表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/102

96.公爵の影


『山小屋』



プシュー ガコン



闇商人「ここは…」キョロ


学者「なんかえらい人が多いっすね…ここでキャンプしてるんすかね?」


戦士「恐らく商隊の休息地だろうね…小屋に入れなくて雨の中テントか…」


闇商人「こっち見てるな…どうしよう」


学者「素通りしやす?」


闇商人「少し話だけは聞いてみたいんだ」


戦士「ふむ…ここは堂々と私が話をして来ようかね?」


闇商人「それはバレンシュタインだと名乗ると言う事かな?」


戦士「その通り…私の戦車だと説明すれば不審に思われないかも知れない」


学者「なんか根掘り葉掘り質問されたりしやせんか?」


戦士「まぁその時はその時だ」


学者「ほんじゃ一応バヨネッタで警戒しときやすか…カゲミさんも構えといて下せぇ」


闇商人「それは射手が居るというアピールかい?」


学者「まぁそうっすね…バレンさんの後方で射手が居るというの見せておけば随分本物っぽくなりやす」


戦士「ではそういう体で行こう」


賢者「あの…」モジモジ


戦士「んん?何か?」


賢者「おしっこが漏れそうなのですが…」


学者「あたたた…」


戦士「ハッハッハ…生理現象は仕方が無い…私が話をするから付いて来たまえ」


闇商人「…」---こういう環境だとイッコにストレス与えて居そうだな---


闇商人「…」---少し気を使う必要がありそうだ---




『10分後…』



ザワザワ ヒソヒソ


すげぇ…これがドラゴンも寄せ付けないっていう旧セントラルの戦車か…


おい!射手が狙ってるからあんま近付かん方が良いぞ


こんなのが魔物掃討作戦に加わってるのか…本番はこれからなんだな?



学者「こりゃ完全に見世物っすね…」


闇商人「どうも商隊というか…しっかり武装した冒険者が多い…」キョロ


学者「聞いた話だとあんま戦況良く無さそうなんで逃げ帰る途中じゃないすか?」


闇商人「森から逃げ帰るならシン・リーンに向かう筈だ…」


学者「おっと?…シン・リーンから逃げてるって事っすか…」


闇商人「魔術師っぽいのは居なさそうだな…」


学者「見分けつきやす?」


闇商人「こういう時に物陰から観察してるのが大抵そういう感じさ…熱探知にも映って無い」


学者「ほんじゃちっと物資調達で動いても良いかも知れんすね」


闇商人「イッコが戻って来たら少し買い出しを頼んでみようか」


学者「そうっすね…とりあえず毛皮があるともうちょい戦車の中が快適になりやす」


闇商人「あ…イッコが見えた」


学者「お!?なんか買ったみたいすね?さすがイッコさん…気が利きやす」


闇商人「…」---イッコも割と考えてるか---


学者「そういや荷物の中にアリの毒袋有ったんすけどコレ貰って良いっすか?」


闇商人「あぁ忘れてた…それマイとロイドが持って帰って来た物だ…何かに使える?」


学者「アリの毒は凄い弱いんすけど虫除けの効果が有るんすよ…森の中で重宝しやすぜ?」


闇商人「へぇ…でもなんかいまいちだな」


学者「ええとですね…魔術書で読んだんすけど死霊術でゾンビを操るのって寄生虫を使ってるみたいなんす」


闇商人「ええ!?魔法じゃ無い?」


学者「魔法かどうか良く分からんのですけど虫除けがあると寄生虫にも効果有るらしいっす」


闇商人「ちょっと待った…もしかしてゾンビ退治が出来る?」


学者「退治と言うか寄生虫が逃げて行くんでゾンビが動かんくなると思いやす」


闇商人「それは使える!」


学者「死霊術で操られてるゾンビだけなんで万能じゃ無いんすけどね」


闇商人「んん?良く分からないな…」


学者「普通のゾンビはやっぱ心臓に銀を撃ち込まんとダメみたいっすね…操られてるゾンビは虫除けで動かんくなりやす」


闇商人「そういう事か…ドクロの杖で操られてるゾンビは行けるという事だね?」


学者「全部行けるか分からんすけど効果は有ると思いやすね」


闇商人「つまりこうだ…イッコにアリの毒を持たせておけば目の前でゾンビが動かなくなる」


学者「多分そうなりやす…あとは銀のピッケルで心臓刺すだけでどんどん倒せやすね」


闇商人「それなら僕もニードルダガー持って接近戦出来るじゃ無いか」


学者「万能じゃないんで注意は必要っすよ」


闇商人「偶然だったけど良い物入手したな…金貨10枚払った甲斐があった」


学者「10枚っすかぁ…まぁそんなもんなんすかねぇ…」




『1時間後…』



イライラ…



闇商人「2人共遅いな…」イラ


学者「これ根掘り葉掘り質問されてるパターンっすね…待ちやしょう」


闇商人「少し雨が小降りになって来たかな…」キョロ


学者「このまま止んでくれれば良いんすがねぇ…」


闇商人「お?イッコが戻って来そうだ…走って来る」



スタタタ



賢者「はぁはぁ…お待たせしました!荷物を戦車の中にお願いします!」


闇商人「とりあえず幌の中へ!」グイ


賢者「ふぅ…ありがとうございます」


学者「何買って来たんすか?袋開けても良いっすかね?」


賢者「果物とかちょっとした雑貨です…袋は敷物で使います」


学者「お!?布が入って居やすね」ゴソゴソ


賢者「毛皮が売って無かったので代わりに布を買いました…これでもう少し暖かく過ごせます」


闇商人「高かったんじゃない?」


賢者「そうですね…でも雨に濡れて寒かったので買ってしまいました」


闇商人「まぁ良いさ…バレンさんはまだ戻って来ないかな?」


賢者「まだ情報収取をされています…あまり良い話では無い物ですから」


闇商人「と言うと?」


賢者「情報が色々違うのですがシン・リーンの魔導士が裏切って町へ隕石を落として居るとか…」


学者「えええ!?隕石を落とすってエライこっちゃじゃないすか」


賢者「はい…外壁が崩れる様な状況になっている様です」


闇商人「ちょっと待った…もう隕石を落とせるような魔法なんか使えない筈だ」


学者「そうっすよね…なんか情報がおかしいっすね」


賢者「あと魔王の噂もあります…魔王によって魔法が封じられたと言ってました」


闇商人「それはつまり混乱してると言う事だ」


学者「やっぱこれ思ったよりマズイ事になってそうっすね」


闇商人「それにしても外壁が崩れるってどういう事だろう?かなりしっかりした外壁だった筈だ」


学者「もしかして戦車から砲撃されていやせんか?」


闇商人「戦車の砲撃だとシン・リーンの外壁は崩れるだろうか?」


学者「150ミリ榴弾だと思うんで直撃したら一発っすよ…てかこの戦車でも正面から当たったら絶対勝てんす」


闇商人「ミルクちゃんを伝令に飛ばした理由はソレだな…」


賢者「あのぅ…鳥達とお話出来ればもしかしたら戦車の居場所を聞き出せるかも知れません」


闇商人「それが出来るならやってもらいたい」


賢者「夕方と明け方に休憩を貰えますか?鳥達とお話しできるのはそれくらいの時間です」


闇商人「分かった…」


学者「お?やっとバレンさん出て来やしたね…」


闇商人「なんか敬礼されてるな…もしかして知った人が居たんだろうか?」


賢者「冒険者の中にセントラル出身の方も居た様です」


闇商人「それで話が長くなったのか」


学者「こりゃ色々情報入手して居そうっすね」


闇商人「まぁ何事も起きなくて良かった…移動の準備をしよう」




『大量の干しキノコ』



ドサリ



戦士「済まないね…待たせてしまった」


学者「移動して良い感じっすか?」


戦車「構わないが少し進路に提案がある…地図を書いて貰ったから参考にして欲しい」バサ


学者「とりあえず動かしやすぜ?」ドスドス


闇商人「提案と言うのはどういう事?」


戦士「どうやら弟が戦車を使って居る様でね…真っ直ぐ向かわない方が良さそうなのだよ」


闇商人「やっぱりそうか…」


戦士「沼地を進む様にしたい…これで熱探知に掛かり辛くなるのだ」


学者「それってどういう理屈なんすか?排熱はどっちにしても見えちまいやすぜ?」


戦士「まぁそうなのだが泥を被って居れば随分マシなのだよ…戦車だと言うのが分かり難くなるのだ」


学者「そういう事っすか」


戦士「進行速度がそれほど遅くなる訳では無いから安心してくれたまえ」


闇商人「それでその他の情報は?」


戦士「芳しく無いね…魔導士達が魔石と気球を独占してしまって後方支援が断たれた事で森での戦闘が不利になったらしい」


闇商人「戦ってる相手は異形の魔物…だよね?」


戦士「それが色々証言が違って居てね…守備の要だった魔導士に攻められて居るという話もあるのだ」


闇商人「それは戦車からの砲撃が一般の人には隕石に見えてるんだ」


戦士「まぁそう言う事なのだろうが…事情を知らない人は混乱してしまっているのだ」


学者「ちょい待ちっす…ルーデウスがシン・リーンの城を攻め込む理由って何だと思いやす?」


闇商人「追い込まれて行き場を失ってるんじゃ無いかな?それで魔物掃討の指導者を狙って居るとか」


戦士「どうだろうねぇ…魔法が無くなったと知って一気に逆転攻勢している様にも見えるがね」


学者「なんかバレンさん知った人が居たみたいなんすが…シン・リーンの関係者っすか?」


戦士「あぁ…その昔私の指揮下に居た事の有る者だよ…今は只の冒険者だ…顔見知りでは無い」


学者「向こうがバレンさんを知ってたってだけっすか…」


戦士「熟練冒険者として今回の魔物掃討作戦に加わって居た様だ…それでちょっと気になる話も聞けてね…」


闇商人「んん?それは?」


戦士「エルフ達が一斉に引き揚げて行ったらしい…戦局が悪くなったもう一つの原因だよ」


学者「あららら?それってシャ・バクダの精霊樹に何か起きて居やせんか?」


闇商人「シン・リーン攻めは陽動の可能性があるのか…」


戦士「ここはズバリ私の予想を言って置こうか…やはりエト・ワイマー卿が動いて居る様に思う…恐らくルーデウスは只の手駒だろう」


闇商人「本丸はルーデウスじゃない?…のか?」ボーゼン


戦士「シャ・バクダの少し南で小国になっている領地があるのだがね…フィン・イッシュに引け劣らない戦力は残って居る筈なのだ」


闇商人「そんな…僕達は関わって居無いから情報が無かったのか…ノーマークだ」


戦士「放置されたキラーマシンがいくつも有ったからおかしいとは思って居たのだよ」


学者「それって予想っすか?それとも何か確かな情報が入っていやす?」


戦士「只の勘だね…カゲミ殿はどうして火傷を負ったのだったかね?」


闇商人「あああああ!!キマイラ…そうだ突然キマイラが出て来るなんておかしい!!」


戦士「そう言う事だね…主戦場はそちらなのだよ」


闇商人「そういえばシケ・タ自治領の北側でドラゴンが飛び回ってるとか言う噂も聞いてた…」


賢者「前に精霊樹とお話した時もエルフ達は異形の魔物より人間が徐々に敵に回って居る事を気にして居ましたね」


戦士「カゲミ殿…私達が居なかったこの数年で先回のシン・リーンとフィン・イッシュの共同作戦がどうなって居たのか何か情報は入手して居ないのかい?」


闇商人「変化の杖を破壊する件か…何も情報が無い…というかフィン・イッシュのゴタゴタでうやむやのままだ」


学者「そのエト・ワイマー卿が居たとしてっすね…精霊樹をどうにかするっている目的は何なのか知らんすか?」


戦士「残念ながら私は分からない…ただエト・ワイマー卿は古代人との繋がりも深くアーカイブの存在など核心的な事は知って居る筈だよ」


闇商人「異形の魔物ばかり追って僕達は周りが見えて居なかったか…」


学者「そもそも兄貴はそういうのを避けてた所もありやすがね」


闇商人「リカオンがバタバタ飛び回ってたのはそういう関係も在ったと言う事だ」


戦士「兎に角私達はまず目の前の事を処理しよう…弟が直ぐそこに居る様だから私が行かねばならない」


学者「戦車同士かち合う事にならん様に立ち回らんとイカンっすわ…こっち砲弾持って無いんで…」


戦士「気を付けて進もう」




『公爵の影』



ワイマー家との繋がりをノ・ヴォに居た花売りの女に質問されたのだがね…


その時にエト・ワイマー卿が存命して居るのでは無いかと思い始めた


ルーシェンバッハ卿の屋敷に行った際もそこに有る筈のユニークアイテムの殆どが無くなって居た


エト・ワイマー卿はその存在を知って居た…というか殆どエト・ワイマー卿が管理して居た物だからね


やはりそこでもおかしいと思ったのだよ


そして地下通路には何台もキラーマシンが放置されて居る…移動した痕跡だと思っても良い


恐らくなのだがアーカイブを通じて誰かに乗り移る様な形で暗躍しているのでは無いかと思う




学者「そういやルイーダの婆さんは直に記憶が無くなるとか言ってたじゃないすか?」


戦士「済まない…私はアーカイブの事をあまり覚えて居なくてね…でもどうしてゲシュタルト殿達は記憶が残っているのだろうね?」


学者「多分なんすけど肉体が死なん事には記憶保持してると思いやす」


戦士「あぁ…そういう事か」


学者「普通に魂抜けちゃったら飲まず食わずで5日もしたら死にやすね…つまりそのエト・ワイマー卿もどこかで凍ってるって事っすよ」


闇商人「エリクサー漬けの場合どうなる?」


学者「あぁ…それも仮死状態なんでイケそうっすね」


闇商人「つまり何度でもアーカイブに行き来出来ると言う事だ」


学者「それこそシステムの脆弱性を悪用するエクスプロイトっすわ」


戦士「まぁそんなこんなをエト・ワイマー卿は何十年も前から知って居た可能性が高い…そして古代人にはそれが出来ないのだろう」


闇商人「それは取引で強力なカードになるな…」


学者「ちょっと待って下せぇ…そんな事が出来るならわざわざ本人が危険な外海に行く必要も無いんじゃないすか?」


闇商人「そうだね…アーカイブ経由で他人を操れば自分は安全に眠って居れば良いじゃないか!!」


学者「ていうかっすよ?変化の杖を使って化ける必要も無いんじゃないすか?」


闇商人「確かに…そうだったとすると行方不明だったキ・カイの船に変化の杖は無かったと言う事になる」


戦士「良い所に気が付いたね…どうやら謎が解けそうだ」


賢者「今の話を聞いても…そのエト・ワイマー卿の目的が分からないのですが…」


闇商人「バレンさん!エト・ワイマー卿の目的に何か心当たりは無いの?」


戦士「う~ん…私が知る限り悪い人物では無いのだよ…ただ人類を存続させるのに固執しているとは聞いた」


闇商人「人類の存続?」


戦士「純血の人間を存続させると言うのがかつての目的だったらしいのだがね…それ以上の事は分からないのだよ」


闇商人「なんだ精霊樹を狙うのと全然結びつかない…何がしたいのか全く分からないな」


賢者「あのぅ…話が逆なのでは無いでしょうか…エルフが攻められて居るのでは無く攻めて居るのでは?」


戦士「むむ…その線も確かに考えられる…魔法が無くなって均衡していた力関係が変わってしまったか…ううむ」


学者「やっぱ現地で情報仕入れんとなんも分からんっすわ」


闇商人「アランと合流したら少し相談してみよう」---それにしても---



---人類の存続に固執しているというのは気になるワードだな---


---まてよ?アーカイブの記憶を保持できるのはもしかして純血の人間だけなのか?---


---だとしたらそれを守りたいと言う動機になり得るな---


---それに海賊王の娘達が記憶を失って居る説明にもなりそうだ




『夕刻_尾根』



一行は商隊が通る道を外れ山の尾根沿いを進んで居た


高地で樹木が少ない事もあり戦車を進めるのには都合が良かったのだ


しかし高地だと言う事と雨の後だと言う事もあり周囲に鳥が見当たらない



賢者「雨が止んだのは良いのですが…鳥さんが何処にも見当たりませんね…」キョロ


闇商人「まぁ折角休憩で戦車を止めたのだから少し体を動かそうか」


戦士「軽く火を起こすかね?」


闇商人「そうだね…干しキノコを少し焼いて食べられればもう少しマシになる」


学者「これ木材を入手しときゃ良かったっすね?燃える物あんま無いじゃないすか」


戦士「少しだが朽ちた馬車の端材があるよ」


学者「濡れた木材がそう簡単に燃えんのですが…火炎放射で少し炙りやす?」


戦士「それはエネルギーが勿体無い…折角魔石が余って居るのだからからコレを使おう」


学者「おろろ?バレンさんも魔石持ってたんすね」


戦士「火を起こすのは私に任せて貰って…丁度今見晴らしが良いから周辺の地形を読み込んでくれたまえ」


学者「ええと…これどうするんすかね」


戦士「望遠を使って見回すだけだよ…見えて居る範囲はおよそ地形の読み込みが出来る筈だよ」


学者「おぉなるほど…ほんじゃ100キロぐらい向こうまで行けそうっすね」


戦士「まぁそれぐらいが限界だった筈…」


闇商人「これ100キロ向こうまで砲弾で狙えるのだろうか?」


戦士「弟が使って居る戦車の砲弾だとそのくらい飛ぶと言うのは聞いた…この戦車では狙えないよ」


学者「火薬使ってる砲弾だったらそんくらいが限界じゃないっすかね?当たらんですけどね?」


闇商人「火薬じゃないのもある?」


学者「バヨネッタみたいなタイプっす…ええとローレンツ力使って砲弾飛ばす奴は300キロくらい飛ぶみたいっす」


闇商人「そんな兵器は向こうの大陸に有ったっけ?」


学者「キ・カイの船には乗ってたらしいっすよ?俺っちも見て見たいっす」


闇商人「魔道砲というのはどういう位置付けになる?」


学者「魔道砲ってこっちの大陸の呼び名っすね…本当は粒子砲って言うんす…砲弾と違って直線の貫通力があるんす」


闇商人「キマイラの吐くブレスみたいな感じだろうか?」


学者「多分そんな感じっすね…てかカゲミさんなんでそんな事気にしてるんすか?」


闇商人「いや…そういう兵器をエト・ワイマー卿が持って居る可能性を考えて居てね」


戦士「それは勘かね?」


闇商人「まぁ…そういう何かを持って居たとするとエルフやドラゴンが動く動機になるのかなと思っただけだよ」


学者「あああああああああああああ!!」


闇商人「何か思い出した?」


学者「機械っす!!衛星が復活して機械も動き出していやすよね?」


闇商人「もしかしてキラーマシンの反乱みたいな事が又起きてる…のかな?」


学者「時期が一致しとるじゃないすか…キラーマシンなら他の遠距離兵器の運用だって可能な筈っす」


闇商人「待った待った…情報が何も無い状態での空論になってる…可能性があるというだけの話さ」


学者「確かにそーっすね…落ち着きやしょうか」


闇商人「とりあえず僕達は目の前の問題解決さ…ルーデウスが近くに居ると言うならまずそこをどうにかしよう」


学者「なんちゅーかやっぱ盗賊ギルドとかとコネクション持っとかんと情報足りんすね」


闇商人「それも有るけれど今回の魔物掃討作戦は情報の攪乱もあってグチャグチャなのさ…少し引いて落ち着いて判断しなきゃいけない」


学者「アナログハックって覚えて居やす?」


闇商人「大衆扇動ね…そうだよ…僕達はルーデウスの動きでアナログハックされて居るのかも知れない」


学者「それをやって来るのってやっぱ電脳化の連中っちゅうか古代人なんすよ」


賢者「あの…私から一つ可能性を言わせて貰って良いでしょうか?」


闇商人「なんだい?」


賢者「私の母と同じ様な超高度AIが働いて居る可能性はどう思いますか?」


闇商人「…」


学者「ちょちょちょ…敵側にホムコさんと同等の誰かが居るって事っすか?」


賢者「はい…母はアダムという超高度AIをとても気にして居ました」


闇商人「良く考えたら古代人はホムコさんの様な超高度AIを持ったホムンクルスの存在も知っている筈だ…でも探し求めて居る様な話は聞いた事が無い」


学者「それってつまり既に居たからって考えられやすぜ?」


闇商人「ごめん…少し頭を整理する…もう話し掛けないで…」



---すべての事がその超高度AIによって大衆扇動されていたとして---


---その後待って居るのは何だ?---


---このまま何もせず静観していたとして…世界はどうなって行く?---


---いや…今のままだと純粋に疲弊して行くだけだ---


---なんでそんな風に扇動していく必要がある?---


---まて…凄く単純だ---


---人間を疲弊させて得をするのは機械だ---


---じゃぁ人間を疲弊させてその後どうする?いや絶滅を狙ってるのか?---


---まさか人間がアーカイブを経由して輪廻する仕組みを根絶するのが目的か?---


---それはつまり過去の精霊がやろうとした事じゃ無いのか?---



闇商人「…」ブツブツ ブツブツ


賢者「カゲミさん…干しキノコをすこし炙って柔らかくしました…食べませんか?」


闇商人「ん…あぁ…頂くよ」


賢者「どうぞ…」スッ


闇商人「うん…」モグ


賢者「あまり考え詰めないで下さい」


闇商人「まぁ分かって居るよ…情報が足りないしどう考えても空論にしかならないのも分かってる」


賢者「ええと…カゲミさんに一つお伝えしておきます」


闇商人「まだ何かビックリ事実が出て来るかな?」


賢者「母も同様に妖精さんを通じて大衆扇動をしていると思われます」


闇商人「又そういう事を言うか…考える事が増えてしまったじゃ無いか」


賢者「この地球の本当の支配者は誰なのか分かりますか?」


闇商人「え?支配者?」


賢者「昆虫なのです」


闇商人「それはつまり昆虫を扇動してると言いたいのか?」


賢者「すべての人間の質量を合算しても昆虫の質量とは全く比較になりません」


闇商人「ハハ…まぁそうだろうね」


賢者「そういう事なのです…私達人間は昆虫に生かされて居る…それで十分だとは思いませんか?」


闇商人「ふむ…昆虫次第か」


賢者「この戦車も昆虫の様な形をしていて…なんだか虫達に祝福されて居る様な気がしますね」


学者「話しに加わりやす…この世界に神様が居なくなった訳じゃ無いって事っすね」モグ ムシャムシャ


賢者「はい…私もそう思います」


学者「大地の神様って言うんすか?ちゃんと居るんすよ」


賢者「妖精さんはその使者ですね」


学者「つまりこういう事っス…世界の倫理を変えられるのは人間じゃ無くって昆虫っすね」


闇商人「昆虫の祈り…」


学者「多分なんすが既にホムコさんは昆虫に祈ってると思いやす…それが今の精霊の役目っすよ」


闇商人「ホムコさんは大地の精霊だったと言う事か…」


学者「なんか事態が好転しそうな気がしやすね?」


闇商人「なるほどね…」---昆虫に生かされてる…か---



---虫達の敵と言えば食虫植物…ドリアードだ---


---ドリアードの中に機械のアダムが有ったと聞く---


---どうやらそこが戦いの中心だな---




『自動運転』



ウィーン ドスドスドス


ほえぇぇ…地形が読み込めたら選択した地点まで自動運転が出来るんすか…


あとは戦車が自分で最適なルートを進んで行くから私達は監視して居るだけで良い



戦士「尾根沿いを進みたかった理由はコレなのだよ…視界が開けて居て地形が良く読み取れるからねぇ」


学者「これ休む必要無いんで到着がメチャクチャ早くないすか?」


戦士「このルートだと…そうだね…到着は明日の夜と言う所か…」


闇商人「沼地を行く件は?」


戦士「良さそうな沼地が有れば良いがね…山岳地帯ではなかなか沼地も見つからない」


学者「雨が止んだんでこのまま進めば勝手に泥まみれになりやせん?」


戦士「それを期待しよう」


闇商人「それじゃ少し仮眠しようかな」


学者「先に寝て下せぇ…イッコさんも寝てて良いっすよ?」


戦士「移動している戦車が襲われる様な事は余程無いから気にせず休みたまえ」


闇商人「じゃぁ遠慮なく…イッコおいで…一緒に暖まろう」


賢者「はい…」モソモソ



-------------


-------------


-------------



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ