第4章: 迫るユニタリアの影
ユウキはアーカンに引き寄せられるように、機器の後ろに身を潜めた。周囲には、ユニタリア規格研究所の特殊部隊が歩いており、その足音が近づくにつれて、ユウキの心臓は激しく鼓動している。
「どうしてこんなに近くに…」
ユウキは耳を澄ませ、必死に呼吸を整えながら、兵士たちの動きを観察する。ユニタリアの兵士たちは、厳格にヤードポンド法に従った制服を着ており、腰には巨大な計測機器がぶら下がっている。まさに、単位を操る力を持たない者たちには絶対的な圧倒的支配力を持つ集団だった。
「ふん、今度のチェックでまた規格違反の奴が引っかかるだろうな。」
一人の兵士が皮肉を言いながら通り過ぎると、ユウキは思わず息を呑んだ。もし、彼らが今ここに現れた理由が、ユウキの力に気づいたからだとしたら――。
「心配するな。奴らは、まだ君が潜んでいることに気づいていない。」
アーカンが低くささやく。だが、その声にもどこか緊張感が漂っている。
「しかし、この施設にはやつらの目が届く範囲が広すぎる…もし我々が見つかれば、一気に包囲される。」
ユウキは冷静にその事実を受け入れ、立ち上がらないように注意深く隠れる。
兵士たちが通り過ぎるのを待つ間、ユウキは徐々に心を落ち着ける。先ほどアーカンが言った通り、今は焦るべきではない。だが、急に周囲の空気がピリリと張りつめてきた。
その時、ユウキの耳に、何か異常を感じさせる音がした。
「何だ、この振動は?」
ユウキは微かに感じた震動に気づき、その感覚を深く感じ取った。大地から、何か重たい物が動いているかのような感覚が伝わってくる。さらに、アーカンが顔をしかめて後ろを見た。
「奴らが…動き出した。」
アーカンの言葉がユウキの耳に届いた瞬間、施設内のすべての光が一瞬だけ揺らめき、警報が鳴り響き始めた。
「警報だ!ユニタリア規格違反者発見!」
システム全体に鳴り響く警告音と共に、ユウキの脳裏に衝撃が走った。まさか、もう発覚してしまったのか?
「急げ、ユウキ!」
アーカンはユウキを引き寄せ、素早く避難路へと導こうとする。
だが、ユウキはその場で足を止めた。「待って、アーカン。」
「どうした?」
アーカンは振り返るが、ユウキは不安げな表情を浮かべながら、改めて周囲を見回した。
「俺の力が、もしかしたらこの施設の警報システムにも干渉しているんじゃないか?」
ユウキは自身の力が、物理的な計測機器に加えて、警報やデジタルシステムにも影響を与えることを感じていた。その力が今、暴走しているのかもしれない。
「それは確かに可能性がある。君の力は単位そのものを変えるものだ。それが、すべての計測機器やシステムに影響を与えてしまった可能性が高い。」
アーカンの言葉にユウキは冷や汗をかきながらも、気づく。もし本当にこのまま暴走すれば、ユニタリアにとっても大きな問題になるだろう。
「でも、今はそれをどうにかする余裕はないな。」
アーカンは冷静に言った。
ユウキは思わず叫んだ。「アーカン!これ以上、俺が力を使ったら、世界が崩れるかもしれない!」
その瞬間、ユウキの目の前に一人のユニタリア兵士が姿を現した。その兵士はユウキに気づき、冷徹な目でにらみつける。
「規格違反者、発見。」
兵士が低くつぶやいた。
ユウキは瞬時にその兵士の動きを見抜き、反射的に動こうとする。だが、周囲の状況を把握して冷静さを保ちつつ、今度は自分の力をどう使うかを考えなければならない。力を無駄に使うことはできない。
「アーカン、どうする?」
ユウキはアーカンに尋ねた。
アーカンは小さくうなずき、少しの間考え込んだ後に言った。「ユウキ、君の力でその兵士の単位を変えて、戦わずに乗り越えるんだ。」
ユウキは一瞬、どうすればいいのか分からなかった。だが、ふと、彼の頭に閃きが走る。
「やるべきことは決まった。」
ユウキは深呼吸をして、周囲の空気を感じ取ると、兵士に向かって静かに言った。「君の単位を、変える。」
そして、彼の意識が集中する。
次の瞬間、兵士の目の前で、何もかもが変わり始めた。