67.南極圏にて
『座礁した軍船』
ビュゥゥゥゥ サラサラ
盗賊「船体のドテッパラに穴空いてる…そっから中に入れそうだ」
女ハンター「風を凌げそうね…ゆっくり入れる」
学者「これ船体に穴開けて物資を運び出した感じっすね?」
盗賊「うむ…でも要らん物資は残ってるかも知れん」
学者「寒いけど探索しやす?」
盗賊「当たり前だろ…船の中は風が入って来ないからマシな筈だ」
学者「でもデカイ船っすね…甲板は何層あるんすかね?」キョロ
戦士「4層甲板のキャラック船だよ…セントラル海軍の旗艦の一隻だ…大砲が100門程搭載されて居る」
盗賊「ヌハハ…それ全部残ってんじゃ無えか?」
戦士「その様に思う…今となっては無用の長物だねぇ」
ウィーン ガコガコ ガタン!!
女ハンター「あぁ…トロッコの車輪が船体に引っかかってこれ以上中に入れられない…」
盗賊「まぁ良いだろ…丁度穴を塞いでて風も入り込みにくい」
女ハンター「あんなところに放置してるとトロッコの中に入ってる水が凍ってしまう」
盗賊「とりあえず燃やせる物探してここでキャンプ張るぞ」
学者「ほんじゃ行きやすかぁ!!」
『船体の穴』
ゴソゴソ ドッスン!!
とりあえず適当に木箱積んで隙間風入らん様にしてくれぇ!!
兄貴ぃ!!濡れた石炭も燃やしちまいやすぜ?
おう!!早く火を起こして暖めてくれや!!
戦士「ふぅ…なかなか沢山物資が残って居たねぇ」ドサドサ
盗賊「木材が丸ごと残ってた感じだな?お陰で焚火にゃ困らん」
戦士「魔石を使う燭台なんかも残って居たが使うかね?」スッ
盗賊「ふむ…ちょっとした暖を取るのに使えるか」
学者「魔石は今余裕があるんでその燭台も使いやしょう」
盗賊「手が冷たくて早く暖まりたいのよ…まずそれで良いから火を頼む」
学者「ええと…火の魔石をセットしてダイヤル捻れば良いんすかね?」ゴソゴソ グイ
ボゥ… メラ
盗賊「おお来た来た…」
学者「とりあえずしっかり焚火に火が点くまでこれで我慢して下せぇね」
戦士「私はもう少し船内を見回って来る」
盗賊「頼むわ…この辺をもうちょい暖めとくわ」
『焚火』
メラメラ パチ
盗賊「ぉぉぉやっぱ火が有ると全然違うわ…」スリスリ
女ハンター「アラン?これブリザードが晴れるまで足止め?」
盗賊「そうなるだろうな?てか右も左も分からんから下手に動いて海底にドボンとかなりたく無え」
女ハンター「じゃぁ足止めついでにトロッコの車輪をどうにかして…雪に埋まって抵抗になってる」
盗賊「ソリにせにゃイカンか…」
女ハンター「木材は沢山有ったのでしょう?」
盗賊「そうは言っても釘が無い事には上手い事作れんのだ…」
女ハンター「どういうソリのつもりで居るの?丈夫な長い木材を前後の車輪に取り付けるだけで良いのでは?」
盗賊「おぉ…そういうタイプか…」
学者「樹脂がまだ余ってるんで併用すれば行けそうっすね」
盗賊「分かった…もうちょい暖まったら作ってみるわ」
『1時間後』
ヨッコラ ドサドサ
戦士「ふぅ…使えそうな物を集めて来たよ」
盗賊「おおお!!毛皮が沢山あるじゃ無えか…布も有るな…」
戦士「兵隊達の寝室に有ったのだ…これをトロッコの敷物に使えばそこでも休む事が出来ると思ってね」
盗賊「確かに戦車の中で4人横になるのは狭いな」
戦士「これから地上を行くのであれば適宜戦車を止めて休息も取った方が良い」
盗賊「トロッコは鉄板が冷えちまうのがなぁ…」
戦士「内側に毛皮を張り付ける事は出来んかね?」
学者「そんな事せんでも魔石を使った燭台で鉄板を暖めちまえば良いんじゃないすか?」
盗賊「お?それも良いな」
学者「どうせトロッコの蓋を閉めちまったら中は真っ暗なんで明かりの代わりにもなりやすよ」
戦士「暖を取ると言えばこんな物もある…白金カイロだ」ポイ
学者「おおおおおお!!それ欲しいっす!!」
戦士「沢山有るから一人づつ持てば良い…油さえあればそこそこに温い」
盗賊「これは兵隊の標準装備だったりするんか?」
戦士「そうだね…冬場は必須の兵装だよ」
盗賊「ちっと俺も物色に行って来るかな…」
戦士「まだまだ沢山使えそうな物があるから拾って来ると良い」
盗賊「マジか…行って来るわ」ダダ
戦士「私は体が冷えてしまったから少し休むとする…」
学者「湯を沸かし始めてるんでもうちょい待って下せぇね」
『布の仕切』
バサッ
戦士「やはりこうやって暖かい空気を逃がさない様にすれば随分暖かいねぇ…」
学者「船体が冷えっ冷えっすからね…木材でもマイナス50℃まで冷えちゃやっぱ輻射がキツイっすね」
戦士「セントラルがこれほど過酷な状況になっているとは正直思って居なかったよ」
学者「そーっすね…地上じゃもう住めんすよ」
女ハンター「戦車が動かなくなったら帰れそうにない…」
学者「しばらく戦車は動かしっぱなしが良いと思いやす…冷え切っちまうと動かせんくなるかも知れやせん」
女ハンター「そうね…」
ドタドタ ドサー
盗賊「おおおお寒かった…」ブルブル
学者「何か良い物ありやした?」
盗賊「錆びた砲弾と酸化した火薬は腐る程有るが…いまいち使えそうな物が無えな…木材だけだ」
学者「食い物とか酒も無いんすか?」
盗賊「全然見当たらん…有ったとしても10年以上前の食い物を食う気になるか?」
学者「ナハハそーっすね」
戦士「貴金属類は残って居たと思うが?」
盗賊「そんなもんイランわ…邪魔になるだけだ」
学者「いやいやいや俺っちは欲しいっすよ」
盗賊「欲しけりゃ自分で探しに行けぇ」
女ハンター「アランはどんな物を探して?」
盗賊「魔石を使う燭台みたいな物が他に無いかと思ってたんだが…そうそう見つからんワナ」
戦士「ハハハ粗方私が回収して来たからねぇ」
盗賊「まぁ良い!!木材持って来たからこれでソリでも作るわ」
戦士「体が冷えてしまっただろう?少し暖まってからにすると良い」
盗賊「そうするわ…マジで上の方は寒かった」ブルル
女ハンター「今暖かいスープをあげるから休んでて」
盗賊「おお頼む…ちっと座るな?」ヨッコラ
学者「次俺っちが貴金属を回収してきやすね?」
盗賊「船尾楼の方だ…まぁ自分で探せ」
学者「ウヒヒヒ…誰にも分けやせんからね?」スタタ
『翌朝?』
ビュゥゥゥゥ ゴゴゴ
盗賊「ちっと明るくなったかと思ったが…どうやらもう日が沈んだ様だ…」
学者「極夜っす…冬の間太陽が登らんのです…」
盗賊「ブリザードも収まって無え…マジで足止め食らってんな…」
女ハンター「方角だけでも分からない?」
盗賊「ダメだ…羅針盤はフラフラしてどっちが北も南も分からん」
戦士「落ち着いてソリ作りに励めるでは無いかハハハ」
女ハンター「風を凌げる場所を見つけただけ幸運だった様ね…」
学者「食料はトナカイの肉があるんで1カ月は持ちそうっす…ゆっくりしやしょう」
盗賊「まぁそうするか…毛皮はもっと集められるからトロッコの断熱も考えるかぁ…」
学者「鉄板は内側から暖められるんで外側に毛皮を被せりゃ良いんじゃないすか?」
盗賊「そうだな?木材も余ってるからちょい暇つぶしがてら工夫してみるわ」
戦士「では私はもう少し毛皮を調達して来よう」ノソリ
盗賊「薪を切らさん様にイラン木材も運んで来てくれぇ」
戦士「ふむ…確か何処かに斧が有ったな…」
盗賊「斧?船をぶっ壊して行くってか?」
戦士「いやいや…不要なベッドなどを壊すのが早いと思ってね」
盗賊「おおおお!!ベッドか…その木材をトロッコの中に使えるじゃ無えか」
戦士「ベッドを入れる気かね?」
盗賊「鉄板の上に毛皮引いてもやっぱ冷たくなるだろ…寝板の部分だけでも引いとけば快適になるぞ」
戦士「そうかい…ではベッドごと運んで来るとしよう」
盗賊「頼むわ!!」
『改造トロッコ』
ゴソゴソ ガタガタ
学者「なんすかねぇ…この秘密基地感…」ジロジロ
盗賊「これで快適に寝られると思ったら色々やりたくなる訳よ」
学者「やっぱトロッコに毛皮乗せると熱が逃げにくいみたいで良さそうっすね?」
盗賊「うむ…火炎放射で燃やさん様に注意せんとな?」
学者「荷を降ろせばギリ2人寝られそうっすね」
盗賊「今度からキャンプ張るときは戦車と2人づつ分けて寝られる」
学者「こっちも蓋を閉めちまえば安全なんでゆっくり休めやすね?」
盗賊「極寒の中魔石の燭台でどんだけ暖が取れるかだな…」
『数日後…』
シーン…
女ハンター「やっとブリザードが去ったみたい…」キョロ
学者「ちっと外に出て見やせんか?」
盗賊「当たり前だ…さっさとトロッコに荷を積んで移動すっぞ」
戦士「戦車に積んで居る分を移し替えれば良いか?」
盗賊「飲料水だけ戦車の中に残す」
戦士「承知…では運び入れる」ノソリ
盗賊「ええと…この後の予定を考えて居なかったのだが…」
戦士「少しセントラルを見て行きたいが…良いかね?」
盗賊「まぁ…食い物とかアテは無いか?」
戦士「それは分からない…ただアラン殿の欲しいお宝がもしかすると有るかも知れない」
盗賊「お!?」
戦士「実はその昔時の王と呼ばれたセントラルの重鎮が居てね…彼は驚くようなユニークアイテムを沢山持って居たのだよ」
盗賊「ほーう?その場所は分かってんのな?」
戦士「およその場所はね…少し探索する必要はある」
学者「時の王って誰っすか?聞いた事無いっすよ?」
戦士「あぁそうだったか…知るのは極わずかな者だけだったね…セントラルの本当の支配者は彼だったのだよ」
学者「支配者?」
戦士「名はルーシェンバッハ卿と言う…彼が居たからシュタイン家はセントラルを治める事が出来たのだ」
戦士「伝説の人物で彼以上の英雄はこれから未来にも出現しないだろう…」
盗賊「ほーん…そんな英雄は何処行っちまったのよ?」
戦士「聞いた話では夢幻へと旅立ったと言う事だ」
女ハンター「夢幻?」ピク
戦士「私は詳しく知らない…別の世界へ旅立ったと解釈して居る」
学者「おっとっと…待って下せぇよ?別の世界が何処かに有るって事っすかね?」
戦士「済まない…私は知らないのだ…サクラのほうが余程詳しいから聞いてみると良い」
盗賊「ルーシェンバッハな?ゲス!!メモっとけ」
学者「分かりやした」メモメモ
戦士「シン・リーンで伝わる伝説にも彼の名が出て来るのだよ?紅玉のルーシェ王…」
学者「あ!!それ知っていやすぜ?童話にもなって居やすね…メデューサを退治して不滅の肉体を得たとかなんとか…」
戦士「恐らく実話なのだよ…そんな人物がシュタイン家を支持してくれて居たのだ」
学者「なんかメチャ興味出て来やしたよ…その人が住んでた屋敷に行くんすね?」
戦士「案内してあげよう」
盗賊「おっし!!お宝探しだ!!ちゃっちゃと準備して行くぞ!!」
『満天の雪原』
ユラユラ
盗賊「うはぁ…すげぇな…オーロラって月並みに光るのな…」アーングリ
学者「セントラルの城がうっすら見えていやすぜ?」
女ハンター「この世の果て…そんな感じね…」
盗賊「今何度だ?」
女ハンター「マイナス50℃…風が無いから随分マシね」
戦士「セントラルがこの様な姿になって居るのは感慨深いよ…海が何処にも見当たらない…」キョロ
盗賊「ヌハハ全部凍っちまったか…」
女ハンター「戦車は城の方に真っ直ぐ向かわせて良いのね?」
戦士「そうだね…このまま行けば開発区を通って中央まで行ける筈だよ」
盗賊「開発区って何だ?」
戦士「その当時新たな住居を建築する予定だった低所得者が多く住むエリアの事だよ」
盗賊「スラム街な?」
戦士「結局何も住居を建てる事は出来なかったが…私が一番守りたかった人々がそこに住んでいたのだ」
学者「もしかしてそこにも血の繋がった誰かが住んで居やしたかね?」
戦士「把握して居なかったが恐らくそうだと思う」
盗賊「また思い出の地が有ったりするか?」
戦士「いや…私は立場上セントラルでは自由に行動が出来なくてね…行った事は殆ど無いよ」
盗賊「ほんじゃまぁスルーな?」
戦士「構わない…一目見るだけで十分だ」
盗賊「ラス!!一応熱探知で索敵しながら行くな?」
女ハンター「やってる…視認できる範囲に生き物の影は無し」
盗賊「おし行くぞ!!」
『氷結したセントラル_開発区』
ウィーン ドスドス
盗賊「何も無え更地だな?…ここは…」キョロ
戦士「地下排水口の出口も有る筈なのだが…埋もれてしまったのか何処なのか分からないな…」
盗賊「もうそこにゃ用が無いだろ?」
戦士「隠し通路がいくつも有ったのだよ…地下都市へ行くならそこが早いと思ったのだがね」
盗賊「地下都市?」
戦士「軍隊の拠点がそこに有るのだ…食料が残って居るかもしれないと思ってね」
盗賊「10年以上昔の話だろ?そんなもんアテにならんぞ」
戦士「まぁそうなのだが…数名しか知らない区画も多いのだ…ルーシェンバッハ卿の隠し財産もそこに有る筈」
学者「あれ?地下じゃ無くて屋敷だったんじゃないすか?」
戦士「屋敷はその入り口の一つだろうね…屋敷の中は良く分からないから探索する必要はある」
盗賊「まぁ良いわ…兎に角行ってみるぞ」
戦士「ふむ…このまま真っ直ぐ中央の門を抜けて右手側だ…その向こうに貴族居住区がある」
女ハンター「進めるわ…」
『セントラル中央』
シーン…
学者「あらら…建屋が雪で埋もれてるんじゃ無くて完全に氷結していやすね…」キョロ
盗賊「こんなんなってたら何処にも入れんな…」
戦士「ここでも食料調達が厳しそうだねぇ…」
盗賊「てかそのルーシェンなんとかの屋敷も氷結して入れんのじゃ無いか?」
戦士「火炎放射で溶かすというのはダメかね?」
学者「表面だけならそれで良いんすが厚みのある氷を解かすのは厳しいと思いやすぜ?」
戦士「マズいね…アテが外れてしまいそうだ」
女ハンター「とりあえず右手沿いで進めば良いのね?」
戦士「そうなのだが…貴族居住区へ入るゲートも閉じてしまって居る様だ…」
女ハンター「え!!?入り口はあそこだけ?」
戦士「他にもあるが…順に回って行くしか無さそうだ…案内する」
『2時間後…』
ウィーン ドスドス
戦士「済まないねぇ…どうやら内郭の内側に入るゲートがすべて閉ざされて居る様だ…」
盗賊「あとはスラム街の排水口を探すぐらいしか無いってか?」
戦士「ううむ…」
学者「兄貴!太陽が登って来そうですぜ?」
盗賊「おう!そうだな…久しぶりの太陽をちっと眺めるか」
ピカー キラキラ
学者「眩しいっすねぇ…」
盗賊「ほんの数分なんだろうが光が有るってのはやっぱ良いもんだ…」
戦士「光る氷城か…」
女ハンター「ちょっと戦車を降りて外の空気でも吸って来たら?」
盗賊「そうだな…蓋開けるぞ?」グイ
ガコン ギギギ
学者「うほーーー寒いっすねぇ…」
盗賊「一本いくか?」スッ
学者「大麻っすか…吸いやしょう!!」
女ハンター「煙が臭いから吸うなら外で吸って」
盗賊「へいへい…行くぞゲス!!」スタ
『朝日に大麻』
スパー フゥゥゥゥ モクモク
学者「これ吐いた煙がキラキラ光りやすね?」
盗賊「クソ寒い中吸う大麻もまた格別だな?ヌハハ」
戦士「日が出て居る時間が長くなって居そうだね…」
学者「春になって行ってるんすね…夏になったら一日中太陽有るんでしょうね?」
戦士「セントラルはね…人々の暮らす匂いが独特だったのだが…氷で洗浄された様に何も匂わなくなった…」スゥゥゥ ハァ
盗賊「何もかも変わっちまったか?」
戦士「そうだね…悪いしきたりも何もかも無くなって…これで良かったのだと思う」
盗賊「そうか…」スパー フゥ
戦士「昔話になるが…白狼の盗賊団は知って居るね?」
盗賊「俺の親父な?」
戦士「腐り切った貴族達を翻弄している活躍振りを聞くのが楽しみでね…悔しがる貴族を見ながら私は陰で笑って居たのだ」
学者「貴族ってそんな悪い感じだったんすか?」
戦士「そうだね…私もその一員だった事を考えたくも無いよ…名を捨ててしまいたい」
盗賊「ちゃっちゃと捨てりゃ良いじゃ無えか」
戦士「慕ってくれる者を裏切る訳にもいかなくてね…未だフィン・イッシュで私の帰りを待って居ると思う」
盗賊「そら結果出して戻らんとな…」
戦士「さて…日が落ち始めた…暗くなる前に開発区をもう少し探索しよう」
盗賊「今度は火炎放射ぶっぱな?」
戦士「そうだね…およその位置は分かるから行ってみるとしよう」
『開発区_排水口付近』
ゴゴゴゴゴゴゴ ボボボボボボボボ
学者「雪は面白い様に溶けて行くんで気持ち良いっすね!!ウハハハ」
盗賊「バレン!!この辺で間違い無いんだろうな?」
戦士「その筈…周囲の地形に見覚えがある」
学者「有ったああああ!!ありやした!!こっち側っス!!」ボボボボ
盗賊「おお!見つけたか…」
学者「やっぱ完全に雪で埋もれて居やしたね」
盗賊「ラス!!戦車をそっちに向けろ」
女ハンター「言われなくても…」
戦車「どうかね?戦車を入れられそうかね?」
学者「つららの氷で半分塞がってるんすがそんな分厚い氷じゃ無さそうっすよ」
盗賊「おら溶かせ溶かせ!!」ボボボボボ
学者「ぶっ叩いて割った方が早い気もしやすけどね」ゴゴゴゴゴコ
女ハンター「ゆっくり入れて行くわ」ピピ
ウィーン ドスドス ガリガリ パリーン
盗賊「イケイケ!!こん位なら大丈夫だ」
学者「奥の方は雪が無いっすよ…ソリをどうしやす?」
盗賊「おっと…外すのは手間が掛かるな」
戦士「此処まで来れれば後は徒歩でも行けるから大丈夫だよ」
女ハンター「それじゃ此処で?」
盗賊「そうするか…戦車止めて降りるぞ」
『排水口』
カクカク シカジカ…
ここは当時下水と呼ばれていた場所でね…
少し進むと水中を潜る形で最下層まで降りて行くルートとなって居るのだよ
それとは別にセントラルから出る生活排水もここに流れて来る…今から行くのはそちら側だ
女ハンター「戦車を残して置く訳に行かないから私は此処に残るわ」
盗賊「一人で大丈夫か?」
女ハンター「ウルフィも居るし…あなた達が居ない方が衣服も脱ぎやすい」
学者「おろろ?邪魔でしたかね?」
女ハンター「もう随分水浴びをして居ない…分かるでしょう?」
盗賊「ほんじゃ決まりだ…ラスは戦車の中で休んでてくれ」
戦士「ここから徒歩で片道1時間もあれば十分だから余程大丈夫に思う」
女ハンター「異形の魔物を引き連れて帰って来たりしないでしょうね?」
戦士「途中はいくつも鉄柵で区切られて居て異形の魔物が自由に動く事は出来ない筈」
女ハンター「全部開けられて居たら?」
盗賊「そんなら逆に施錠して行動制限させられるかもな?」
女ハンター「危険な真似は止して」
戦士「まぁまぁ…ルートは私に任せてくれたまえ…私の庭の様な物だから」
学者「ラスさん大丈夫っすよ…只の宝探しなんで戦闘は控えやす」
女ハンター「その言葉をアランに言わせて欲しい」
盗賊「わーったわーった…異形を見ても突っ込む真似はし無え…約束だ」
女ハンター「…」ジロリ
盗賊「おお怖え怖え…おらゲス!!行くぞ!!」
学者「お宝楽しみっすねぇ…ウヒヒヒヒ」
『秘密地下基地』
ギギー ガチャリ
戦士「ふむ…ここも錠が開いて居るか…」
盗賊「ここは兵隊の詰め所か?」
戦士「まぁそんな所だよ…本丸はもっと地下深くに有るが…」
学者「これからもっと地下に降りる感じっすかね?」
戦士「まずはルーシェンバッハ卿の屋敷に行ってみようでは無いか…地下では無く城の有る側だよ」
ギャーース ドドド
盗賊「おっとこりゃラットマンの声だな…」スチャ
戦士「私が先頭を行くから付いて来たまえ」スタ
学者「俺っちはバヨネッタの弾をあんま消費しない感じで動きやすね?」
盗賊「ここいちで一発撃つ感じで良い…行くぞ!!」ダダ
『下水の側道』
キシャァァァ
盗賊「出てくんな!ゴルァ!!」スパ
レイス「キャァァァァ‥‥」シュゥゥゥ
学者「地下であんま寒く無いのは良いんすが魔物が色々出て来やすね?」キョロ
盗賊「レイスが出て来るとか驚きだ…ゲスもミスリルダガー抜いとけ」
学者「そうしやすかねぇ…」スラリ
戦士「地下深くへ降りて行かないのであれば今以上に強い魔物は出て来ないよ」
盗賊「んん?下の方はもっとヤバいのが居るんか?」
戦士「前にキマイラの話をした事があるだろう?アレが自由に動き回って居るとかなり厄介だ」
盗賊「ほう?そんなんが地下に居るんか…」
学者「こっちに上がってくることは無いんすか?」
戦士「割と大型なのが多くてね…タラップを自由に上がれないのだ」
学者「多くて?沢山居るって事っすか?」
戦士「正直全数は分からない…最下層の地下通路からエルフの森南部へ連れて行かれた分も居るからどうなって居るのか…」
盗賊「今の話からすると旧セントラルはここの地下でそのキマイラってのを作ってた感じか?」
戦士「その当時生物兵器を研究する特殊な部隊が有ったのだよ…拠点は此処の地下だった」
戦士「先王の父は特に生物兵器に力を入れて居てね…私や弟達もその影響なのか異種族との混血だったのだね」
学者「異形の魔物もそうなんすが得体の知れん魔物も何するか分からんので怖いっすねぇ」
戦士「飛びぬけて強力なのが多いよ…ミノタウロスやケンタウロスもそう言った類の魔物なのだよ」
盗賊「一度も見た事無いんだが…そんなヤバイ感じか?」
戦士「ミノタウロスは回復力が尋常では無い…ケンタウロスは強化エルフと言った所か…」
学者「エルフより強いとかかなりヤバイっすね…」
戦士「知能は人間よりも随分低くてね…お陰で何とか飼い慣らせていた…という事だ」
盗賊「まぁ地下に行くなら気を付けろって事だな」
戦士「私は安全な抜け道を知って居るから大丈夫だよ…さぁ…先を急ごう」スタ
『開かずの扉』
スタスタ
盗賊「おお!!例の扉が有るじゃ無えか…この先か?」
戦士「良く見てくれたまえ…その扉はもう気密扉としては機能して居ないのだよ」
学者「兄貴!!ここに小さな穴が開いて居やす」ユビサシ
盗賊「マジか…どうやって穴を…」ジロジロ
戦士「ルーシェンバッハ卿は破壊の剣と言う何でも切る事の出来る剣を持って居たのだ」
盗賊「おお!!そういう事か…そいつで小さな穴を開けた訳か…」
戦士「私の知る限りセントラルの地下都市にある扉はもう百年以上も前に開けられて居た様だね」
学者「じゃぁそのルーシェンバッハ卿が全部頂戴した感じっすね…」
戦士「どうだろうか?その殆どはシュタイン家の物になっていた様だけどね」
学者「ルーシェンバッハ卿とシュタイン家はどう繋がってるんすか?」
戦士「かつての仲間だったとしか聞いて居ない…何代も昔の話らしい」
学者「ほほー…それでシュタイン家の影に隠れる様にルーシェンバッハ卿が居座って居た訳っすね」
戦士「ルーシェンバッハ卿は何も語らずでね…それで歴史に埋もれて行ったのだ」
盗賊「この扉はどうやって開く?普通に引けば良いのか?」
戦士「固着して居るだろうから大変だろうけど力で開くしかない…さて…少し運動をしよう」ノソリ
盗賊「ゲス!!お前もしょぼい力を出してみろ」
学者「わざわざショボイとか言わんでも良いっす」
戦士「では一緒に…フン!!ぐぬぬぬぬ」グイ
ズズズ ズズズズズズ ゴゴーン
盗賊「重いがまぁ…こんなもんか…」キョロ
学者「なんか中はちょと暖かいっすね…」スタ
戦士「ううむ…向こう側の扉が開きっぱなし…此処も誰かに入られてしまったか…」
学者「あちゃ~ハズレっすか…」
戦士「此処まで来るのは本当に数名しか知らない筈なのに…」
盗賊「ほんじゃその数名の誰かが持ち去ったんだな…」
学者「でもちょいちょい何か残っていやすぜ?」
盗賊「これ物色して良いんだよな?」
戦士「構わないだろう…破壊の剣が残されて居るのを期待したのだが…」
学者「なんか良さそうな鎧とか有りやすぜ?」ガチャガチャ
戦士「呪いの装備品だと聞いた事が有るから下手に装着しない方が身の為だよ?」
学者「ええ!?どんな呪いとか分かりやす?」
戦士「刃で体が切り刻まれるとか…誰も装着出来ないと聞いた」
学者「なんかヤバそうな装備っすね…」
戦士「そういう品が残されて居るのだね」
盗賊「その鎧は持って帰っても邪魔になるから要らんぞ…もっと小さな物にしろ」
学者「いやぁ…どれが何なのかさっぱりっすよ…」キョロ
盗賊「これなんかどうよ?ほんのり温いんだが…何だこれ?」ポイ
学者「おわととと…」パス
盗賊「何かの石の様だが使い方が分からん」
学者「太陽みたいな装飾が彫ってありやすね…バレンさんコレが何か分かりやせんか?」
戦士「さぁ?」ハテ?
学者「確かになんかほんのり温いっすねぇ…トロッコに入れとくだけで使えるかも知れんすね」
盗賊「なんか呪いの装備が残ってると聞いてどれも持って帰る気が失せちまったな…」
戦士「ルーシェンバッハ卿は世界中のその様なアイテムを集めて厳重に隠して居たのだね」
ジャキーン!! バクバク!!
学者「どわっぶ!!なんすかこの宝箱!!」タジ
盗賊「おおお珍しいな…こいつはミミックだ…人食いの宝箱よ…」ダダ
学者「こんなん下手に近寄れんじゃないすか…」
戦士「残念だけど良さそうな物はみんな持って行かれた様だ…ここの真上が例の屋敷だが行ってみるかね?」
盗賊「一応な?そこにも何か有るのかも知れんのだろ?」
戦士「美術品ばかりだからあまり期待出来ないけどねぇ…こっちだ…付いて来たまえ」スタ
『時の王の屋敷』
ヨジヨジ
盗賊「タラップが冷えてて手に張りついちまうから気をつけろ」
学者「へーい…しかし長いタラップっすねぇ…」
戦士「流石に地上へ近いと寒いねぇ…出口はこの上だよ…気を付けて上がるんだ」ノソリ
盗賊「こりゃ屋敷のど真ん中か?」キョロ
戦士「少し手分けして探索してみようか…集合場所はここで良いかね?」
盗賊「寒いから手短に済ませるか」
学者「ここは地下室な感じっすか?」
盗賊「そんな感じだな?」
学者「建屋の地下室でこの寒さはキツイっすね」
盗賊「さっさと探索終わらせて戻るぞ」
戦士「では行こう…」スタ
『10分後…』
ドタドタ
学者「何かありやしたかね?」
盗賊「美術品ってか肖像画ばっかりだな…一応謎の杖は見つけてきた」
学者「おお?魔法が使える感じっすね?」
盗賊「何の効果か分からんもんだから鑑定が必要だな…こいつは持って帰る」
学者「広間に石像並んでるの見やした?」
盗賊「おう…どうせ石化した古代人だろ?」
学者「どうなんすかね?イッコさんが石化したらあんな感じになりそうっすよ」
盗賊「気味悪いから持って帰る気にもならんわ」
学者「どうもルーシェンバッハ卿はずいぶん昔から古代人とは関わりがあったみたいっすね」
盗賊「そんな感じだな?…それより寒いんだがさっき拾った石であったかくならんか?」
学者「これ懐に入っててもあんまり暖ったかくならんっすねぇ…」スッ
盗賊「おおう…出しとくだけで随分違うじゃ無えか…」ポカポカ
学者「不思議な石っすねぇ…」ジロジロ
スタスタ
戦士「済まない…待たせてしまったようだ」
盗賊「おう…そっちはどうよ?」
戦士「私が探している破壊の剣は見つからないねぇ…やはり持ち去られてしまった様だ」
盗賊「イマイチな収穫だったな?」
戦士「むむ…その手にしている杖は?」
盗賊「これか?…広間にあった石像が持ってた物だ…石像をぶっ壊して頂戴してきたんだが…」
戦士「おお!杖は大抵ユニークアイテムなのだよ…それは価値が高い」
盗賊「どんな効果なのか知らんか?」
戦士「それは伝承を調べないと分からないが…古の精霊が使用した杖に間違いないだろう」
盗賊「ほーん…精霊か…」
学者「そういや童話で精霊が雨雲の杖を使って雨を降らせたとかどっかで読んだ気がしやすよ」
盗賊「雨か…イマイチ使い所が限られるんだが…」
学者「天候を操れるって凄くないすか?」
盗賊「そうなんだろうが今使っても雪降らせるぐらいだろ?」
学者「後で広い所で試してみやしょう」
盗賊「まぁいいわ…バレンはもう物色は済んだんか?」
戦士「この建屋から出て城の方を見てみようと思ったのだがね…どうやら氷結して外には出られない様でね」
盗賊「あんま自由に行き来出来んか」
戦士「こうしないかね?もう一度下に降りてそこをベースに探索をするというのは?」
盗賊「それが良いな…ここは寒すぎる」
戦士「では下に降りよう」




