79.夢幻
『数日後_どこかの洞窟』
ピチョン ポタ
闇商人「な…なんだって?アランの居場所が?」
狼女「ミルクも驚いたぞ…ウルフィーが知ってるらしい」
突然眠ってそのまま氷になってしまったみたいだ
それに気づいたのは皆凍ってしまった後でウルフィーだけあったかい石に守られて生きて来たらしい
闇商人「場所は?」
狼女「南にあるト・アル町という場所だ」
闇商人「よし!近いな」
狼女「問題がある…凍ってしまったアランをどうやって生き返らせる?」
闇商人「う…確かにそうだな」
賢者「あの…魔術師が近くに居る様ですのでお願いしてみては?」
闇商人「うーん…魔術師かぁ…」
狼女「エルフはどうだ?」
闇商人「いやエルフに知り合いがいる訳じゃないしどうやってコンタクトすれば良いのかも…」
賢者「私が妖精さんにお願いしてエルフを呼んでみましょうか?」
闇商人「お?そんな事が出来る?」
狼女「ウルフィもエルフを呼ぶ事はできるかも知れんぞ」
闇商人「魔術師に関わるよりずっと良さそうだ…それで行こう」
賢者「分かりました…妖精さんにお願いします」
狼女「それでいつアランを探しに行く?」
闇商人「ええと…ミファもフーガ君も目を覚さないし…僕も正直痛みが引くまで動きたくない」
狼女「イライラするな…」イライラ
闇商人「それから凍ってしまった4人をどうやって運ぶかという課題もある…下手に動かすと氷を割ってしまうリスクもある」
剣士「僕と姉さん2人で気球を使うと言うのは?」
闇商人「気球で行けるのだろうか?」
剣士「今丁度夏だからこの機会を逃すと行けないかも知れないね」
闇商人「ふむ…2人なら帰りに4人分の氷を乗せて戻って来られるか…ソリを使うより随分良さそうだな…」
剣士「イッコさん…アランさんの所まで妖精に案内して貰えそうかな?」
賢者「ええと…私が行ったことのない場所の説明は難しいです」
剣士「あらら…困ったな…目視で探すとかだと迷ってしまいそうだ」
狼女「ウルフィーの匂いを追うのはどうだ?ウルフィーなら走ってアランの所まで行ける筈だ」
剣士「そんな上空から匂いを追うなんて無理だよ…」
賢者「あ…ウルフィーの匂いを妖精さんに追ってもらうのは出来そうですね…ミルクちゃんを追って来たのと同じです」
剣士「じゃぁ行ける!!」
闇商人「…とすると此処に残るのは僕とイッコだけか…」
狼女「ミルクも居るぞ…忘れるな」
賢者「この洞窟はトロールさんに守って貰っているので大丈夫です」
闇商人「トロール?」
賢者「はい…夜の間はトロールさんが居ますし昼間はミルクちゃんの鼻が効きますのでカゲミさんが動けなくても大丈夫かと…」
闇商人「よし!じゃぁそれで行ってみよう」
『1時間後…』
ピチョン ポタ
剣士「水は洞窟から滴ってくる水滴がこの器に溜まるようになってるから飲料水は大丈夫!」
女オーク「レーションは此処にまとめて置いて行くわ…木の芽は沢山あるから優先してそっちを食べて」
賢者「大丈夫です…私にお任せください」
剣士「あとミルクちゃん…破壊の剣は僕が使わせて貰って良いかな?」
狼女「んん?無くさない約束出来るか?」
剣士「ちゃんと返すさ…もし氷を砕く様な事があった場合破壊の剣の方が上手く使えると思ってね」
狼女「そうか…ミライがそう言うなら貸しても良い」スチャ
剣士「こっちにはバヨネッタとクロスボウ2台置いて行く」
闇商人「狙撃が必要なケースは考えて居ないのかい?」
剣士「う〜ん…アランさん達も持ってる筈だからそれを回収できるんじゃないかと思ってる」
闇商人「なるほどね…」
剣士「じゃぁそろそろ行ってくる」スック
狼女「ウルフィーは狩りをしながら行くから少し遅いかもしれん」
剣士「そんなの気にしないさ…さて姉さん行こう!!」
『気球』
シュゴーーーー フワフワ
剣士「姉さん…ここら辺の空間がおかしい事になってるって…分かる?」
女オーク「なんとなく…コンパスは役に立たないし…景色も安定しない…」
剣士「姉さんにはそう見えてるのか…」
女オーク「ミライには違う様に見えてるの?」
剣士「うーん…ねぇ…僕の目隠しを外しても良いかな?少し見にくい」
女オーク「誰も居ないから外しても構わないけれど…あの力を使うのはダメよ?」
剣士「分かってる…でもね?僕の目はこの空間を正しく見る力があるんだよ」
女オーク「正しく?」
剣士「なんて表現すれば良いんだろう…僕が見てる世界はね…数字の世界なんだ」
女オーク「想像できないわ」
剣士「数字の違う場所を探す事が出来る…なんて言うんだろう…繋がりが途絶えている場所が分かる…そんな感じ」
女オーク「その碧い瞳の力ね?」
剣士「そうなんだと思う…生まれた時からこういう見え方だからこれが普通だと思ってるけど…多分空間が全部見えてるんだ」
女オーク「私の事はどう見えて?」
剣士「お腹に赤ちゃんはまだ居ない」
女オーク「フフ…そういう見え方なのね…何でも見える…そう言う解釈で良いのかしら?」
剣士「姉さんが考えている事はよく分からないから神様とはちょっと違うと思う…ただ見え方が特殊なだけだね」
女オーク「でもどうして急に目隠しを外す気に?」
剣士「繋がりを修正しながらじゃないとアランさんの所まで辿り着けないと思った」
女オーク「それはあの力を使うと言ってるのでは?」ギロリ
剣士「ちょっと違う…言い表しにくいけど空間を消し去るのとは違うんだよ…元に戻すという表現の方が近い」
女オーク「元に戻す…」
剣士「そう…アランさんが大怪我した時にも血管を少しだけ元に戻した…それはあの力…量子転移とは違う物なんだ」
女オーク「ミライが消えて居なくならないのであれば何も言わないわ」
剣士「大丈夫…僕はコントロール出来る…やって良い事とダメな事は分かっているから」
剣士「僕はそうやって傷ついた世界を元に戻す役目を持っているんだと思うよ…」
剣士「僕がこの世界に対して出来る事…それは修復だ…馬車を直すのと同じさ…もっと良い馬車に作り替えるのって楽しいよね」
女オーク「それがミライの言う世界を作ると言うこと?」
剣士「そうなのかなぁ?よく分からない…世界中の馬車を全部作り替えるのって難しいじゃない?僕が出来ることってほんのチョッとなんだよね」
女オーク「じゃぁチョッとづつ…修復して行くのね?」
剣士「そうそう…そんな感じ」
女オーク「…」---世界に対する勇者の関わり方---
---妙に納得してしまった---
『翌日…』
フワフワ スゥーーーーー
女オーク「!!?ミライ?高度を落とし始めて?」キョロ
剣士「あぁ姉さんは横になってて良いよ」
女オーク「ずっと霧の中…よね?」
剣士「姉さんにはそう見えてるんだね…大丈夫!もう見えて来てるから」
女オーク「ええ?何処に?」ドタドタ
剣士「姉さんが認知出来るのはもう少し時間がかかるのかも知れないなぁ…」
女オーク「次元の調和という奴かしら?」
剣士「多分そうだと思う…魔術師たちはこの現象を次元の調和と表現しているのさ」
女オーク「理解出来ない…霧しか見えないわ」
剣士「目を閉じた方が分かりやすいと思うよ?」
女オーク「目…」スッ
剣士「どう?」
女オーク「はっ…匂いと空気は感じる…雪が降って?」
剣士「ピンポーン!!見えてる世界と違う事が理解出来たでしょ?」
女オーク「ノードラインとか迷いの森で迷ってしまうのはコレが理由?」
剣士「そうだと思う…なんか空間のズレもあるみたいだから一言で言い表せないけどね」
女オーク「ウルフィが何処に居るのかもう分かって?」
剣士「ちょっとまだ見えないけれど…妖精は方向を見失ってないから大丈夫さ」
女オーク「私だけ何も見えて居ないのね…」
剣士「到着はもう少しかかるからゆっくり調和していけば良いさ…そうだなぁ…到着まで30分くらいかなぁ」
『30分後…』
フワフワ フワフワ
剣士「お?居た居た…丘の上の建屋だな…姉さん見える?」
女オーク「雪に埋もれた小さな町?」
剣士「おけおけ!遠くは何処まで見える?」
女オーク「向こう側は靄が掛かっていて見通せない…」
剣士「姉さんの場合それくらいの認知距離なんだよ…覚えておくと良いさ」
女オーク「ミライは何処まで見えて?」
剣士「見えるというか…空間がその向こうまで繋がってるのが分かる…ややこしいかな?」
女オーク「まぁ良いわ…とりあえずアランさんを探すのでしょう?」
剣士「そうだね…あの建屋の横に気球を下すよ」
『丘の上の建屋』
フワフワ ドッスン
ウルフ「ワフッワフッ!!グルルルルルル」シュタタ
剣士「よしよし!ウルフィ案内ありがとう」ナデナデ
女オーク「ねぇ…この町はもしかして誰も住んで居ない?」キョロ
剣士「どうかな?アランさんと同じように氷漬けになっているのかもね?」
女オーク「不思議な感覚…」
剣士「ウルフィ!!この2枚扉の中なのかな?」ゴソゴソ
ウルフ「ワフッワフッ!!」
剣士「やっぱりそうか…開けられるかな?」
女オーク「私がやってみる」グググ
バキバキ パリーン ギギギギ
剣士「お!!少し開いた…」
女オーク「中に入れそう?」
剣士「行ける行ける…ちょっと見てくる」シュタ
『納屋の中』
シーン…
剣士「戦車だ!!あの時のままだ…」シュタタ
女オーク「アランさんは?」
剣士「居た!!ゲスさんも居る…これはここで何か作り物をしている時にそのまま眠ってしまったんだな…」
盗賊「…カキーン
学者「…」カチカチ
女オーク「これはイエティの毛皮かしら?」ファサ
剣士「吊るして干していたんだね…丁度良いからその毛皮に包んで2人を運ぼう」
女オーク「ラスさんともう一人の王様が見当たらない様だけど?」ドタドタ
剣士「戦車の中に居ない?」
女オーク「居ないわ…トロッコの方にも…居なさそう」
剣士「此処に居ないという事は外に出てるのか…」
ウルフ「ガウガウ!!グルルルル」グイグイ
剣士「ん?付いて来いという事かな?」ヨロ
女オーク「ここは私が処理しておくからミライが行って探して来て」
剣士「おけおけ…バヨネッタとかも気球に移しといてもらえるかな?」
女オーク「分かったわ」
剣士「ちょっと行ってくる」シュタタ
『1時間後…』
ヨイショ ヨイショ
女オーク「ミライ!?どう?見つかった?」ドスドス
剣士「あぁぁ気をつけて…ラスさんは細くてすぐに折れてしまいそうだから…」
女オーク「何処に居たの?」
剣士「多分宿屋だよ…ベッドの上で横になってた」
女オーク「もう一人の王様もそこに?」
剣士「うん!ちょっと大きいから先にラスさんを運んで来たんだ…もうアランさんとゲスさんは気球に積んだ?」
女オーク「毛皮に包んでハンモックに乗せたわ」
剣士「おけおけ!バヨネッタとかガトリングは?」
女オーク「それも気球に入れた…結構重さがあるから樽を一つ下ろしてしまったけど良かった?」
剣士「仕方ないね…」
女オーク「どうしよう?もう一人は私が運ぶ?」
剣士「町には誰も居ない様だから気球で近くまで飛んで行こうか」
女オーク「それが良さそうね」
剣士「姉さん戦車は動かしてみたかな?」
女オーク「何をしても全然反応が無いからエネルギーが無くなってしまったのだと思う」
剣士「そっかー…戦車の回収はムリかぁ…」
女オーク「弾薬も重くて気球には乗せられないわ」
剣士「うーん…誰かに奪われてしまわない様に鍵だけ持って帰ろうかな」
女オーク「此処に他の誰かが来てしまう事は考えられる?」
剣士「異形の魔物もウルフィと同じ様に匂いとか感覚で入ってくる可能性はあると思うんだ」
女オーク「そういう事ね…じゃぁ他の弾薬は全部戦車の中に入れて鍵を閉めた方が良さそう」
剣士「うん…そうしよう」
女オーク「ちょっとトロッコの中にある弾薬を移し替えるわ」
剣士「おけおけ!僕はラスさんを気球に乗せて飛ぶ準備しておく」
『数分後_気球』
フワフワ
剣士「姉さん乗って乗って!」
女オーク「お待たせ…これ戦車の鍵よ」ポイ
剣士「よっし!今度余裕を見て回収に来てみよう」パス
女オーク「エネルギーはどうする気?」
剣士「なんか爺ぃがウラン結晶を沢山持ってるって自慢してたからお願いしたら貰えると思う」
女オーク「戦況によっては直ぐに回収に来なければならなくなりそうね…」
剣士「そうだね…気球飛ばすよ?」
シュゴーーーー フワフワ
『宿屋前』
フワフワ ドッスン
女オーク「王様は何処に?」
剣士「建屋に入ったら正面に地下へ行く階段があるんだ…その途中で袋を抱えたまま倒れてる」
女オーク「袋を抱えたままって…」
剣士「なんか状況的に変だよね?」
女オーク「階段を歩いている時に急に意識を失った?」
剣士「とにかく大きくて運びにくいから一緒に運び出そう」
女オーク「そうね…」
剣士「こっちだよ…シュタタ
『宿屋の階段』
ヨッコラ ヨッコラ
剣士「重いね〜この人…」ヨイショ
戦士「…」カキーン
女オーク「ねぇ…私達も急に意識を失ったりしないかしら?」
剣士「怖い事言わないでよ…でも待てよ?その可能性は考えておいた方が良いね」
女オーク「早くこの場所を去りましょう」
剣士「うん!急ごう」
ドタドタ
女オーク「気球に乗せるのは私がやるわ…ミライは毛皮を用意して」
剣士「うん!」シュタタ
女オーク「ヨイショ!!」ギシ
剣士「おおお重そうだな…ハンモックの強度足りるかな…」ギシギシ
女オーク「高度上がるかしら…」シュゴーーー フワリ
剣士「お?浮いた?」
プツン…
サーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーーーーーー
女オーク「え!!?なになに!?何が起きたの!?」キョロ
剣士「ちょ…なんだこの文字列…」タジ
女オーク「どうして急に真っ暗に?」アタフタ
剣士「マズイな…コレはアランさん達と同じ事が起きてしまったかも知れない…」
女オーク「えええ!?…じゃぁ急に意識を失ってしまった?」
剣士「ええと…どうするどうする?」
女オーク「とりあえず気球の中に入っているから直ぐに凍ってしまう事は無さそう」
剣士「参ったな…こんな風に急に次元から放り出されてしまうのか…」
女オーク「ミライは次元から放り出されたって分かるの?」
剣士「分かる…元の次元とは別の空間だよ…向こう側が見えない」
女オーク「この真っ暗な空間にアランさん達も居る?」
剣士「ごめん分からない…ダメだ混乱する…どうなってるんだ?なんだあの文字列は…」キョロ
声「よう!!お前らもこっちに来ちまった様だな?」
剣士「え!!?その声はアランさん?何処?」キョロ
声「見えんのだろ?…俺もお前らの事見えて無えんだが声は聞こえる」
剣士「声だけ聞こえるんだね?」
声「まぁそんな感じだ…急にこんな所来てビビっただろう?」
剣士「此処は何?僕達はもしかして死んでしまった?」
声「ヌハハやっぱそう考えるわな…此処はアーカイブという場所らしい」
剣士「アーカイブ…」
声「まぁ詳しい話は後だ…それより凍った俺らの体を気球に入れただろ?」
剣士「え?あ…うん…というか目の前で凍ってる…」
声「どういう仕組みか分からんが元の世界ではそういう状態になってる訳だ」
剣士「元の世界…」
声「ほんで近くにウルフィが居るんだな?」
剣士「うん…でもどうしてそれを知って?」
声「リッカの目をずっと見てた訳よ…バレンがな?」
女オーク「えええ?意味が分からない…」
声「説明は後だ…おいバレン!!ウルフィにお前の血が入ってるだろ?どうにか動かせんか?」
声「探してみる…待っていてくれたまえ」
剣士「ええと…どういう事だろう?」
声「ウルフィをどうにか操って気球を移動させる…今居る区域を出ちまえばミライも元の自分に戻れるかもしれん」
剣士「今は戻る事が出来ない?」
声「多分な?俺らはどう頑張っても自分の目を見る事が出来なかった…影の婆さん曰くスタックしたらしい」
剣士「スタック…又分からない言葉だ」
声「とにかく今居る場所から動かせば戻れる可能性があるって事だ」
剣士「なるほど…それをウルフィにやらせるという事か…」
女オーク「もしかしてアランさん達はずっと私達の目を見て動かして来た?」
声「まぁな?」
女オーク「ミファの様子がおかしかったのもやっぱりそのせいね…」
声「でもあんま自由に動かせる訳じゃ無え…ほとんど見てるだけだ…血が繋がってたり縁が深いと意識を共有出来るって感じか?」
剣士「ねぇ…この空間に他の人は?」
声「腐るほど居る…だが縁遠い奴らの声は聞こえんな」
剣士「僕達も誰かの目を見る事出来るかな?」
声「出来ると思うぞ?」
剣士「どうやって?」
声「誰かから何か預かってたりしないか?」
剣士「え…何を持ってるだろう?」
女オーク「ミルクちゃんから破壊の剣を預かってるでしょう?」
剣士「あ…そうだった」
声「ほんじゃそいつを振り翳してみろ…関係のありそうな奴の目が降ってくる」
剣士「目が降ってくる?」
声「危険な訳じゃ無えからとりあえずやってみろ」
剣士「うん…」スラーン フリフリ
女オーク「あ!!光の筋が…」ボーゼン
声「ヌハハ最初はそうやって驚くわけだ…まぁ色々試して見るだな」
『ウルフィの目』
ジーーーー
盗賊「おうバレンどうよ?」
戦士「あぁ人間の目よりは随分見やすいね…ただ色彩が全然違うのが混乱してしまう…」
盗賊「いやいやそうじゃなくてだな…うまく動かせてるかって話だ」
戦士「残念ながら自由には動かせない」
盗賊「ぬあぁぁどうにか頑張ってくれや」
戦士「ウルフの体では気球に乗り込めない様だが?」
盗賊「ええいクソ…見てるだけってのはどうもストレス溜まるな…」
戦士「まぁウルフィも事態を察知してどうにかしようとはしている様だよ」
盗賊「気球に乗り込めんと何も出来んだろ」
戦士「いや…丁度気球が浮き始めていたから重さが殆ど無い…引っ張ろうとしているね」
盗賊「こりゃ日が暮れちまうな…」
戦士「この区域から出るだけならそう遠くまで行くことも無いのでは?」
盗賊「おっとそういう事か…ミライとリッカが目を覚ませば良い訳か」
戦士「ウルフィの目からそれは確認出来ないがね…」
盗賊「ううむ…なんか他に俺が出来そうな事無えか?」
戦士「ゲス君の方を見に行ってはどうかね?」
盗賊「あいつは女の目ばっか覗いてて俺にゃ興味無えのよ…まぁでもちっと話だけしてくるか…」
『何処かの女の目』
ムフフフ ムフフフフフ
盗賊「おいゴラ!又女の目を覗いてんのか?」
学者「お?兄貴すか…丁度良い所に来やしたね」
盗賊「話を聞きに来てみりゃ又それか…女の目にゃ興味無えのよ…ちったぁ真面目に脱出方法をだな…」
学者「何言ってるんすか…ちゃんと影の婆さんの言った事を調べていやすよ…女の目なんすがね?…ウヒヒ」
盗賊「ほーん…なんか発見でもあったか?」
学者「やっぱあの婆さんの言うとおりこのアーカイブはこっち側の大陸に居る人だけっぽいすね」
盗賊「だからお前脱出の方法を探せと言ってるだろうが…」
学者「それは兄貴がなんとかして下だせぇ…俺っちはここの秘密を暴きやす」
盗賊「秘密なぁ…この空間じゃ秘密を暴いても何も出来んのがなぁ…」
学者「向こう側の大陸のアーカイブが何処にあるとか気になりやせんか?」
盗賊「んん?どうせヒュー・ストンあたりじゃ無えのか?機動隊がガチってる理由なんだろ?」
学者「ナハハハさすが兄貴っすね…ほんじゃもう一つ…」
盗賊「何よ?」
学者「影の婆さんはこの大陸にもう一つアーカイブがあると言っていやした…その場所はシャ・バクダっすね…」
盗賊「あぁぁ分かった分かった…何の為にもう一つあるか?ってんだろ?」
学者「そーっす…兄貴はどう思いやす?」
盗賊「バックアップだ…」
学者「ウヒョーーーーやっぱ兄貴っすわ…そーっす!!とっくの昔に誰かバックアップしようとしてるんす!」
盗賊「誰かってのはもう分かり切ってんだろ…精霊だ精霊!大昔のな?」
学者「兄貴の口から何で精霊とかいう言葉が出てくるんすかね?」
盗賊「お袋の書物を一度も読まなかった訳じゃ無えって事だ…歴史の事はお前より知っとるわ」
学者「そら失礼しやした…ほんじゃ最後の質問っす…もう一個のアーカイブの中はどーなってるんすかね?」ニヤ
盗賊「んん?」
学者「ウヒヒヒヒ…」
盗賊「おいもしかして…」
学者「はいはい…そのまま続けて言っちゃって下だせぇ…」
盗賊「同じ世界がもう一つ有るって事か?」
学者「それがあの婆さんの言ってる事っす」
盗賊「夢幻…」---お袋が研究していたのはコレか---
学者「興味出て来やしたかね?」
盗賊「此処まで言わせておいてお前…何か発見でもしたか?」
学者「実はっすね…俺っちも兄貴も向こうの大陸生まれじゃ無いすか…だから本来向こうの大陸のアーカイブに居る筈なんす」
盗賊「ほう?」
学者「でも船に乗って移動して来たら何故かこっちのアーカイブに移った…おかしく無いすか?」
盗賊「おお?ふむ…確かにそうだな」
学者「これは俺っちの予測なんすが次元の調和…こっち側の誰かと調和することでアーカイブの情報が複製されたと思うんす」
盗賊「複製?」
学者「バックアップっすね」
盗賊「マテマテ訳分からんくなった」
学者「こっちの大陸にも向こうの大陸にも兄貴の記憶は残ってるって事っす」
盗賊「あのな?記憶だけ残っても意味なく無えか?」
学者「此処にクソ沢山ある誰かの目が全部記憶だったとしたらどう思いやす?」
盗賊「なぬ?俺らは記憶を見てるってか?」
学者「何で見てるだけになっちまうんすかね?」
盗賊「いや待て…ミファの体はある程度動かせた筈だ…お前もフーガを動かしてただろ」
学者「まぁ俺っちの予測の話なんであんま真剣に考えんでも良いんすが…」
影「側から聞いておってイライラするのぅ…」
盗賊「うお!!ババァ出たな?」
影「うぬ等が夢幻に気付いたのは評価出来るが…そこまで気付いて何故時間軸を気にせぬ…」
学者「ちょちょ…時間軸ってどういう事っすかね?」
影「もう説明した筈じゃがな?」
学者「あららら?忘れちまいやしたかね?」
影「このアーカイブは過去の記憶を参照出来んようになったと言った筈じゃが?」
学者「おっとっと…そういや光る夜の時にアーカイブを管理してた精霊の伴侶がどうのこうのと…」
影「ではのぅ…さらばじゃ」
学者「ちょちょちょちょ!!もうちょい話を聞かせて下だせぇ!!」
影「わらわは忙しいのじゃ…魔のかけらも無いゴミに付き合うとる暇は無い」
学者「ゴミ?俺っちがゴミ?」
盗賊「ヌハハハハ…なかなか毒舌が効いたババァだ」
学者「はぁぁぁ…話の腰が折れちまいやしたねぇ…でも…決定的なヒントがありやしたね?」
盗賊「んなことよりどうやって脱出するかって話なんだが…」
学者「ふむふむ…なるほど本来管理人が居る訳っすか…と言うことは…」ブツブツ
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