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99.追憶の森


『崩れた地下牢』



スパスパ ガラガラ ドサーーー



盗賊「ぐあ!!くっそ…また崩れやがった」


女ハンター「あ…居た居た…こっちに居たのね」タッタ


盗賊「おぉ無事に合流出来たな?」


女ハンター「抜け道みたいなのがあちこちに有って結構迷ったわ」


盗賊「地下牢から例の通路でお袋が居た塔の方へ抜け出せると思ったんだが…どうやら崩されちまったみたいだ」


女ハンター「やっぱり…」


盗賊「やっぱり?どういう事よ?」


女ハンター「完璧な脱出作戦を先にやられてしまったと言うだけよ」


盗賊「くそう!俺等置いてけぼり食らっちまったな」


女ハンター「とりあえず…外に出るよりは安全そうだけど…完全にゾンビに囲まれてしまった感じね」


盗賊「だな?戦車が残ってりゃ突破口もあったんだが…」


女ハンター「…」


盗賊「悪い…先に言っとくがカゲミとイッコ…あとゲスの3人が乗ってた様だ」


女ハンター「そう…」


盗賊「即死だ」


女ハンター「分かってる…戦場ではいつもそういう風だから…」


盗賊「兎に角今は脱出の方法を探すのが先だな…此処に来る間に何か見て無いか?」


女ハンター「食料は残って居そうだと言う事だけね」


盗賊「籠城しろってか…」


女ハンター「その破壊の剣で穴を掘り進む事は出来ない?」


盗賊「瓦礫を運び出さん事には掘り進まん…ほんで木材か何かで補強しないと直ぐに崩れちまう」


女ハンター「救助待ちが良さそうね…シン・リーンの気球が上を飛んでる様だし」


盗賊「魔法でも使わん事にはあのゾンビの大群を焼き払えるとは思えんが…」


女ハンター「違う…ゲスはアーカイブの事情を知ってるから誰かを操って救出に来るかもしれない」


盗賊「そんな自由にも動かせんのだがな…」


女ハンター「とりあえず少し休憩…座らせて」ストン


盗賊「だな…ちっと頭冷やすか…」


女ハンター「レーションを少し持って来たわ…食べる?」カリ モグ


盗賊「戦闘の基本か…ちっと食っとくわ」ガブ モグモグ


女ハンター「残弾教えて」


盗賊「俺の散弾銃はあと2発って所か…手榴弾は4つ持ってる」


女ハンター「私はバヨネッタ残弾4発…ライフル弾は使い切ったわ…手榴弾は2つ」


盗賊「プラズマ銃はまだ使えそうか?」


女ハンター「もう魔石が無いから2発撃てるかどうかに思うわ」


盗賊「てか何を想定してる?」


女ハンター「まだ異形の魔物が一体残ってたから…」


盗賊「あぁ…戦車の中に閉じこもった奴な?」


女ハンター「他にも残ってると思う」


盗賊「ケッ!!そのままゾンビに食われちまえば良い」


女ハンター「ところで…」


盗賊「ん?」


女ハンター「大量のゾンビが押し寄せて来てこの周辺一帯がおかしなことになって居る可能性はどう考えて?」


盗賊「ト・アルの町と同じ様に霧が立ち込めてんな…」


女ハンター「そう…元の世界から隔離されてる可能性…」


盗賊「だが俺等何も出来んぞ…今の状況じゃ手詰まりだ」


女ハンター「どうして想定外に退路が無くなったのか…戦車が破壊されてしまった想定外も…」


盗賊「マテマテ…想定外ってどういう事よ?」


女ハンター「魔導士と魔術師がどうなったのとか…大事な部分の記憶が欠落しているのに気が付かない?」


盗賊「う…そういや…俺は何でこの通路から脱出しようとしたんだ?」


女ハンター「早く他の誰かと次元の調和をしないと2人だけの世界になってしまいそう…」


盗賊「シン・リーンの奴らが居ただろう…」


女ハンター「みんな地下通路を抜けて狭間の向こう側ね…私たち以外…」


盗賊「ううむ…だが良く考えて見ろ…それはそれで良いかも知れん」


女ハンター「どういう事?」


盗賊「手に追えんゾンビの大群丸ごとシン・リーンと一緒に大穴に落ちた…世界に平和が訪れそうだけどな?」


女ハンター「じゃぁ私達は行方不明になったと言う事?」


盗賊「イッコが死んじまったから俺はホムコに顔合わせ出来ん…いっそこのまま消えちまいたいわ」


女ハンター「何言ってるのよ…」


盗賊「冗談だ…まぁどうにか脱出してホムコに報告せんとイカンな」


女ハンター「ねぇ…」


盗賊「何よ?」


女ハンター「ミライ君を単独行動させた理由…」


盗賊「あぁ…世界のリブートな?」


女ハンター「いつそれを思い付いたの?」


盗賊「いつって言われてもな…もう覚えとらん」


女ハンター「ふーん…その時点から何度も同じ事を繰り返してる可能性は?どうして予定を変更して戦車で移動しなかったの?…とか…」


盗賊「まて…混乱する…そんな色々深く考えてなんか無えぞ」


女ハンター「じゃぁリブートがもう少しで来るとして世界はどうなってしまうの?」


盗賊「ルイーダの婆さん曰く魔法によって生じた世界の不整合が元に戻るらしい」


女ハンター「私達の存在が記憶になってしまうと言う話は?」


盗賊「俺が答えられる訳無えだろ…まぁしかし…このままリブートを待つってのもアリかも知れんな」


女ハンター「ミライ君と別れて何日目だろう…もうホムコさんには会ってる筈…それなのにまだリブートが来ない…」


盗賊「何が言いたい?」


女ハンター「アテに出来ないと言うか…色々と記憶が欠落してそうで行く末も読めないから不安しか無いわ」


盗賊「ぬはは…まぁ落ち着け…とりあえずまだ生き延びてる…今はそれで良いだろう」


女ハンター「少し考えを整理したいわ…記憶を何かに書き残しても置きたいし」


盗賊「ここは安全そうだから休憩がてら整理しといてくれ…俺はちっと周辺見回るわ」


女ハンター「遠くには行かないで」


盗賊「へいへい分かっとる…一時間以内に戻るから休んでろ…行ってくんな?」タッタ


女ハンター「…」---分かって来た---



---多分いつの間にか記憶がループする世界に入ってしまった---


---想定外は少しだけ変化が生じた違う世界を感じた結果---


---それが夢幻---


---アーカイブの記憶---




『1時間後…』



ドタドタ


こっちだ…ラスがうるせぇから汚れは落として行けよ?


看守の部屋に一通り用品が揃っていそうだね…使ってもよかろうか?


勝手にしろい!!



盗賊「いよーう!!戻ったぜ?」


女ハンター「バレンさんと合流したのね」


盗賊「喜べ!バレンの奴プラズマ銃を持ってた…予備の魔石もいくつかある」


女ハンター「それは貴重ね」


盗賊「後な?どうやらアリの毒袋持ってるとゾンビが近寄って来んらしい…徒歩で離脱出来るぞ」


女ハンター「ええ!?それは初耳」


盗賊「ちょっとした魔除けだ」



ヒラヒラ ヒラヒラ



盗賊「ん?」キョロ


女ハンター「気付いた?妖精が来てるのよ」


盗賊「おお!!ここに来て案内人まで揃ったってか」


女ハンター「でも良くない情報…」


盗賊「大穴に堕ちちまってるって感じかぁ?」


女ハンター「違うわ…ホムコさんの件」


盗賊「なぬ!?そんな情報が妖精から聞けるってか…何て言ってんのよ」


女ハンター「どうもホムコさん自身がリブートして眠りについてしまったみたい」


盗賊「なんだとう!?」


女ハンター「詳しくは夢の中で話すと言ってるわ…声が小さくて全部聞き取れないのよ」


盗賊「ほんじゃ早く寝ろ!」


女ハンター「妖精にお願いすれば眠る事は出来るけどしばらく目を覚まさない…それでも構わない?」


盗賊「どうせ休憩するつもりだったんだ…バレンも居るから心配しないで寝ちまえ」


女ハンター「じゃぁそうさせて貰うわ」


盗賊「しかしホムコがリブートして寝ちまうってどういう事よ…」


女ハンター「記憶になった…という解釈は?」


盗賊「おいおい…そんなん想定外だ」


女ハンター「又想定外ね…」


盗賊「いやマテ…まだホムコの旦那が残ってる…あいつら性別は違うが中身は同じだ」


女ハンター「その辺りも夢の中で機転が利いたら聞いてみるわ」


盗賊「そらアテにならん…夢の中は殆ど聞く一方だ」


女ハンター「機転が利いたらと言ってるでしょう」


盗賊「まぁ頼む…」


女ハンター「じゃぁ横になるわ」ドター


盗賊「ううむ…あの小さな機械の使い方が間違ってたかも知れんな…てかリブートして寝ちまうってどういう事よ…」



もしかして世界を停止させる鍵だったんか?


親父が言ってた様にやっぱ世界を破滅させる物なんか?


そもそもリブートってどういう行為なのよ…




『数分後…』



ドタドタ



盗賊「よう?スッキリしてきたか?」


戦士「ラシャニクア殿は寝てしまわれたか…」


盗賊「まぁな?何か有ったか?」


戦士「いや…その…身内を3人失ってしまって滅入ってしまってるだろうと…」


盗賊「戦場だとそういうのは意識的に考えん様にするもんだ」


戦士「弟の戦車が破壊されてると知って不用意に近付いてしまった私が悪い…私は私情を優先してしまった」


盗賊「俺もな…砲身を先にぶった切っとけば良かったと…今更考えてもすべてが遅いんだが」


戦士「済まない…大事な身内を3人も…」プルプル


盗賊「不幸中の幸いと言うか…ゾンビとして蘇る事も無いぐらいバラバラに消し飛んだ」


戦士「…」


盗賊「まぁ…150ミリ榴弾砲の直撃じゃそんなんなるワナ」


戦士「アラン殿は3人と付き合いも長かったのでは?」


盗賊「まぁな…カゲミとはガキの頃からの付き合いだった…もう止めろ…考えたく無え」


戦士「済まない…」


盗賊「お前だけのせいじゃ無えから…俺にも責任がある…只今それを言うのは止してくれ…兎に角今は考えたく無え」


戦士「ふむ…話題を変えよう」


盗賊「これからどうするかなんだが…バレンはどう考える?」


戦士「時間を巻き戻す術を知って居ると言ったらどうされる?」


盗賊「何!?」


戦士「サクラから聞いた受け売りなのだがね…ロールバックと言うのがそれに当たるらしいのだよ」


盗賊「どの時点まで時間を巻き戻せるんだ?初めに戻っちまうんじゃあんま意味無いんだが…」


戦士「バックアップされて居る時点…これで理解出来るであろうか?」


盗賊「バックアップ…まさかイッコが残したオーブが…」


戦士「その時点まで時間を巻き戻せる可能性があるとしたらどうされる?」


盗賊「おい!詳しく話せ!!どうやってやれば良い?」ズイ


戦士「ここから先の話は確かな話では無いのだが…」


盗賊「構わん…話せ」


戦士「私はアーカイブでの記憶が殆ど無いのだが…アラン殿達の話からすると所持品を持ち込める様だ」


盗賊「イッコのオーブをアーカイブに持ち込めって事か…」


戦士「そのオーブに縁のある画像の中にアラン殿の目も有ったりしないだろうか?」


盗賊「マテマテ…俺の目を覗いても俺にしかならんだろう…今の状況と何も変わらん」


戦士「バックアップされている時点の目…そう都合良く行かないかね?」


盗賊「…」トーイメ


戦士「何か閃かないだろうか?」


盗賊「喉まで出かかってる感じがする…確か…ルイーダの婆さんは過去の記憶は参照出来ん様にしたと言ってた筈だが…」


盗賊「もしかしたらこのオーブに記録されて居る過去の記憶は見る事が出来るのかも知れん…ただ…」


戦士「ただ?」


盗賊「俺一人過去に戻ったとして残されたこの世界に居る奴らはどうなる?」


戦士「ふむ…確かにそれでは意味が無いねぇ…」


盗賊「ううむ…でも参考にはなったわ…なんかもうちょいで行けそうな気がして来た」


戦士「次元の調和…辻褄の合わない事は調和をしながら一つになって行くのではなかろうか?」


盗賊「なるほど…でも待てよ?どうやってアーカイブに行くかって問題もある」


戦士「賭けになってしまうが…自死という手も…」


盗賊「そら最後の選択だ…よし決めた…ルイーダの婆さんが目を覚ましてる筈だ…話を聞きに行くぞ」


戦士「ルイーダ?目を覚ましてる筈と言うのはどういう事かね?」


盗賊「おぉバレンは何も知らんか…宝石になって眠ってたお姫さんが目を覚ましててだな…またコレが色んな事になっちまってんのよ」


戦士「おおおお!!勇者の一人がここに来て目覚めたとは…」


盗賊「あんま良い展開じゃ無さそうだぜ?」


戦士「…と言うのは?」


盗賊「魔法が使えなくなった後に魔導士達が騒ぎ始めてな…魔を継承するお姫さんの生き血を飲んだり赤い目ん玉くり抜いて食ったりって感じよ」


戦士「なんと!!」


盗賊「ほんでシン・リーンは魔導士と魔術師が対立する様になっちまってグダグダになった訳だ」


戦士「そうであったか…噂で魔導士達が反乱を起こした様な話は聞いて居たのだよ」


盗賊「それでだ…ルイーダが逃れた塔へどうやって行くかなんだが…ゾンビの大群を抜けて3人で行けると思うか?」


戦士「ううむ…私が持って居るアリの毒袋はゾンビ除けの効果が限定的なのだよ」


盗賊「おっと?どう言う事だ?アテに出来んってか?」


戦士「死霊術で操られて居るゾンビが動かなくなる程度しか効果が無いらしい」


盗賊「ぐはぁ…普通のゾンビにゃ効果が無いってか…ほんじゃ徒歩で行くのは絶望的だな」


戦士「しかし…ええと…確か追憶の森と言ったか…そこに精霊の像を安置して居る祠が有る…確かこの城と地下で繋がって居ると聞いた」


盗賊「ほう…ゾンビを回避して外に抜けられる訳な?…よし採用だ…それで行こう」


戦士「隠し通路になっているだろうから探すのは難儀するかも知れないねぇ」


盗賊「そこは俺の得意分野だ…もう目ぼしい場所は見当付けてある…もっかい確認に行ってみるわ」


戦士「私はラシャニクア殿を見守って居れば良いのだろうか?」


盗賊「そうしてくれ…しばらくは起きん」


戦士「そうそう…私はゾンビと戦える武器を持って居ないのだが銀製の武器が有ったら持って来て貰えないだろうか?」


盗賊「さっき軽く見回った感じだと見て無えな…てか自前の武器はなんで持って無えのよ」


戦士「慌てて出て来たから船に置いて来てしまったのだ…今は草薙の剣しか所持して居ない」


盗賊「その剣をゾンビに使うのは嫌なんか?」


戦士「ゾンビの姿のまま石化させてしまうのも良くないと思ってね…使うのを控えて居る」


盗賊「ほーん…まぁ良いわ…銀製の武器なんかそう簡単には見つからんのだが…一応探してくんな?」


戦士「よろしく頼む」


盗賊「てかシン・リーンはそもそもゾンビと戦う武器を持って無かったから逃げるしか無かったんだな…」ボソ


戦士「確かに…カゲミ殿は銀の流通を急がせようとして居た様だ」


盗賊「まぁ行ってくんな?」ダダ




『翌朝?』



…それでホムコさん達2人が眠りについた理由は自身の保護の為らしいわ


今はエリクサーに浸かって完全に停止状態になってるみたい



盗賊「保護ってのが良く分からんのだが…何から保護すんだ?」


女ハンター「私も詳しく分からない…頭部の機械が停止してしまうとかそういう理由みたい」


盗賊「ほーん…まぁ良いわ…ほんでミライが妖精使って俺らに伝言してる訳な?」


女ハンター「そう言う事…」


盗賊「それで例の機械が何だったのか聞けて無いんか?」


女ハンター「どうも昔の精霊の一部だった物らしい…私が言ってた外部メモリで間違い無さそう」


盗賊「リブートの件はどうなってんのよ…」


女ハンター「ちょっと待って…順を追って説明する」



今から200年ぐらい前の精霊の話


その時に精霊は人間に裏切られて命を落としたらしい


そして2つ有った外部メモリを2人の人間がそれぞれ持ち去ったみたい


一つはシン・リーンの魔術師に


もう一つはセントラルの騎士の手に


シン・リーンの魔術師に渡った外部メモリは既にホムコさんが回収してる


そしてもう一つの外部メモリはどういう訳か機動隊が持って居た…


それを貴方の父が奪って来たのね…



盗賊「ふむ…出所はまぁ分かった…ほんでその中身よ」


女ハンター「結論を言うと肉声が記録されて居た様ね」


盗賊「なぬ?世界をリブートさせる情報じゃ無いってのか?」


女ハンター「正確に言うとシャ・バクダ王家に伝わる歌が肉声で保存されて居た…どういう意味か分かる?」


盗賊「歌…」


女ハンター「かつて栄えたシャ・バクダ王朝が滅ぼされた理由…それはその歌の根絶が目的だったみたい」


盗賊「話が飛んで全然分からんわ」


女ハンター「つまり…その歌がリブートの鍵だと言う事よ」


盗賊「そんならホムコ以外誰もその歌を知らんだろう…寝ちまっちゃ意味が無え」


女ハンター「キマイラを眠らせる事の出来る歌が有る事は知って?」


盗賊「それはお袋から聞いた事がある…まさかその歌がソレか?」


女ハンター「ビンゴ!」


盗賊「マジか…」トーイメ


女ハンター「アラン…鍵はあなたが持って居ると言う事よ…どうするの?」


盗賊「マテマテ…只の子守歌だ…そいつをどうしろってんだ」


女ハンター「その話は聞けて無い…あなたは何か知って居たりするのじゃ無いの?」


盗賊「んな事言われてもなぁ…」


戦士「ラシャニクア殿…ミライ殿からの伝言を妖精を介して伝達されたにしては随分と具体的な話に聞こえたのだが…」


女ハンター「半分はカイネさんの思考も入ってる…アーカイブでずっとカイネさんの目を覗いて居たから…」


戦士「セントラルの騎士と言うのはルーシェンバッハ卿の事であろうか?」


女ハンター「多分そうね…それは妖精から聞いた情報では無いわ」


戦士「なるほど…既に知って居る知識と組み合わせての情報なのだね」


女ハンター「何か気になる事でも?」


戦士「200年前の精霊の目的が何だったのかと言う点で解釈が分かれそうだと言う事だね…リブートさせる件とどうも繋がらない」


女ハンター「ここからは私の想像になってしまうけど…それで良ければ話を続けるわ」


盗賊「何かのヒントになるかも知れん…一応話してくれ」


女ハンター「カイネさんの思考を借りるとこういう感じ…」



リブートさせると言うのは世界を眠らせる事…そして次に目覚めた時には初めに戻る…つまりこれがロールバック


200年前の精霊はこのロールバックする先を別のアーカイブに置き換えようとした…


そのアーカイブでは自由に他人の目を覗く事が出来ない…


そうやって魔王が膨らんで行くことを阻止しようとした…


でも同時に愛を紡いで行く事を失ってしまう事に人間達は気付いた…


だから精霊を裏切って世界をリブートさせる術を消し去ろうとした


一方精霊に対して従順なエルフは精霊が作ったアーカイブを守り続けて居る



女ハンター「これが人間とエルフが争う事になる根底に有る問題」


戦士「なるほど…弟が言う主張と合致しそうだ」


盗賊「なぁ?ちっと気になるワードが有るんだが…」


女ハンター「何?」


盗賊「世界を眠らせるってどういう事だ?」


女ハンター「これも想像になってしまうけれど…世界の根幹にあるアーカイブ自体が生き物でキマイラなのだと思うわ」


盗賊「あとな?ハーフエルフとかどっちのアーカイブの住人なんだ?」


戦士「むむ!私はどうやら人間側のアーカイブの様だがどうなって居るのだろうね?」


女ハンター「これ以上は空論になってしまうから止めましょう…兎に角私はリブートするとロールバックが来ると言いたいの」


盗賊「まぁ…ある程度理解した…あとはルイーダの婆さんの意見も少し聞いてから考えるか…」


女ハンター「んん?私が寝ている間にどういう話になって?」


盗賊「どうもシン・リーンの地下から近くの森へ抜ける通路が有る様だ…ゾンビの大群は放置して外に出られるって事よ」


女ハンター「それなら早く外に出てしまいたいわ…空気も悪いし…水も飲む気になれないし…」


盗賊「だな?」


戦士「では休憩はこの辺にして移動を始めよう」




『地下迷宮』



ピチョン ポタ



戦士「ふむ…この地下通路はどうやら戦略的に敵の裏を取る為の抜け道の様だね」キョロ


盗賊「だな?要所に兵隊が待機する部屋もあるしな?」


女ハンター「かなり複雑な迷宮になっている様だけれど…どういう狙いが?」


盗賊「こっから攻められた場合に裏を取り返せる様にでもしてんじゃ無えか?」


戦士「城の内側へ通じて居るからなんらかの防衛手段なのだろうね…」


女ハンター「この迷宮に入ったら出られない様になっていると言う事は無いでしょうね?」ジロリ


盗賊「おっと…そう来るか…そういや一歩一歩進む仕掛けとかも在ったな」


女ハンター「何処に向かってるか分かってるの?」


盗賊「そらお前…片方の壁伝いに進めばいずれ何処かに出るだろう」


女ハンター「ダメね…私が先頭を行くから蝋燭を灯して」


盗賊「暗視メガネあんのに蝋燭なんか要らんぞ」


女ハンター「妖精に先導をお願いするのよ」


盗賊「おお!そういう事か」チッチ シュボ



ヒラヒラ パタパタ



盗賊「ううむ…やっぱ俺には良く見えんな…」


女ハンター「こっちよ!付いて来て!」スタ




『祠』



ゴトン ゴゴゴゴ…



盗賊「おお!!隠し扉になってんのか…こりゃ見落とすわ…」


女ハンター「ここが精霊の像が安置されている祠?」キョロ


戦士「うむ…その筈なのだが…」キョロ


女ハンター「像は無さそうね…」


盗賊「大事な物はやっぱ回収して行ったか」


戦士「様子が変だねぇ…回収したというよりも略奪された様な…」


盗賊「まぁ見た感じ…結構放置された期間が長そうだ」


戦士「もしかしたらシン・リーンの言論統制で精霊信仰も何か規制の様な事が有ったのかも知れないね」


女ハンター「規制?どうして…」


戦士「例えば他の神の信仰者が暴徒となって精霊の像を破壊するのを防ぐ為に隠してしまったとかだよ」


盗賊「俺等にゃ関係無え…ちっと拝んで行きたかったがしゃーないワナ」


戦士「ルーシェンバッハ卿の屋敷にも沢山在ったからそう珍しい物でも無さそうだがね…」


盗賊「そういや一体ぶっ壊しちまったわ…アレと同じな訳な?」


戦士「少し姿勢が異なるだけだね」


女ハンター「200年前の精霊本人は一体しか無いのでは?」


戦士「200年前…」


女ハンター「人間達に裏切られた精霊」


盗賊「それならもしかしたら何か秘密が隠されていたかも知れんな…」


女ハンター「ちょっと気になるわ…もしかしたら誰かに再利用されて居るのかも知れない」


盗賊「石造だぞ?再利用して何に使う?」


女ハンター「石造の中にホムコさんと同等の機械が残って居るのでは?」


盗賊「むむ!?…あのガラクタ屋のジジイ…」


戦士「まさかアイン・シュタインの事であろうか?」


盗賊「なるほど読めて来た…そういや古代人の頭ん中にあるデバイスの特徴を良く知っとったわ」


女ハンター「ねぇ…あの科学者はどうしてシン・リーンで捕らわれの立場に?」


盗賊「例えばアーカイブ経由でシン・リーンの女王とあのジジイ両方操れるとしてマッチポンプが可能だな」


女ハンター「そうだったとして目的が良く分からない…」


盗賊「アーカイブから操ってる本人はいろいろ事情を分かってんだろ…ほんで手駒を駆使してやろうとしてる事は…」ギラリ


女ハンター「何?」


盗賊「ズバリ…エルフ攻めだ」


戦士「と言う事はエト・ワイマー卿が行動して居ると言う事だね?」


盗賊「俺が思うにな?次のロールバックで俺等全員エルフが居るアーカイブに統合されるんじゃ無えかと思う」


女ハンター「キノコを母体としたアーカイブ…」


盗賊「カゲミも似たような事言ってただろ…200年前の精霊が既に手を打ってるとかな?」


女ハンター「それならそれで良い気もするけれど…」


盗賊「それで人間らしさを失うかも知れないと思ってる奴も居るって事よ…人間らしさって言うか…愛を失うって感じか?」


戦士「つまり200年前と変わらず人間が精霊のやる事に抗って居るのだね」


盗賊「そう言うこった…魔王の影響なのかも知れんがな?」


女ハンター「どちらが正しいのか分からなくなって来た…アランはどっち?」


盗賊「俺は一つ決めた事がある」


女ハンター「それは?」


盗賊「カゲミとイッコとゲスの3人を救う…あいつらがまだ生きて居る時間まで巻き戻したい」


女ハンター「話がズレてしまったみたいだけれど…」


盗賊「うるせえ!精霊の狙いがどうなのかなんて俺にゃどうでも良い…次の時代を作って行くのは多分イッコだ…俺はそこに賭ける」


女ハンター「ちょっと待って…本当にそれで良いの?」


盗賊「俺に世界の扉を開けろってんだろ?ほんじゃ俺が選択した世界はソコだと言うだけのだけの話だ…精霊だの魔王だのどうでも良い」


女ハンター「…」


盗賊「後はイッコに委ねるってだけだ…まぁミライなのかも知れんがな?」


女ハンター「…」---その後を想像出来なくなってしまった---



---その時私達はどうなるの?---


---何処へ行ってしまうの?---


---どの瞬間で目覚めるの?---




『追憶の森』



ヴヴヴヴヴ ガァァァァ



盗賊「ええいクソ!結局戦えるのは俺一人か…」


女ハンター「私のミスリルダガーはバレンさんが使って!」ポイ


戦士「おお!!それなら私も少しは役に…」パス


盗賊「ほんじゃラスはゾンビに追われん様に上手く動け!」


女ハンター「多分大丈夫…どの魔除けに効果があるか分からないけれど私の方には近付かないみたい」


盗賊「魔除け…」


女ハンター「手に負えない大型のゾンビにだけプラズマを当てて行くから足を止めないで」


盗賊「へいへい…方角はこっちで良いんだな?」


女ハンター「多分…妖精を見失ってしまったから自信は無いけれど…」


戦士「アラン殿!少し先で戦闘音が聞こえる」


盗賊「なぬ?」


戦士「私達と同じ様にゾンビと戦って居る様だ…冒険者なのか…兵隊なのか分からんが…」


女ハンター「合流しましょう…他の誰かと次元の調和が出来れば少しは安心」


盗賊「バレン!先導頼む…どうもお前の方が耳が良いらしい」


戦士「付いて来たまえ!」ドドドド


盗賊「おい!置いて行くな馬鹿!!」




『兵隊達』



ドタドタ ドタドタ


山手だぁ!!避難民は山手側に逃れろぉぉ!!



兵隊「お前達!!武装しているな?ゾンビと戦える武器は所持して居るのか?」ダダ


盗賊「こりゃ助かった…シン・リーンの兵隊だな?」


兵隊「戦えるなら民を避難させるのに手を借りたい」


盗賊「戦えるっちゃ戦えるんだが…状況が良く分かって無え…どうにかシン・リーンから抜け出して来た所なんだ」


兵隊「山手側へはゾンビが侵攻して来ない様だ…山越えのルートで民を港町まで誘導しようとしている」


盗賊「なるほど…てか見ず知らずの冒険者に手を借りたいぐらいゴタゴタしてる感じって訳か」


兵隊「協力して貰えると思って良いのだな?」


盗賊「俺ぁちっと魔女の塔に用事があってだな…」


兵隊「何ぃ!!」スチャ


盗賊「おっとマテマテ…武器をこっち向けんな」



ヒソヒソ ヒソヒソ


おい…あの大男に居覚え無いか?


まさか旧セントラルの…



戦士「ハハ…どうやら目立つ様だね…」タジ


兵隊「お前達…この動乱を導いた者共だな?ここから先は通さんからな!!」フラリ


盗賊「む…その動き…お前魔術師か…」ジロリ


女ハンター「待ってアラン!!荒らげないで!」


盗賊「荒らげるも何もまだ武器を抜いても居無え」


兵隊「3人…」ジロジロ


盗賊「ゾンビが来てんのに争ってる場合じゃ無えぞ?」


兵隊「後ろの者!!バレンシュタイン卿だな?戦車の報告もある…覚悟しろ」


盗賊「こりゃ話が拗れちまった様だ…」


女ハンター「待って!!コレを見て!!」スチャ


兵隊「むむ!!光の方陣だ…と?しかもそれは…」


女ハンター「カイネさんから預かった物よ…そしてルイーダ姫を目覚めさせたのも私達の功績」


兵隊「な…んだと?」



ヒソヒソ ヒソヒソ


聞いたか?


おい集まれ!囲め!!



盗賊「こりゃえらく警戒されちまったな…ちっとルイーダの婆さんに話を聞きにと思ったんだがな…」


兵隊「…」ジロリ


盗賊「そう簡単に目通りが許される感じでも無さそうって事か…」


兵隊「直に3人の勇者が現れると言う予言は聞いて居る…だがお前達がそうなのかどう確かめれば…」


盗賊「勇者?俺らがか?」


女ハンター「予言?どう言う事?」


兵隊「伝説の再来だ…この追憶の森に3人の勇者が現れるのは遥か昔から予言されているのだ」


盗賊「なんかよー分からんのだが…俺らは200年前にロールバックすんのをどうやって阻止するか助言を聞きに来たんだ」


兵隊「お…お前達やはり…」




ドタドタ バタバタ


何処だ?


あそこです…銃器を所持している様なのでご注意を




盗賊「んん?なんか位の高そうなのがこっち来んな…」


女ハンター「あの人…衛兵隊長だった人よ…良かった…話が通じそう」


盗賊「おおお…親父の連れか」


兵隊「お前達…グリム殿と面識が?」


盗賊「あいつグリムって名か…」


女ハンター「そう…確か黒鉄のグリムね」



タッタッタ


衛兵隊長「おお!!やはりお前達だったか…そしてバレンシュタイン卿まで居るとは驚きだ」


戦士「はて?何処かでお会いした事が在っただろうか?」


盗賊「助かったぜおっさん!魔術師に囲まれてもうちょいで武器抜いちまう所だったわ」


戦士「それで異形の魔物はどうなった?始末出来ずにここまで逃れたのか?」


盗賊「主導してたルーデウスは始末した…戦車ももう動かんのだが…ゾンビだけどうにもならんな」


衛兵隊長「そうか…仕方あるまい」


女ハンター「でもゾンビを操ってた髑髏の杖は破壊出来たわ」


衛兵隊長「おおおお!!それは良い報告だ…これでルイーダの心配事が一つ減った」


盗賊「ところで俺等ルイーダにちっと助言を貰いたくて此処に来たんだがな?会わせて貰えんか?」


衛兵隊長「…」チラリ


兵隊「…」ジロリ


盗賊「なんだお前等…目配せなんかしやがって…」イラ


衛兵隊長「結論を言う…ルイーダはお隠れになられた…誰とも会わせる事は出来ない」


盗賊「その感じは…居場所のヒントすら言う気無えな?」


衛兵隊長「正確に言うと俺も居場所を知らん…一部の魔術師達が厳重に保護しているのだ」


盗賊「ほーん…無駄足だったか…」


女ハンター「ねぇ…ルイーダの瞳はどうなったの?無事なの?」


衛兵隊長「…」チラリ


兵隊「…」シラー


女ハンター「無事では…無さそうね…」


衛兵隊長「済まないがルイーダの状況については話す事が出来ない…隠して居る事情を察してくれ」


盗賊「まぁ良いわ…アテが外れちまったがな?」


衛兵隊長「この後どうされる?出来れば情勢が安定するまで手を貸して貰いたいのだが…」


盗賊「手を貸すっつってもそう役に立たんぞ?弾薬も切れちまってるし…」


衛兵隊長「銀製の武器が普及するまでは猫の手でも借りたい」


盗賊「だとよ?どうする?」


女ハンター「少し状況を見極めて置きたいと言うのは確かね」


戦士「ゾンビを寄せ付けない様にして居れば良いと言うのであれば少しは役に立てそうだが…」


盗賊「ところで例の塔の方はどうなってんだ?」


衛兵隊長「民が一時的に避難して居る…港町への移動を促しているが怪我人も多くて今は療養所変わりだ」


盗賊「頭のイカれた科学者が居ただろう…そいつはまだ居るか?」


衛兵隊長「んん?誰の事だ?」


女ハンター「アラン?機密事項はあまり知らされていないのかも知れない…」


盗賊「まぁ自分の目で確かめるか…」


衛兵隊長「悪いが塔を自由に歩き回らせる訳にもいかんのだ」


盗賊「ぐはぁ…俺等自由無しだってか」


衛兵隊長「一応シン・リーンという国を相手にしていると思ってくれ…魔術師にも規律があるし兵隊も同じく厳しい規律が有る」


女ハンター「従うしか無いわね…」


衛兵隊長「野営で休んでもらう事は出来るがどうする?」


盗賊「ううむ…2~3日情報収集って事で世話になるか…」


衛兵隊長「こっちだ!付いて来い」スタ





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