76.シケ・タ自治領
『シケ・タ自治領_郊外』
フワフワ
剣士「じゃぁ僕と姉さんは気球に乗って待機しておくね」
闇商人「うん!!誰か来て騒ぎになる前に上昇して!」
剣士「じゃぁ行くね!!」
シュゴーーーーー フワフワフワ
女盗賊「じゃぁ私はこれで…」スタ
闇商人「どうせ行く先は同じじゃ無いのかい?そんなに慌てて何かマズイ事でも?」
女盗賊「此処は危険…以上!!さよなら!!」タッタッタ
闇商人「あらら…行っちゃった…」
賢者「なんかあの人…本当は意外と優秀な人なのかも知れませんね」
闇商人「う〜ん…どうも抜けてる感じがするなぁ…馬鹿っぽさが隠し切れてない」
狼女「カゲミのニードルダガーを盗んだ動きは本物だぞ…というかカゲミは脇が甘過ぎるから気を付けろ」
闇商人「ごめんごめん…僕は接近戦が苦手でね…全然見えなかったよ」
賢者「これからどうするのですか?宿屋を探しますか?」
闇商人「ひとまず町の方へ向かおう」
狼女「カゲミ!盗賊ギルドは関わらん方が良いぞ」
闇商人「そうかい?」
狼女「シルヴァの派閥が何処に情報を流してるか分からんから信用出来ん」
闇商人「ふむ…資金源はフィン・イッシュなんだろうけど…フィン・イッシュもゴタゴタしてるか…」
狼女「そうだ…何処で電脳化した者が絡んでるか分からんから盗賊ギルドをアテにするのはダメだ」
闇商人「危険は匂いで察知出来るね?」
狼女「任せろ」
闇商人「よし!普通に宿に入って情報を集めよう」
『シケ・タ自治領_街道』
ドタドタ
おら止まらんで歩けぇ!!ムチでしばかれたいんかぁ!!?
おいやめておけ…明日の作業能率が落ちるだけだ
闇商人「…」ウツムキ
賢者「…」ウツムキ
闇商人「これは中々…顔を上げて歩くのは厳しいね」ヒソ
賢者「子連れで歩いてるので怪しまれずに済んでる…という事でしょうか?」ヒソ
闇商人「さぁ?他に子供も見当たらないから子供の奴隷を連れ歩いてる様に見えて居るのかも知れない」
狼女「カゲミ…食べ物の匂いだ…正面少し左…多分あそこが宿屋だぞ」
闇商人「分かった…大人しく付いて来て」
狼女「分かってる…レーションばっかりで飽きたから他の食べ物が食べたいぞ」
闇商人「それは僕も同じさ…水浴びもしたい」
賢者「私も水浴びしたいです」
闇商人「宿に入れると良いな…行くよ」スタ
『宿屋』
カランコロン
店主「んん?随分変な時間に客が来たもんだ…流れ者かい?」
闇商人「あぁ…まぁそんなところかな…大人2人と子供3人…空いてる部屋はあるかな?」
店主「ベッド2つの小部屋だな…大部屋もあるが高いぞ?どうする?」
闇商人「大部屋はいくら?」
店主「ほーう…どっかの金持ちか…一晩銀貨20だ」
闇商人「じゃぁひとまずこれで…」コロン
店主「おっと!!金貨か…釣りがすぐに用意できんのだが…」
闇商人「じゃぁとりあえず5日使うと言うことで良さそうだね」
店主「ほほーこりゃ良い客が来たもんだ…どっから来たんだ?オム・スクか?」
闇商人「そう言うのは聞きっこ無しだよ…部屋まで案内して欲しい」
店主「こりゃ失礼…こっちだ…一番奥の右側だ」スタ
闇商人「食事と水浴びはどうなるのかな?」
店主「大部屋は水場が付いててな…湯も沸かせる様になってる…食事は今日の分はもう終わったんだが特別に部屋まで運んでも良いぞ?」
闇商人「食事をしたいんだよ…運んでほしい」
店主「分かった…少し待っててくれ」
闇商人「部屋は此処だね?」
店主「そうだ…鍵はこれだ」スッ
闇商人「ありがとう…食事待ってるよ」
『大部屋』
ガチャリ バタン
闇商人「ふぅぅぅ休めそうで良かった」
賢者「早速湯を沸かしますね」イソイソ
狼女「カゲミ!もう色々噂が聞こえてくるぞ」
闇商人「お?何だろう?」
狼女「此処から南の方でシン・リーンの魔術師達が何かやってるみたいだな」
闇商人「こんなところに魔術師が?」
狼女「この街にも魔術師が潜んでて誰がそうなのか分からないから文句言ってる噂がいっぱい聞こえる」
闇商人「どうして文句を言うんだろう?」
狼女「それは分からん…噂の感じからして悪い事しようとして逆にやられた感じだ」
闇商人「逆恨みか…まぁミッチと同じようなもんだ」
アオ〜〜〜ン ワオ〜〜〜ン
狼女「むむ!!」
闇商人「ウルフの遠吠えだね…どう言う意味?」
狼女「何かの侵入を察知して連絡してる」
闇商人「大事になりそう?」
狼女「まだ分からん…ちょっと注意して聞いておく」
闇商人「情報収集はミルクちゃんに任せて良さそうだな…ミファとフーガ君も先に水浴びを済ませようか?」
少女「はーい!!」スタタ
闇商人「じゃぁミファから…」
賢者「まだ湯が沸いていませんよ?」
闇商人「汚れた衣類だけ先に洗っておこう」
『1時間後…』
ホクホク…
賢者「水浴び終わりました…久しぶりで気持ちよかったです…」ツヤツヤ
闇商人「すや…」zzz
狼女「ふごー…」zzz
少女「むにゃ…」zzz
少年「ぐぅ…」zzz
賢者「あれ?みんな食事をしながら寝てしまって?」ハテ?
ヒソヒソ
そろそろ効いてる筈だ…様子を見てくる
まだ早いぞ…水を流す音が聞こえてた…慌てるな
賢者「ハッ!!もしかして睡眠薬…」キョロ
---食事は今日の分はもう終わったんだが特別に部屋まで運んでも良いぞ?---
賢者「…」---そういえば変に待遇が良かったのもおかしい---
賢者「…」---こういう時は妖精さんにお願いして皆さんお休みに…---
賢者「…」---この感じは何処かに媚薬を隠してるかも知れない---
賢者「…」---媚薬があったら又エッチな楽しみが---
ヒラヒラ ヒラヒラ
呼んだぁ?
はい…この宿屋の中にいる皆さんは疲れている様なのでお休みになって貰おうかと…
オッケー!!ご褒美はいつもので良い?
はい…おっぱいを綺麗にして準備しておきます
いえーい!!じゃぁ行ってくるね〜
ヒラヒラ ヒラヒラ
『翌朝』
チュンチュン ピヨ
闇商人「ううん…」ムクリ
闇商人「はっ!!こんな所で寝てしまって…」キョロ
闇商人「イッコ!!何処に…あ…」ダダ
賢者「すや…」zzz
闇商人「…」---イッコだけベッドで寝てる…どう言う状況なんだ?---
闇商人「…」キョロ
闇商人「…」---いや…やっぱり状況がおかしいぞ---
闇商人「…」---どうしてイッコだけ普通に寝てる?---
ゴソゴソ ゴソゴソ
賢者「ううん…」モゾ
闇商人「あ…ごめん起こしてしまった」
賢者「カゲミさん?どうして私の体を?」
闇商人「いや…昨夜の記憶が無いから君の体を調べようかと…」
賢者「あ…ごめんなさい…一人でちょっとシテしまいました」
闇商人「あ…いやそれは良い…僕は床で寝てどうして君は普通にベッドで?」
賢者「皆さん睡眠薬で寝てしまった様なので私が妖精さんにお願いしてその他の人にも眠って貰いました」
闇商人「やっぱりそういう感じか…」
賢者「はい…この宿屋は安全では無い様です」
闇商人「まぁそれが分かったら対処できるとも言えるさ」
賢者「カゲミさん…良い物手に入れましたよ?」
闇商人「何だい?」
賢者「これです…小瓶をそのまま頂きました」スッ
闇商人「その瓶は…まさか媚薬?」
賢者「はい…これを使う事を想像したら我慢できなくなってちょっと一人でエッチを…」
闇商人「あたた…それは僕が預かる…君は勝手に使ってしまいそうだ」
賢者「そうですね…その方が安全ですね…でも私以外に使ったらダメですから…」
闇商人「それはそうと…この宿屋はどのくらい危険そうなのか分かるかい?」
賢者「悪い人は2人だけしか分かりません…店主ともう一人…」
闇商人「ヤン・ゴンの酒場と同じ様な感じかな?」
賢者「どうでしょう?その他のお客さんは普通の旅商人のように見えました」
闇商人「宿屋に居る全員が…と言う訳でも無さそうか…」
賢者「私達は衣類が少し変わっているので裕福に見えているかも知れませんね」
闇商人「ふむ…魔術師かも知れないと言う雰囲気でも出して様子を見るか…」
賢者「分かりました…」
闇商人「とりあえずミルクちゃん達も起こそう」
賢者「はい…」スタ
『数分後…』
むにゃー ごにょごにょ…
狼女「寝てしまった…何があった?」ゴシゴシ
闇商人「どうやら食事に睡眠薬が入っていた様だよ…イッコがそれに気付いて対処してくれたのさ」
狼女「そうか…気付かんかったな…それでこれからどうする?」
闇商人「子供3人なら怪しまれないで行動出来ると思うんだ」
狼女「ん?勝手に出歩いて良いか?」
闇商人「遠くに行かない範囲で…情報収集出来る?」
狼女「任せろ」
闇商人「食べ物は睡眠薬が入ってるかも知れないから注意だよ」
狼女「カゲミ達はどうするつもりだ?」
闇商人「魔術師かも知れないと言う雰囲気作りさ…そう思わせておけば襲われ難いと思う」
狼女「そうか…」
闇商人「基本…宿屋からは離れないつもりで居るから僕たちの食事を調達出来るならお願いしたい」
狼女「分かった…金クレ」
闇商人「ぁぁぁ金貨しか持ってないな…」
狼女「金貨で良いだろう」
闇商人「この町で主に流通してるのは銀貨なんだ…下手に金貨を出すと面倒ごとが起きる」
狼女「カゲミはケチだな…金無いと何も買って来れん」
闇商人「分かった分かった…使い終わった魔石…これはもう要らないからどうにか換金して使って」コロン
狼女「只の石ころか…」
闇商人「一応宝石だから欲しい人にはそれなりの値段で売れる」
狼女「まぁなんとかする…ミファとフーガも行くぞ!」
少女「はーい!!」
少年「うぃー!!」
『街道』
ガヤガヤ ガヤガヤ
ほうら買ってってくれぇ…収穫仕立ての芋だ
らっしゃいらっしゃい!野党を追い返すんだったら武器が必要だぁ!!買ってってくれーい
狼女「結構露店があるな…」キョロ
少女「ミルク!さっきの宝石頂戴」
狼女「ん?ミファがお金に変えてくるか?」
少女「私の方が上手に話せるから」
狼女「分かった…任せる」
少女「フーガこっち!!後ろ守って」
少年「イエッサー」スタタ
狼女「…」---なんだろうな…カゲミよりずっとミファとフーガの方が隙が無い---
お!!?嬢ちゃんどっから来たんだ?
どわーーなんだ宝石持ってるんじゃ無えか…どっから盗んで来たのよ
おいおいおい待て待て…なんだそのダガーは…
いやいや盗むつもりなんか無え…おいおいだから子供がダガーを使う物じゃ無え
ったく危無えガキだな…ほら銀貨だ
何ぃ?足り無え?いやいやいや待て待て待て…ダガーをこっちに向けるな…分かった分かった
これで勘弁してくれぇ…だぁぁ…その望遠鏡は売り物だ!!
あぁぁ分かった分かった…本当クソ危無えガキだな…持って行って良いから早くどっか行けぇ!!
スタタタ
少女「望遠鏡ゲット!!ミライが喜ぶ!!」シュタ
狼女「見てたぞ…取引の仕方はアランに教えて貰ったのか?」
少女「そう…昔からアランはこうやって買い物してたから真似しただけ」
狼女「フーガに後ろを守らせる意味は?」
少女「それは私がお手伝いロボだった時にやってた事…衛兵が来ないか見張ってる」
狼女「そうか…銀貨どのくらいになった?」
少女「袋に半分…多分50枚くらい」
狼女「よし!!他に買い物するぞ」
少女「ミルクも私と同じに出来る?」
狼女「やってみる…後ろはミファが守って」
少女「分かった…フーガ援護!!」
少年「うぃーっす!」スタタ
『昼過ぎ_町外れ』
ドタドタ ガヤガヤ
またあの毛色の違う大型のウルフだ…シカをやられん様に建屋の中に入れておけ!!
弓だ!!弓持ってこーい!!
狼女「なんか騒がしいな」
少女「あそこ!!一匹ウルフが彷徨いてる」ユビサシ
狼女「ふむ…どこの犬種か分からんな…群れから逸れたやつは大体話が出来んから近寄らん方が良い」
少女「あんな大きなウルフも居るんだね?」
狼女「ウルフじゃ無いかも知れん」
ヒソヒソ ヒソヒソ
狼女「むむ!!ミファ…逃げる準備だ」
少女「うん聞こえた…狙ってるの私だね…髪の色で貴族の子に見えてる見たい…」
狼女「なんかこの町は気が抜けんな…走るぞ」
少女「ミルク待って!!人目の付かない場所に入るのを待ってるみたい」
狼女「どうする?」
少女「人目に付けば良い…見てて」スタタ
狼女「ちょ…フーガ良いのか?やらせて…」
少年「大丈夫…俺っちも爆弾握ってるから」チラリ
スタタタ
怪しい男「おっと?」
少女「助けて〜〜〜!!おじさん助けてぇぇぇぇ!!」
怪しい男「おいおいおいおいおいおいおい…」タジ
少女「誰かに狙われてるのぉぉぉぉ!!誰か助けてぇぇぇぇ!!」
怪しい男「騒ぐな騒ぐな…俺は何もして無え…」タジタジ
少女「嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」
怪しい男「おい!!いい加減にしやが…」グイ
スラーン チャキリ
怪しい男「うお!!?」ギク
少女「頸動脈…ちょっと切っただけでアウト…」ジロリ
怪しい男「ぐ…な…なんだお前…ただのガキじゃ…」
ブスリ タラー
怪しい男「ぐあっ!!」
少女「動くと間違っちゃうかも…」
怪しい男「あががが…ま…魔術師…か?」
少女「監視してるから…」
怪しい男「か…監視…」
少女「じゃ…」スタコラ ピュー
ザワザワ ザワザワ
なんだなんだ?何か有ったのか?
子供が誘拐されそうになったみたい
おい!!血が出てるぞ…大丈夫か!?
『帰り道』
シュタタタ
少女「ふぅ…ここまで来れば大丈夫」
狼女「…」ジロリ
少女「ん?」
狼女「ミファ…懐に何入れた?」
少女「あ…思わず盗んじゃった…」ジャラ
狼女「お前…ミファじゃ無いな?」ギロ
少女「どうして?」
狼女「なんかおかしい…」
少女「そう言うミルクも前と違う…」
チリン チリーン
狼女「ミスリルの鈴…」ピク
少女「これアランに貰った大事な鈴…良い音するでしょ?」チリーン
狼女「ん?もしかして音でアランと繋がってるのか?」
少女「わかんない…でもこの鈴の音でいつもアランを思い出す」
狼女「私の破壊の剣もハハと繋がってる…同じと言うことか?」
少女「どうなんだろ?」ハテ?
狼女「ミファの中にアランが居るのか?」
少女「分かんない」
狼女「おいアラン!返事しろノロマ!!」
アオーーーーン ワオーーーーーーン
狼女「むむ!!昼間から遠吠え?」キョロ
少女「何の合図?」
狼女「襲撃だ…侵入者排除の合図だ」
少女「危ない?」
狼女「数が分からんし侵入者が何なのかも分からん…返事の合図で色々起こるぞ」
少女「ちょっと宿屋に戻って備えた方が良さそう」
狼女「走るぞ」シュタタ
『宿屋_大部屋』
ガチャリ バタン
闇商人「あ!!やっと帰って来たか…心配してたよ」ホッ
狼女「色々あったんだ…露店で食べ物買ってきたぞ」ドサドサ
闇商人「お?お腹が空いてきた所だよ」
狼女「チーズが特産みたいだ…芋と一緒に食べると美味いぞ」
闇商人「イッコ!!チーズが美味しいらしい…先に食べて良いよ」
賢者「はい…何も食べて居なかったのでお腹がペコペコです」パク モグ
闇商人「ミファが持ってるのは…望遠鏡かな?」
少女「そうだよ…これミライのお土産」
闇商人「フーガ君は何を買ったのかな?」
少年「水銀と包帯…」
闇商人「また水銀なんか何に使うつもりだい?」
少女「水銀もミライのお土産だよ…欲しいって言ってたから」
賢者「あ…使い道知ってます…気球の高度を測定する装置を作るとか…」
闇商人「あーーーーなるほどね」
狼女「ところでカゲミ…何か情報は聞けてないか?」
闇商人「イッコが盗み聞きで周辺の事情を聞いたくらいだね…」
賢者「北の方でドラゴンが飛び回ってるという話も聞きましたよ」
闇商人「多分異形の魔物を追ってるのさ…ミルクちゃんの方は?」
狼女「アランの情報は何もない…でもちょっと気になる事がある」
闇商人「…と言うと?」
狼女「昨夜ウルフの遠吠えを聞いただろ」
闇商人「あぁ…侵入者を察知した連絡だったっけ?」
狼女「さっき襲撃の合図を聞いたんだ…これから何か起こりそうだ」
闇商人「ウルフの群れが町を襲撃する?」
狼女「分からん…この町の奴らは装備がしょぼいから結構な被害が出るかも知れんぞ」
闇商人「それは備えて置かないとね」
狼女「ウルフに話を聞いて来ても良いけど…逸れウルフも居るみたいだから一人じゃ行けんな」
闇商人「逸れウルフ?」
狼女「たまに群れを抜けた逸れウルフが居るんだ…そういう奴は全然話が通じなくて危ないんだ」
闇商人「人間の中にもそういう人は居るね…関わらないのが一番さ」
狼女「どうする?宿屋に閉じこもっておくか?」
闇商人「ウルフ相手ならそれが一番良さそうだ」
狼女「ウェアウルフが混ざってるとそうも行かんけどな」
闇商人「まぁしばらく様子を見よう」




