第8章: エリオの示す真実
エリオは無言で歩みを進め、ユウキとアーカンもその後に続いた。静寂の中で足音だけが響く。エリオがようやく立ち止まると、彼は振り返り、二人に向き直った。
「君たちが知りたがっている真実は、ユニタリアの力の根源だ。」
エリオの声は低く、重みがあった。「ユニタリアが支配しているのは、単位系だけではない。もっと深いところに、全ての力の源泉がある。それを知れば、君たちも理解するだろう。ユニタリアの力が、いかにして不変で、そして恐ろしいものかを。」
ユウキはその言葉に心の中で疑問を抱きつつも、エリオの言葉に耳を傾けた。「ユニタリアの力の源泉って…一体何だ?」
エリオは少しの間、言葉を選ぶように黙った。やがて彼は、ゆっくりと口を開いた。
「それは…『標準基準』だ。」
その一言に、ユウキの心は一瞬で凍りついた。「標準基準…?」
「そうだ。全ての単位、そしてあらゆる計測の基準は、この『標準基準』から成り立っている。ユニタリアはこの基準を手に入れることで、全世界を支配できる力を得た。」
エリオの目は、ユウキに真剣な眼差しを向けた。「君が使っている単位、例えばヤードポンド法も、元々はこの『標準基準』に基づいて作られたものだ。それが他の単位系よりも優位に立つことで、ユニタリアは全てをコントロールしている。」
ユウキはその言葉に思わず息を呑んだ。「でも、どうして『標準基準』がそんなに大切なんだ?それが手に入れば、何が変わるんだ?」
「それは…」
エリオは一度口を閉じ、深く息をついた。「標準基準を支配すれば、全ての物理法則、経済、社会構造さえも、ユニタリアの意のままに操作できる。単位一つ一つが、世界全体を支配するための道具となる。それがユニタリアの真の力だ。」
その言葉に、ユウキの頭の中で何かが弾けたような気がした。単位という一見些細なものが、実は世界を動かす力を持つ…その概念が、恐ろしいほどに大きく感じられた。
「だからこそ、ユニタリアは全ての反抗勢力を抑え込み、他の単位系を排除し続けている。」
エリオは続けた。「ユニタリアは『標準基準』を完全に掌握することで、物理的な法則にまで影響を及ぼし、現実そのものを支配する力を手に入れた。君たちが使っているヤードポンド法も、その一部に過ぎない。」
ユウキは言葉を失った。自分が戦っている相手が、こんなにも壮大な力を持っているのかと思うと、胸が締め付けられるようだった。しかし、同時に彼はひとつの疑問を抱えていた。
「じゃあ、僕の力はどうなる?」
ユウキがエリオに尋ねると、エリオは少し考え込んだ後、静かに答えた。「君の力は、標準基準を無視できる存在だ。君が使う力は、ユニタリアの力を打ち破る唯一の希望となるだろう。しかし、君がその力を完全に制御できなければ、結果として全てを崩壊させてしまうことになる。」
「つまり、僕の力が暴走すれば、ユニタリアの支配どころか、世界そのものが崩れる可能性があるということか?」
ユウキは冷静に確認した。エリオは静かに頷いた。
「その通りだ。君が持つ力の本質は、世界の『標準基準』を変えることだ。だからこそ、その力を使うには、非常に高い覚悟と制御が求められる。」
エリオは再びユウキの目を見つめながら言った。「君がどれほど強力でも、その力を無駄にしてはいけない。もし君が暴走すれば、それは『標準基準』を操るユニタリアをも破壊し、最終的に全ての秩序が崩れる。」
ユウキはその言葉を深く心に刻みながら、再び決意を固めた。「僕は、その力を使って世界を変えたい。それが僕の使命だ。」
アーカンも静かに頷いた。「だが、注意しろ。君の力には、決して見過ごせない危険がある。その力を誤って使えば、全てが崩壊することになる。」
ユウキはその警告をしっかりと受け入れた上で、再び立ち上がった。「でも、僕には希望がある。希望があれば、力を制御できるはずだ。」
エリオは黙ってユウキを見つめていたが、やがて一言を呟いた。
「君の覚悟次第だ。だが、覚悟を決めたからと言って、必ずしも世界が君の思うように動くわけではない。その覚悟が、君を守るわけでもないということを忘れるな。」
その言葉に、ユウキは何かを感じ取った。これからの戦いが、ただの戦いではないことを。