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78.新しい時代の足音



『気球』



シュゴーーー フワフワ



賢者「またシン・リーンの魔術師が乗る気球が通り過ぎて行きましたね…」キョロ


剣士「アハハ…この気球には見向きもしないね?」


賢者「突然キマイラが出現したのは魔術師達にとっても異常事態の様です」


剣士「南の方で魔術師が集まってるんだったよね?」


賢者「はい…」


剣士「何してるとか聞いて無い?」


賢者「それが分からないので皆不審に思って文句を言ってる噂でした」


剣士「なんか気になるね」


女オーク「あ!!また羅針盤の針の向きが変わってる…どうして?」ハテ?


賢者「このまま妖精さんに従って飛んで下さい」


女オーク「でもなんか…景色がおかしいと言うか…」


賢者「私知っています…名も無き島の近くにもこの様な場所はあるのです」


剣士「あ!!それってゴッツさんが言ってたノードラインの事?」


賢者「はい…記憶の魔法の影響なのだとか」


剣士「あ!!分かったぞ?魔術師はそれを調べに来てるんじゃ無いかな?」


賢者「そうかも知れませんね」


女オーク「ねぇ…妖精がもう近いと言ってるけど気球が木に引っ掛かってしまわない?」


剣士「うーん…一回降りて球皮を点検したいんだよなぁ…降りられそうな場所無いかな?」


女オーク「探しては見るけれど少し木を間引く必要はあるかも知れない」


剣士「じゃぁ場所が決まったら僕が先に降りて枝とか落としてくるよ…丁度木材も少し欲しかった」


女オーク「そうね…高度落として行くわ」




『どこかの森』



スパ バサバサ ドサ!!



剣士「オーライ!オーライ!おけおけ!!そのままゆっくり〜〜!!」



フワフワ ドッスン



女オーク「ふぅぅ…引っかからないで済んだわ」


剣士「姉さん!そのまま球皮を全部畳もう」ガサゴソ


女オーク「分かったわ」ドタドタ


賢者「結構傷んで居そうなのですか?」キョロ


剣士「どうかな?火の粉が舞ってたからちょっと気になってたんだよ」ゴソゴソ


賢者「私は何かお手伝いすることありませんか?」


剣士「綺麗な雪が有るからから集めておいて欲しいかな」


賢者「あ…そうですね…カゲミさんの火傷にも良さそうですね」


剣士「あと僕が切り落とした木の枝も集めておいて貰えると助かる」


賢者「はい…できるだけやってみます」


女オーク「枝は何に使うつもり?」


剣士「クロスボウのボルトが無いから枝を切り揃えて簡単な矢を作る」


女オーク「そういう事ね」


剣士「今は飛び道具がバヨネッタしか無いから大事に使わないといけない…出来るだけクロスボウを活用しようと思う」


賢者「じゃぁ集めてきます」スタタ




『1時間後…』



シュッシュ カリカリ



剣士「よし!これで木製のボルトが20本!」


女オーク「ミライ?木の芽が少し収穫出来たわ?食べる?」


剣士「今要らない…あ…それカゲミさんが起きたら食べさせてあげると良いかも」


女オーク「そうね…私の血を輸血しているから木の芽で回復を促せるかも知れないわね」


剣士「あとこっちは姉さんとイッコさんに任せても良いかな?」


女オーク「ミルクちゃん達を探しに行く?」


剣士「うん!暗くなる前に見つけないと心配だよ」


女オーク「じゃぁ私は引き続き木の芽でも探しているわ」


剣士「イッコさんどこ行っちゃったかな?」キョロ


女オーク「樹液の採取に行くと言ってたわ…寒い地域で取れる樹液は抗菌作用が強くて火傷に良いのだとか…」


剣士「へぇ?まぁ良いや…じゃぁ行ってくるね」


女オーク「気を付けて…」




『氷嚢』



ベチャ ヒタヒタ



闇商人「うあぁぁぁぁ…つつつ」


賢者「痛みますか?」オロオロ


闇商人「冷やされると大分にマシにはなるけど…どうも体が冷えてしまって震えを我慢出来ないから落ち着かないな…」ブルブル


賢者「低体温症で免疫力が落ちて逆に悪いかも知れませんね…」


女オーク「体を温めるのに蒸した木の芽でも食べてみる?」


闇商人「どうも食事が喉を通る感じじゃない…痛みはもう我慢するしかないな…おえっ」


賢者「吐き気もあるのですね」


闇商人「あまりひどい様なら又眠らせてもらうよ…ところでミルクちゃんはまだ見つからないかな?」


女オーク「もうすぐ近くに居るみたいだからミライが見つけて戻ってくると思う」


闇商人「そうか…雪が残ってて結構冷えるから心配だな」


賢者「あの…焚き火で暖まるのはダメなんですか?」


女オーク「ここら辺の森は火を使うとトロールと言う魔物が怒るらしいわ」


賢者「トロール…」


闇商人「生きてる木を燃やすと怒ると言う話では?」


女オーク「妖精がそう言ってるから…」


闇商人「あぁぁそうなんだ…延焼するとかそう言うのもあるのかも知れないな…」


女オーク「この気球の籠の中に居れば凍え死ぬと言う様な事にはならないと思うわ」



シュタタタ ガサガサ



闇商人「お?噂をすればなんとやら…これミライ君の足音だよね?」


剣士「姉さん!姉さん!!移動しよう!」ドタドタ


女オーク「移動?ミルクちゃんは見つかったの?」


剣士「小さな洞窟の中に隠れてる…裸だから寒くてあまり出歩けないみたいだ」


女オーク「無事だったのね…ホッ」


剣士「そうでもない…ミファとフーガ君が重体で昏睡してる」


闇商人「重体?それは早く行ってあげないと」ムクリ


剣士「カゲミさんはそのまま横になってて…僕と姉さんとイッコさんの3人でこの気球ごと運ぼう」


女オーク「分かったわ…丁度体を動かしたかった所よ」


剣士「おけおけ!そんな遠く無いから…500メートルくらいかな」




『どこかの洞穴』



ピチョン ポタ



女オーク「なんか安全そうな洞窟ね」キョロ


剣士「うん…ミルクちゃんたちは奥まりに居る…そこなら焚き火をしても良い様な気がする」


女オーク「火が使えるならスープとかもう少し良い食事が作れるわ」


剣士「あそこだよ…あの大きなウルフはウルフィだったらしい」


女オーク「そういう事ね…ウルフィに守られたと言う事なのね」


剣士「ミルクちゃん戻って来たよ…」スタ



狼女「済まん…ミルクはミファを温める必要があるから動けん」



剣士「今火を起こしてあげる」ガサゴソ


女オーク「暖まれるならカゲミさんもこっちに来てもらった方が良さそうね」


剣士「じゃぁ呼んできてもらえる?ついでに薪も少し持って来て貰えると助かる」


女オーク「分かったわ」ドスドス


狼女「カゲミは無事なのか?」


剣士「死ぬ様な事は無さそうだけど火傷が酷くてね」


狼女「ミファも火傷が酷い…もう元に戻らんかもしれん」シュン


剣士「まぁ仕方ない…ゆっくり癒して行くしか無いね」


狼女「ミルクのせいで皆巻き込んでしまった…反省してる」


剣士「フーガ君の方はどう?」


狼女「2人のエルフが来て魔法を掛けてくれたのだ…多分大丈夫だ」


剣士「エルフの魔法かぁ…見てみたかったなぁ」


狼女「なんか小さな虫を呼ぶ魔法だったぞ?」


剣士「へぇ?」


狼女「そうだミライ…ウルフィがこんな石を持ってたんだ…なんだか分かるか?」スッ



ポカポカ



剣士「お?なんだろう?」


狼女「あったかいだろう?」


剣士「おおお…なんか気持ち良いね」


狼女「ミルクは鞄を持ってないから預かっててくれ」


剣士「おけおけ!なんかよく分からないけどこの石も使ってこの洞窟を快適にしよう」




『焚き火』



メラメラ パチ



闇商人「ぅぅぅ…やっぱり焚き火が在ると一気に暖まるな」


賢者「火傷の痛みはどうですか?」


闇商人「直接火に当たると痛むけど…かなりマシだよ」


賢者「良かったです…寒い地域の樹液は火傷によく効いて鎮痛作用もあるのです」


女オーク「レーションを溶かしたスープに木の芽を入れた物だけど食べてみる?」


闇商人「ちょっと食べて横になろうかな」


剣士「じゃぁ木の枝で横になれるベッドを作っておくよ」


闇商人「ありがとう…」ズズー ゴクリ


剣士「これみんなの体力回復するまでこの洞窟を使う感じになりそうだね」


女オーク「そうね…狭い気球の中で縮こまるよりも随分快適そうだし」


剣士「よーし!作り物が捗るぞぉ!!」


賢者「今度は何を作るつもりなのですか?」


剣士「ほら?こういう洞窟を快適にするために色々工夫出来そうじゃない?ベッドもそうだしランプとかもさぁ」


賢者「それなら汚れを落とせる水場も欲しいです」


剣士「水場かぁ…難易度高いなぁ」


狼女「ミライ…これ使え…石を綺麗に繰り抜けるはずだ」スチャ


剣士「破壊の剣か!!イイね!!そうか…石を上手に加工出来るならもっと色々出来るな…」


賢者「楽しみです」




『夜中』



ヌイヌイ ゴシゴシ



賢者「何を作っているのですか?」


剣士「ん?これはミルクちゃんの着るものだよ…布と樹皮を組み合わせた簡単な装備品さ」


賢者「雪があって少し冷えるので防寒ももう少し欲しいですね」


剣士「布は結構余ってるからクロークぐらいならすぐに作ってあげられる」


賢者「カゲミさんの衣服がもう痛んでしまっているのでお願いします」


剣士「おけおけ」


賢者「布は気球にありましたよね…私取ってきます」


剣士「うん助かる…あとロープも余ってるから持ってきて欲しいかな」


賢者「はい…でもロープを何に?」


剣士「布を吊るして間仕切りに使うだけさ…水場を作ったは良いけど仕切られてないから体を拭くのに抵抗あるでしょ?」


賢者「私は気にしませんけれど?」


剣士「姉さんが気にするんだよ…どうも僕に他の女の人の裸を見せたく無いらしい」


賢者「フフ…そう言う事ですね」


剣士「姉さん帰ってくるの遅いなぁ…どこまで行ったんだろう?」


賢者「木の芽採集ですか?」


剣士「うん…それもあるけど使える資材探しに行くって」


賢者「リッカさんの様子も見ておきますね…気球まで行ってきます」





『気球』



ウロウロ スチャ



賢者「あ…リッカさん?どうかしたのですか?」


女オーク「イッコね?どうも近くにトロールが来ている気がして警戒しているの」キョロ


賢者「そうだったのですね…トロールは母に最も忠実な魔物だと聞いています…もしかしたら私の言う事も聞くかも知れません」


女オーク「え?そうなの?」


賢者「ですからあまり警戒しなくても良いかと…」


女オーク「イッコはトロールの言葉が分かる?」


賢者「分かりませんけれど妖精さんを通じてお話は出来るような気がします…私たちを守ってくださる様にお願いしてみましょうか?」


女オーク「それなら安心…野生のクマとか出て来ないか心配していたの」


賢者「ではお話しておきます…ミライ君がリッカさんの事を心配していましたよ?」


女オーク「そうね…資材を持って洞窟の方に戻っておくわ」ガサリ


賢者「ん?それは?」


女オーク「シカの角ね…落ちていたから拾ってきたの」


賢者「ゲスさんはそれをポーションの材料にしていましたね」


女オーク「オークは骨とか角を細かく砕いて食料の代わりにもするのよ…他にもミライは角を使って色々作るから」


賢者「良い物を拾いましたね…私もミライ君に頼まれた物資類を持ってすぐに戻ります…先に戻っててください」





『その頃…シケ・タ自治領』



ヒソヒソ… ヒソヒソ…


あそこに居る連中はみんなシン・リーンの魔術師らしい


異常を嗅ぎつけて調べに来たってか?ちぃ…偉そうにしやがって


声がでかいぞ…怪我した奴らは治療してもらってんだからあんま荒らげる様な事は言うな



魔術師「カイネ様…あの槍をどう思われますか?」


魔女「魔槍ロンギヌスに間違い無いでしょう…」


魔術師「やはりそうですか…材質は恐らく不可逆のヘルタイト…窒素変性なので高位魔法を熟知した者が使っているかと…」


魔女「次元の調和の具合はどうでしょう?」


魔術師「すでにキマイラを認知出来なくなっている者も居ますので直に記憶から消えると思われます」


魔女「私たちは書物などに記録を残さない様に徹底させて下さい」


魔術師「え?どういう事でしょう?」


魔女「調和に逆らわないようにして下さいと言っているのです」


魔術師「はぁ…それでは調査の意味が…」


魔女「次元がキマイラを認知出来ない側を選択しているのでそれに従いましょう」


魔術師「分かりました」


魔女「…」---人々は空から槍が降ってきたと言う---



---そんな事が出来るのは魔王か勇者のどちらかしか居ない---


---キマイラにトドメを打っているという事は勇者の身技でしょう---


---こんな風に人知れず世界を守っているのが私の知る勇者達---


---彼等の事を誰も知らないのではなくて---


---私達が記憶に残せていないだけだったのだと---


---今やっと理解出来た---




『とある建屋』



ガチャリ ギギー



魔女「あら?どなたかしら?」ノソリ


青年「私ですよ…」


魔女「直々にお見えになるとは…此処も安全では無い様ですが…」


青年「少し事情が変わって私も後方待機する運びとなったのです…しばらくご一緒する事になるかと…」


魔女「事情と言いますと?」


青年「どうやら異形の側に向こうの大陸の銃器が渡った様でして思惑通りに魔物掃討が難しくなったのです」


魔女「では森の制圧を諦めると?」


青年「いいえ…むしろカイネの協力が必要になったと言う所ですね」


魔女「私では力不足かと…」


青年「アランクリードでしっけ?」


魔女「あぁ…未だ発見出来ておりません」


青年「あなたの調書を読みました…ルイーダとコンタクト出来ている様ですね」


魔女「私自身が事実確認出来ないのですが…私が寝ている間に書いた記録によるとそう言う事なのでしょう」


青年「次元がサーバと言う区画で区切られていると言うのは新しい発見です」


魔女「そうですね…今魔術師達にサーバの境界がどこにあるのか調べて貰っています」


青年「そのサーバの境界を超える時に次元の調和が行われているという解釈でよろしい?」


魔女「その様です…不整合が生じた時にサーバからキックされる…と言う事らしいですね」


青年「アランクリードはどうしてキックされたと思いますか?」


魔女「予測ですが…アランは世界中を旅していました…ですからアラン自体が持っている情報量がとても多かった」


魔女「一緒に行動していた仲間も同じ様に大きな情報量を持っていて…サーバ側…つまり次元の側が調和を拒んだ…と言う事だと思います」


青年「そして行き先は深淵…」


魔女「ルイーダはそこがアーカイブだと言っている様ですね…その所在が森の地下に眠る古代遺跡…いわゆる精霊の記憶が保管されていると言われていた場所」


青年「およそ話が繋がりました…やはり魔物を掃討してアーカイブを守らなければいけない」


魔女「かつてエルフ達が精霊の記憶を守っていた理由です…本当はアーカイブを守っていたのでしょう」


青年「さて…話は少し戻りますが…アランクリードを救い出す目星はどの程度あるのですか?」


魔女「どうしてそうアランに拘るのですか?」


青年「情報によるとバレンシュタイン卿と共に行動している事と…旧セントラルの戦車を持っているのだとか…」


魔女「あぁ…異形の魔物が持つ銃器に対する戦力として期待していると言う事なのですね」


青年「平たく言うとそうなります…そしてルイーダを救い出す手掛かりを持っているのもアランクリードの様な気がしているのです」


魔女「ウフフ…神の手の力をお認めに?」


青年「何故でしょう?不思議ですね…いつの間にカイネも…私もアランクリードの為に動いてしまっている」


魔女「私の子が女王に認めて貰っている様で嬉しいです…そうです…神の手はまだ生きています…きっと世界の扉を開いてくれます」


青年「それでアランクリードを救う目算は?」


魔女「実は分かっている事がいくつかあります…」



アランクリード…ゲシュタルト…ラシャニクア…そしてバレンシュタイン…


この4人は既に私達の目を通じてこの次元に関与している様なのです


私の目を通じて関与してきているのはラシャニクア…


彼女がルイーダとコンタクトをして私が眠っている間に知識を書物に書き残すと言う形で関与してきている…


その他の3人が誰の目を通じているのか分かりませんが


私が知る子供たちの中にかつての勇者の血を引くミライという子がいる事が分かっています


きっとその子の周辺で何か行動をしていると思われます



青年「勇者の血を引く子…ミライ…まさか暁の使徒…」


魔女「察しが良い様で…アランが持っている世界の扉を開く鍵だと思われます」


青年「暁…これから夜が明けようとしている訳ですね」


魔女「明るい未来が来ると良いですね…」



---新しい時代が来ようとしている---


---私たちは邪魔をしないようにそっと見守るのが良いでしょう---




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