95.出撃
『デッキ』
ザブン ギシ
学者「なーんか飛んでる気球も多いんで慌ただしい感じっすねぇ…」キョロ
少女「もうすぐミルクが来るよ?」
学者「ええ?どういう事っすか?」
少女「妖精さんがそう言ってる」
学者「ってことは兄貴も戻って来やすね…」
少女「なんかミルクだけみたいだよ?」
学者「ちょちょちょ…そら何かマズい事起きてるって事っすね」
少女「う~ん…ちょっと遠くて噂話聞こえないなぁ…」
学者「町の方っすか?」
少女「うん…」
学者「落ち着きない感じするんであんま出歩きたく無いんすよね」
少女「悪い冒険者がいっぱい居るから?」
学者「いや…なんちゅーか反乱が起きる直前と言うか…イヤな予感っちゅうか…」
ドタドタ
戦士「ゲシュタルト殿ぉ!」ドドド
学者「おろろ?バレンさんどうしやした?」
戦士「山手側を見て下され!大量の魔物が暴れている様だ」
学者「ええ!?」
少女「あ…本当だ…」
戦士「なんだあの魔物は…女王アリにしては大きい…」
学者「あいやいや…えらいこってすね…卵産む直前の女王アリっす…あんなんどうやって戦うんすか…」
戦士「私達は傍観してて良いのだろうか…」
学者「ちっと様子見やしょうか…勝手に倒してしまっては後々文句言われるかも知れやせん」
『10分後…』
ワーワー アッチダ! コッチダ!!
学者「どんどんちっこいアリが出て来やすね…」
闇商人「アリの子を散らすとはこの事だよ…こっちまで来るかも知れないから備えようか」
学者「でも女王アリはあんま動かんすね…腹膨れてるんで動けんのですかね?」
闇商人「どうして巣穴から出て来てるんだろう?」
学者「それもそうっすよね」
賢者「アリの天敵はクモですね…アラクネーなどが粗ぶって居るのでは無いでしょうか?」
学者「落ち着きない感じってそれっすかね?」
賢者「昆虫は共生する昆虫同士で感覚共有をしているので遠くの地震などに反応している可能性もあります」
闇商人「それって世界の何処かで何か起こってる…という事かな?」
賢者「はい…あまり遠くでは無いと思うのでシン・リーン辺りが怪しいかと…」
学者「そうそう…ミルクちゃんが一人で気球に乗って戻って来るらしいっす」
闇商人「それだな…アランに何か起こってるぞ?」
学者「ミルクちゃん一人に伝令をさせるくらいなんでかなりマズイ事になってる気がしやす」
闇商人「こっちはミライ君とも別行動だから動けないなぁ…」
学者「動くにしても気球が借りられる状況じゃ無さそうっすよ」
闇商人「まぁミルクちゃん待ちになってしまう…動くとしてもその後さ」
学者「内陸の方だとどうしても別行動する事になっちまいやすねぇ」
闇商人「確実な連絡手段があれば又違うんだろうけど…仕方ないさ」
『夜_土砂降り』
ザザー ビチャビチャ
古くなった水は全部捨てて新しく汲み直そう
樽の内側は雨水で綺麗に流して
学者「ひぃひぃ…雨降ると重労働させられるんで嫌になりやすよ…」ゴシゴシ
戦士「ハハハこうやって体を動かしておかないと直ぐに鈍ってしまう」ゴシゴシ
学者「ロイドさんにも手伝って欲しいんすが何処行っちゃったんすかねぇ」
戦士「しかし又急に冷たい雨が降ったもんだね」
学者「夏の終わりっすね…こっから秋になって行くんす」
闇商人「おーい!!樽湯が空いたけど入らないかい?」
学者「カゲミさんは入らんのですか?」
闇商人「僕は火傷が痛むから暖かい湯には浸からない…軽く汗を流すだけで良い」
学者「ほんじゃ俺っち入りやすかね…」
戦士「私に気にせず入って来てくれたまえ」
学者「じゃぁ後はおなしゃす…空いた樽は甲板に並べときゃ良いっす」ドタドタ
戦士「カゲミ殿はびしょ濡れだが良いのかね?」
闇商人「濡れてる方が気持ち良い…あとマイとロイドが帰って来ないから心配でね」
戦士「アリ退治で雷の魔法が見えて居たからマイ殿の魔法だったのかも知れない」
闇商人「なんか怪我人も沢山出たみたいだから心配だな…」
戦士「回復魔法が無いとなると装備が重要なのだが…どうやらしっかり鉄の鎧を身に付けて居る者は居ない様だね」
闇商人「兵隊でも無い限りそんな装備身に付けてる人なんか居ないよ」
戦士「戦闘継続力が全然違うのだがね…」
闇商人「鎧の需要が増えると言う事か…重さの割に利益が無いのがなぁ…」
槍戦士「うぉーーい!!ゲート降ろしてくれぇぇぇい!!」
闇商人「お?噂をすればなんとやらか…」
槍戦士「荷車ごと荷室に入れさせてくれぇ!!」
闇商人「待って!!今ゲート降ろしてあげる」ダダ
『荷車』
ガサガサ ゴソゴソ
槍戦士「うひぃぃ濡れた濡れた…」ビチャビチャ
魔法使い「荷は濡れて無い?」
槍戦士「ちっと濡れたがしゃーないぞ」
闇商人「何を入手して来たのかな?」ドタドタ
魔法使い「これはアリ退治の報酬で貰った」
闇商人「なんだ色々物資があるな…」ゴソゴソ
槍戦士「直ぐに金貨を用意出来んもんだから現物支給されたんだ…」
闇商人「アリの毒袋とかあるな…食べ物もある…どうしてこんなバラバラなのか…」
魔法使い「持ち込まれたアリの戦利品が多いから取引所の方が金貨枯渇したみたい」
槍戦士「一応金貨10枚相当の物資らしい」
闇商人「もしかして女王アリを狩ったのかな?」
槍戦士「あのクソでかいのは俺等じゃムリだ…女王アリは1匹じゃ無くて他にも居るのよ」
闇商人「そういう事か…でも女王アリを生け捕りしたら金貨20枚じゃ無かったっけ?」
槍戦士「殺しちまったから半分しか貰えんかった訳だ」
魔法使い「捕まえるのは罠を張らないとムリっぽい」
闇商人「そうか…2人の様子からして怪我は無さそうだね?」
槍戦士「まぁな?それよかカゲミ…こいつを買い取れんか?」
闇商人「いやまぁ…買い取っても良いけど直ぐに金貨が入用かい?」
槍戦士「マイに借金を返さん事にはいつまで経っても頭が上がらんのだ」
闇商人「まぁ良いか…はい金貨十枚」ジャラリ
槍戦士「おーーーし!金貨ゲットだ!!マイの分は5枚な?」ジャラリ
魔法使い「ありがとう…」
槍戦士「ほんで借金を5枚返す」ジャラリ
魔法使い「これであと残り6枚ね…」
槍戦士「ええいクソもうちょいか…」
魔法使い「それでカゲミさん…これを資金の足しに…」ジャラリ
闇商人「ハハ…ええと…」アセ
槍戦士「この調子で行きゃあと2日で俺は自由の身だ…もう少しの辛抱だグフフフフ」
闇商人「ま…まぁ…びしょ濡れの様だから少し温まったらどうだい?」
魔法使い「樽湯は?」
闇商人「今ゲスが入ってるけど直ぐに出て来るよ」
魔法使い「ほらロイド!汚れを落とすから船首楼上がって行って」
槍戦士「へいへい…てか危ないから槍で突くなゴルァ!」
『1時間後_船尾楼』
ガチャリ バタン
魔法使い「ふぅ…スッキリした」ホクホク
闇商人「あれ?ロイドは?」
魔法使い「ゲスと一緒に船首楼籠って何か焼いてる」
闇商人「あぁ食事か…まぁロイドから良い話は聞けそうに無いから良いか…」
魔法使い「情報?」
闇商人「まぁね…何か聞けて無いかい?」
魔法使い「良い話は何も…例の魔物掃討作戦が難航してるという位ね」
闇商人「どういう事だろう?」
魔法使い「多分魔法が使えなくて思い通りに行って無いのだと思う」
闇商人「それは異形の魔物側も同じ条件なんだけどね」
魔法使い「あと貝殻が使えないと言うのを聞いた…多分魔術師が使ってた通信手段」
闇商人「おっと…それは影響が大きそうだ」
魔法使い「エンチャントした貝殻だから魔法では無い筈なのに使えなくなってる」
闇商人「どういう事なんだろうね?」
魔法使い「次元の向こう側と繋がらない…意味分かる?」
闇商人「ちょっと待った…それは次元が調和して無いという意味か?」
魔法使い「何か嫌な予感しない?」
闇商人「まてよ…今居る僕達の次元が他と切り離されてる…のか?」
魔法使い「そうかも知れない…大穴に落ちてしまって居るとか」
闇商人「いやそんな筈は無い…ミファが妖精を通じてミルクちゃんと通じてる筈だ」
魔法使い「かも知れないという話だからあまり深刻にならないで」
闇商人「あぁ分かってる…でも参考になったよ」
いつだったかミライ君とイッコが話してた…量子の目
観測者が居ないとその世界は存在しない可能性…
その存在を繋ぎとめて居るのが次元の調和で…
それが崩壊寸前なのが今の現状だった筈だ
いざ崩壊してしまう事を考えるととてつもなく恐ろしいな…
僕の知るすべての人とのつながりを失ってしまう
忘れたくない…だから記憶を保存する
そうか…それが夢幻だ…
『深夜_戦車』
カチャカチャ ブーン ピピ
闇商人「よし動いた…エネルギー残量83%か…まぁ多分行けるな」
学者「カゲミさん!!何やってるんすか!!戦車の中に水が入っちまいやす」
闇商人「ゲス!!戦車の浮き輪外すのにどのくらい掛かる?」
学者「ええ!?まさか戦車動かすつもりっすか?」
闇商人「雨が降って人目が無い今がチャンスだ…直ぐに外して!」
学者「ちょちょちょ…外すのは簡単なんすが今からっすか!?」
闇商人「行動しないと手遅れになる…僕とゲスとバレンさんの3人でシン・リーンに向かう」
学者「うは…ミルクちゃんを待つ気は無いんすね?」
闇商人「無駄口は良いから早く」
学者「ええと…とりあえず岸まで移動させて下せぇ」
闇商人「どうやって?」
学者「ロープを引っ張るんすよ」
闇商人「引っ張る…この鉄の塊をか…」
学者「ちっとバレンさん呼んで来るんでそこで待ってて下せぇ」ダダ
『浜辺』
ドルァァァ ズズズ
学者「一応これで脚部は砂に付きやしたね…急いで浮き輪を外しやしょう」
戦士「私は反対側をやるからゲシュタルト殿はこちら側を…」ドタドタ
闇商人「じゃぁ僕は物資を運び入れる」タッタ
戦士「又急に行動するのだね」ガチャガチャ
学者「まぁ丁度土砂降りで誰も居ないんで良いっちゃ良いんすが…カゲミさん何考えてるんすかね…」ガチャガチャ
戦士「マイ殿とカゲミ殿の話が聞こえて居たのだが…どうもト・アル町で起きた不思議な現象が又起きて居るかも知れない様だ」
学者「ええ!?もしかして大穴に落ちてる的な感じっすか?」
戦士「そんな様な話をして居たのだよ」
学者「そらマズイっすね…てか何処の話っすか?」
戦士「それは分からない…此処なのか…それともシン・リーンなのか…」
学者「マイさん何かそんな様な情報でも仕入れて来たんすかねぇ…」
戦士「次元の向こう側と繋がらないという様な話をして居たね」
学者「あたたた…ここに来てそんな事が起きようとしていやすか…」
ダメです!連絡手段が無くなるので私も行きます!
ミファの看護をする人が居なくなってしまうじゃないか…それに君はまだ手が不自由だ
カゲミさんも火傷がまだ完治して居ません…私の代わりはマイさんにお願いする事も出来ます
学者「あらあら…なんか揉めていやすね」カチャ
戦士「まぁこの場合ミライ殿と合流してから行動するのが良いのだが…どうもそう言う訳には行かない様だねぇ」
妖精さんと会話出来る人が他に居無いので私がご一緒しないと次元が離れ離れになるかも知れませんよ?
う…そう来たか…妖精が次元を繋いでると言ってるんだな?
学者「これはカゲミさんの負けっぽいすね」
戦士「その様だ…まぁ寒い訳では無いから私は戦車の中に入らなくても良いがねハハハ」
学者「ちっと後で細工出来る様に考えときやすか…」
戦士「丁度荷車を入手した様だからアレを引っ張って行くのはどうかね?」
学者「バレンさん荷車に乗りやす?土砂降りなんすが…」
戦士「狭い戦車よりも余程快適に思う」
学者「ほんじゃひとまずそれで行きやすかぁ」
『出撃』
バヨネッタは俺っちとカゲミさん合わせて弾丸100発有るか無いかなんで使用は控えて下せぇ
プラズマ銃も一つ持って行くんすが戦車に飛び火しちゃうんで使うケースは殆ど無いっす
メイン火力は火炎放射なんすがエネルギー消費大きいんでこれも使用を控えやす
闇商人「火力不足…だね」
学者「補給が無いもんでしゃーないすね…手榴弾も足りんす」
闇商人「とりあえず明るくなる前に移動してしまおうか」
戦士「では私は荷車で横になって居るから優しく操縦を頼むよ」
学者「ほんじゃ動かしやすぜ?」
ウィーン ガコンガコン
闇商人「…」チラリ
賢者「…」プイ
学者「なんなんすかねぇ…仲直りして下せぇよ」
闇商人「ゲス!どういうルートで行くつもりだい?」
学者「町を中央突破なんかしやせん…海岸沿いに一旦迂回してから山手側に進路変えやす」
闇商人「地理は分かるかい?」
学者「まぁ少し高台まで行けば周辺の地図が表示されやすよね?」
闇商人「心配しなくても良いか…地図も何も準備していなかった」
学者「帰りの分の食料が足りるかどうか分からんのでどっかで入手したいっす」
闇商人「あぁ…それも考えて無かったな」
学者「カゲミさんにしては珍しくノープランで行動していやすね?」
闇商人「うん…ちょっと次元の繋がりが危ういと聞いて焦ってる」
学者「どういう事なんすか?」
闇商人「魔術師が通信で使ってる貝殻が使えなくなってるらしい…マイが言うにはアレは魔法じゃ無いって」
学者「通信が途切れてるって事っすね?」
闇商人「そう…それはつまり次元の繋がりが無くなったのでは無いかと思ったんだ」
学者「なるほど…ほんじゃこの次元から外側に出られん可能性もありやすね」
闇商人「そうだね…突然アーカイブに落ちてしまう事も考えられる」
学者「それなのにイッコさんを置いて行くつもりだったんすか?」
闇商人「いや…イッコを危険に晒したく無かったんだけど…ちょっと考えが浅はかだった様だ」
学者「ええとっすね…アーカイブに落ちる時って向こう側が見通せんくなるんすよ」
闇商人「え!?」
学者「なんちゅうんすかね…霧が立ち込めてて見えてる範囲がかなり狭い感じっす」
闇商人「どのくらいの距離?」
学者「20メートルとかそんなもんすか…今ん所結構向こうまで見えてるんで多分大丈夫っすね」
闇商人「そうだったのか…」
学者「カゲミさんが冷静じゃ無くなってるのって他に理由がありやせんか?」
闇商人「いや…実はロールバックという現象が急に恐ろしく感じたんだ…一人になるのが怖かった」
学者「ハハーン…それ多分人間が精霊を裏切った本当の理由かも知れんす」
闇商人「そうかも知れないね…よく良く考えたら世界を正しく作り替えるのはすべて失ってしまう様で恐ろしい」
学者「分かりやすよ…もしかしたら最後のスイッチは俺っちじゃ押せんかも知れんですね」
闇商人「失いたくないと思う事がこんなに怖い事だとは思わなかった」
賢者「それに立ち向かったのが暁の使徒です」
闇商人「ミライ君?…の事かな?」
賢者「またミライ君にそのスイッチを押してもらうのでしょうか?」
学者「その話を詳しく教えてもらえやすか?」
賢者「はい…この話は母から何度も聞かされています…」
カクカク シカジカ
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『翌朝_朽ちた馬車』
ウィーン ガコンガコン プシュー
闇商人「ちょっと荷が残って居るかも知れないから見て行こう」ガコン ギー
学者「うはっ…まだ土砂降りっすねぇ」
ザザー ジャブジャブ
闇商人「この雨じゃ荷車に乗ってるバレンさんに悪いな…」
学者「泥跳ねてもうぐちゃぐちゃじゃ無いっすか…」アセ
戦士「いやぁ…中々に…」ベチャ
学者「荷車の環境はかなり厳しそうっすね…アハ」
戦士「脚部が跳ね上げた泥が丁度荷車に当たってしまってね…」
学者「これやっぱ荷車を背負う感じにした方が良さそうっすね」
闇商人「朽ちた馬車に幌がまだ残ってる…これ使えないかな?」ゴソゴソ
学者「戦車の上にテントでも張りやす?」
闇商人「それが出来ると開口部から雨が入って行くのも防げるよね」
学者「ちっと幌の部分だけ頂いて行きやすかぁ」
戦士「ゲシュタルト殿…荷車を戦車の上で固定出来る様に改造を願えるか?」
学者「車輪外して乗せる感じっすかね?」
戦士「まぁそうだね…雨除けは馬車の幌を使って私がどうにかしよう」
学者「分かりやした…ちっと30分ほど時間下せぇ」
『30分後…』
ガチャガチャ
バレンさん車輪に使ってる鉄板をもう一本切って貰えやす?
お安い御用!!
学者「いやぁ…ロープが無いもんで固定に苦労しやしたが…これで何とか」ガチャガチャ
闇商人「樽が有るけどこれの鉄板は要らないかい?」
学者「それまだ使えそうなんで戦車に背負って行きやしょう」
闇商人「どうやって固定する?」
学者「今引っかける金具を作りやす…てかその樽って何か入ってるんすかね?」
闇商人「何も入って無い…まぁガラクタ入れだね」
戦士「石を入れて置けば投石に使えそうだね」
学者「おお!!それ採用っす…バレンさんはリッカさん並みに投石出来そうっすか?」
戦士「ハッハッハ任せたまえ」
学者「主力武器になるじゃ無いっすか」
戦士「手が空いたから丁度良い石でも集めておくよ」ドドド
闇商人「戦車の中に入ってるイッコの盾とか外に出しておくよ?」
学者「おっけーっす!!バレンさんの盾もうまい具合に設置して矢避けにして下せぇ」
闇商人「これで随分戦車の中が広くなる…」ゴソゴソ
学者「なかなか味のある櫓になりやしたね?ヌフフ」
闇商人「脚部が動いてたら近寄れないから投石だけでも良さそうだな…ふむふむ」
学者「何を想定していやす?」
闇商人「シーサーとか大型の獣さ…まぁ戦車には近寄って来ないか」
学者「そーっすね…でも食料は何処かで調達しておきたいっすよ」
闇商人「シカが出て来るのを祈ろう」
学者「鉄板余ってるんで肉を吊るす金具でも作っておきやすかねぇ…」ガチャ
『出発』
ウィーン ドスドス
学者「乗り心地どうっすか?」
戦士「ハハハ全然揺れないから快適だね…雨だが風も心地良い」ノビー
学者「雨が入って来ないんで開口開けっ放しに出来るのも良いっすわ」
戦士「しかし随分と雨が降る…これでは商隊が何処かで止まって居そうだ」
学者「やっぱ山越えで雨降ると危ない感じっすかね?」
戦士「馬が足を滑らせるといけないのだよ…平地と違って雨天時の行軍はまぁ出来ないだろうね」
学者「このまま山道を進んで良いのか迷うんすが…」
戦士「この戦車は不整地が得意だから道を逸れても構わないと思う」
学者「進めやすい所を探しながら行く感じっすか…」
戦士「少々の岩場も問題無く進めるから尾根沿いに行けば良い…あまり木が生い茂って居る場所は避けるのだ」
学者「分かりやした」




