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68.雨雲の杖と太陽の石



『隠し部屋』



スタスタ



盗賊「ふぅぅ…やっぱ地下は全然過ごしやすいわ」


戦士「私は城の地下倉庫を見て来ようと思っているがアラン殿達はどうするかね?」


盗賊「その地下倉庫に何がある?」


戦士「主に食糧が保管されて居たのだが…一応確認しておこうと思ってね」


盗賊「あんま期待出来そうに無えな…ここでもうちょい使えそうな物が無いか見とくわ」


戦士「ではここから動かないようにしてくれたまえ」


盗賊「まぁ戻って来るの待ってるわ」


戦士「うむ…では行ってくる」スタ


学者「兄貴!やっぱさっきここで入手した石…これ暖かいっすわ」ポカポカ


盗賊「なんなんだろうな?それ…」


学者「他にも使えそうな物あるなら持って帰りたいっすね」


盗賊「呪いを見破る方法とか無いんか?」


学者「ミミックに一回食わせてみるとかどうっすか?」


盗賊「ほう?面白そうだ…俺が無理やりミミックの口を開いとくからその辺の物全部突っ込んでみろ」


学者「ウヒヒヒ…兄貴も悪っすねぇ…ヌフフフ」


盗賊「おし行くぞ?」グイ パカ



ミミック「ガガガ…」バタバタ



盗賊「おら動くな!!ゲス!!その辺の物突っ込め!!」


学者「へいへい!!」ガサゴソ


ミミック「ガーー!!ガガ…」ジタバタ


学者「ナハハハこれ嫌がってるんすかね?」ポイポイ


盗賊「これで吐き出した物は呪い確定な?」


学者「うまく行くと良いっすね?ヌフフ」




『1時間後…』



タッタッタ



戦士「アラン殿!!待たせた!!移動しよう」


盗賊「遅かったな?手ぶらか?」


戦士「食料も城の宝物も全て持ち出された後だったよ…それよりも全ての建屋が氷結してる理由が分かってきたよ」


盗賊「んん?寒いからじゃ無いってか?」


戦士「要所要所の機密扉が全て氷結されていたのだよ」


盗賊「なぬ?」


戦士「恐らく異形の魔物によって氷結されたのだと思われる」


盗賊「ここの扉が氷結されて無いのは偶然か?」


学者「あ!!もしかしてこの太陽の石の影響かも知れやせんぜ?」


盗賊「本当は氷結されてたがその石の影響で溶けたってか…」


戦士「私が思うに異形の魔物はこのセントラルを再利用されるのを嫌がって居るのだね」


盗賊「どっちにしろ寒くて利用出来んがな…」


戦士「地下都市の話だよ…ここからエルフの森南部の要衝までは遮る物が無いのだよ」


盗賊「ううむ…俺らがここを拠点に使うと思ってるとは思えんのだが…」


戦士「いや…私達では無い誰かに自由に地下都市を使われたく無いと言う事だ」


学者「誰か?」


戦士「例えば古代人…」


盗賊「ははーん…異形の魔物からして見れば古代人も信用出来ん訳か…行動制限させるのに氷結させてる訳な?」


戦士「恐らくそうだと思う…実際アラン殿はいくつかユニークアイテムを手に入れただろう?」


盗賊「何の効果があるか分からんけどな?」


戦士「まぁ兎に角又扉を氷結されて閉じ込められてしまうかも知れないから早く移動したいのだ」


学者「もしかしてもう近くに来てたりしやすかね?」


戦士「ここに来る間に何体も魔物を倒して居るからねぇ…ラットマンの騒ぎ具合で気づかれて居る可能性もある」


盗賊「もう持って帰れるアイテムも無さそうだから移動すっか!」


戦士「済まないが元来た道を戻る途中の扉に施錠をしながら戻りたい」


盗賊「そら簡単だ」


戦士「では戻るとしよう!」スタ


学者「もう地下都市は行かん感じっすか?」


戦士「閉じ込められるリスクを犯してまで良い物も無いから戻った方が良い」


盗賊「謎アイテムは結構入手したから十分だろ…戻るぞ」


学者「分かりやした!行きやしょう!」




『下水の出口』



タッタッタ



盗賊「おーし!!今回は戦車だけ襲われてるって事は無いな…何事も無く帰還だ」


学者「ラスさんは戦車の中で休んでいやすかね?」


盗賊「だろうな…しかしやっぱ出口付近は寒いわ…」



ガコン! ギギギ



女ハンタ「遅い!!」


盗賊「おお悪い…土産あんぞ?」


女ハンター「寒いから早く戦車に入って」


学者「良い物拾ったんすよ〜なんかあったかい石なんすがね?」


女ハンター「…」ジロリ


学者「へいへい…早く戦車に乗りやすよ…」


盗賊「こっちは何も無かったか?」


女ハンター「レイスが出て休めなかった」


盗賊「ヌハハそら機嫌も悪くなるな?」


戦士「戦車を動かすのは私がやろう…ラシャニクア殿は休んで貰って構わない」


女ハンター「ふぅ…そうさせて貰う」


戦士「次の行き先は陸路でト・アルという町だ…エルフの森南部へ入る玄関口に当たるのだ」


盗賊「任せるわ…どんくらい掛かる?」


戦士「馬車で3日くらいだった筈…途中に商隊の休憩所でちょっとした建屋があるから一先ずそこを目指す」


学者「そこまで行きゃ休憩出来る感じっすかね?」


戦士「建屋が残っていれば休めるかも知れない」


学者「体冷え切っちゃってるんでしっかり火に当たりたいっすよ」


盗賊「てか例の石を出しとけ…そいつで温まるぞ」


学者「そーっすね」スッ


女ハンター「む?何その石…どうして日の光を浴びてるみたいな感じに?」


学者「なんか分からんのですが太陽みたいな紋様も彫ってあるんでそういう感じの石なんだと思いやす」


盗賊「太陽の石って事で良いんじゃ無えか?」ドター


戦士「まぁ寛いでくれたまえ…しばらくは私が戦車を進める」


盗賊「悪いな…ちっと小休止だ」




『夜の雪原』



ウィーン ザックザック



学者「なんか地面が硬いって言うか…あんま雪深く無いっすね…」キョロ


戦士「軽く積もった雪の下は氷になって居るのかも知れないねぇ」


学者「いやぁ…本当何も無いんで退屈っすよ」


盗賊「手に入れたアイテムでも整理しとけ!」


戦士「呪われているかも知れないから取り扱いは注意したほうがいいと思うよ」


学者「呪われて居無さそうなのを選んで持って帰って来たんすよ」


戦士「どうやって見分けを?」


学者「ミミックが居たじゃないっすか…食わせて吐き出したアイテムはそこに置いて気やした」


戦士「ハハハ考えたねぇ」


学者「指輪とか腕輪とかアクセサリーが多いっすね…効果分かるアイテムはありやせんか?」ザラザラ


戦士「ううむ…どれも分からない…聞いた事が有るのは力の指輪とか星降る腕輪とかだが…見分け方はわからないよ」


学者「これ装着しても何が変わったのかよく分からんのですよね…」


盗賊「だから放置されたのかもな?」


学者「魔術書持ってくれば良かったっすよ…なんか色々書いてありやしたからね」


盗賊「カゲミが持ち歩いてたな…今度鑑定して貰うだ」


学者「とりあえず預かっときやすね…それよりこの太陽の石は効果すぐ分かるんで良いっすわ…」ポカポカ


盗賊「あぁぁ眠たくなる…ちっと寝るな?」グター


戦士「休んでくれたまえ…移動は任せて貰って構わない」


学者「先に休んで下せえ…その後交代しやしょう」




『翌日_商隊野営地』



ウィーン ガコン ピタリ



盗賊「おお…良くピンポイントでこの野営地まで来られたな…」


戦士「ハハ…何度も通ったからねぇ…雪が積もっていても丘陵のおよその形は昔と変わらないのだよ」


盗賊「馬小屋…だよな?」キョロ


戦士「うむ…風が通り抜けてしまうが何もないよりはマシだろう」


盗賊「外はマイナス40℃か…火を起こしてもこれじゃ寒い…」


戦士「戦車とトロッコで囲めばもう少し風も避けられそうだが?」


盗賊「トナカイの肉を焼く程度にはやってみるか」


戦士「一応地下室もある筈だから何か食料が残って居るかも知れないね」


盗賊「火を起こしておくから見てきてくれぇ」


戦士「承知した」ノソリ


女ハンター「やっと体を動かせそうね…私も少し降りる」


盗賊「おう!火を起こすの手伝ってくれ」



ガコン ギギギ



女ハンター「あら?誰かのキャンプ跡が残ってる」


盗賊「ちっと燃えそうな物も残ってんな…そこを使おう」


女ハンター「トロッコに木材も積んであったわね?」


盗賊「一応な?」


戦士「ト・アルの町まで行けば木材に困る事は無くなるだろうから全部燃やしてしまって良いと思う」


盗賊「そうか…ほんじゃ燃やしちまおう」スタ


女ハンター「今日は戦車とトロッコに分かれて休む?」


盗賊「それも良い…トロッコで休むのも試して見たかったんだ」


女ハンター「例の太陽の石で快適に休めそう」


盗賊「かもな?てかその前に焚き火でトロッコをちっと温めんとイカン…さっさと火を起こすぞ」


女ハンター「そうね…手伝うわ」スタ




『30分後_焚き火』



メラメラ パチ



盗賊「ここはセントラルからどんくらい離れてるんだ?」


戦士「当時の馬車で2日の距離だから…300キロメートルくらいか?」


盗賊「結構走ったな…」


女ハンター「まだ南極圏内?」


戦士「ううん…分からないが進んでいる方向が北東だからねぇ…少しは寒さも和らいだ気もする」


盗賊「マイナス50℃も40℃もあんま変わらんぞ」


女ハンター「次行くト・アルの町はどのくらい離れて?」


戦士「このままの速度で行けば半日で到着するだろうね…もしかすると南極圏から出て環境も少し違うかも知れないよ」


盗賊「人が居ないと情報がさっぱり入って来ないからな?誰か住んでると良いな?」


戦士「今までの感じからすると期待出来ないねぇ…冬の間はどこかに移住して居そうだ」


盗賊「やっぱそんな感じか…」


戦士「まぁ森がまだある筈だからトナカイかシカを狩れるかも知れない」


盗賊「ふむ…それなら食料はあんま心配せんでも良いかもな」


女ハンター「食料の心配もそうだけれど…戦車のエネルギーも少し心配になってきたわ」


盗賊「なぬ?」


戦士「ラシャニクア殿もそう思ったか…どうも寒さの影響なのかエネルギー消費が多いようだね」


女ハンター「そうみたい…地下から出てこっち数値の減りが早い」


盗賊「もしかして戦車を温めるのにエネルギー使っちまってるか?」


女ハンター「そうだと思う」


盗賊「冷え切っちまうと起動出来なくなるかも知れんとかゲスが言ってたな…」


女ハンター「そう…だから起動したままなのもエネルギー消費が多い原因だと思う」


盗賊「しまったな…ウラン結晶をカゲミに預けちまった…」


戦士「どこかで入手出来ると良いねぇ」




『雨雲の杖』



フリフリ



盗賊「どうよ?何か変わったか?」キョロ


女ハンター「暗くて良く分からないけれど…気温が上がってきた感じはする…」


盗賊「速攻効果の出る杖とは違いそうだな…」


女ハンター「フィン・イッシュでは雪が降る時はあまり寒くないからそう言う効果は期待できるのかも知れない」


盗賊「ちょっとでも気温が上がって戦車のエネルギー消費がマシになれば良いな」


女ハンター「観測するのは時間がかかりそう…休みましょ」


盗賊「そうするか…バレン!俺とラスはトロッコで休むぞ?」


戦士「そうだね…私も戦車の中で休むとする」


盗賊「ゲスは結局寝っぱなしだったなヌハハ」


戦士「疲れて居たのだろう…今日は足を伸ばしてゆっくり休もう」


盗賊「おっし寝るぞ」スック


戦士「ではまた明日」ノソリ




『翌日_大雪』



シンシン… ヒラヒラ



学者「いやぁぁ良く寝ましたわ…」ノビー


戦士「む?起きたようだね」



メラメラ パチ



学者「ここ何処っすか?」キョロ


戦士「商隊の野営地にある馬小屋だよ…ゲス殿が寝ている間にちょっとしたキャンプを張ったのだ」


学者「道理で随分暖かい訳っすね…今外気温マイナス3℃っすよ」


戦士「大雪が降って小屋に風が吹き込まなくなったからだね…アラン殿が雨雲の杖を使って雪を降らせたのだ」


学者「おおおお…やっぱ雨雲の杖で確定っすか」


戦士「雪を降らせて暖を取れる様になるのはこれからの旅で役に立ちそうだ」


学者「兄貴とラスさんはトロッコの中っすか?」


戦士「うむ…それほど急いでいる訳では無いから慌てて起こさなくても良い」


学者「そーっすね…スープでも作って起きるの待ちやしょうか」


戦士「そうだ…芋を焼いたのだが食べるかね?」


学者「芋なんか何処で手に入れたんすか?」


戦士「この馬小屋には地下があってね…そこに少し残って居たのだよ」


学者「うほー貴重な食料ゲットっすか…芋なんか久しぶりっすねぇ…」


戦士「さぁ…食べてくれたまえ」スッ


学者「いただきやす〜」ハフハフ モグ


戦士「温まるだろう?」


学者「手も温まるんで最高っすね」ハフモグ


戦士「ところでゲス殿…少し意見を伺いたいのだが良いかね?」


学者「何でしょう?」


戦士「ルーデウスの目的の事なのだが…エルフ達が守る精霊樹を奪うとの事らしいのだが…何故だと思う?」


学者「あーーこれ完全に俺っちの予測になっちまうんすが…世界のシステムがそこに有るんじゃ無いかと思っていやす」


戦士「システム…」


学者「古代人達も多分そのシステムを破壊するかどうにかしたいんすよ…でも古代人はそのシステムが精霊樹に有るとは思って無さそうっすね」


戦士「ルーデウスと古代人とでは思うところが少し違う?」


学者「だからちょっと噛み合って無いんすね…異形の魔物がセントラルを再利用されない様にしてるのもそんな理由な気がしやす」


戦士「私が思うに古代人は地下都市の秘密をもっと隠して居る様に思っていたが…」


学者「ほんじゃ古代人はルーデウスが支配してる地下都市のどこかにシステムが有ると思ってるんじゃ無いすか?」


戦士「なるほど…それが集中端末と言われる物かも知れない」


学者「ところがルーデウスは古代人に自由にそれを触られたくない…だから凍らせて封じてるんすね」


戦士「待ってくれ…ルーデウスはシステムの在処が精霊樹に有ると考えているのだろう?」


学者「それは俺っちの勝手な予測なんすが…思惑の違いを利用して古代人を上手くコントロールしてるんじゃないすか?」


戦士「…」


学者「例えばエルフの森南部の要塞を提供する代わりに協力させる的な感じっす…」


戦士「なるほど筋が通る…」


学者「セントラルはもう古代人に提供したんじゃ無いすかね?…氷漬けにされちまっていやすが…」


戦士「そういえばノ・ヴォの軍港で会った花売りの女にそんな質問をされた気がする…」


学者「逆に質問なんすがシャ・バクダの方はエルフが沢山居て異形の魔物との戦況ってどんな感じなんすか?」


戦士「私が知る限りドラゴンやトロール達も精霊樹を守って居るから異形の魔物は攻め切れないで居た」


学者「そんなかでウェアウルフ一族が一掃されちゃった訳なんすが戦況にどう影響しやす?」


戦士「私では計り知れないな…流石に異形の魔物だけで精霊樹を攻め切るのは難しいと思う…」


学者「そこに古代人が加わったらどうなりやすかね…機動隊なんか来ちゃったらヤバイと思うんすが…」


戦士「機動隊がどれほどなのか噂を聞いたぐらいしか知らないのだよ」


学者「まぁ機動隊は向こうの大陸でヒュー・ストンの大穴に掛かりっきりなんでこっちに来るとは思えんのですが要注意っすね」


戦士「今の話からすると又大きな戦になってしまいそうだね」


学者「シン・リーンの魔術師は何もしないんすかね?」


戦士「あぁ…シン・リーンの魔術師達はフィン・イッシュの忍びと共同で作戦行動をしている最中だね」


学者「おっと?どっかに行ったフィン・イッシュの船団…バレンさんは行き先聞かされて無いんすか?」


戦士「ハハハ私は忍び達から違う情報を聞かされていた様だ…」


学者「共同作戦の内容も聞かされて居ない?」


戦士「少しだけ知っている…かつて侯爵と呼ばれた人物が持っていた変化の杖というユニークアイテムの破壊だそうだ」


学者「へぇ?それにしちゃ随分な火力の軍船が船団組んで移動したみたいなんすが…」


戦士「20年以上前のキ・カイの軍船と聞いて規模が想像できるかね?」


学者「あ〜聞いたことありやす…滅茶苦茶デカい鉄の船っすね?」


戦士「その船は機械が人類に宣戦布告して以降行方不明のままだったのだよ…その船を破壊する共同作戦だったらしい」


学者「分かってきやした…バレンさんに秘密にされたのは旧貴族経由で情報がリークするのを嫌ったんすね」


戦士「不甲斐ない…でもそのおかげでどうにかフィン・イッシュを守る事が出来たとも言える」


学者「不幸中の幸いっすね」


戦士「ルーデウスがこれからどう動くのかも予測し難い…このままエルフの森南部まで行って良いのかどうか…」


学者「精霊樹が最終目標ならいっその事進路変えてシャ・バクダに先回りでも良さそうっすねぇ…」


戦士「戦車のエネルギーが残り少ないのも考慮するとやはり予定通り進んでウラン結晶を探すのが良いか…」


学者「ええ?どういう事っすか?」


戦士「あぁゲス殿は寝ていて話を聞いて居なかったか…寒冷地では戦車を暖めるのに余分なエネルギーが必要な様なのだよ」


学者「あとどんくらい動かせそうなんすか?」


戦士「ううむ…残り32%…どのくらい動かせるのか正直分からない」


学者「あたたた…行き先はエルフの森南部一択っすね…遺跡でウラン結晶探さん事には戦車捨てる事になっちまいやす」


戦士「今後は残りエネルギーを考えながら動かないといけないねぇ」


学者「ちっと戦車の方も保温する工夫せんとイカンすね」




『排熱装置』



ガチャガチャ



学者「これっすね…こっから暖かい空気が排熱されて居そうっす」ガチャ


戦士「何か改造するのかね?」


学者「ええと…多分何処かから冷たい空気を吸って温めてる筈なんで…あったあった…なるほど…」



吸気側に温める機構は無いんでエネルギーロスが多いんすね…


ふーむ…排熱を吸わせてやればちっとはロスが抑えられるかも知れんすわ



戦士「むむ!!そういえばその様な設定項目が合った気が…」


学者「お?マジすか…それ出来やす?」


戦士「私は古代文字が読めないから詳しく分からないのだが…確か割合の数字を変えるだけだったと思う」


学者「ちっとその設定を見せてくれやすか?」


戦士「分かった…」ノソリ




『設定画面』



ピピッ ピ



学者「おおお…エネルギーフロー図じゃないすか…」


戦士「ハハハ私にはさっぱりだ…これで解決すると良い」


学者「ええと…図だけで判断するのは危険なんすが…ふむふむ…確かに排熱回収するバイパスは有りそうっすね」


学者「でもこれ設定変えると機能制限も掛かりそうっすわ…」


戦士「おお!そんな話も聞いた様な気がする」


学者「何の制限だったか覚えて無いっすか?」


戦士「ええと…色々説明されたのだが…火炎放射が使えないとか…換気の為の機密性がなくなり水中に潜れないとか…」


学者「あらーー下手に変えると色々まずいかも知れんすね」


戦士「火炎放射が無くなるのは確かに厳しくなる」


学者「このエネルギーフロー図からして機器類の冷却は今の状態がベストっぽいっす」


戦士「設定を使い分けてみては?」


学者「試してみやしょうか…とりあえず今の設定値をメモってからちっと変えてみやす」メモメモ


戦士「それが良い」


学者「ええと…吸入空気温が40℃くらいまでなら制限無さそうなんで…」ピピ



バイパス量を増やしても結局排熱はやっぱり出るからロスがちょろっと減るぐらいのもんすかねぇ…


ウラン結晶がエネルギー源だと排熱の問題は抱えたままなのかも…


マテマテ排熱があるから戦車の周辺が暖かくなってるとも考えられるんで…それはそれで良いかも知れんすね…


ううむ…これでどんだけ効果があるのか…エネルギーロスが増えたのは純粋に雪の中進むのに抵抗が増えたせいじゃないすかねぇ…



『1時間後…』



ガコン ドターン!



学者「お?兄貴起きやした?」


盗賊「おお余りに快適でガチ眠りしたわ」ノビー


学者「雪が積もったお陰で馬小屋の中も暖かくなりやしたよ」


盗賊「そうか…」


学者「ラスさんも起きやしたかね?湯が沸いてるんすが…」


女ハンター「本当?」


学者「浸かれるほど沢山じゃ無いんすが体を拭くぐらいには余裕ありやす」


女ハンター「使わせて貰う」スック


盗賊「今は何時ぐらいよ?」


学者「さっきまで明るかったんすがもう日が落ちちまいやしたね」


盗賊「そうか…」


学者「そろそろ雪も止みそうなんで食事取ったら移動しやしょうか」


盗賊「分かった…準備するわ」


学者「芋焼けてるっすよ」


盗賊「おお貰う」


学者「そうそう…トロッコの中に布が余っていやしたよね?」


盗賊「んあ?布ってかボロキレだぞ?」


学者「それ戦車に被せて軽く保温で使いやす」


盗賊「まぁ好きにしろ」


学者「軽く風除けがあるだけで放熱もちっとは収まるんじゃ無いかと…」


盗賊「そんなら毛皮も余ってるから使うと良い」


学者「そうしやす」ドタドタ


盗賊「俺も何かやるか?」モグモグ


学者「芋食ってて下だせぇ…戦車に軽く毛皮被せるだけなんで俺っちだけで出来やす」ゴソゴソ


盗賊「そうか…ほんじゃ任せる」ガブ モグ




『星降る雪原』



キラキラ 



盗賊「こりゃ…星の煌めきで雪が光る…絶景だぞ」


学者「夜なのにちゃんと見えやすね…」ボー


女ハンター「寒いから戦車の蓋を開けっぱなしにしないで」


盗賊「悪い悪い…余りに星空が壮大過ぎて見入っちまったわ」



ギギギー バタン!



女ハンター「バレンさん…進路は合ってる?」


戦士「うむ…このまま丘陵の尾根沿いに進めば自然とト・アルの町に行ける筈だよ」


盗賊「しかし木が一本も見当たらんなぁ…樹氷も無え…」


学者「ツンドラ気候だからっすね…苔とかキノコは沢山生えるらしいっすけどね?」


盗賊「そういや癒し苔とか雪の積もる地域に生えるんだっけか」


学者「そーっすね…夏場に沢山生えるなら採取したいっすよ」


戦士「癒し苔は不老長寿の妙薬が作れると聞くが?」


学者「その通りっす…エリクサーを超える妙薬っすよ」


女ハンター「不老長寿ってどういう事?本当にそんな効果が?」


学者「ええと…結論を言うとホムンクルスの様な体質になるらしいっす」



そもそも老化現象は細胞が経年で劣化して行ったのが蓄積する状態なんすよ


ほんで癒し苔には劣化した細胞を石化させてしまう効果があるんす


足りなくなった細胞は分裂してまた元通り増えて行くんすが


劣化した細胞はどんどん石化して体内から排出されるんで結果的に良質な細胞が残る訳っす



女ハンター「それで若返る?」


学者「カイネさんから貰った錬金術の書物にはそう書いてありやしたね」


戦士「ゲス殿!!その不老長寿の妙薬をどうかサクラに送りたい!!」


学者「俺っちも作りたかったんで癒し苔が入手出来たら作ってみやすよ」


盗賊「そんな良い薬がなんで今まで出回らんかったんだ?」


学者「癒し苔が貴重だったからっすね…あと採取して即効薬を作らんとダメっぽいっす」


盗賊「日持ちせん訳か」


学者「そーっすね…不活性化させるエリクサーと併用するとか色々手順があるんすよ」


女ハンター「その薬を飲むと体質がホムンクルスの様になると言う事?」


学者「飲み続ける必要があると思いやす」


女ハンター「理解した…それでエリクサーと併用な訳ね」


学者「でもしばらく飲み続ければ細胞はどんどん若返るんで20歳くらいまで戻れば十分っすよね」


女ハンター「若返るか…私も試してみたい」


盗賊「ぬあ?まだ若いだろ」


女ハンター「アランより少し年上だから気に入らない…若い方が良いに決まってる」


盗賊「ぐは…どうでも良いわ」


戦士「しかし良い話を聞けた…不老長寿の薬も私がフィン・イッシュへ戻る口実の一つになれる」


学者「なははは…切実っすねぇ」


戦士「立場が弱いのだ…癒し苔か…ふむ良い目標がもう一つ出来たようだ」




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