92.小屋
『夜_上空にて…』
フワフワ
女ハンター「アラン!!動きが有ったわ!!」
盗賊「んあ?危無え…寝ちまう所だった…」ゴシゴシ
女ハンター「暗視ゴーグル無いと見えない…持ってる?」
盗賊「おう!何処仕舞ったっけな…」ゴソゴソ
女ハンター「小型の気球が4台…突然現れて城の上階に取り付いたわ」
盗賊「城の中に入っちまったら見えんな…他の気球はどうなってる?」
女ハンター「探して!」
盗賊「てか俺は望遠鏡置いて来ちまったわ」
女ハンター「何言ってるのよ!バヨネッタに装着したままよ」
盗賊「おおそうだった…どれどれ」
女ハンター「他の気球もゆっくり降下して行ってそうね」
盗賊「6台か…アレに何人づつ乗ってるか知らんが全部降りたとすると30人近いな…」
女ハンター「連携しっかり取れてそう」
盗賊「守備側が何も気付いて無さそうだ…こりゃ制圧されちまうぞ」
ドコーン!!
盗賊「んん?爆発音?」キョロ
女ハンター「城じゃないわ…何処?」キョロ
盗賊「外壁側で誰か騒いでそうだな…」
女ハンター「同時に何かやってる?」
盗賊「てか隠密で奇襲してんのに爆弾使うのはダメだろう」
女ハンター「そうね…」
盗賊「やっぱ今の爆発音で兵隊が出て来始めた様だ」
女ハンター「あ…気球に気付いたみたい」
盗賊「こりゃ面白くなって来た」
女ハンター「私達は傍観?」
盗賊「ううむ…事が起こってんのが城の中じゃどちらにしろ何も出来ん…むしろ気になるのは爆発音の方だ」
狼女「爆弾にしては火薬の匂いも無いし煙も無いぞ…ゴーレムに石を投げられて無いか?」
盗賊「なんだと?」
狼女「前は魔導士がゴーレムを操ってたんだ…投石に気を付けろ」
盗賊「マジか…そんな隠し玉も有るんか…」
ドコーン!!
女ハンター「又…何処!?」キョロ
盗賊「確かに…火花が無えから何処だか分からん」
女ハンター「外壁の外!松明の光がチラチラ見える…あそこで戦闘をやっていそう」ユビサシ
盗賊「あっちか…ちっと気球をそっちに移動させるわ」スイーーーー
女ハンター「何と戦って?」
盗賊「木が茂ってて良く見えん…なんだってこんな夜中に外壁の外をうろついてんのよ」
女ハンター「撤退戦をしていそう…盾を構えながら引いて来てる」
盗賊「ありゃランカー冒険者か?」
女ハンター「そんな感じ…」
狼女「この匂いは異形の魔物だぞ」クンクン
盗賊「援護が必要なのはそっちの方だな…撃てるか?」
女ハンター「もう少し高度を落として…いたいた…異形の魔物が使ってるのは弓ね…2体居そう」
『1時間後…』
ターン!
女ハンター「ヒット!これで2体目も引いて行く筈…」
盗賊「ちっと距離離すぜ?」スイーーーー
狼女「投石が止まったな…ゴーレムが何処に居るかわからんぞ」
盗賊「てか明るくならんと何処に着弾してるのかも分からんわな…本当にゴーレムなんか?」
狼女「済まん…違うかも知れん…前はゴーレムだったと言うだけだ」
女ハンター「少し高度も上げて行って…スナイパーが居たら撃ち返されてしまう」
盗賊「ゆっくりだ…あんま火の魔石使うと光って逆に目立っちまう」
女ハンター「高高度で少し様子を見たいわ…投石が止む理由も何か変だし嫌な予感がする」
狼女「操ってた魔導士が倒されたのかも知れん」
女ハンター「そうじゃ無くて投石の間隔が一定…自動的に撃って来て居る感じ」
盗賊「そういや確かに…」
女ハンター「ワーカードロイドがこんな所まで来る事ってあり得ると思う?」
盗賊「ルーデウスの戦車ならありえそうだ…まさかそれか?」
女ハンター「確か150ミリくらいの榴弾砲だから爆発はこんな物じゃ済まないのだけれど…他の何か?」
盗賊「マテマテ…機械がシン・リーンを攻める理由が無い」
女ハンター「でも実際謎の砲撃が有るのだから対空で使われてしまう事も想定して」
盗賊「ほんなん使われたら高高度上がっても届いちまうぞ」
女ハンター「もしルーデウスの戦車だった場合有効射程が30~40キロ…最大射程は100キロ超えるとか言ってたわ」
盗賊「そんなんどっから撃ってるか分かる訳無え」
女ハンター「兎に角有効射程に入ってしまったら向こうは熱探知もあるから気球でも危ないわ」
盗賊「100キロ先とかどうやって狙うのよ」
女ハンター「有視界じゃなくて地点砲撃なら射角上げて撃てる筈」
盗賊「こりゃ敵が何なのかしっかり調べんと飛べんな…」
女ハンター「馬車を一台入手出来る?」
盗賊「気球を畳んで馬車に入れとくってか?」
女ハンター「そう…その方が動きやすいと思うわ」
盗賊「分かった…夜が明けたら聞きに行って来るわ…金貨20枚あったよな?」
女ハンター「一旦シン・リーンの外れ…東側に下りましょう」
盗賊「へいへい…」
『シン・リーンの外れ』
フワフワ ドッスン
盗賊「こっから外壁まで3キロって所か…結構距離あんな」
女ハンター「気球は私とミルクちゃんで畳んでおくから早く馬車を入手して来て」
盗賊「そら良いが野党に気を付けろよ?」
女ハンター「分かってる…ミルクちゃん居るから多分大丈夫」
盗賊「おっし!ほんじゃひとっ走り行って来るわ」
女ハンター「バヨネッタは私に貸しておいて」
盗賊「おう!」ポイ
タッタッタ
女ハンター「ミルクちゃん?ウルフィは今何処に?」
狼女「分からん…ミルクの行先は知ってる筈だ…多分妖精が案内してるぞ」
女ハンター「こんな時にウルフィが居てくれれば安心できるのに」
狼女「人間の多い所はウルフィにとって危ないんだ…得にこの辺はランカー冒険者が危ない」
女ハンター「確かにそうね…」
狼女「でもウルフィは賢いから大丈夫だ…そのうち合流すると思う」
女ハンター「森を移動して居るなら戦車がどうなって居るのかも聞けるかも知れない」
狼女「そうだな…ゴーレムじゃないとするとその可能性が高そうだ」
女ハンター「とりあえず早く気球を畳むわ…手伝って!」ゴソゴソ
『日の出』
チュンチュン パタパタ
女ハンター「商隊が何事も無かったみたいに移動をし始めた…どうなっているの?この国は…」ボソ
狼女「アランの匂いもするぞ…あの馬車の列と一緒に出て来てるみたいだ」
女ハンター「早かった様ね…と言うか…何あの馬車…」
狼女「馬車じゃ無いな…牛に荷車を引かせてるんだ…農作物を運ぶ奴だぞ」
女ハンター「アレじゃ休憩出来ないじゃない」
狼女「地所炉村では馬より牛の方が多いんだ…馬より丈夫なんだぞ?」
女ハンター「寝床を別途確保する必要がありそうね」
狼女「あれならハハのお気に入りのお化け屋敷まで行けそうだ」
女ハンター「そこが使えれば良いけど…」
『牛車』
ウモモモモー ドスドス
女ハンター「また随分と傷だらけで汚れた牛を…」
盗賊「今の季節は簡単に馬車を借りられんらしい…こいつも畑耕すのを無理矢理買い取ったんだ」
女ハンター「まぁ無いよりは良いけれど…いくらしたの?」
盗賊「金貨10枚…まぁ高いけどしょうがないワナ?」
女ハンター「とりあえずこれで外壁の内側には入れそうね?」
盗賊「ちゃっちゃと荷物積んで中に入っちまおうか…野党やら反乱組織やらが外に潜んでるんだってよ」
女ハンター「昨夜の襲撃はどうなったのか話は聞けて無い?」
盗賊「いや…どうやら城の外には秘密にしてるみたいだな」
女ハンター「秘密に出来ないくらい気球が城に取り付いてたじゃない」
盗賊「俺等は気球を隠せて運が良かったかも知れん…しばらく国が管理するとかになった様だ」
女ハンター「当然ね…」
盗賊「ほんでな?昨夜の投石はどうやらこの国では通常運転なんだとよ」
女ハンター「ええ!?どういう事?」
盗賊「魔導士は隕石降らす魔法が得意だったらしい…ほんで昨夜の爆発もみんなソレだと思ってる」
女ハンター「気球から沢山の魔導士達が城を襲撃して居るのも見えたた筈だけど…」
盗賊「それも通常運転だ…誰も疑っちゃ居無い訳だ」
女ハンター「信じられない…」アゼン
盗賊「俺が思うにな?国の体制維持の為にゴタゴタしてる姿を見せられんのだと思う…上手い具合に平生を装ってんのよ」
女ハンター「じゃぁあの爆発音も自作自演?」
盗賊「かもな?」
女ハンター「それを確かめられない?」
盗賊「着弾跡を探しに行けってか?」
女ハンター「そう…只の投石なのか砲弾を使ったのか…それとも榴弾の不発なのか」
盗賊「ううむ…まぁ牛に乗りゃ走らんでも済むか…」
女ハンター「前に使ったお化け屋敷を覚えてる?」
盗賊「おおあそこな?ちょっとした林も有ったから隠れるのにも丁度良い」
女ハンター「一旦そこを目指しましょう」
『外壁_外門』
ガタゴト ガタゴト
門番「…」チラリ
女ハンター「…」チラリ
盗賊「ラス…そうビビらんでも良いぞ?」ヒソ
女ハンター「どうして積荷の確認もせず素通り出来るの?」
盗賊「今まで物資の移送は自由にしてたからだ…状況変わって来てても国が対処出来て無い訳よ」
女ハンター「これじゃ野党も反乱組織も取り締まる事なんて出来ない…」
盗賊「そう言うのを魔術師が取り締まってたんだろう…てか今の門番ももしかしたら魔術師なのかも知れん」
女ハンター「昨夜の状況もあるのに慌てた感じも無いのが不自然…」
盗賊「まぁ自信が有るのかもな?」
女ハンター「魔法が使えなくても?」
盗賊「今まで見て来た魔術師は全員自信に溢れてた…動きも只者じゃ無えってのがすぐ分かる」
女ハンター「前にやり合ったアサルトスタイルの…」
盗賊「そうだ…普通にやり合ったらまず勝てん様な動きをしてくる…魔法使わんでも勝てるだけの訓練積んでるんだ」
女ハンター「フィン・イッシュの忍びみたいな感じね」
盗賊「そんな風だからまともにやり合うのは避けんとイカン」
狼女「アラン!昨夜の事件はどうなったと思う?」
盗賊「さぁな?まぁ…魔導士の方は普通の動きだから魔術師とやり合って勝てる様には思えん」
盗賊「だがあの統率力はマジもんだ…魔術師との戦いを避けて姫を拘束するのは成功してる可能性が高いと思う」
狼女「やっぱりしばらく聞き耳立てて置いた方が良いな」
盗賊「良い情報入手したら背中撫でてやんぜ?」
狼女「おお!!?絶対だぞ!!」
『焼け跡』
ガサゴソ
盗賊「宛てが外れた様だな?燃えちまって何も残って無えわ…」ガラガラ
女ハンター「裏の林の方に離れの小屋が有る…ちょっと見て来るわ」
盗賊「ミルクも一緒に連れてけぇ!誰か住み付いてるかも知れんぞ?」
女ハンター「分かった…ミルクちゃん一緒に」
盗賊「俺はもうちょい使える物無いか焼け跡掘り返してみるわ」ガッサ ガッサ
女ハンター「好きね?そういうの…」
盗賊「うるせぇ!これもお宝探しなんだ…さっさと調べて来い」
『小屋』
ガサガサ
女ハンター「並べた木材を破壊の剣で切り揃えて行って?」
狼女「こうか?」スパ
女ハンター「クズは後で燃やしてしまうから外に…」テキパキ
タッタッタ
盗賊「おお!?なんとか2人ぐらいは横になれそうだな?」
女ハンター「土間になってるから荷車も一応入りそう…牛は入れられそうに無い」
盗賊「十分だ…扉が無くて風が入り込んじまうのがちっとな…」
女ハンター「焼け跡に敷物とか残って無い?」
盗賊「汚れてるが一応拾って来るか?」
女ハンター「吊るして置けば軽く風を避けるぐらいには…」
盗賊「分かった持って来るわ…」タッタッタ
狼女「ここは何の小屋だ?」キョロ
女ハンター「多分木材を保管して薪割りに使ってたんだと思う…冬の間の備蓄用ね」
狼女「道具が何も残って無いな…」
女ハンター「盗まれてしまったのよ…でも壁に吊るしてある干し草は残ってて良かった」
狼女「木材は好きに使って良いな?」
女ハンター「何をする気?」
狼女「ミライが破壊の剣を使っていろいろ作ってるのを見てたんだ…ミルクもやってみる」
女ハンター「そう…じゃぁ怪我をしない様に…私は少し罠を仕掛けて来るから小屋から出ないで」
狼女「ミルクが罠にかからん様にしてくれ」
女ハンター「フフ…誰かが来たら音が出る様にするだけだから大丈夫」
狼女「なら良い…」
『鳴子罠』
カラカラ
女ハンター「ハッ!?」キョロ
盗賊「おお悪い悪い…音鳴らしちまった」
女ハンター「くくり罠も要所に置いてあるから気を付けて」
盗賊「人間相手にくくり罠なんんか通用せんだろう?」
女ハンター「それで良いの…罠を外させる動作をさせるだけで隙が作れるから」
盗賊「なるほど…しかし林の中だと罠の設置もラクそうだな?」
女ハンター「やってみる?」
盗賊「いや…ちっと買い出しと情報集め行って来る」
女ハンター「そうね…喉が渇いて来た」
盗賊「まぁ直ぐに戻るわ」
女ハンター「お金は?」
盗賊「まだ残ってるが…お前使い古しの魔石を持って無いか?」
女ハンター「ある…どうして?」
盗賊「なんか知らんが魔石が高騰してて使い古しでもえらい高く売れるんだ」
女ハンター「じゃぁ売って来て」ゴソゴソ
盗賊「ほんじゃ貰って行くな?」
女ハンター「仮眠用に毛皮が欲しいわ…暖かいから安い筈」
盗賊「適当に仕入れて来るから待ってろ」タッタッタ
『数時間後_小屋』
ドタドタ ヨッコラ ドサ
女ハンター「遅かったじゃない…もう喉がカラカラよ」ギロリ
盗賊「悪い悪い…いろいろ安く買えたもんでな…リンゴもあるぞ?」ポイ
女ハンター「頂く」ガブリ シャクシャク
盗賊「ミルクは寝ちまったか」
狼女「すゃ…」zzz
女ハンター「私も仮眠したい…食べたら横になるわ」モグ
盗賊「ポーションがやたら安くてな?どうやら回復魔法が使えんもんで国がポーション作る様になってる様だ」
女ハンター「当然と言えば当然の流れね」
盗賊「ほんで宿屋も酒場も怪我人で溢れてる…例の黒曜石の矢だな」
女ハンター「じゃぁ手術で矢尻を取り除かないと治せないわね」
盗賊「うむ…やっぱ異形の魔物にジワジワ戦力を削がれてる」
女ハンター「魔物討伐はどうなってるとか話は無い?」
盗賊「怪我人を連れて行く訳にイカンだろう…順調じゃないって事だ」
女ハンター「魔法で怪我を治せないのは異形の魔物も同じ筈…昨夜狙撃したのは胴体だけど止血出来ないと致命傷よ」
盗賊「良い所に気付いたな?」
女ハンター「どういう事?」
盗賊「攻めて来る異形の魔物の数がここ数日激減したそうだ…因みにこっちも戦える奴が更に激減してる」
女ハンター「そういう事ね…戦闘は縮小傾向なのね」
盗賊「ポーションを安く配ってんのも長期戦を構えてんだろう」
女ハンター「私もゆっくり足を治したいわ」
盗賊「まぁ今日は休め…毛皮も入手してきた」
女ハンター「ちょっと話が変わるけれど砲撃の着弾はどう?」
盗賊「外壁に当たったみたいだな?兵隊が調べてて俺は近付けん」
女ハンター「じゃぁやっぱり戦車を使われてる線が強そうね」
盗賊「損傷の具合からしてかなりショボイけどな?」
女ハンター「榴弾が不発しているという可能性は?」
盗賊「外壁の大きさから言って150ミリ榴弾が爆発してもそう簡単には崩れんな」
女ハンター「何発か当たれば崩れると言う事でしょう?」
盗賊「てかよ?150ミリ榴弾を戦車の中にそう何発も積めんと思うんだが…精々40発ぐらいだろう」
女ハンター「多分昨夜狙撃した異形の魔物は着弾を見に来てたのだと思う」
盗賊「おいおい…向こうはそういう高度な戦い方をやる様になって来てるってか…」
女ハンター「砲撃地点を悟られない様に場所を変えて又撃って来ると思うわ…今は正確に当てられる距離を探ってる…」
盗賊「ほんじゃ着弾を観測してる奴を殺しとかんとどんどん精度上がって来ちまう」
女ハンター「何処から撃ってるのが分からないから圧倒的に不利ね…」
盗賊「いや…どうせ森の中から撃ってるんだ…こっちにゃ味方にウルフが居る」
女ハンター「ハッ!!それで場所の特定が…」
盗賊「まぁもうちょい様子見だ…シン・リーンがどう動くのかも分からんからな?」
女ハンター「ちょっと夜に備えて私は仮眠しておく…アランは望遠鏡使って狙撃出来る場所でも探しておいて」
盗賊「ほんな事言われても外壁の向こうを狙える場所なんか何処にも無えぞ」
『休息』
むにゃむにゃ…ぐぅ
狼女「すゃ…」zzz
女ハンター「すぅ…」zzz
盗賊「…」---ようやくしっかり横になれる場所確保出来たんだからしっかり休ませるか---
盗賊「…」---しかし俺まで小屋の中に入ってたら何も出来んな---
盗賊「…」---見回りがてらその辺散策してみっか---
ノソリ コロン コロコロ
盗賊「んん?」
盗賊「おっと危無え…こりゃ俺の雨雲の杖だ…こんな所置いといたら薪になっちまう」ゴソゴソ
盗賊「雨雲…」
盗賊「そうか雨が降ると湿度で砲弾の弾道が変わるな…特に高角砲撃は影響デカイ筈だ」
盗賊「これで無駄撃ちを誘えるかもしれん」
盗賊「土砂降りになりゃこの林まで誰か来るって事も無くなる…ようし!」フリフリ
盗賊「てかこの杖の効果をあんま確認して無かった…どんくらいで効果出て来るのかも楽しみだな」
盗賊「おーし!今の内に雨漏り対策でもやっとくか!」
『土砂降り』
ザザザザザ ガガーン!! ゴロゴロゴロ
盗賊「ウホホ…こりゃ効果てきめんだ」
女ハンター「雨?」ムクリ
盗賊「雨雲の杖を使ってみたんだ…誰も来んだろうからまだ寝てても良いぞ」
女ハンター「雷がうるさくて目が覚めてしまう」
盗賊「そうか…済まんかったな?」ヌギヌギ
女ハンター「装備を脱いでどうするつもり?」ギロ
盗賊「ヌハハ水浴びするチャンスだ…ずっと体洗って無えからな?」
女ハンター「…」シラー
盗賊「眠れんのならお前も一緒にどうだ?そう寒くも無いぞ?」
女ハンター「火を起こして置く…私は後にするわ」
盗賊「体洗うついでに外で繋いでる牛もちっと洗って来るわ…売る時にちっとは値が上がる」
女ハンター「伸びっぱなしの毛を剃って見たら?伸びた髭みたいで気持ちが悪い」
盗賊「お前は牛の毛まで気にするんか…」
女ハンター「汚れがこびり付いてるのが嫌なだけ」
盗賊「牛の毛なんか剃っても何にも使えんのだがなぁ…まぁ良いわ行って来る」
『毛刈り』
ウモモモモモーー
盗賊「こらこら動くな!!」ゾリゾリ
狼女「面白そうな事やってるな…ミルクにもやらせろ」シュタタ
盗賊「お!?起きたな?ってかお前も裸か!」
狼女「この牛はオスだな…チチが出ん」ニギニギ
盗賊「ほんなん知るか!あんま触ってると蹴とばされるぞ?」
狼女「ミルクにも毛を剃らせろ…ツルツルにしてやる」
盗賊「牛を傷つけちまうからダメだ…その辺に落ちてる毛を拾って集めといてくれ」ゾリゾリ
狼女「こんな物何に使う?」
盗賊「そいつを丸めて体を拭くんだ…暇なら俺の背中擦ってくれ」
狼女「こうか?」ゴシゴシ
盗賊「ウハハハこりゃ良い」
狼女「ズルいぞミルクの背中も擦れ」
盗賊「牛の毛剃りが終わったらな?てか自分の手足はそいつで擦っとけ」
狼女「ふむ…」ゴシゴシ
盗賊「どうよ?」
狼女「なかなか良いな…気に入った」
盗賊「だろ?毛の固さが丁度良い」
狼女「よし!ラスも呼んで来る」
盗賊「おお!呼んで来い呼んで来い!!どうせ誰も来無えから」
『焚火』
メラメラ パチ
女ハンター「あぁぁ…さっぱりした後に火に当たれて癒される感じ…ふぅぅ」
盗賊「だな?」スリスリ
狼女「小屋の中で焚火出来るのも便利だ」
盗賊「マジ良い場所見つけたわヌハハ」
女ハンター「こういうのがその雨雲の杖の効果かも知れないわね」
盗賊「ちっと雨降り過ぎで洪水が心配になって来るが…」
女ハンター「地理が分からないけれど近くに川とかを見た?」
盗賊「森に隠れてて良く分からんかった…直ぐそこの水路はもう溢れてんぞ」
女ハンター「水路?」
盗賊「水路なのか下水なのかも良く分からん…まぁ一応水が流れて行く様になってんだろう」
狼女「そろそろ焼きリンゴ食っても良いか?」ソワソワ
盗賊「食え食え…リンゴは沢山買ってあるから腐る前に食っちまえ」
女ハンター「私も頂戴」
盗賊「ほらよ…」スッ
女ハンター「なんか下手な御馳走よりおいしそう」ガブリ モグ
盗賊「ハチミツ酒も有るから一緒に食って見ろ…クソ美味いぞ?」キュポン
女ハンター「頂く」ゴクゴク
盗賊「どうよ?」
女ハンター「クセになりそう」パク モグモグ
盗賊「リンゴの芯をくり抜いてそん中にレーションを崩して焼いてもクソ美味い」
女ハンター「それも作って」
盗賊「こいつが又簡単なんだな」ゴソゴソ
狼女「ミルクはそれに豆も入れたいぞ」
盗賊「おお合いそうだな?入れて見ろ」
女ハンター「…」---こんな小さな小屋でも---
---ちょっとした幸せが有るだけで充実する---
---こんな生活が続けばどれだけ幸せだろうか---
---このまま眠って全てを忘れてしまいたい---
『深夜』
ビカビカ ゴロゴロゴロ ドドーン
女ハンター「ハッ!!」ガバ キョロ
狼女「むむ…雷がうるさくて起きたみたいだな?」
女ハンター「あぁぁ寝てしまった…アランは?」
狼女「さっき城の様子見に行くと言って出て行った」
女ハンター「ええ!?又一人で行動して…雨も降っているのに…」
狼女「消える技を使えば雨で濡れんらしい」
女ハンター「城の様子を見るって…どうやって忍び込む気?」
狼女「アランはなんかワイヤーの装置を持ってただろう…城壁登るのなんか簡単だぞ」
女ハンター「ワイヤー…そうだ忘れてた…」
狼女「土砂降りで気が緩んでる今がチャンスだと言ってた…心配しなくても大丈夫だ」
女ハンター「そう…」
狼女「ラスは何か夢でも見てたか?」
女ハンター「どうして?」
狼女「寝言で何か言ってた…行かないでってどういう事だ?」
女ハンター「夢…」
狼女「妖精の夢なら追っても無駄だぞ?」
女ハンター「妖精?」---誰だったんだろう?---
狼女「まぁ良い…今晩は何も起こりそうに無いからミルクも休む」ゴロン
女ハンター「…」---私がいつも見る夢---
---それは向こう側に行けない夢---
---望遠鏡で見た夢の世界に置いて行かれる夢---
---その人を失う夢---
---顔が思い出せない---




