第10章: 反乱の火種
ユウキとアーカンが「単位法廷」に向かっている途中、街の空気はどこか緊張していた。ユニタリアの支配が強化される中で、反抗的な勢力が確実に息をひそめており、彼らの行動を警戒する目も増えてきていた。街の角を曲がるたびに、ユウキは不安そうな視線を感じ、アーカンもその気配を察して警戒を強めた。
「ユウキ、少し気をつけた方がいい。」
アーカンは低い声で言った。「ここから先は、ユニタリアの監視が厳しくなる。奴らの目をかいくぐらなければ、単位法廷にもたどり着けない。」
ユウキは周囲を確認し、こっそりと歩を進めた。街の隅々にはユニタリアの兵士が見回りをしており、少しでも怪しい動きがあればすぐに捕らえられる。それでもユウキは、心の中で固い決意を抱えていた。この戦いは単なる反乱ではない。世界の秩序を変えるための、命懸けの挑戦なのだ。
「ユウキ、前方に二人の兵士がいる。」
アーカンが静かに報告する。「うまくやらないと、捕まる。」
ユウキは立ち止まり、少しの間、考え込みながら周囲を見渡した。道を変えるべきか、それとも兵士たちに何かを仕掛けるべきか。ユウキはその選択を、迅速に下さなければならなかった。
「僕が行く。」
ユウキは決意を新たにし、アーカンに向かって言った。「君は引き続き後ろを警戒してくれ。」
アーカンはしばらくユウキを見守った後、軽く頷き、影に隠れるようにして動き出した。ユウキは兵士たちの方へ歩み寄りながら、無理に目立たないよう、軽やかに歩いた。
そして、兵士たちに近づいたその時、ユウキはふと気づいた。兵士たちの持っている装備、そして腰にぶら下げているのは、ただの武器ではない。ヤードポンド法に基づく計量器具だ。まさにユニタリアの象徴そのものであり、これを使って市民を監視しているのだ。
「おや?」
兵士の一人がユウキに気づき、足を止めた。「君は…ここで何をしている?」
ユウキは一瞬、動揺しそうになったが、すぐに冷静さを取り戻し、笑顔で答えた。「ただの通行人ですよ。何も不審なことはしてません。」
「通行人?」
兵士は疑わしげにユウキを見つめ、手に持った計量器を軽く揺らした。「君、最近、新しい単位を使っているようだな。ユニタリアの計量法を守るために、君も気をつけなければいけないぞ。」
ユウキの心の中で一瞬、警報が鳴った。もしこの兵士が「計量法違反」を指摘してきたら、それが彼の終わりを意味する。ユニタリアにとって、計量法を犯すことは死刑に相当するほどの罪だ。
だがユウキは、何とか冷静を保ち、言葉を選んで答えた。「確かに、最近ちょっとした実験をしていただけで、別に違法なことはしていませんよ。ヤードポンド法の範囲内で、ちゃんと測定しています。」
兵士はその言葉をしばらく考え込みながら聞いていたが、最後には肩をすくめて言った。「まあ、いいだろう。だが、規則を守らないと後で問題になる。気をつけろ。」
ユウキはホッと息をつき、兵士たちがその場を去るのを見届けた。そして、再び歩き出しながら、心の中で決意を新たにした。
「この世界、ヤードポンド法を守っていれば生きていけるわけじゃない。だが、少なくとも今はこの規則を守りながら、ユニタリアを打破する方法を見つけないと。」
その後、ユウキとアーカンは単位法廷に無事に到達した。しかし、その場所は予想以上に厳重な警備が敷かれており、ユウキたちが想定していた方法では簡単には近づけそうになかった。
「どうする?」
アーカンが顔をしかめながら言った。「これでは普通に進むのは無理だ。」
ユウキは一歩引き、周囲の状況を観察した。法廷内には数十名の兵士が配置されており、そこを突破するためには、何か別の方法を考え出さなければならない。
その時、ユウキの目にひらめきが浮かんだ。「アーカン、こっちに来て。」
ユウキは隠れるようにアーカンを呼び寄せ、彼に低い声で計画を伝えた。
「もし法廷内にある標準基準が、ユニタリアの支配の源泉なら、そこを突くことができれば…」
ユウキの目に、再び戦いへの決意が宿った。
「それを乗り越えれば、ユニタリアを倒すための第一歩になるかもしれない。」