、異常な痕跡がありました。巨大な爪痕と……これは」
セロがポケットから黒い羽根を取り出すと、長老たちは顔をしかめる。
「それは……まさか、“影羽”か……?」
その言葉に、イーヴァも初めて驚きの表情を見せる。
「ご存知なんですか?」
「古い記録にある……“影羽”を持つものは、混沌と理の狭間から現れると……だが、伝承の一部にすぎん」
イーヴァは黙って考え込む。そしてふと、セロに目を向けた。
「この羽根が示すものは、確かに“外”からの干渉。でも、それが何かを判断するのは、まだ早いわ。まずは、記録の整理と警戒の強化を」
村長たちがうなずき、イーヴァは広場を後にする。セロもその背を追ったが、どこか心が落ち着かない。
(あの影の気配……気のせいじゃなかった)
その夜、セロは焚き火のそばに座って、羽根を見つめていた。
目を閉じると、あの霧の中の直感が蘇る。
──何かが、見ていた。
「次は……もっと、深くまで行くことになるかもしれない」
そう呟いたセロの声は、夜の風に吸い込まれていった。
黒い羽根が語るもの、それはまだ曖昧な予兆にすぎません。ですが、確かに何かが動き出しています。次回は、セロの訓練と“創界”についてのより深い学びが描かれていきます。




