第6章: 計量法の裏側
ユウキとアーカンは、施設の深部に進むにつれて、次第に重苦しい空気を感じるようになった。これまでの緊迫した状況から少し解放され、二人はしばらく静かな通路を歩いていた。だが、ユウキの胸中にはまだ不安が広がっていた。
「お前の力は、ヤバすぎだ。あれだけの影響を与えたら、ユニタリアが黙っていないのは分かっていたけど、これほどまでに…」
アーカンが口を開いた。その顔には驚きと、少しの恐れが混じっていた。
「僕も…自分の力がこんなに拡大するとは思っていなかった。」
ユウキは苦笑いを浮かべた。「でも、今はその力をどう使うかが問題だよ。これ以上暴走させたら、世界そのものがどうなってしまうか分からない。」
アーカンは肩をすくめて言った。「それはそうだが、今更引き返せるわけじゃないだろう?君が覚悟を決めるしかない。」
その言葉に、ユウキは少し黙り込む。確かに、もう後戻りできないところまで来てしまったのだ。ユウキが自分の力を使いこなせるようにならない限り、今後の戦いは終わりが見えない。
「でも、どうしてユニタリアはこんなに規格にこだわるんだ?単位にそこまで執着している理由は一体…」
ユウキが疑問を口にすると、アーカンはしばらく考え込み、やがて答えた。
「それは…ユニタリアが自らの支配を確立するために、全ての単位をコントロールしているからだ。単位の操作は、単なる物理的な尺度だけでなく、社会や経済、ひいては人々の思考や行動までも操る力を持っているんだ。」
ユウキはその話を聞き、驚きを隠せなかった。「つまり、単位の規格を変えることが、世界の権力構造そのものに影響を与えるってことか?」
「その通りだ。ユニタリアは、全ての人々に自らの定めた単位系を押し付け、それによって世界を支配している。ユニタリア規格を使用しない者は、存在を認められない。従わなければ…抑圧され、排除されるんだ。」
ユウキはその言葉に愕然とした。自分が今、どれだけ重大な問題に巻き込まれているのかを実感する。
「だからこそ、ユニタリアの中には、何としてでも君の力を抑え込もうとする者がいる。」
アーカンの表情は、ますます厳しくなっていった。「君の力があれば、ユニタリア規格そのものを崩すことができるからな。」
その言葉を聞いたユウキは、しばらく沈黙した後、思い切って口を開いた。
「でも、僕はそんなことはしたくない。単位規格が崩れることで、もっと混乱が広がるだろう。それに、僕はもっと平和な世界を作りたい。」
アーカンは頷いた。「それが君の強さだ。しかし、その強さを持っていても、ユニタリアのような巨大な力を相手にするには、君自身がその力を使いこなさなければならない。」
ユウキは深く息を吸い込み、目を閉じた。そして、アーカンの言葉を胸に刻みながら、ゆっくりと目を開けた。
「まずは、自分の力を完全に制御できるようになること。それが一番重要だ。」
ユウキはそう決意を固めると、再び足を踏み出した。通路の先には、ユニタリアの秘密の施設が待っている。だが、その先に何が待ち受けているのか、ユウキにはまだ分からなかった。
突然、通路の先に暗い影が動くのが見えた。ユウキは身構え、アーカンも警戒して目を光らせる。
「誰だ?」
ユウキは声を張り上げた。
すると、その影がゆっくりと近づいてきて、見覚えのある顔が現れた。それは、アーカンの元仲間であり、ユニタリアの一員でもあった男、エリオだった。
「お前…どうしてここに?」
アーカンが驚きの声を上げると、エリオは冷たく笑った。
「君たちが来るのは分かっていたさ。ユニタリアの本当の力を知りたければ、まずは私の話を聞け。」