75.気球で…
『キャラック船』
ドタドタ ギシギシ
航海士「お!?偉い早く戻って来たんやな?」
闇商人「あぁこっちのことが心配でね…ミルクちゃんとかどうなったかな?」
航海士「ミルクは見とらんがミファとフーガやったら一回戻って来とったで?」
闇商人「また何処かに行っちゃったかな?」
航海士「なんや近くに基地作る言うて色々持って行きよったがな?」
闇商人「基地…」
賢者「何処ら辺とか聞いて居ないですか?」
航海士「近くやから心配せんでええ言うとったでそれ以上聞かんかったわ」
闇商人「イッコ…妖精とか鳥に行き先を聞いて貰えないかい?」
賢者「分かりました…鳥さんは朝にならないと話を聞けないと思います」
闇商人「仕方無いね…それで話は変わるけど取引は順調なんだろうか?」
航海士「順調っちゃ順調なんやが予想しとった通り買い付けがなかなか進まんわ」
闇商人「どうもシン・リーンは今年の夏に大規模な魔物掃討をやろうとしてるんだよ」
航海士「なるほどな?それでレーションがあまり出回っとらんのやな」
闇商人「ちょっと嵩張るけど小麦とかその他の食材の入手に切り替えた方が良いね」
航海士「小麦かいな…まぁしゃーないなぁ…切り替えていくわ」
闇商人「ううむ…今の話だと物資調達は1ヶ月くらい掛かりそうだなぁ…」
航海士「この船はここで待機やろ?俺らもそう慌てとる訳や無いからゆっくりでもかまんがな?」
闇商人「いや僕が身動き出来ないなと思ってね」
航海士「また何処か行くつもりなんか?」
闇商人「結論を言うとアランを探しに行かなきゃいけないと思ってね」
航海士「おっと!!そうや忘れとった…旧セントラル領なんやがバレンシュタイン卿が目撃されとる話があるんよ」
闇商人「ええ!?」
航海士「1年ぐらい前やな…ノ・ヴォちゅう大昔の町や」
闇商人「地下じゃなくて地上に出てる?」
航海士「そうみたいやな?足取りを追う参考になったか?」
闇商人「夏の間に船でそこまで行けると思う?」
航海士「船では無理や…地球を反対側から回って行けば行けんことも無いやろうが時間がかかり過ぎるわ」
闇商人「じゃぁ気球なら?」
航海士「そら何とも言えんが南極圏に入っとるような所を気球で行けるとは思えんぞ?」
闇商人「南極圏…気球じゃ厳しいか…」
航海士「そや…あっちゅうまに球皮痛んで飛べんくなるで?」
闇商人「ふうむ…旧セントラル領の何処かで地上に出てるか…」
航海士「なんや気球の話が出るっちゅうことは入手したんやな?」
闇商人「まぁね…向こうの大陸の気球だから長距離飛べるんだよ」
航海士「ほほー西の森を飛び越えれば旧セントラルへは行けそうやな」
闇商人「このまま西に向かうと何処に辿り着く?」
航海士「ト・アル町かシケ・タ町だとは思うんやが今どうなっとるか情報が無いんよ…独立自治領になっとる筈や」
闇商人「ちょっと地図で確認してみる」
航海士「内陸の方は昔とあまり変わっとらんでかなり正確な筈やで?」
『ドワーフの世界地図』
バサッ ペラペラ
闇商人「ええと…ふむふむ…」
賢者「気球で森を飛び越えるつもりですか?」
闇商人「割と安全に行けそうな気がしてね…」
賢者「ミサイルで撃ち落とされるという話はどうなったのでしょう?」
闇商人「こっちの大陸はまだ気球が運用されてるから行けるんじゃ無いかと思った」
賢者「安全な区間だけという話でしたよね」
闇商人「それもあるけど気球が少なくなった原因は魔石の供給が少なくなったと言うのが一番の原因さ」
賢者「本当はそれほど危険では無いという事ですか?」
闇商人「まぁリスクはある…稼働状態の古代遺跡に近づかない限り大丈夫だという見方も出来るんだよ」
賢者「近づかなければ良い…と言うことは高高度なら安全だと言う訳ですか…」
闇商人「そう…行けそうな気がするでしょ?」
賢者「ドラゴンが撃ち落とされた様な話は聞かないのでそれ以上の高度なら問題無いのかも知れませんね」
闇商人「ええと…南極圏から離れる感じで行くとするとシケ・タ町かぁ…そこでちょっと情報収集してみるかなぁ」
賢者「直線距離だとシン・リーンまで飛ぶのとそう変わらないですね」
闇商人「うん…休まず飛んであの気球なら2〜3日くらいかな?」
賢者「では行く想定で暇つぶしの方法を考えておきます」
闇商人「まぁ行くとしてもミルクちゃんの行方の方が先だから先にそっちを片付けないと」
賢者「はい…ちょっと荷室に降りてどんな資材を持って行ったのか確認してきます」
闇商人「そうだね…頼むよ」
『1時間後_船尾楼』
ガチャリ バタン
闇商人「ん?おかえり…宿屋に水浴び行った割に早かったね?」
女オーク「気になる情報を聞いて来たわ」
闇商人「お?何だろう?」
女オーク「西にある廃村にウェアウルフが出るという噂…」
闇商人「それはまさか…ミルクちゃん…」
女オーク「やっぱりそう思うわね…合わせてそこにロストノーズと思われる女が隠れてるらしい」
闇商人「なんだって!?」
女オーク「ウェアウルフはその女の仲間だと言うことになってる…おかしくない?」
闇商人「どういう事だ?ミルクちゃんでは無いと言うことかな?」
女オーク「ちょっと確認に行ってみたいのだけれど…」
闇商人「相手がロストノーズだと正面から行くのはマズイね…下手に動くと狙撃を喰らってしまう」
女オーク「じゃぁ気球を使って真上から偵察」
闇商人「うん!それで行こう」
女オーク「場所が分からないのだけれど…」
闇商人「僕も分からないな…しかも夜だと暗くて探せない」
スタスタ
賢者「カゲミさん!荷物で無くなってる物がやっと分かりました」
闇商人「お?何かな?」
賢者「多分ミルクちゃんの着替えが一式無くなっています…それからレーションが減っていますね」
闇商人「ふむ…やっぱりウェアウルフになって着替えが必要になった線が強いな…」
女オーク「でもどうしてロストノーズと一緒に行動してるのか…」
闇商人「まぁ明るくなってから様子を見に行くしか無いね」
女オーク「ミライに気球を動かすことを伝えに行ってくるわ」
闇商人「出発は日の出前…早朝にしよう…それまで休憩しておいて」
女オーク「じゃぁ荷物を持って気球の方で待ってる」
闇商人「分かった…日の出前にそっちへ向かう」
『早朝_気球』
シュゴーーー フワフワ
闇商人「お?もう飛ぶ準備が終わってる?」スタ
剣士「待ってたよぉぉ!!乗って乗って!!」
賢者「もしかしてミライ君は寝ずに準備したのですか?」キョロ
剣士「楽しくってさぁ…全然眠くならないよ」
闇商人「もうクロスボウ設置したんだね…ハハ」
剣士「えへへ…どうせ船に沢山余ってるからさぁ…まぁ話は後だよ!!乗って乗って!!」
闇商人「そうだね…明るくなる前に移動してしまおう」ヨッコラ
剣士「よぉぉぉし!!一気に上昇するテスト!!ロープ外すよぉ!!」シュルシュル
フワフワフワフワ スイーーーーー
闇商人「おおおおおお!!」
剣士「やったぁ!!大成功だ!!」
賢者「一気に飛び上がりましたね…」
闇商人「いやそれにしても一晩で随分揃えたね…クロスボウ2台にライフルまで設置済みか…」
剣士「ライフル弾は24発の弾倉一つしか持って来てない」
闇商人「そのライフルってどうしたの?」
剣士「使ってないアサルトライフルをもう少し精度が出るように改造したんだよ」
闇商人「どのくらいの精密射撃を想定してる?」
剣士「どうだろう?600メートルとか800メートルくらいじゃないかなぁ?」
闇商人「800メートルを狙えれば十分か…というか主力で使える」
剣士「ライフリングを精度が出る様にキツめに作ってるから連射出来ないと思って」
闇商人「壊れやすいと言う事ね…まぁ仕方ない」
剣士「砲身が熱くならない様に気をつければ2〜3発の連射は出来ると思ってる」
賢者「クロスボウのボルトが見当たりませんけど?」キョロ
剣士「それ爆弾の投擲専用…爆弾も20個くらいしか持って来てない」
闇商人「ハハ…準備は良いけど使うような場面があるのだろうか?」
剣士「まぁまぁ…僕の趣味だから」
闇商人「その他の工夫は?」
剣士「球皮と籠を繋いでたロープを全部金属糸に変えて軽量化したくらいかな〜水食料は完備だよ」
闇商人「いやぁスゴイね…要所要所細工もあるなぁ」ジロジロ
剣士「えへへ…もう楽しくってさぁ」
女オーク「これ西の方角に向かえば良いのよね?」
闇商人「あぁそうだね…地図で確認したけど30Kmは無さそうだよ…気球なら直ぐに見えて来る筈」
女オーク「ちょっと暗くて見にくいけれど…多分あそこね」
闇商人「もう目視で見えてる?」
女オーク「建屋が少し…高度上げながら向かうわ」
『西の廃村_上空』
フワフワ
闇商人「この高度だと望遠鏡でも人が居るかどうか分からないな…」
女オーク「少しづつ下げてるからよく探して」
剣士「真上からこんな風に近づかれると僕でも気付かないなぁ…」
賢者「あ…煙が出てる建屋がありますね」
闇商人「どこどこ?」
賢者「崩れた教会の様な建物の横です」
闇商人「遠視はやっぱりイッコに任せた方が良いなぁ…」
賢者「建屋の中だと誰が居るのか分からないですね」
闇商人「ちょっと今の高度維持してしばらく様子見ようか」
剣士「近づくと気付かれちゃうかな?」
闇商人「相手が何人いるのか?とか情報が何も無いから注意した方が良い」
『1時間後』
フワフワ
賢者「あ…見つけました…建屋から出て来たのはフーガ君です」ユビサシ
闇商人「おお!!無事だったね…」ホッ
賢者「枝を拾い集めている様ですね」
闇商人「その建屋で基地でも作っているのだろうか?」
賢者「どうでしょう?…目視出来たので妖精さんにお願いして声を伝えられます」
闇商人「お願い…僕たちが迎えに来てると伝えて」
賢者「分かりました」
闇商人「ゆっくり高度下げて行こうか」
女オーク「分かったわ」
剣士「隠れてるロストノーズの人ってどうなったんだろうね?」
闇商人「まぁ気になるけれどフーガ君が自由に行動出来てると言う事は安全だと言う事さ」
賢者「フーガ君がこちらに気付きました…ミファも建屋から出て来ましたね」
剣士「ねぇ!なんか向こうの方を指差してる」ユビサシ
賢者「え?」キョロ
剣士「何かある?」
賢者「ええと…まだ遠いですけれど港町の方から馬車がこちらに向かっている様ですね」
闇商人「これはどう言う状況だろう?」ハテ?
女オーク「あ…そういえば昨日冒険者達がウェアウルフとロストノーズを追うような話をしてるのを聞いたわ」
闇商人「なるほど…ここはサッサと逃げたほうが良さそうだね」
賢者「ミルクちゃんの姿が見当たりませんけれど…」
闇商人「とりあえず降りて事情を聞こう」
『西の廃村』
フワフワ ドッスン
少女「カゲミーー!!」スタタタ
闇商人「ちょっと状況が分からないんだ…ここで何して居たんだい?」
少女「ミルクがここにロストノーズの人が隠れてるって聞いて調べに来たんだよ」
闇商人「というかミルクちゃんは何処にいるのかな?」
少女「寝ちゃった」
闇商人「それと港町から馬車がこちらに向かって来ている様だけど」
少女「あああああの人の言う通りだ」
闇商人「あの人?」
少女「ロストノーズだと思ってた人はミルクの知った人だったんだよ」
闇商人「え!?」
少女「名前はミッチ…鼻の無いインチキ魔法使い」
闇商人「もしかしてその人と一緒だったのかい?」
少女「そうだよ…あと2人男の人がいるけどミルクに噛まれて大怪我して寝てる」
闇商人「どうやら結構危ない事に首を突っ込んでいた様だね」
少女「ねぇねぇ…この気球にみんな乗れるかなぁ?」
闇商人「みんな…と言うのはそのミッチとかいうインチキ魔法使い達も一緒にと言う事かい?」
少女「噛み付いて大怪我させちゃたのはミルクが悪いんだよ」
闇商人「じゃぁ港町に送り届けるくらいなら良いかもね」
少女「それはダメ…ミッチはお尋ね者になっちゃって逃げてるみたい」
闇商人「ん?もしかしてロストノーズに間違えられている?」
少女「そう」
闇商人「ううん…まいったね」
ヨロリ ズルズル…
ソルジャー「せ…せめてミッチだけでも逃して貰いたい…」フラフラ
闇商人「んん?あれ?何処かで見た様な…」
ソルジャー「ミッチ!!助かるかも知れない!!」
コソーリ スタスタ
インチキ魔法使い「ほ…本当?」ヒョコ
闇商人「あれ?もう一人もなんか何処かで見た気が…」
少女「ミルクが言ってた…悪いランカー冒険者だった人だって」
闇商人「ああああああ!!あの時の…」
ソルジャ「どうも縁がある様だ…フフフ」ニヤリ
闇商人「一人逃すと言っても一体何処に?」
ソルジャー「シン・リーン領では何処に行ってもお尋ね者だから森の向こう側に…気球なら行ける筈」
闇商人「悪いけど土地勘が無いしそもそも僕達に利益が無い…まぁ怪我をしたと言うなら治療代は払っておくよ」
ソルジャー「頼む…他の高ランカー相手では俺達では敵わないんだ…ミッチだけでもどうか…」
剣士「カゲミさん…1人だけなら運べそうだよ」
ソルジャー「俺はシケ・タ自治領の出身で顔が効く…ミッチも同じだから到着出来れば移送の代金もどうにか出来る筈」
闇商人「代金をクレと言ってる訳では無いのだけれど…」
賢者「カゲミさん…案内人が一人出来たと思えば無計画で行くよりも安全かも知れません」
闇商人「ふうむ…案内人ね…」
女オーク「港町から向かってる馬車の速度を考えるともう時間が無いわ…早く決めて移動を」イラ
少女「フーガ!!ミルクを背負って来て!!」
少年「アイアイサー」スタタ
ソルジャー「ミッチ…ここで一旦離れてしまうけれど俺達も気球を入手してシケ・タ自治領へ向かうから心配しないでくれ」
インチキ魔法使い「分かった…合流は前のアジトで?」
ソルジャー「そうなる…とりあえず追っ手は上手く誤魔化して俺たちも逃げる」
闇商人「…なんかややこしい事になってしまったな…まぁ良いや…急いで此処を離れよう」
剣士「乗って乗って!!」
シュゴーーーーー フワフワ
『上空_森へ』
ゴソゴソ ガサガサ
剣士「よしよし…ハンモックの追加は簡単だから…」グイグイ
闇商人「いやぁ…人数増えると流石に狭い…」
剣士「そこはハンモックで横になってもらって邪魔にならない様にして貰うしか無いかな」
女オーク「ねぇ…このまま森を横断する感じで飛んで良いの?」
闇商人「進路は北西…出来るだけ高高度で」
狼女「ううん…」パチクリ キョロ
少女「あ…ミルク起きた」
狼女「あれ?何処だ此処?なんでカゲミ居る?」ゴシゴシ
闇商人「君を探して来たらいろんな事に巻き込まれていた様でね…何が有ったのか聞かせて貰いたいんだけど…」
狼女「アランの手掛かり探してるだけだ…ロストノーズが潜んでると聞いて調べに来たら悪いランカー冒険者が襲ってきた…これで通じたか?」
インチキ魔法使い「襲って来たのはそっち」
狼女「なんでこの女居る?アランの敵だぞ」
闇商人「まぁ…大体事情は分かった…それでアランの手掛かりは何か見つかったかい?」
狼女「無い…ロストノーズが近くにいる事が分かって聞き出そうと思ってたんだ」
闇商人「近くに?」
狼女「…」ユビサシ
インチキ魔法使い「いや…私違うし…」タジ
闇商人「ヤレヤレ…ロストノーズはまぁ良い…どうやら麻薬の密輸ルートを使って武器弾薬は運び込まれてしまったと思って良い」
狼女「やっぱりウルフ達の言った通りか…アランは関わって無いのか?」
闇商人「関わっているという情報は無いね…でも旧セントラル領で目撃情報があるらしい」
狼女「む!!そこに向かってるか?」ガバッ
闇商人「まぁ南極圏に近いから気球では行け無さそうなんだ…とりあえず旧セントラル領まで行って情報が聞けないかと思ってね」
狼女「それで気球か…やっとカゲミも動く気になったか」
闇商人「やっとってどう言う事だい?」
狼女「カゲミも動きがノロイ!ウルフ達は危機を察知してもう動いてるぞ」
闇商人「危機?もしかして今年の夏にシン・リーンが魔物掃討を計画してる事かな?」
狼女「逆だ…ウルフが言うには北の方でもう色々起きてるらしいぞ」
闇商人「おっと…情報がまだ港町まで届いて居ないと言う事か…」
狼女「ミライの爺はどう言うつもりなんだ?何か聞いてないのか?」
闇商人「本丸は森の南部にある漁港を占拠するつもりらしい…どうもそこに天秤を運ぶ必要があるのだとか」
狼女「天秤?何の事だ?」
闇商人「さぁ?シャ・バクダ錬金の道具らしいけどどうして運ぶのか分からない…そこで何か作るのかもね」
狼女「ふむ…まぁ良い…やっとアランの足取りが分かったか…近くにきっとウルフ達が居る筈だから話が聞ける」
闇商人「ミルクちゃん…一つ警告しておく…破壊の剣で開かずの扉を破壊しても爆発するのは極一部だ…異形の魔物を全滅させる事は出来ない」
狼女「…」ジロリ
闇商人「復讐を計画するのはまぁ良い…でも犬死にしてしまう行動は止めるんだ…死んでしまっては何も成せないから」
狼女「何で急にそんな話する?」
闇商人「ミルクちゃんの行動原理は復讐だと分かるからだよ…アランはそれをやってやると言い切った…だから君はアランに拘っている…違うかい?」
狼女「少し違う…チチもハハもミルクの中に居る事に気付いた…なんか分かる…世界の扉を開けるのはアランだって分かるから拘ってる」
闇商人「おっと君からそんな言葉が出てくるか…」---大人になってる---
少女「そうだ!!アランが全部解決してくれる!!」
闇商人「フフ…僕は少し考えが浅かったかもね…よし!!アランを探すぞ!!」
狼女「それなら協力してやってもいいぞ」
闇商人「頼むよ…」---アランが鍵を握ってるか---
『森の上空』
カリカリ シュッシュ
剣士「こんなもんかなぁ…」シュッシュ
賢者「何を作っているのですか?」
剣士「ん?これね…木製の付け鼻だよ」
賢者「あぁ…ラスさんと同じ物ですか」
剣士「ええと…誰さんだったっけ?」
インチキ魔法使い「え?ミチル…ミッチって呼ばれてる」
剣士「じゃぁミッチさん…これ装着してみて」スッ
インチキ魔法使い「鼻…」
闇商人「魔法使いなら変性魔法とかいうので姿を変えられるのでは?」
インチキ魔法使い「それは高位魔法…そしてシン・リーンでは禁呪に指定されてる」
闇商人「なんだ魔術師はみんな姿を変えてると言うのにね」
インチキ魔法使い「使える人が限定されてると言う方が正しい」
剣士「早く装着してみてよ」
インチキ魔法使い「あ…ありがとう」ゴソゴソ
闇商人「それでミッチ…君はどんな魔法を使うのかな?」
インチキ魔法使い「ええと…杖が無ければ何も…」
闇商人「じゃぁどんな杖を持っているのかな?」
少女「あ…知らないで全部薪にしちゃったかも…燃やしちゃった」
闇商人「ぶっ…魔法の杖って結構高価なんだけどね…じゃぁ何も出来ない訳か」
インチキ魔法使い「占いなら少し…」
闇商人「占いねぇ…」ジロリ
インチキ魔法使い「はい…それも実はインチキでして…」
闇商人「本当は君…魔法使いとかじゃなくてペテン師とかそう言うのじゃ無いのかい?」
剣士「アハハ…カゲミさん本人を目の前にして厳しい事言うんだね?」
闇商人「まぁこの人には気球を魔法で撃ち落とされた事があってね…こうして会話してるのも変な感じだよ」
インチキ魔法使い「私の鼻を削いだあの男に会ったらギッタギタのメッタメタに!!」ぐぬぬぬ
闇商人「まぁ君が一億人居ても敵わないから諦める事だね」
インチキ魔法使い「い…一億?」
狼女「十億でも無理だ…ノロマすぎて止まってる様にしか見えん」
闇商人「ハハまぁ良いや…それで君はシケ・タ自治領とはどう言う繋がりが?」
インチキ魔法使い「繋がりと言うか出身地がシケ・タ自治領だと言うだけ…それ以上説明し難い」
闇商人「僕はシケ・タ自治領の事を何も知らないのさ…教えてもらえるかな?」
インチキ魔法使い「ええと…大昔はセント・ラルとシャ・バクダとの交易拠点だった…今は…」
旧セントラルが崩壊した後に独立自治領になって陸路交易の最南端だと思う
領主の名前は覚えてない…昔はセントラルの奴隷商を統括していた貴族だったとか…
今でも罪人を集めて奴隷にして働かせる事で成り立ってる最悪な自治領だけど
奴隷では無い人の生活環境はそんなに悪く無い
闇商人「気球で行って問題無いのかな?」
インチキ魔法使い「さぁ?それは私の扱い方次第かも?」チラリ
闇商人「あのね…その手には乗らないよ…別に此処から突き落としてサヨナラしても良い訳さ…飛んでみる?鳥になれるかも知れないよ?」フフ
インチキ魔法使い「ひぃぃ…」ゾゾゾ
闇商人「何だろうなぁ…この小者感…」
狼女「カゲミ!この女はミルクの奴隷にして良いか?」
インチキ魔法使い「わ…私が奴隷?」
闇商人「まぁ良いんじゃない?上手い事話を聞き出せれば僕はそれで良い…気球が狭いからサッサと降りて欲しいと言うのもある」
狼女「任せろ…コラ奴隷!!背中を撫でろ」
インチキ魔法使い「撫でる?」
狼女「落とされたいか?サッサと撫でろ」
『巨大な湖』
シュゴーーー フワフワ
剣士「見て見て!!不思議な色の湖がある…鏡みたいだ…」
闇商人「あぁアレはその昔隕石が落ちた後に出来た物らしいよ」
賢者「私知っていますよ…隕石ではなく核ミサイルですね」
闇商人「へえ?どうして君が知って?」
賢者「母が教えてくれました…此処の他にあと3つあるそうです」
闇商人「核ミサイルって…超古代文明を滅ぼしたインドラの矢の事かな?」
賢者「インドラの矢とは違いますね…でもこれほど大きな爆発を起こすミサイルだったという事です」
剣士「すごいなぁ…こんなに巨大な穴が出来ちゃうんだ…」
賢者「地表に大きなクレーターが出来た後に水が溜まってしまったのですね」
インチキ魔法使い「シケ・タ自治領はこの真西…」ボソ
闇商人「お?」
剣士「地図とか持って来てないから方角間違う所だったね」
闇商人「やっと役に立ったか…」
インチキ魔法使い「もう手が疲れてしまったのだけれど…撫でるの終わっても?」ナデナデ
少女「むにゃ…」zzz
闇商人「さぁね?ミルクちゃんに確認しないことには分からない」
インチキ魔法使い「休むと起きて文句言われそう…」
女オーク「進路変えるわ」
インチキ魔法使い「…」ジロジロ
女オーク「ん?何か?」
インチキ魔法使い「この気球はどうやって進んで?」
闇商人「魔法だよ…エセ魔法使いじゃ分からないだろうね」
インチキ魔法使い「魔法…」
闇商人「そんなに気になるかな?」
インチキ魔法使い「旧式の気球だと思っていたら内装も意外としっかりしているし…」
闇商人「ハハーン…盗もうと考えてるな?それで動かし方を知りたい訳だ」
インチキ魔法使い「そそそそそ…そんな事…かか考えて無い」
剣士「なんか分かりやすい反応だなぁ…この気球はね?金貨200枚で買ったのをちょっと綺麗にしただけだよ」
インチキ魔法使い「やっぱり普通の気球?」
剣士「うん!!只の貨物用だよ」
インチキ魔法使い「シケ・タ自治領で気球は珍しいから盗まれてしまうかも知れない…」ボソ
闇商人「いやいや君が盗むつもりだったよね?顔に書いてある」
インチキ魔法使い「えええ!!?」ワタワタ
剣士「何だろうすごく反応がわかりやすいアハハハ」
闇商人「どうして君みたいなのが高ランカー冒険者だったのか…」
インチキ魔法使い「エリックがパーティに居たから…」ボソ
闇商人「エリック?誰の事だろう?別れて来た2人のどちらかかな?」
インチキ魔法使い「どちらでも無い…ちょっと前にパーティを抜けてしまった」
闇商人「もしかしてアサルトスタイルの彼かな?」
インチキ魔法使い「そう…」
闇商人「なるほどね…事情は察したよ」---彼がシン・リーンの魔術師だった事を知らない訳か---
インチキ魔法使い「エリックが居ればこの気球は私達が…」ぐぬぬぬ
闇商人「あのね…何というか君はかなりのお馬鹿さんだな…」
インチキ魔法使い「エリックがパーティを抜けた理由を知りたくない?」
闇商人「全然興味ないな」
インチキ魔法使い「ロストノーズに関わっているとしたら?」チラリ
闇商人「…」ジロリ
インチキ魔法使い「金貨2枚と食事…」
闇商人「どんな情報を握っているんだろうね…気になる話ではある…」
剣士「金貨2枚程度なら良いじゃない?」
闇商人「よし!大した話じゃなかった場合金貨を渡して気球から降りて貰おう」
インチキ魔法使い「え!!?降りるってもしかして…」
闇商人「あのね?君は自分が置かれてる状況を少し考えた方が良い…君は取引できる様な立場じゃ無いよ」
インチキ魔法使い「ぐぬぬぬ…」
闇商人「ほら?金貨2枚だ…どんな話が聞けるのか楽しみだ」チャリン
インチキ魔法使い「エリックは地下組織で動いてるロストノーズと電脳化した物達の関係を調べる為にパーティを抜けた…」
電脳化した物達は異形の魔物を陰で操って世界中で色々起こしていたらしい
でも1年くらい前から電脳化した者達は姿を消してしまった
その行方を追っているのがロストノーズで私はそのロストノーズに間違えられてこんな事に…
闇商人「ん?それだけ?」
インチキ魔法使い「もしかしてこの情報は超重要情報じゃない?」ビクビク
闇商人「まぁ…君にしては上出来と言った所ではある…」
剣士「ねぇカゲミさん…古代人が1年前から姿を消したって…これ初耳だよね?」
闇商人「そうだね…寿命が来てしまったのか…仲間割れを起こしたのか…エリックという人はそういう事を調べる為にパーティを抜けたんだ…」
インチキ魔法使い「そうそう…そういう事が言いたかった…これで気球から降りなくても良い?」
剣士「はい!!約束通り食事だよ…レーションだけど」ポイ
インチキ魔法使い「ハァァ…やっと食べ物に…」パクパク モグ
闇商人「古代人が行方をくらました…どういう事だろう?」
剣士「なんかアランさんが関わってる気がするなぁ」
闇商人「もしかすると異形の魔物が縮小して行ったのは古代人が居なくなってしまったからかも知れないね」
賢者「こういう事ではないでしょうか?ロストノーズは古代人を駆逐する為に銃器を持ち込んだ…でもそれは異形の魔物の手に渡ってしまった」
闇商人「それは銃器を向ける先が古代人ではなくその他に向けられると言う事かな?」
賢者「はい…つまりロストノーズはすでに異形の魔物の手によってやられてしまった可能性があります」
闇商人「なるほど…武器を運ばせて用が済んだらポイ…やりそうな事だよ」
闇商人「でも確かに…商工会の中に入り込んでる古代人がロストノーズに偽の懸賞金を掛けるのもそれで説明できるな…」
闇商人「いつまでも命を狙ってくるロストノーズをどうにかしたかった訳か…」ブツブツ
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『数日後_シケ・タ自治領付近』
シュゴーーー フワフワ
剣士「見えてきた…多分あそこだよ」ユビサシ
闇商人「ちょうど日が落ちて暗くなるから近くまで行って降りられそうだね」
女オーク「私とミライは気球で待機…で良いのね?」
闇商人「うん…上空で周遊していて貰えば良い…気球発着場とか安全に降りられそうなら妖精で連絡するよ」
剣士「おけおけ!じゃぁ高度下げていくね」
インチキ魔法使い「ええと…私の扱いは?」
闇商人「気球を降りた後は自由だね…何処に行っても構わないさ」
インチキ魔法使い「フフ…何も起きなければ良いけど…」
狼女「おい!なんだその言い方は!!何かあったら又噛むぞ!!」
インチキ魔法使い「ひぃぃぃ…」ブルル
闇商人「最後に教えて欲しいかな…安全に休める宿屋を教えて欲しい」
インチキ魔法使い「金貨2枚…」
闇商人「本当…君は小者だな…使い終わった魔石でどう?」コロン
インチキ魔法使い「貰った!!酒場でコブラ酒を頼む…あと人数分のタンブラー…これで安全な場所に案内されると思う」
狼女「!!?」
闇商人「ちょっと待った待った…」
狼女「オマエエエエエ!!それを安易と他人にバラすなぁぁ!!」ガブリ
インチキ魔法使い「いだぁぁぁぁい!!」ジタバタ
闇商人「ええと…まさか君はそう言う関係者だという事なのだろうか?」
スラーン チャキ
闇商人「ええ!!?」タジ
インチキ魔法使い「ニードルダガー貰った!!私のターン…この武器は暗器…意味わかる?」チクリ
闇商人「痛っ…」ギク
狼女「カゲミ何やってる!!武器取られたじゃないか!!」
インチキ魔法使い「あんた達何者?同業?」
狼女「お前ギルドの密偵だったか!安全な場所で囲ってミルク達をどうにかするつもりだったな?」
インチキ魔法使い「あぁぁアテが外れた…」ポイ カラーン
闇商人「あいたたた…ちょっと血が出ちゃったじゃないか…」ツツー
狼女「アテが外れたってどう言う事だ?」
インチキ魔法使い「察しの通り…ギルドで囲ってしまおうと思ったけれど…まさか同業だったとは思わなかっただけ」
闇商人「君は今まで小者を演じてたという事かな?」
インチキ魔法使い「小者小者って…こう言う世渡りもあると言うだけ…本職は盗賊よ」
狼女「なら話が早い…保護しろ」
女盗賊「悪いけど私はギルドを離れてしまった立場だから手土産無しでギルドに口利きは出来ない」
闇商人「なるほどね…僕たちを手土産に古巣へ戻るつもりだったか」
狼女「お前…シルヴァの派閥だな?」
女盗賊「事情を知ってると言うことは…そちらはリカオンの側ね…」
狼女「もう一回噛み付いてやる!!」
闇商人「まぁまぁミルクちゃん落ち着いて」
女盗賊「はぁ…同業と言うことは…私の鼻を削いだアランっていう男も同じな訳ね…」
闇商人「根に持って居るんだね…」
女盗賊「当たり前でしょう!!ぐぬぬぬぬ」プルプル
闇商人「悪いのは君達の方だったんだけどね…」
狼女「そうだ!!アランを怒らせたお前が悪い…そのバツだ」
女盗賊「まぁ良い…私は気球を降りたら自由にさせてもらうから…そちらもご自由に…」フン
狼女「今度悪さしたら許さんからな!!」
女盗賊「もう関わらないで欲しい…同業じゃ私に得が何も無いから」
闇商人「僕たちの方にも関わらないで欲しいな…君はこちらの事情を色々知ってしまった様だからね」
女盗賊「ギルドに追われる様な事になったら私は行き場を失う…分かる?」
闇商人「ハハハ何も出来なくなったか」
女盗賊「サッサと下ろして」
闇商人「これは円満に別れられそうで良かった」
女盗賊「ふんっ!!」




