第11章: 標準基準の謎
ユウキとアーカンは、単位法廷の前でしばらく待機していた。周囲にはユニタリアの兵士たちが巡回しており、簡単には近づけない状況だ。だが、ユウキはその緊張感を楽しむように感じていた。いくらユニタリアが支配する世界だとしても、彼にはこの状況を打破するための手がかりがあった。
「ユウキ、どうやって中に入るんだ?」
アーカンはじっとユウキを見つめて尋ねた。
「うん…まずはあの法廷の『標準基準』を探さないといけない。」
ユウキは低く言った。「標準基準が何かを解明すれば、ユニタリアの支配そのものに穴を開けられるはずだ。」
アーカンは少し考え込み、しばらく無言でいた。「でも、ユニタリアの標準基準って、具体的に何だ?」
ユウキはその問いに答えるため、法廷の外観をじっくりと観察した。巨大な石の建物、その中央にある金色の扉、その扉を開けるためにはいくつもの許可を得なければならない。だが、ユウキはそのすべてを越えなければならないと感じていた。
「おそらく、標準基準は法廷の最深部に隠されているはずだ。」
ユウキはしばらく空を見上げてから続けた。「ユニタリアの力を支えているその基準こそが、この世界を支配しているものだとすれば、そこを突き破れば、少なくともユニタリアの力を一時的に削ぐことができる。」
アーカンは唸った。「それにしても、どうやって潜り込む? 監視が厳重すぎる。」
ユウキはしばらく考え、急に顔を上げた。「やり方はある。」
アーカンは驚きながらも、「本当に?」と聞いた。
ユウキは力強く頷いた。「この近くに、あの『標準基準』を管理している部門に繋がる地下道があるはずだ。その道を使えば、正面から行くよりもはるかに安全に潜入できる。」
「地下道か…。」
アーカンはその言葉に少し警戒しつつも、納得した様子で頷いた。「それなら、行けるかもしれないな。だが、地下道にも監視がいるかもしれないぞ。」
ユウキは再び微笑んだ。「それは、問題じゃない。だって、僕にはあるチートスキルがあるから。」
アーカンは少し心配そうにユウキを見たが、彼の決意を感じ取って、肩をすくめた。「まあ、君がそう言うなら、やってみよう。」
二人は慎重に歩を進め、周囲の警戒を怠らなかった。ユウキの案内で、数分後には法廷の近くにある地下道の入り口に到達した。そこは、一般の市民が知らない場所であり、ユニタリアの管理者たちだけが知っている場所だ。
「ここだ。」
ユウキは地下道の入り口を指差した。「この道を通って、標準基準を管理している部屋に直接アクセスできる。」
アーカンはその暗い入り口を見つめ、少し警戒しながら言った。「だが、気をつけろよ。地下道の中には、ユニタリアのエリート兵士が待ち構えているかもしれない。」
ユウキはその警告に一瞥をくれ、軽く笑った。「僕がいれば、そんなの心配無用だよ。」
二人は地下道に足を踏み入れると、その静けさに包まれた。道の両脇には灯りが薄くとも灯っており、その光を頼りに進んでいった。途中、何度か曲がりくねった道を抜け、時には薄暗い通路を進むことを余儀なくされたが、ユウキは一切動じなかった。
やがて、目的の部屋の前に到達した。ユウキはドアをそっと開け、音を立てずに中を覗いた。
「ここだ。」
ユウキは静かに言った。「これが、ユニタリアの支配を支える『標準基準』が保管されている部屋だ。」
部屋の中には、巨大なコンソールのような機械があり、そこには膨大なデータとともに、ユニタリアの単位体系を構成する情報が記録されていると見られる。ユウキはその光景をじっと見つめてから、静かに歩を進めた。
「これを…」
ユウキはつぶやきながら、手を伸ばして機械のスイッチに触れる。すると、突然、部屋全体がざわめき始め、警告音が鳴り響いた。
「警告…警告…不正アクセス検出…」
機械から冷徹な声が響き渡り、ユウキは一瞬で状況を理解した。
「来たか…。」
ユウキは目を鋭く光らせ、すぐにアーカンに向かって言った。「急げ、警備が来る!」
アーカンはその言葉を聞くと、すぐに準備を整え、ユウキと共に部屋を飛び出した。
「こっちは後ろを担当する!ユウキ、君は前を突破してくれ!」
アーカンは一歩前に出て、後ろで警備兵を食い止めるための準備を始めた。
ユウキはそのまま、標準基準のデータを引き出しながら、機械を制御し始めた。ユニタリアの警備が迫る中で、ユウキは何としてもこのデータを手に入れ、支配を打破するための手がかりを掴む必要があった。
「さあ、行こう。」
ユウキは静かに決意を固め、データの抽出を開始した。