66.地上へ…
『牢屋の鉄扉』
ガチャガチャ ガチン!
学者「言われた通り施錠しやしたぜ?」
盗賊「おーし…最後にこの金属片をその鍵で奥に押し込むんだ」スッ
学者「ふむふむ…これで開けられんくなるんすね?」グイグイ
盗賊「ほんじゃ隙間からこっちに来い」
学者「へいへい…ぐぬぬ」ズズズ
盗賊「これで施錠完璧だ…扉を元に戻す」グイ ガコン
学者「これ鍵どうしやす?」ジャラ
盗賊「俺が頂く…ロックピック代わりに使えるんだ」
タタターン! タタタターン!!
学者「ちょ…下からっす!!」
盗賊「こりゃ何か有ったな…急いでタラップ降りるぞ」
学者「先行って下せぇ…あと2枚鉄柵ありやしたよね」
盗賊「おう!!行くぞ!!」ダダ
『下層の小部屋』
ゴゥ ボボボボボボボ
学者「うは…開かずの扉の隙間から魔法か何か撃たれていやすね…」
盗賊「ラス!!何と戦ってる!!?」ダダ
女ハンター「アラン!!扉の外に異形の魔物4体と銃器持ってる古代人1人!!」
盗賊「扉こじ開けられたんか?」
女ハンター「逆!!何か置かれて戦車で押しても開けられない…閉じ込められてるの!!」
盗賊「何ぃ!!?」
学者「ラスさん怪我して居やす?」
女ハンター「銃器で撃たれた…防弾で防いでいるけどあばら骨折れたかも…」
戦士「扉の隙間は10センチぐらいだね…撃ち合いをしても意味が無い」
女ハンター「手榴弾を投げ込みたいけれど近付くと魔法を撃たれてしまう…」
学者「ここは毒使って少し相手を後退させんと何も出来んすね…」
戦士「私が盾を使って相手の射線を防ぐから後方で毒の弾丸を撃ち込んでくれたまえ」
盗賊「おし!それで行くか…ラスはまだ動けるか?」
女ハンター「何とか…」ヨロ
盗賊「寝転んでバレンの又下から狙う感じで行け」
女ハンター「分かった」
盗賊「ゲス!!バレンの左から撃て!!俺は右からだ」
学者「へい…毒仕込むの忘れんで下せぇよ?」
盗賊「うるせぇ!!行くぞ!!」
『隙間の攻防』
ターン!
盗賊「おっし当てた!!」
学者「向こうは魔法を撃って来んくなりやしたね?」
盗賊「そら何発も銃弾貰いたく無いだろうからな?」
女ハンター「古代人は1発食らって引いたみたい…回復魔法を使えないからね…」
盗賊「そろそろ扉の裏側に手榴弾投げ込むか…」
学者「毒をたっぷり塗ったって下せぇ」
盗賊「おう…」ヌリヌリ
学者「手榴弾の爆発で開かずの扉も動く様になれば良いんすが…」
盗賊「祈れ…行くぞ?援護頼む!!」ダダ
ポイ ポイ ポイ コロコロ…
戦士「アラン殿!!盾の影へ!!」ダダ
シュン シュン ガガッ!!
盗賊「うほーー狙ってたか…」アセ
女ハンター「逃がさない!!」ターン!
学者「マズいっす!!一発投げ替えされて居やす!!回避!!」ダダ
女ハンター「トロッコ裏!!」ダダ
ドガーン!! ドガンドガーン!! パラパラ
戦士「ぐぅぅ…アラン殿無事かね?」
盗賊「俺は良い!!…ラスとゲスは?」
学者「ちっと食らったんすが大丈夫っす…」タラー
女ハンター「私も軽傷…」
学者「一旦応急処置しやしょう…トロッコ裏におなしゃす!」ゴソゴソ
女ハンター「戦車で扉を押してみる…」
学者「大丈夫っすか?」
女ハンター「これくらい…」ヨロ
盗賊「クソあいつら…手榴弾投げ込んでくんの読んでたな?」ヨロ
学者「3つ投げてくるのは予想して無かったみたいっすね」
ウィーン ガコン ググググ
盗賊「どうだ?扉押せそうか?」
女ハンター「ダメ…動かない…」
盗賊「ぬぁぁぁぁ閉じ込められたか…クソがぁ!!」ドン!!
学者「ちっと回復しやしょう…金属片は出来るだけ自分で取り除いて下せぇ」
戦士「アラン殿…扉の外で瀕死になっている異形が居る様だ…もう一度その爆弾で止めを…」
盗賊「ゲス!!俺の回復は後だ!!手榴弾よこせ!!」
学者「3つっすか?」ゴソゴソ
盗賊「そうだ!!今度は投げ返されない様にギリギリで投げる」
学者「気を付けて下せぇよ?」
盗賊「ラス!!戦車で扉を押しといてくれ…衝撃で開くかも知れん!!」
女ハンター「分かった…」
盗賊「行くぞ!!」ダダ
ポイ ポイ ポイ
ドガーン!! ドガンドガーン!! パラパラ
女ハンター「ダメ!!押せない!!」
盗賊「あぁぁクソ!!」
学者「回復っす回復!!こっち来て下せぇ!!」
戦士「アラン殿…少し頭を冷やそう…」
『応急処置』
ラスさんは出血して無いんでポーションだけで我慢して下せぇ
兄貴とバレンさんは回復の角で出血だけ止めやす…金属片が傷む場所は後で教えて下せぇね
盗賊「ポーション代わりだ…バレンも飲め」グビ プハァ
戦士「ハハ…こんな時に酒かね…」
盗賊「うるせぇ…酒が入った方が頭回るんだよ」
女ハンター「扉の外で足音が無くなった…敵は引いたみたい」
盗賊「向こうは何体死んだんだろうな?」
女ハンター「燃やさないと又復活してしまいそう…」
盗賊「燃やすにしても外に出られん事にはな…」
ヒョコ ヒョコ
子ウルフ「ワン!!グルル…」
盗賊「お?動けるようになったか…だがちっこいワンコに何が出来る?」
女ハンター「死体に石炭を置く事くらいなら…」
盗賊「火が付けられんだろ…そもそもワンコは火が苦手な筈だ」
学者「バレンさん!!火花を操れやせんか?」
戦士「んん?」
学者「ウルフィに油も撒かせてそこに火花落とすんすよ」
戦士「ほほう?簡単そうだ…」
盗賊「やってみっか…おいワンコ!!お前に出来るか?」
ガブリ!!
盗賊「あだだだ!!何すんだこの野郎!!」
女ハンター「ワンコじゃなくてウルフィー…何回も言われてるじゃないの?」
盗賊「へいへいウルフィー様…石炭と油を扉の外まで運んで欲しいんだが…やれるか?」
ガブリ!! ガブガブ
盗賊「ぐあ!!痛てぇなこの野郎!!」
学者「兄貴が頼むとダメっぽいすね…ええと石炭と油用意するんでウルフィーの好きな様にやって見て下せぇ」
子ウルフ「ガウルルル…」
盗賊「勝手にしろい!!」
学者「トロッコから石炭と油を出しやす…ちっと待ってて下せぇ」
『30分後…』
シュタタ ヒョコヒョコ
盗賊「やけに準備に時間掛かるな…」イラ
女ハンター「びっこ引いてるんだから仕方ない」
盗賊「しかしこっからどうやって脱出するかだよな…」
学者「もっかい地上に上がってギンジャールの古城まで戻るぐらいしか思いつきやせんぜ?」
盗賊「ソリは何とかなるとして…こんな極寒の地にトナカイが居るんか?」
学者「シロクマ捕まえるしか無さそうっすね」
盗賊「ムリだ…普通のクマだって生け捕りなんかそうそう出来ん」
学者「バレンさん…徒歩で戻るとしてどんくらい掛かりやすかね?」
戦士「休み無しで歩いたとして一週間ぐらいか…凍えてしまうだろうから無理に思う」
学者「ほんじゃ軍港のキャラック船を奪いやすか…海から行けばウ・クバの町まで戻れそうっす」
盗賊「そんな所まで戻ったら徒歩で地下通路を歩いてくんのにどんだけ掛かんのよ…」
戦士「もう一層下に排水口が海に出て居たりしないかね?」
盗賊「おお…探せばあるかもな…アテは無いか?」
戦士「ううむ…聞いた事が無い」
盗賊「探すってなると又クソ寒い所を歩き回る必要が有るんだが…在るか無いか分からん物を探すのもなぁ…」
子ウルフ「ガウガウ!!」シュタタ
戦士「むむ!?準備が整った様だね…」
女ハンター「火花を操ると言うのって何の話?」
戦士「あぁ…私のハンマーで鉄を打つと火花が散るのだよ…その火花を少し操れる様なんだ」
盗賊「大した技じゃ無いぞ?」
戦士「ハハハまぁこうして役に立ちそうでは無いか」
女ハンター「ちょっと見て見たい」
戦士「見せてあげよう…付いて来たまえ」ノソリ
盗賊「俺は脱出の算段でも考えとくわ…」
学者「兄貴…開かずの扉が開かん様に何か置くって…何を置けやす?石なんか転がって無かったっすよね?」
盗賊「ううむ…そういやそうだな…」
学者「これ戦車を閉じ込める為の罠だったんすかね?」
盗賊「さぁな?」
学者「気密扉なんで外側にヒンジなんか無いですし…どうやって開かん様にしてるのか…」
盗賊「馬車なんか置いた所で直ぐに開いちまう…置くとしたらつっかえ棒みたいな物だ」
学者「そんな物何処にも落ちて無かったんでやっぱ準備してたって事っすよ」
盗賊「クソ…戦車封じか…まんまと嵌っちまった…」
ガーン!! ガーン!! ガーン!!
盗賊「がぁぁぁうるせぇ…」
ガーン!! ガーン!! ガーン!!
学者「いやぁ…この音聞いて敵がほくそ笑んでると思ったら悔しいっす…」
盗賊「これ上の出口抑えられたら俺等終わりだな…」
ガーン!! ガーン!! ガーン!!
盗賊「だぁぁぁうるせぇ…」
『開かずの扉』
ユラユラ
戦士「ふむ…隙間から外が明るくなったのが分かる…無事に火が点いた様だ」
女ハンター「火花を操れるのは地味だけど…工夫すれば使えそう…」
戦士「どの様に工夫を?」
女ハンター「例えば敵と戦いながら火薬を撒いておく」
戦士「おお!?敵の背後で爆発させるという事だね?」
女ハンター「気付かれない様にやれば効果的に思う…バレンさんは盾で自分を守れるし…」
戦士「ふむふむ…私だけ爆発に耐えるか…なるほど…」
子ウルフ「ガウ!!」ガブ グイグイ
女ハンター「ちょっと…ウルフィーどうしたの?」
子ウルフ「グルル…」グイグイ
戦士「引っ張っているね…」
女ハンター「どこに連れて行く気?」スタ
戦士「何か考えがありそうだ…やらせてみよう」
子ウルフ「ガウガウ!!」
女ハンター「え?戦車に乗る?…もしかして戦車で押せって言う事?」
子ウルフ「ワン!!グルルル…」
女ハンター「分かった!押してみる」
ウィーン ガコン グググググ
盗賊「おいおいおいおい!!どうした?どうしたぁ!!?」
女ハンター「ウルフィーが扉を押せって言ってるみたい」
盗賊「マジか…動きそうか?」
女ハンター「分からない…ちょっと隙間を見て来て」
学者「ラスさん!!扉がちょろっと動いたみたいっすね…これイケるかもっす」
盗賊「おおおお!!?なんか分からんがナイスだウルフィー!!」
グググググ
学者「今13センチぐらいっす…もうちっと動きやせんか?」
女ハンター「やってる…15センチくらいまで開けば私が外に出られるかもしれない」
盗賊「バレン!!扉を押すぞ!!」
戦士「私の出番が来たか…ようし!!どるぁぁぁぁぁ!!」グググ
盗賊「俺もだ!!どるぁぁぁぁ!!」グググ
『隙間15センチ強』
グイグイ
盗賊「どうだ?頭は入りそうか?」
女ハンター「ギリギリ…それより腰周りがキツイ…」
盗賊「押すか?」
女ハンター「ゆっくり…」モゾモゾ
盗賊「この扉は分厚いのがなぁ…」グイグイ
女ハンター「痛たたたた…」ドサ
盗賊「おお!!通ったな…」
女ハンター「バヨネッタをこっちに!!」
盗賊「おう!!」スッ
女ハンター「扉を塞いでる方法が分かった…馬車を魔法で凍結させて押さえてる」
盗賊「ほんじゃ溶かせば行けるか…」
女ハンター「人の皮で包んだ火薬が有ったでしょう?ちょっとそれで部分的に壊してみる」
盗賊「おう待ってろ!!」ダダ
女ハンター「これは時間稼ぎね…早くしないと大群が襲って来そう…」
盗賊「そっちに放るぞ!!」ポイポイ
女ハンター「爆破したら戦車で押してもう少し扉を開いて…私は地下通路の先を見張って置く」
盗賊「分かった…」
女ハンター「私が隠れる場所が無い…」キョロ
盗賊「離れて狙撃しろ」
女ハンター「仕方ないか…ちょっと待ってて」タッタッタ
盗賊「ゲス!!戦車で扉押してくれ!!」
学者「へいへい!!」
ターン!! ドカーン!! ドカーン!!
盗賊「押せぇ!!」
ウィーン ガコン ググググググ
盗賊「おーし!!開き始めた…バレン!!外に出て凍った馬車ぶっ壊すぞ!!」
『凍った馬車』
ガーン! ガーン! パリパリ
盗賊「なんで氷がこんなクソ硬いのよ…」カーン キーン
戦士「魔法で作られた氷は異常に温度が低いと聞いた事がある」ガツン ガツン
女ハンター「逃げた異形の魔物が何処に行ったか分からない!急いで!!」
盗賊「一本道だろ?前にも後ろにも居ないのか?」
女ハンター「どっちにも見えない…他に側道が有るかも知れない」
盗賊「こんな時に襲われたく無いな…」
戦士「これは凍った部分が全部解けてしまわない事には扉を十分開く事が出来ないねぇ…」ガツン ガツン
盗賊「こういう方法で扉を閉められるってのは覚えておかんとな…」
タッタッタ
学者「兄貴!!燃える物集めて来やした…これに油撒いて燃やしながら壊しやしょう」ドサドサ
盗賊「おう!!馬車の中に突っ込んで燃やしてくれ」
学者「へい!!」ドタドタ
盗賊「ええいクソ!!厄介過ぎるのな!この氷は!!」カーン カーン
学者「氷の温度をマイナス70℃くらいまで冷やすと鉄と同じ硬さになるらしいっす」
戦士「この氷はその中に木材まで入って居るからねぇ…更に硬い気がするよ」ガツン ガツン
『2時間後…』
ウィーン ガコン グググググ
盗賊「もっと押せ!もっと押せぇ!!」
戦士「なんとか戦車が通れるだけ扉を開けそうだね?」
盗賊「うむ…えらい時間掛かっちまったわ…」
学者「兄貴!!ギリギリなんでちっとどいて下せぇ!!」
盗賊「引っかけて壊すなよ?」スタ
ドスドスドス
学者「通りやした!!皆戦車に乗って下せぇ!!」
女ハンター「索敵お願い!!」タッタッタ ピョン
学者「熱探知は4キロ向こうまで無さそうっすね…」キョロ
女ハンター「一気に攻めて来ると思ったのに…」
盗賊「まぁラッキーだ…毒が効いてるのかも知れん」
女ハンター「こんな風に地下通路を封鎖出来るのなら私達も行動制限されてしまう…」
盗賊「だな?鍵の施錠と違って解錠出来んから鉄柵より厄介だ」
学者「バレンさん…この最下層はどっかで扉で区切られて居やす?」
戦士「セントラルの地下は要所要所に扉が有ったね…ただその扉を人力で動かすのは無理だよ」
盗賊「戦車使った場合はどうよ?」
戦士「ううむ…可能なのかも知れない」
女ハンター「その扉を封じて私達の戦車をこの地下通路に閉じ込める様に思う」
学者「そーっすね…こっちは戦車無しじゃ攻め手無くなりますもんね」
盗賊「どっか迂回出来んか?一つ上の層に上がるとかよ?」
戦士「その様な場所はエルフの森の南部しか知らない…ただ海に出られる場所はいくつか知って居る」
盗賊「海…地上に出るってか…」
学者「そっちの方が行動制限されんので安全かも知れやせんね」
戦士「地上からエルフの森南部まで行けば再度地下通路に入る事は出来るが?」
盗賊「ほう?裏を掻ける訳か…良い作戦かもな…」
女ハンター「ねぇ…ルーデウスは何処に逃げた想定で居るの?」
盗賊「セントラルかエルフの森南部のどっちかだとは思うが…バレンはどっちに思う?」
戦士「私はエルフの森南部に思う…そちらの方は要塞になって居るのだよ」
盗賊「よし決まりだ…一旦海から地上に出る作戦で行くぞ」
『地下通路』
ウィーン ドスドスドス
この地下通路はね…海面よりも低い位置に掘られて居る通路なのだよ…
海水が流れ込まないような工夫がいくつも有ってその側道は海に続いて居るのだ
私は詳しい理屈が分からないが…塩の満ち引きで気圧差を作り水を排出するようになって居たらしい
学者「知って居やすよ…水とか空気の流れが一方向になる一方弁とかもありやすね」
盗賊「まてまて…そこを行くとなると一回水の中を潜る事になるんだが…」
戦士「そうなるね…ただこの戦車なら行ける筈なのだよ」
盗賊「水の中を潜れるのか…」
学者「トロッコの荷はどうしやす?」
戦士「濡れて困る物は戦車の中に移し替える必要があるね」
盗賊「樽に入ってる水とか酒は良いとして…火薬と砂銀は濡らしたく無いな」
戦士「石炭は?」
盗賊「石炭は乾けば使える」
戦士「ふむ…では移し替える荷もそれほど多くは無いか…」
女ハンター「弾薬は濡らさないで…不発が増える」
戦士「水中を移動している間だけ戦車の中が少し狭くなるが…どうにかなりそうだね」
盗賊「ほんでその海へ出る通路ってのは何処にあるんだ?」
戦士「セントラルの地下にも有るが…その手前10キロぐらいの所から高さ違いでいくつもある」
盗賊「出口が氷で閉ざされてるって事は無いだろうな?」
戦士「それは行ってみない事には分からない」
学者「出口って海の中っすか?」
戦士「その当時は塩の満ち引きで出口が海の中に出たり入ったりしていたね」
学者「ほんじゃ今は海面下がって出口が露出してそうっすね」
戦士「ふむ…氷に閉ざされ難いと言えばセントラルにある側なのだが…」
女ハンター「閉じ込められるリスクを考えると手前の方が良いと思う」
学者「ちょっとぐらいの氷なら火炎放射でなんとかなるんじゃないすか?」
盗賊「まぁ手前側で一回行ってみるか」
学者「これ水を使った扉みたいなもんなんでこれから安全圏作るのに有効な手段になるかもっす」
『数日後』
ウィーン ドスドスドス
女ハンター「進行方向が傾斜で向こうを見通せなくなった…これどういう事?」
戦士「むむ!!そろそろだね…荷を移し替えたいが…」
盗賊「ラットマンがウヨウヨ居んぞ?」
戦士「ここから先は分岐がいくつも有って複雑なのだ…戦車の操作は私がやろう」
盗賊「このまま突破するんか?」
戦士「そうだね…戦車で踏みつけながら行けば共食いを始めて少しは時間が稼げるだろう」
学者「この傾斜は意味不明っすね…何なんすかコレ?」
戦士「恐らくこれも排水の工夫なのだと思う…今居る場所は最も深くて地熱で温かいのだよ」
盗賊「おお…それでラットマンが集まってんのかもな…」
学者「あ…もしかして水を蒸発させる区間だったんすかね?」
戦士「済まない…私には分からない」
学者「なんか分かりやしたよ…蒸発させて上部の冷えた区間で結露させて水を運んでるんすね…」
盗賊「良く分からんが初めてだな?そんな水の運び方すんのは」
学者「古代でも寒い地域だった筈なんでそういう工夫が有るのかもっすね…」
盗賊「ほーん…」
学者「キ・カイも同じ様に寒い地域だった筈なんで似た様なの有るかも知れんすよ」
盗賊「あそこも立ち入り禁止区域が沢山在って良く分からんかったな」
戦士「セントラルでもこの区域は一部の貴族しか立ち入り出来なかったのだよ」
盗賊「バレンが此処を知ってんのは特権か?」
戦士「当時は私も知らなかった…知って居たのは弟の方でね…教えて貰ったのだ」
盗賊「じゃぁルーデウスも知ってるんか…」
戦士「いや…もう一人の弟だ…不死者となって行方不明になった方だね」
女ハンター「ねぇ…分岐が見えて来た…どっちに行けば?」
戦士「私が変わろう…」
『分岐の分岐…さらに分岐』
ウィーン ガコン ピタリ
盗賊「おっと?ここで荷の移し替えか?」
戦士「うむ…私が荷を入れ替えるからアラン殿は後方から追って来るラットマンが居たら処理してくれたまえ」ノソリ
盗賊「分かった…ラス!援護頼む」
女ハンター「一応準備はするけれど…ラットマンに弾を使うのは勿体無い」
盗賊「へいへい…あんま沢山来る様だったら頼む」
戦士「では少し時間を頂く…」
ガコン ギギギ
盗賊「出るぞ!!?」ピョン スタ
学者「俺っちも一応出ときやすね…」ピョン スタ
盗賊「足元がベチャベチャだな?」
学者「結露水っすよ…あっちに流れて行ってやすね」ユビサシ
盗賊「あんま寒い感じは無いんだが…」
学者「壁面が冷えてるんじゃないすか?」
盗賊「おお…そういう事か…」
学者「風が無いのと外部とは水で遮断されてるんでこんな感じになるんすね」
女ハンター「アラン!!後方500メートルくらいの所にラットマン…あれだけ接近で処理して」
盗賊「そいつ囮に時間稼ぐのな?」
女ハンター「そう…こっちに向かって走ってるから早く行って」
盗賊「へいへい…援護頼むな?」ダダ
『30分後…』
ヨッコラ ドサリ
戦士「これで最後だ…少し狭いがどうにか乗れそうだ」ゴソゴソ
女ハンター「ゲス!!左右の窓をしっかり閉めて!」
学者「うぃーっす!!」ゴソゴソ
女ハンター「アラン!乗って!!」
盗賊「こりゃ又俺好みのスペースになったわ…ウハハ」ノソリ
戦士「よし出発しよう…」
ガコン ギギギ
戦士「このまま右手沿いの通路を下って行けば後は一本道の筈だよ」
女ハンター「動かして良い?」
戦士「うむ…もう私が操作しなくても問題無い」
女ハンター「じゃぁ進む」ピピ
ウィーン ガコン ドスドスドス
戦士「水の中に入っても操作は同じだから心配しなくても良い」
女ハンター「どのくらいの間水の中に?」
戦士「今の地点から恐らく10キロぐらいの間何度も水に入る事になる筈だよ…この戦車なら行ける筈」
盗賊「筈ってどう言う事だ?」
戦士「ここを行くのは初めてなのだ…だが水中を進むのは何度か経験がある」
学者「出口付近で凍って無きゃ良いっすね」
戦士「凍って居たら他にも同じ様な場所が有るからそっちに行けば良い」
盗賊「祈れって事だな?」
女ハンター「水中で何か出来る事は?」
戦士「無いねぇ…進むか戻るか…」
学者「あ…水面見えて来やした」
女ハンター「このまま行けば良いのね…」ドキドキ
戦士「ハハまぁ大丈夫だからそう緊張しなくても良い」
女ハンター「着水する!!」ザブン
『水中』
ブクブク ザブ
盗賊「ほーーーすげぇな…」キョロ
戦士「エルフの森ではあちこちに川が有ってね…一晩川の中で隠れる事も有ったのだよ」
盗賊「もしかして海底を歩いて向こうの大陸に行けたりするんか?」
戦士「残念だが数十メートルしか潜れない…川を渡るのが精一杯だね」
学者「それでもスゴイっすね…」キョロ
戦士「これがこの戦車の良い所なのだ…キャタピラのタイプとは大きく違う点なのだ」
学者「キャタピラタイプは潜れんのですか?」
戦士「潜れるが遅すぎるね…脚部が受ける水の抵抗が全然違うのだ」
学者「高機動って事っすか…」
盗賊「水の中での機動性がキャタピラタイプより優れてるってのは良い情報だ」
女ハンター「水中で何も出来ないのであれば逃げるしか選択が無いと思うけれど?」
盗賊「体術で勝つってのはどうだ?」
戦士「ほう?機動力を生かして接近戦…何か良い武器が思いつくかね?」
盗賊「どうにかしてキャタピラを動かんくすれば良く無いか?」
学者「ひっくり返すとか出来れば勝ちっすね」
盗賊「ひっくり返すか…ゴツイ鎖を引っかけるとか出来れば行けるのかもなぁ…」
学者「ちっとそういうのも考えときやしょうか」
『出口付近』
ザブザブ
女ハンター「水面に氷が張ってそう…このまま行ける?」
盗賊「行くしか無いだろう…割れん様なら戻るだな」
学者「そんな分厚い氷じゃ無さそうっすよ?」
女ハンター「突っ込む…」ドキドキ
ガツン! バリバリ パリーン
女ハンター「イケた!!」ザブザブ
盗賊「おお…水から出たは良いが…出口の光が見えんな…」」
学者「凍ってるって事は氷点下なんで後は外に出るだけっすよね?」
戦士「ふむ…やはり氷で閉ざされて居るか雪で塞がって居そうだ…火炎放射で溶かせれば良いが…」
女ハンター「外気温マイナス5℃…あまり寒くない…」
盗賊「まぁ火炎放射ぶっぱで行ってみるぞ…ゲスは左側な?」
学者「へ~い!!」
盗賊「動作チェックだ」カチ
ボボボボボボボ
学者「おお!!行けやすね…こっちも!!」カチ
ボボボボボボボ
女ハンター「このまま進むから正面を溶かしてみて」
盗賊「こいこーい!!」
『排水口出口』
ボボボボボボボボボボ
盗賊「こりゃ氷じゃ無くて雪だ!!ガンガン進め!!」ボボボボボボ
学者「外の光が全然見えんのですが…」
女ハンター「どんどん外気温が下がってる…今マイナス30℃」
学者「あ!!もう外に出て居やすね…今夜っすよ!!」
盗賊「おおお出たか…」
女ハンター「ここ何処?雪原?」キョロ
戦士「進路を少し左に変えてくれないかい?」
女ハンター「分かった…」ピピ
ウィーン ドスドス
盗賊「お!!?何か有るぞ?」
女ハンター「500メートルくらい向こうに船?」
戦士「ふむ…現在地が分かったよ…ここはかつて海だった場所だ…あの船は座礁した軍船だね」
女ハンター「とりあえずあの船に向かえば?」
戦士「そうだね…何か物資が残って居るかも知れないね」
盗賊「視界が悪いのはブリザードって奴のせいか?」キョロ
学者「多分そうっすよ…風が雪を巻き上げてるんすよ」
戦士「風が止めばセントラルの城も見えるだろう…ひとまずあの軍船の傍で風を凌ごう」
学者「気温はマイナス50℃…これで風に当たったら速攻凍えやすね…」
盗賊「人が住める環境じゃ無えわ…」




