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86.古の魔導士


『その頃…旧港町』



ドタドタ バタバタ


揺らさない様にゆっくり運んで…船尾楼のベットの方ね



槍戦士「いよーう!こりゃ又ドタバタだな?」ヨタヨタ


剣士「直ぐに出港するから準備お願い!」


槍戦士「随分乗船してる人数が少ない様だが…他の奴らはどうなってんのよ?」


剣士「移動先で合流さ…マイさんは何処に?」


槍戦士「買い出しで町に出てる…日が落ちる前には戻って来るんじゃ無えか?」


剣士「まぁ戻るまで何も出来ないか…」


槍戦士「気球はどうする気よ?船には乗りそうに無いんだが…」


剣士「あああ!!そうか…球皮畳んでもそのままじゃ荷室には入りそうに無いなぁ…」


槍戦士「籠を折りたたみに改造して木材と一緒に積んどきゃ良さそうだけどな?」


剣士「折り畳み式ねぇ…気密性がっていう問題もあるけどそれが一番良さそうか…」


槍戦士「ほんじゃ毎度の事ながらミライは大工作業って訳だ…こりゃ出港どころじゃ無え」


剣士「ロイドさん暇してるんでしょ?」


槍戦士「暇って訳じゃ無え…夜に備えて下半身の静養中だ」


剣士「それを暇って言うんだよ…マイさんを探して来て…ミファに回復魔法もお願いしたいんだ」


槍戦士「こりゃ俺にもツキが回って来たか…ミファは今動けんのだな?」


剣士「あのね…」ジロリ


槍戦士「ウハハハハ冗談だ冗談…俺は今晩に備えて精気を蓄えてる所だ…マイにだけは見つかる訳にいくめえ」


剣士「ええと…じゃぁマイさんにミファの看護をお願いしたいから探して来て欲しい」


槍戦士「なるほど…ミファの看護でマイは自由に動けんか…チャンス到来だ」グフフフ


剣士「ちょっと僕は作業しに行くから頼んだよ」


槍戦士「任せろ…こりゃ今晩はゆっくりと楽しめそうだ…ウハハハハ」スタスタ


剣士「…」---出港すると言ってるのに分かってるのかな---





『夕方_キャラック船』



ザブン ギシギシ



剣士「ロイドさん遅いなぁ…」イラ


女オーク「ふぅぅぅさっぱりした…ミライ?樽湯が空いたわ?」


剣士「姉さん…久しぶりにゆっくり湯に浸かったみたいだね」


女オーク「そうね…やっぱり船が落ち着くわ」


剣士「それは良かった」


女オーク「ロイドさん待ち?」


剣士「うん…マイさんを探しに行って貰ったんだけど帰って来なくてね」


女オーク「そんなに慌てて出港しなくても良いと思うのだけれど…」


剣士「まぁそうなんだけど…爺ぃの海賊達がやられちゃうかも知れないと思うとさ…」


女オーク「相手が銃器を持ってるとは伝えてあるのでしょう?」


剣士「うん…でもキマイラみたいな魔物が居る事は伝わって無い…作戦が大きく変わる可能性もあるさ」



衛兵「おら!!自分で歩けぇ!!」ドガッ



槍戦士「ぐへぇ…」ゴロゴロ


剣士「あ…ロイドさん?」シュタタ


魔法使い「どうもすいません…以後気を付ける様に言い聞かせますので…」


衛兵「そうして貰えると助かる…ではこれで!!」スタスタ


魔法使い「ほらロイド立って…」グイ


剣士「マイさん!!何か有ったの?」


魔法使い「ロイドが町の方で誰かに金貨を盗まれたのよ」


剣士「それじゃ衛兵に捕まってるなんておかしいじゃない」


槍戦士「あぁぁ済まねぇ…ちょいと暴れちまったもんでな…」ヨタヨタ


魔法使い「今晩使う予定の金貨が無くなったって大騒ぎ…その後は想像付くでしょう?」


剣士「アハハ…乱闘騒ぎになっちゃったんだ」


槍戦士「俺もとことんツキが無え…ちぃと声掛けた女が俺の金をスったんだろうが…悪者は俺の方だと言い出してな?」


剣士「女の人相手に乱闘?」


槍戦士「いやいや…その取り巻きがわんさか集まって全員ボコボコにしてやったウハハハハ」


魔法使い「そんなこんなで牢屋に入れられる前に私が衛兵に口を利いてあげたという訳…武器を使ってたら今頃どうなってたか…」


剣士「まぁまぁ…肩を貸すよ」グイ


槍戦士「おお済まねぇな…ちっと頼みが有るんだがよ?」ヒソ


剣士「んん?」


槍戦士「金貨6枚貸して貰えんか?」


剣士「良いけど何に使うつもりだろう?」


槍戦士「そらお前…行く所は決ってんだろ」


剣士「いや…もう出港するけど…」


槍戦士「何ぃぃぃぃ!!じゃぁお前…金貨6枚使う先はマイしか居ないって事か…」


魔法使い「ちょっと2人…何の話?」ギロリ


槍戦士「いや何でも無え…こっちの話だからマイは関わるな」


剣士「ハハ…始めから出航を急ぐと言ってるんだけどね…」アセ


槍戦士「俺ぁとことんツキが無えな…こりゃ何かの呪いだ…おいイクラぁぁ!!呪いを説く方法を教えてくれぇ!!」ドタドタ


剣士「あ…」ポカーン


女オーク「毎度の事よ…船を桟橋から離すから早く乗って」


剣士「そうそうマイさん!?」


魔法使い「あ…ミファに回復魔法が必要なのでしょ?ロイドから聞いてる」


剣士「じゃぁ話が早い…お願いするよ」


魔法使い「分かった…」


女オーク「とりあえず離岸させるわ…ゲート上げるわね」


剣士「僕は一枚帆を開いて来る!!舵はフーガ君に頼もう」シュタタ




『デッキ』



ザブ~ン ユラ~



剣士「ふぅ…微速前進でこんなもんかな…」


狼女「ミライーーー!!」シュタタ


剣士「お?いつの間に起きたんだね?」


狼女「ミルクの仕事は何だ?」


剣士「索敵…かな?」


狼女「それは任せろ…他には無いのか?フーガは舵取りやってるだろう」


剣士「じゃぁ守りの要になってもらおう…インドラの銃を隠してある場所は分かるよね?」


狼女「とうとうアレを使うか…」


剣士「もう魔術師は敵だと思って行動しなきゃいけないんだ…やらなきゃやられる…」



魔法使い「ちょっと丸聞こえなんだけど…その話どういう事?」



剣士「おっと…船尾楼と声が筒抜けだったね…詳しい話はミファの方が知ってる」


魔法使い「わかった…聞いてみる」


剣士「それからミルクちゃん…残りのインドラの銃も皆に配って…特にロイドさんは魔術師相手に何も出来ない」


狼女「あの馬鹿に銃器を渡したら何に使うか分からんぞ」


剣士「もうそんな事言ってる場合じゃ無いよ…生き残る為に必要なんだ」



魔法使い「ミライ君!!船尾楼に降りて来て詳しく教えて!!」



剣士「あぁ分かったよ…ミルクちゃん…寒いから中に入ろう」


狼女「うむ…後で行く」シュタタ





『船尾楼』



ガチャリ バタン



青年「ミライ君…慌てて出港した理由って…」


剣士「イクラシアさんも一緒だったか…ミファに話は聞いて?」


青年「一通りはね…驚いてるよ」


剣士「まぁ…そういう事なんだよ…魔王はすべての人間の中に居るんだ…その目から逃れたかったのさ」


魔法使い「魔術師が敵だと言うのもそれが理由?」


剣士「意識的に僕達を敵だとは認識して居ないと思う…でもね?魔王に扇動されてる筈だよ」


青年「それを詳しく!」


剣士「シン・リーンにも冒険者が集まってたよね?旧港町にも沢山冒険者が来てる」


魔法使い「それは高額クエストが配布されて居るからでは?」


剣士「それを扇動して居るのは誰なんだろうね?」


魔法使い「シン・リーンの筈…」


剣士「こういう大衆扇動をアナログハックと言うらしい…それぞれ目的は違うけれど最終的に争いに発展するんだ」


青年「ミライ君はどういう想定で居るんだろう?」


剣士「まずドワーフの海賊達は味方…エルフとドラゴンも味方…そして機動隊も味方の筈…」


青年「想定して居る敵って異形の魔物だけじゃ無いと言いたいのだろうか?」


剣士「話は複雑なんだ…」



今向かって居る場所にね、それぞれが違う目的を持って向かってるんだよ


人間の冒険者達も同じさ…目的はクエストの達成なんだろうけど…でも魔王の本当の目的は違う…


人間がどれだけ死んだって魔王には関係無いんだよ…又他の誰かの目を盗めば良いだけなんだ


そうやって人間達を疲弊させてる



魔法使い「シン・リーンでドラゴンライダーが冒険者を狙って居たのもそれが理由?」


剣士「僕は断言できないけどエルフ達は理由無しに襲って来たりしないよ…つまりそういう事だと思う」


魔法使い「その話からするとすべての人間は敵だと言ってるのと同じ…そして私もロイドも普通の人間…」


剣士「本当魔王ってズルいよね…そういう猜疑心を植え付けるのも魔王の作戦だと思う」


青年「まずミライ君の目的をはっきりして置こうか」


剣士「僕の目的はアランさん達の退路確保だよ…それ以外に無い」


青年「じゃぁこの船にあまり危険は生じないと思うんだけどな…」


剣士「海賊王はシン・リーンとの共同作戦中なんだ…シン・リーンが裏切った場合どうなる?」


青年「裏切るなんてその後の事を考えるとシン・リーンの立場が悪くなるだけに思うんだけど…」


剣士「魔王はそんな事どうでも良いんだよ…誰が生き残るとか興味無い」


青年「う~ん…なんかなぁ…シン・リーンが悪者には見えないんだけどなぁ」


剣士「そうだよシン・リーンの魔術師もロールバックを防ぐために必死なんだ…悪くなんか無い」


青年「じゃぁ敵と認識するのは違うのでは?」


剣士「残念だけどアーカイブの存在を知ってしまった以上…魔王が誰かを操って扇動してるのは明らかだよ」


青年「僕の眼は?君だって操られてるのかも知れない」



チリーン チリン チリーン…



青年「んん?」


少女「コレだよ?」チリーン


剣士「ミスリルの鈴…」


少女「カゲミが話してた…退魔の効果のある物には魔王は近付かないって」


剣士「あ…そういえば…」


青年「退魔といえば光の魔方陣とかもそうだ…シン・リーンは光の魔方陣に覆われている筈」


魔法使い「もっと言うと魔術師が皆持ってる魔術書にも魔方陣が記されて居る」


剣士「じゃぁ殆どの魔術師は魔王にその眼を覗かれないって言う事なんだね?」


魔法使い「多分…そしてそれが魔に支配されない為のルールの筈…」


青年「ちょっと待って…魔に支配されない為のルール?」


魔法使い「そう…シン・リーンの魔術師はそういう教えを説かれるみたい」


青年「それは初めから魔王に眼を覗かれる事を知ってたという事にならないかい?」


魔法使い「それは…」


青年「ミライ君…君が案じて居る事が段々分かって来たよ…魔術師は危険だ」


剣士「分かって貰えて良かった」


魔法使い「イクラシア?どういう事なの?」


青年「わざわざそんなルールを作らなきゃいけない位魔に支配されてると言う事だ…だからルイーダが自身を封印した」


青年「それは他の魔術師に対しての教えなんだ」


魔法使い「教え…」


青年「そうだ…ハテノ自治領で魔法を教わったのも魔に支配されない魔法を教わったんじゃ無いかい?」


魔法使い「エレメンタル4種だけ…」


青年「それはエルフが使う魔法だ…人間が生み出した魔法はもっと違う…悪魔と契約が必要な類の魔法さ」


剣士「悪魔と契約?」


青年「僕は魔術師じゃ無いから詳しくは知らない…でも魔術書に記されて居る事は大体分かる」


魔法使い「血の契約ね…血を捧げるの」


剣士「ハッ!!それだ…アーカイブでは血を分けた人を操れるらしい」


青年「ミライ君…そのアーカイブの話をもっと聞きたい」


剣士「ええと…」



アーデモナイ コーデモナイ


------------


------------


------------




『夜』



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



女オーク「ミライ!!北の方…火柱が空に向かって…」


剣士「遅いな…なんだアレ?」


女オーク「あれがきっとミサイルよ…」


剣士「えええええ!?衛星を乗せた奴?そんな…」


女オーク「他に何か考えられる?地上から空に向かって隕石でも飛ばす?」


剣士「予定はまだ先の筈なんだけど…」


女オーク「それはラスさんが間違って居たのでは?もしくはフェイク…」


剣士「フェイク!!偽情報で邪魔をされない様にか…考えられる!」


女オーク「私達はやっぱり蚊帳の外だったみたいね?」


剣士「始めから爺ぃはシン・リーンの魔術師をアテになんかして居なかったと言う事かな?」


女オーク「海賊王が…と言うより機動隊が…と言った方が良いかも知れない」


剣士「そうか…これが扇動か…僕達はその情報で動いて居たから全部が遅いんだ」



シュタタ



狼女「ミライ!!その話…エルフは先に知ってたみたいだぞ」


剣士「どういう事だい?」


狼女「洞窟の中にミルク達を探しに来た2人のエルフが居たんだ…そのエルフが何か言ってた」


剣士「覚えてるかな?」


狼女「地下に潜ってる誰かに任せておけば良いとか言ってた…衛星っていう物の事も言ってた」


剣士「そうか…やっぱりエルフは味方なんだ」


女オーク「ミファが聞いた話では作戦には第二段階が有るとか言ってたわ」


剣士「これからが本番なのかもね…気は抜けない」


女オーク「後方の船は見えなくなって随分経つけれど大丈夫?」


剣士「向こうにもこっちが見えない筈…速度を落とさないでこのまま進めば爺ぃの船団に入れると思ってる」


女オーク「何も起きない事を祈るわ…」


剣士「そうだね…」



僕達は情報が足りてないんだ…


衛星を乗せたミサイルの打ち上げも一つだけとは限らない


もうそこで何か始まってて沢山の命が失われてるのかも知れない


早く行かなきゃ…




『翌朝_河口の近く』



ドーン ドーン



剣士「海上から陸に向かって撃ってる…射角が高い…何と戦ってるんだ?」


槍戦士「おいおいこりゃ…話が違わ無えか?沈没しかけてる船も有るんだが…」


剣士「もしかして爺ぃは河口を制圧出来て居ない?」



ヒュルルル ドップーン!! ザバー



槍戦士「おっとぉ!?投石だと?」


女オーク「見えたわ!!…巨人が居る…アレは…」プルプル


剣士「ゴーレム!!どうしてそんな魔物が…」


槍戦士「あの沈没しそうな船よりも前には出ん方が良いぞ」


剣士「少し後方で救助に回ろう…ドワーフは泳げないよ」


女オーク「船を停めるのね?」


剣士「こんな状況じゃ河口まで行けないさ…ドワーフの海賊達を後方から援護する」


女オーク「わかったわ…帆を畳むからミライは双胴船の準備を」ダダ




『救助』



ドタドタ ドタドタ


助かったどーーー怪我人が居るで運ぶの手伝ってくれーーー


この船は射撃砲無いんか!!なんでこんな所に居るんやぁぁ!!



剣士「治療が必要な人は居室の方に運んで!!」


ドワーフ達「すまんのぅ!!俺等の船にまだ残っとる者が居るで救助したってくれぇ!!」


剣士「もう一回行って来る!!姉さんこっちの方は頼んだ!!」



ドーン ドーン ドーン ドーン



槍戦士「こりゃまた一気に戦場だな…大砲撃ってる船は何隻あんだ?」


ドワーフの戦士「あんさんがキャプテンかいな?」ドタドタ


槍戦士「んあ?俺は只の傭兵だ…船長は今双胴船使って救助に回ってる」


ドワーフの戦士「さっきの若いのが…まさかお頭のお孫さんや無いやろうな?」


槍戦士「おいおい…ミライの顔を知らんかったんか?アイツは海賊王の血縁だぞ」


ドワーフの戦士「えらいこった!えらいこった!こんな所に居ったらアカンやないか!!」


槍戦士「来ちまったもんしょうが無いだろう」


ドワーフの戦士「従士2人付いとる筈なんやが何処行ったんよ?」


槍戦士「んあ?ガッツとゴッツの事か?」


ドワーフの戦士「そや!!」


槍戦士「置いて来ちまったな…ミライが急ぎで移動するって言うもんだからな?ウハハハ」


ドワーフの戦士「あんのボケナス共!お頭に知られたらタダじゃ済まんぞ…」


槍戦士「見た感じ状況悪そうなんだが…俺等来たばっかで良く分からんのだ…あの巨人は何よ?」


ドワーフの戦士「魔導士が操っとる…こんな早くに駆けつけて来るとは想定しとらんかったんよ」


槍戦士「魔導士?」


ドワーフの戦士「魔術師やないで?魔導士の方や…小さな気球が飛び回っとるの見えるか?アレに乗っとる」


槍戦士「見えんな…」


ドワーフの戦士「俺等の気球はあの小さな気球にみんな落とされてしもうた…打つ手無しや」


槍戦士「良く分からんのだがシン・リーンが敵対してるって話なのか?」


ドワーフの戦士「シン・リーンちゅうか…その中の魔導士はシン・リーンの魔術師とは思想が違うんや」


槍戦士「ほーん…」


ドワーフの戦士「敵に回るかも知れんちゅうのは初めから予測しとったんやが想定よりも此処を押さえに来るのが早かったんよ」


槍戦士「予定とか俺等何も聞かされて無いぞ?」


ドワーフの戦士「そやな…お頭のお孫さんは安全圏に居る筈やからな」


槍戦士「まぁこうして救助に回ってる訳だからその作戦ってのをミライの耳に入れとかんと戦場のど真ん中に行っちまうぜ?」


ドワーフの戦士「そらもっとアカン…」


槍戦士「ミライが戻って来たらしっかり話を伝えるだな」


ドワーフの戦士「ところであんさん達は銃器を持っとる様や…あの飛び回ってる気球を撃ち落とせんか?」


槍戦士「何処を飛んでるか分からん」


ドワーフの戦士「大体あのゴーレムの上や…こっからやと2キロは無い思う」


槍戦士「数撃ちゃ当たるかも知れんが弾の無駄になりそうだな…一応準備だけしとくか…」


ドワーフの戦士「今の所ゴーレムが投げてきよる投石からは逃れとるんやが漁港に停泊しとる船に近付けんくなってしもうたんよ」


槍戦士「あっちの船にはどんだけ人が乗ってるんだ?」


ドワーフの戦士「数名やな…殆どは蒸気船を使って河の上流まで行っとる…お頭もそっちや」


槍戦士「ほんじゃゴーレムが暴れてんじゃ戻って来れんだろう」


ドワーフの戦士「その通りや…俺等はあの漁港を確保しとらにゃアカンのにゴーレムのせいで何も出来んくなってしもうたんや」


槍戦士「アレを倒すのは俺等じゃムリだな」


ドワーフの戦士「ゴーレムを操っとる魔導士をどうにかすればもう少し近付いて射撃砲を当てられる思う」


槍戦士「てか動いてる相手にに狙撃出来るのは500メートルくらいなもんだ…ここじゃ遠すぎる」


ドワーフの戦士「そんな近付いたら投石の的やぞ…どうにかしてくれい」



『1時間後…甲板』



ドーン ドコン ドコーン!!



剣士「ふぅ…とりあえず救助は落ち着いたかな…後は物資の回収だ」


女オーク「双胴船はドワーフ達に貸したのね?」


剣士「うん…危ないから僕は船に残ってろって」


槍戦士「あのドワーフに状況は聞いたか?」


剣士「一応ね…爺ぃが蒸気船で河を上って行ったらしいね」


女オーク「私達はここで待機…よね?」


剣士「う~ん…どうしようかなぁ」


槍戦士「あのゴーレムの上を飛んでるちっこい気球を狙撃してくれと言ってたぞ?」


剣士「ちょっと遠いね…僕の気球を出しても良いけど大きいから不利だよなぁ…」


女オーク「ダメよ危険すぎる…あっちの気球は2人乗りくらいの早い気球よ」


剣士「他の海賊船から撃ってる射撃砲がもうちょっと当たればなぁ…」


槍戦士「こりゃ打つ手無しだな」


剣士「ええと…プラズマの銃は800メートルくらいで爆発するな…」


槍戦士「狙撃を狙ってみるか?数撃ちゃ向こうの気球に当たるかも知れん」


剣士「いや…プラズマは爆発するから一発撃って見せるんだよ…魔法を撃ってると思って確認しに近付いて来るんじゃ無いかな?」


槍戦士「ほう?囮で一発撃つ訳か…」


剣士「甲板に居ればかなり近付かないと確認出来ないから隠れて待つんだ」


女オーク「相手は魔法を撃って来るかも知れないわ?」


剣士「銃器の方が魔法より射程が長い…近付いた所を一気に撃ち落とす作戦さ」


女オーク「ちょっと乗り気はしないけれど…状況を変える為ならそれしか無さそうね」


槍戦士「てかよ?プラズマを見て近付いて来ると思うか?」


剣士「賭けだね…でも800メートル付近まで近付いて来れば狙撃でなんとか狙えそうな気もする」


女オーク「通常弾のアサルトライフルが余ってるから動ける人皆に配って来るわ」


剣士「甲板に集合」








『甲板』



ユラ~リ ギシ



槍戦士「くそう…痛てえな…あの衛兵の野郎…抵抗しないと思ったら好き放題殴りやがって…」スリスリ



バサッ



槍戦士「どわっ!!何だぁ?」キョロ


女オーク「イエティの毛皮…寒いでしょう?」


槍戦士「おお!こりゃ女神様の登場かぁ?」ファサ


女オーク「どうして船尾楼に入らないの?」


槍戦士「真面目な話をしている中入り難い訳よ…俺は普通の人間だから何しでかすか分からんのだろ?」


女オーク「そんな事気にする人間には見えなかったけれど…」ジロリ


槍戦士「俺は女にありつけりゃそれで良い…ただそんだけだ…俺が呪われてるのは魔王のせいだってか?」


女オーク「教えてあげる…あなたに私の血を沢山輸血した筈」


槍戦士「おっと?それはお誘いの合図か何かか?」


女オーク「あなたは魔王に眼を覗かれないと言いたいだけ…」


槍戦士「ほほー俺の時代が来たって訳か…こりゃ面白くなって来た」


女オーク「フフ…単純…」


槍戦士「…」


女オーク「どうしたの?急に大人しくなって?」


槍戦士「なぁ?俺等人間はやっぱ滅んだ方が良いんか?どう考えても魔王が渡り歩いてんのは人間だよな?」


女オーク「アランがそれを解決しようとしてるの…解決出来たら魔王に怯える事も無くなる」


槍戦士「俺の下半身を使いまくっても文句言われんか?」


女オーク「それはマイと相談して…でも私個人的には人間はもっと増えて欲しい」


槍戦士「やべぇ…みなぎって来た…そうか俺の汁を人類の発展の為に使うのか…悪く無え…」


女オーク「今年の夏が勝負所に思うわ…」


槍戦士「ようし…やってやろうじゃ無えか…その後は人類の発展が待ってる!ウハハハハハ」


女オーク「フフ…」---馬鹿な男だけど多分これで良い---




『数日後…』



カーン カーン



剣士「敵?誰が鐘を鳴らしたの?」シュタタ


女オーク「ミライ!!船尾楼の上よ!!2キロ後方に船が見えるわ」


剣士「ええと…まだ距離があるな…」


女オーク「望遠鏡を持って来て!!」


剣士「分かった!!」シュタタ



ドタドタ



槍戦士「おうおう!!早速何かに追われてるってか?」


女オーク「分からない」


槍戦士「こりゃ戦闘に備えといた方が良いな…俺もアサルトライフル準備しとくぜ?」


女オーク「私の分も持って来ておいて」


槍戦士「イクラぁぁ!!お前も船尾楼の中からスナイパーライフル準備しとけえええ!!」


青年「えええ!?僕も?」


槍戦士「そっからなら車椅子に乗りながら狙えるだろ…人駆が少ねえからお前も働け!!」



シュタタタ



剣士「望遠鏡持って来た!!」


女オーク「どう?味方?」


剣士「ええと…4枚帆のスクーナーだ…海賊旗は見えない」


女オーク「この海域だときっと味方よね?」


剣士「そういう希望的観測は止めにしよう…足元すくわれる可能性がある」


女オーク「そ…そうね…戦闘の準備はしておくわ」ドタドタ


剣士「その後方にも船が居そうだな…どうしよう」





『1時間後…』



ザブ~ン ユラ~



女オーク「敵か味方か分からないのは気持ち悪いわ」


剣士「うん…でも距離は詰めて来ない…襲撃するなら夜だね」


女オーク「沖の方に回り込んでるのも2キロを保ったまま?」


剣士「そうだよ…そっちも海賊旗が立って無い」


女オーク「ゴッツさんのスクーナーでは無いの?」


剣士「それならどうして近付いて来ないんだろう?」


女オーク「それもそうね…」


剣士「僕は多分ドワーフの海賊達の作戦を良く知らされて居ないから勝手に動いて包囲されちゃってるのかもね」


女オーク「海賊旗を立てて無いのってそういう理由?」


剣士「それも分からない」



シュタタ ピョン クルクル



狼女「ミライーーー!!陸の方で何か匂う」クンクン


剣士「ええ!?陸からも?」キョロ


狼女「燃える匂いだ…もう何か始まってるぞ」


剣士「何か話が違う…まだあと2週間くらい時間がある筈なのに…」


槍戦士「港町の方じゃ随分前からクエスト発注されてんぞ?遺跡の探索だ…」


狼女「ムム!!そう言えば鼻の無い女がそんな事言ってたな」


剣士「南極圏では無いけど雪に覆われた森で冒険者達が満足に戦えるのだろうか?」


槍戦士「森の深い所に入ればそう寒くないらしいぜ?…雪のかまくらん中みたいなもんだ」


剣士「そうなんだ?」


女オーク「進路は変更なし?」


剣士「うん…僕達はアランさんの退路確保が目的さ…陸は無視してこのまま進もう」





『陽動作戦』



ドタドタ ドタドタ



剣士「よし…甲板の横壁にみんな隠れてるね?」


槍戦士「ウハハハ…こりゃ良いアンブッシュ作戦だ」


剣士「ミルクちゃん…一発だけ向こうのゴーレムに向かってプラズマを撃って」


狼女「わかったぞ…」



チャキリ



狼女「撃って良いか?」


剣士「うん…」


狼女「イケーーー!!」ピカーーーーー チュドーーーーン


剣士「どうだ!?」


女オーク「動き無しね…」


剣士「ダメかぁ…う~ん…」


女オーク「あ!!待って…気球が消えた…」


剣士「え!!?」キョロ


槍戦士「おいおいどういうこった?」


女オーク「こ…これは…見た事が有るわ…彗星の様に動く気球…」


剣士「彗星?」


女オーク「ダメ!!危ない!!真上を見てええええええええ!!」ダダ


槍戦士「真上だと!?」キョロ


剣士「全員真上注意!!射撃用意!!」チャキリ



ドワーフ達「なに!?真上やと!?」チャキリ



狼女「居たぁぁぁ!!反対側の上えええええええ!!」ピカーーーーー チュドーーーン



ターン!ターン!ターン!ターン!タタタターン!!


ピカーーーー チュドーーーーン!!



槍戦士「ウホホホホホ!!ドンピシャ!!」ターン!


狼女「当たったぞ!!」


剣士「あ!!き…消えた…」


狼女「でも当たって気球の籠は殆ど残って無いぞ」


女オーク「ミライ!!直ぐに帆を張って船を移動させて!!隕石が来るわ!!」


剣士「ちょちょ…」


女オーク「みんな急いで帆を張ってえええええ!!」ドドド


ドワーフ達「がってーーーん!!」ドタドタ





『隕石』



ヒュルルルル ドップーーーン!! ザバーーーー



剣士「波に備ええええええ!!」


槍戦士「こりゃ危機一髪か…」アセ



ザブ~ン グラ~リ



女オーク「ふぅぅぅぅ巨大な隕石じゃ無くて助かったわ…」


剣士「姉さんこんな戦い方の経験があったの?」


女オーク「勘よ…私ならそうすると思っただけ」


剣士「隕石をこんなに早く落とせるなんて知らなかったよ」


女オーク「隕石と言ったけれど多分大きな石を飛ばしたんだと思う」


剣士「そんな魔法があったのか」


女オーク「見て!!ゴーレムが立ち止まってる」


剣士「ていうかさっきの気球は何処に行ったんだろう?」キョロ


女オーク「鮮血が飛び散るのも見えたし…もう戻って来ないと思うわ」



ドーン ドーン



剣士「射撃砲撃ち始めた…さすが対応早いな」


女オーク「この後どうする気?」


剣士「この船は沖で待機が良さそうだね」


女オーク「私もそう思うわ」


剣士「ただアランさん達とどうやって合流するかなんだよね」


女オーク「ミファの話では退路を確保してと言う事だったけれど…」


剣士「その場所はここの河口からもっと上流なんだよ…でもこの船じゃ進めない」


女オーク「まさか双胴船を使うつもりじゃ無いでしょうね?」


剣士「うーん…やっぱり気球かなぁ…」


女オーク「ダメよ…危険過ぎる」


剣士「まぁもう少し様子見ようか」





『船尾楼』



アーデモナイ コーデモナイ



どうして魔導士が敵側に回ってるかという事だよ


それはドワーフの話聞いてたぞ…遺跡の機械を復活させてる様に見えてるらしいぞ


ええ?ドワーフの海賊達が?


機動隊の事だな…ドワーフの海賊達がそれをサポートしてると思われてるんだ



ガチャリ バタン!



青年「あ!ミライ君!!話を聞きたかった」


剣士「んん?なんか盛り上がってるね」


青年「魔導士に襲われてる理由さ」


剣士「ミルクちゃんが聞いて来た通りだよ…本当は2~3日後に魔導士が来るかもしれない想定だったみたい」


青年「あんな巨大なゴーレムなんか召喚されて勝てる見込み無い様に思うんだけど」


剣士「そうだね…でも来ると想定してたのはもっと北側の基地だった様だよ?」


青年「この漁港を襲って来たのは偶然?」


剣士「どうだろう?魔導士達はシン・リーンの守備をして居るらしいよ?有事を嗅ぎつけて北の基地まで来るのに2~3日掛かるんだって」


青年「有事と言うのは昨夜見たミサイルの事だろうか?」


剣士「多分そうだね…たまたま近くに居た魔導士が察知して漁港に居た海賊達を襲ったんだと思う」


青年「そう言う事か…」


剣士「予定よりも2週間も早くミサイルが打ち上げられたんだ…魔導士の側からすると色々勘繰っちゃうんじゃ無いかな?」


青年「騙されたと思ってる訳か…」


剣士「僕達も偽の情報に騙されてたしね…それを言うとアランさん達もか…」


青年「現場がどうなってるとかの情報は無いよね?」


剣士「うん…誰かが戻って来ない事には分からないね…ドワーフの気球も落とされちゃったみたいだし」


女オーク「こうは考えられない?隕石みたいな魔法でミサイルの打ち上げを邪魔されるのを防ぐための偽情報だった…」


青年「結果論だけどその可能性が高い様に思う…でもそれなら初めからシン・リーンと共同作戦じゃ無くても良い様にも思う」


剣士「共同という立場表明したのは情報操作だったのかも知れないね」


青年「でも魔導士だけ敵に回るかも知れないのをドワーフ達が予め想定して居たというのがどうも引っかかる」


剣士「あぁそれ聞いて来たよ…」



今回魔導士達がシン・リーンの守備に回ってる理由なんだけど…


いくら共同作戦だったとしてもミサイルの打ち上げは絶対に成功しないと高を括って居た様だよ



青年「どういう事かな?魔導士達はミサイルの存在を既に知って居た?」


剣士「どうだろう?機械の知識が無いと動かせない事を知って居た…と考えるのは?」


青年「う~ん…」


剣士「まぁ機械の知識を持ってる機動隊が作戦に加わってる事は知らなかったんだろうね」


青年「待って…どうして魔導士達はミサイルの打ち上げに協力しない?」


剣士「良く分からない…でも機動隊の事は古代人だという認識があるだろうから魔導士達からすると敵だね」


青年「分かった…本丸は機動隊だと言うのを隠すためにシン・リーンとドワーフ達が協力するという立場表明だったと言う事か…」


剣士「大体そんな感じ…」


青年「だから突然ミサイルの打ち上げが成功して魔導士達が動き出す…ドワーフ達はそんな想定だった訳か…」


女オーク「ねぇ…その流れだとこれから2~3日後に機動隊を追って魔導士達が攻め込んで来るのでは?」


剣士「ドワーフ達はそういう想定なんだよ」


青年「あんな大きなゴーレム相手にどう戦う?」


剣士「海に逃げれば追って来られないじゃない?」


女オーク「気球は追って来そうだけれど…」


剣士「シン・リーンと共同作戦をしている海賊王に対して表立って攻撃を仕掛けて来るだろうか?」


女オーク「あぁ…そういう駆け引きを…魔導士が追うのは機動隊という訳ね…」


剣士「逆に危険な立場になるのがアランさん達がが動かしてる戦車だと思う…その退路をどうするかだよ」


女オーク「理解したわ…」





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