第7章: エリオの真意
ユウキとアーカンは、エリオの登場に驚きつつも、警戒を緩めることはなかった。エリオは、ユニタリアの精鋭部隊に所属していた男であり、かつてアーカンとも共に戦っていたことがある。しかし、彼がユニタリアに鞍替えした理由については、未だに謎が多かった。
「お前がユニタリアに仕官した理由、覚えているだろう?」
アーカンは鋭い眼差しでエリオを睨んだ。エリオは冷ややかな笑みを浮かべ、ゆっくりと答える。
「もちろん覚えているさ。ユニタリアが持つ力と、それがもたらす秩序に魅了されたからだ。」
エリオの声には、確固たる信念が込められていた。それはまるで、彼が自らの選択を正当化し、他のすべての価値観を否定するようなものだった。
「だが、今のユニタリアは何かが違う。」
ユウキが冷静に口を挟んだ。「君たちは、何のためにそんな力を使っているんだ?人々を圧倒して、ただ支配するために規格を変えるなんて…。」
エリオはユウキを見て、一瞬だけその表情を曇らせたが、すぐに冷静さを取り戻し、こう言った。「支配は目的ではない。ただ、秩序を作り出すための手段だ。計測単位という、普遍的で普及した基準を掌握することが、どれほど重要なことか分かるだろう?」
ユウキはその言葉に驚きながらも、エリオの目を真剣に見つめた。「でも、それがどれだけ人々の自由を奪うことになるか考えたことはあるか?君が信じる秩序が、他の人々にとっては抑圧そのものなんだ。」
「それが君の言う自由だろう?」
エリオは苦笑いを浮かべる。「だが、自由には責任が伴う。秩序が乱れれば、結局は全てのシステムが崩壊するだけだ。」
ユウキはその言葉に思わず黙り込む。確かに、秩序を持たない世界がどれほど混乱するか、ユウキ自身も理解していた。しかし、秩序を守るために過剰な力を使うことが果たして正しいことなのか、その答えは見えていなかった。
「君がどんな理由でユニタリアに従っているかは知らないが…」
アーカンが低い声で続けた。「その秩序を守るために、他者の自由を踏みにじるようなことをしている限り、俺たちはお前を許さない。」
エリオは一瞬、アーカンの言葉に沈黙したが、すぐに冷徹な表情に戻った。「それは、お前たちの正義だろう。だが、正義の名の下に行動する者ほど、最後には自分の手を汚すことになる。」
ユウキはその言葉に一瞬戸惑い、次の瞬間、自分が抱えている問題の大きさに気づいた。ユニタリアが持つ「秩序」は、単なる物理的な規格の問題に留まらず、社会全体を支配するための大きな力となっている。それを維持するために必要な犠牲がどれほど大きいのかを、ユウキは痛感し始めていた。
「だが、君が言うような『秩序』を押し付けられて、どれほど多くの人々が苦しんでいるか、分かっているのか?」
ユウキの声が震えた。彼の心の中に、ユニタリアの力に対する反感と共に、解放の道を模索する思いが強くなっていた。
エリオはその言葉を聞き、しばらく黙った後、ゆっくりと答えた。「君が変えようとしている世界も、いつかは秩序を求めることになる。力を持っているものは、力を使わずにはいられない。そして、君の力もまた、君が思っている以上に恐ろしいものだ。」
ユウキはその言葉を重く受け止めた。自分の力がどれだけ強大で、また破壊的なものであるかを理解していたからこそ、その制御に恐れを感じていた。しかし、それでも彼は、ユニタリアの支配に立ち向かう決意を新たにする。
「その話が本当だとしても、僕は君のように諦めたりしない。」
ユウキは力強く言った。「僕は、この世界を変えるために戦う。それが僕の使命だ。」
エリオは静かに息を吐き、少し考えた後、言った。「分かった。君の決意を見て、もう少しだけ真実を教えよう。しかし、君がどんな選択をしようと、それには大きな代償が伴うことを覚悟しておけ。」
その言葉を聞いたユウキとアーカンは、彼が何を言おうとしているのかに強く興味を持ち、次の言葉を待った。