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65.ノ・ヴォの軍港


『数日後_地下通路』



ウィーン ゴトゴト



女ハンター「前方!!又ラットマン…今度のは少し大型…」


戦士「それはラットマンリーダーで今までよりも賢くて強い」


女ハンター「このまま行って火炎放射で構わない?」


戦士「いや…群れてる筈だから1匹だけ狙撃で倒して共食いを待った方が効果的…」


女ハンター「じゃぁ300メートル手前で止まってバヨネッタを一発…」


盗賊「もう手慣れたもんだな?」


戦士「ラス殿はこの手の戦いは勘が良い様ですな」


女ハンター「持ち上げないで…むず痒い」


盗賊「しかし地下通路にネズミのお化けが住み着いてるとはな…」


戦士「セントラルの地下に一般人が近付かない為の処置だったのだよ…フィン・イッシュのゾンビと似た役目だ…」


盗賊「まだセントラルじゃ無いが?」


戦士「何処かの鉄柵が開きっぱなしなのだ…そう考えるとその他の魔物も居るかもしれない」


女ハンター「その他って?」


戦士「キマイラの一種だ…複数の魔物を掛け合わる研究を当時のセントラルがやって居たのだよ」


女ハンター「もしかしてラットマンも?」


戦士「そう…人間とネズミの掛け合わせ…繁殖力が異常に強い特徴がある」


学者「なんか生物に対する冒涜っすね…滅ぶべくして滅んでる気がしやす」


戦士「耳が痛い…」


盗賊「そういうのを全部清算に行くんだろ?」


戦士「まぁ…そうなれば良い…虐めないでおくれ…」


女ハンター「ラットマンが半分人間と聞いて狙撃し難く…」


戦士「知能はネズミだよ…これで気休めには?」


盗賊「苦痛を終わらせてやれ…お前なら一発でやれる」


女ハンター「くっ…」チャキリ


学者「そろそろ300メートルっす…一旦止めやすぜ?」



ウィーン ガコン ピタリ



女ハンター「ふぅ…ふぅ…」---いつも想像してる---



---何も知らずに只歩いて居る時に狙撃で頭を撃ち抜かれた時の事を---


---その時何を考えて意識は何処に行くのかを---


---ラットマンはあそこで只食べ物を探して彷徨ってる---


---それなのに勝手にその命を奪っても良いの?---



盗賊「祈れ…救いだ…」ポン


女ハンター「祈り…どうか…」



ターン!!



女ハンター「ヒット…」プルプル


盗賊「おーしこのままちっと様子見る…集まって来たら一気に行くぞ」


学者「へい!!」


女ハンター「…」---あの魂は何処へ?---



ヒラヒラ



女ハンター「…」---妖精?---



---お願い…どうかあの魂を救ってあげて---




『地下通路_側道』



ウィーン ドスドス



学者「兄貴…ここの側道はこの間と同じ構造だと思いやすぜ?」


盗賊「一応開きっぱなしの開かずの扉も有るな…ふむ…寄って行くか」


学者「只奥はラットマンの巣窟になってるみたいなんで掃除せんと戦車から降りられんすわ」


盗賊「このまま突っ込んで火炎放射で一掃だ」


学者「俺っち戦車操作するんで火炎放射はお願いしやす」


盗賊「バレン!!左側頼む!!」


戦士「承知!」ノソリ


学者「行きやすぜ?」



ガコン ドスドスドス



ラットマン「ギャ!!?」


盗賊「うらうらうらぁ!!」ボボボボボボボ


戦士「こちらも!!」ボボボボボボボ


学者「狭い部屋で出口を戦車で塞いでるんでラットマンは何も出来んすね…」


盗賊「ゆっくり前進だ…全部焼いてこの部屋は制圧する」




『小部屋』



ガコン ギギギ



盗賊「この間と同じ様に開かずの扉を閉める!!それは俺がやるからバレンは出て来て個別でラットマンやれ!!」


戦士「やっと私の出番か…」ノソリ


盗賊「奥の部屋にも居るだろうからこっちに近付けさせんな」


戦士「任せろ!!どらどらどらぁ!!」ドドド


盗賊「ゲス!!戦車を少しバックさせてくれ…トロッコの金具を扉に引っかける」


学者「へ~い!!」



ウィーン ドスドス



盗賊「もうちょいもうちょい!!」


学者「なんかこの部屋臭いっすねぇ…」


盗賊「クソから何から垂れ流しまくりだろ…全部焼かんとイカンなこりゃ…よーし!!金具引っかけた」ガチャ


学者「ほんじゃ引っ張りやすぜ?」


盗賊「おう!!」



グググググ ギギギギギ ガコーン!!



盗賊「これで裏取られる事は無え…ラットマン集めて焼くから石炭出しといてくれ」


学者「分かりやした!!」




『奥の部屋』



ダダダ!!



盗賊「バレン!!応援に来たぞ!!」


戦士「ハハハ…もう済んでしまった…上の層は?」


盗賊「まだ行って無え…とりあえず裏押さえられん様に一部屋づつ殲滅だ」


戦士「どうやらラットマンリーダーは居無い様だから殲滅は簡単そうだ」


盗賊「とりあえず倒したラットマンを焼くから運び出すぞ」


戦士「承知!!」


盗賊「しかしこの部屋もまたベッドが並んでんな?何に使ってんのよ…」


戦士「恐らくなのだが…30年前の100日の闇を此処で過ごしたのだろうと思う」


盗賊「ほ~ん…ベッドだけ放置か」


戦士「セントラルの地下都市にもこの様な場所はいくつも有るのだよ」


盗賊「見た感じ物資が置いてある感じは無えなぁ…」キョロ


戦士「もう放置されて長い様だね」


盗賊「ここから地上に上がれるかはまだ分からんが…場所的にはノ・ヴォだっけか?」


戦士「その筈…隠れた軍港が有ったのだよ」


盗賊「じゃぁ海の傍か」


戦士「どうなって居るのだろうねぇ…」




『死体の山』



メラメラ ボゥ



学者「香ばしい匂いはするんすが…全然食欲湧かんすわ…うげげ」ゲロゲロ


盗賊「ネズミだネズミ!!人間のゾンビ焼くよりよっぽどマシだわ」


学者「上の方はどうだったんすか?」


盗賊「直ぐそこに鉄柵で施錠してあってな?まだ行って無え」


学者「ほんじゃラットマンは今焼いてるのが最後っすね」


盗賊「その筈…そいつ焼き終わったら又探索行くぞ」


学者「ラスさんは戦車から出ないって言って居やすよ?」


盗賊「この匂いか?」


学者「多分…あとやっぱ寒いっすよね」


盗賊「まぁワンコの世話も有るし置いて行くか…」


学者「煙はやっぱ天井の穴から出て行ってるっぽいすねぇ…」


盗賊「誰か居りゃバレバレだろうな?」


学者「また廃城とかかも知れんすね?」


盗賊「バレンが言うには隠れた軍港になってるそうだが…」


学者「へぇ…ほんじゃ物資あるかも分からんすね」


盗賊「30年前の話よ…今どうなってるのかはさっぱりだ」


学者「もう南極圏に入ってる筈なんで海が有るのかも微妙っすね」


盗賊「うむ…まぁあんま期待はして居ない」


学者「がっちり防寒して行きやしょう」




『3時間後…』



メラメラ パチ



女ハンター「ここに有る物はみんな燃やして良いのね?」


盗賊「おう!!火がありゃとりあえずそこそこ温いから好きにしろ」


女ハンター「あまり戦車を降りる気も無いから凍えない程度に燃やしておくわ」


盗賊「直ぐに戻るつもりでは居るが…一泊ぐらいはするかも知れんからそのつもりで頼む」


女ハンター「無茶な事はしない様に…」ジロリ


盗賊「へいへい…ほんじゃ行くな?」ノシ



スタスタ



学者「兄貴!!鉄柵の解錠お願いしやす」


盗賊「任せろ…てかこれ向こう側から施錠してるからちっと時間掛かる」カチャカチャ


戦士「ここで施錠してると言う事は上の層は全部誰かが使って居たと見て良いねぇ」


盗賊「だな?良い物有るかも知れん」



ガチャリ ギギー



盗賊「お?意外と簡単に開いたな…先に行け…俺は施錠して行く」


学者「お先っすー!!」スタ




『タラップ』



ヨジヨジ



盗賊「うぁぁエライ長いタラップだ…」


学者「上層に小部屋あるの期待したんすが…」


盗賊「無い物はしゃー無えな?」


学者「気密扉ってどっか有りやした?」


盗賊「分からん…とっくに外されてどっか行ったんだろ」


学者「区画がどうなってるか分からんすね…この縦穴も気密の高い壁面じゃ無いすよね…」


盗賊「知るか!!」


戦士「タラップがもう少しで終わりそうだ…」


盗賊「なぬ!?まさか行き止まりか?」


戦士「いや…そこから側道が出て居そうだ」


盗賊「おおう…そういうタイプか…真上に出る感じじゃ無い訳な」


戦士「下の層にベッドが残されて居るのはコレが原因だろうね」


盗賊「これじゃ運べんな?」


学者「どっから運び込んだとか謎も有りやすけどね」


戦士「側道に先に入るぞ?」ヨッコラ


盗賊「ゴラ!!ゲスも早く行け!!」


学者「へいへい…」ヨッコラ


戦士「今度は鉄の扉が有るね…」ガチャガチャ


盗賊「おっと…そりゃ難儀するかも知れん…鍵穴は有りそうか?」


戦士「見当たらない…向こう側から施錠されて居そうだ」


盗賊「やっぱそうか…ちっと時間掛かるぞ?」


戦士「ハハハそんなに慌てても居ないからゆっくりで構わないよ」


学者「これ出口付近なんでかなり寒くなって来やしたね」スリスリ


盗賊「油持ってんな?ちっとこれで明かりを頼む…」


学者「お!?ミライ君が作った銅貨のランプじゃないすか…」


盗賊「便利な物は持ち歩いてんだ…そいつで暖も取れる」


学者「いやぁぁ懐かしいっすねぇ…」チッチ メラ


盗賊「よーし…ちっと明かり有ると良く見えるわ…扉はこっち側に開くタイプな…牢屋の扉だ」


戦士「開けられそうかね?」ジロジロ


盗賊「こういう場合は扉のヒンジを外して行くんだ…」カチャカチャ


戦士「ほう?扉ごと外すと…」


盗賊「ちっと力が必要なんだが…まぁ大丈夫だろう」カンカン コンコンコン




『鉄の扉』



ガコン ガコガコ



盗賊「おしゲス入れ!!どっかその辺に鍵無いか探してこい」


学者「へいへい…」ズリズリ


戦士「この隙間では私は入れないな…」


盗賊「扉をぶっ壊せば行けるんだが後で施錠出来なくなるもんでな…」


学者「兄貴!!やっぱ此処牢屋っすね…」


盗賊「他に誰か居そうか?」


学者「気配無いっす…ちっと看守の詰め所を探して来やす」スタ


盗賊「おう気を付けろよ?」


戦士「牢屋が有るというと…衛兵の宿舎が傍に有る筈なんだが…」


盗賊「冬の間はどっか行ってんじゃ無えか?」


戦士「ふむ…確かに…ノ・ヴォ領はこの軍港以外に多くの要衝を持って居る…気候の良い地方へ移って居るかもしれん」


盗賊「統治してんのは知った貴族か?」


戦士「当時伯爵だった者だが…行方不明になった後にどうなったのかは分からない」


盗賊「統治者が分からんのか…」


戦士「その家系の誰かだとは思う…そもそもセント・ラル領を誰が統治して居るのかも今いま分からない」


盗賊「滅んだ国ってのはそんなんなっちまうんだな…」



タッタッタ



学者「兄貴ぃ!!鍵ありやしたぜ」


盗賊「おおでかした!!」


学者「なんか一杯有るんすかどれっすかねぇ…」チャラチャラ


盗賊「ちっと貸してみろ」


学者「分かりやす?」ジャラ


盗賊「ふむ…このタイプの鍵か…ちっと細工すりゃマスターキーを作れそうだ…ちょい待て」キリキリ ゴシゴシ


学者「へい!!マスターキーってその一本で全部開くんすか?」


盗賊「これと同じ扉ならな?…てか看守は居ないのか!?」


学者「誰も居無いっすよ…多分囚人も居ないすね」


盗賊「ヌハハ完全に放置状態か」ゴシゴシ


戦士「極寒の地で牢屋も意味の無い物になってしまった様だね…」


盗賊「おーし出来た…ゲス!!鍵を受け取れ」


学者「へいへい…」


盗賊「ちっと扉のヒンジを元に戻すな?ふんむむむ!!」ガコン ガコガコ


学者「これ普通に解錠すりゃ良いっすか?」


盗賊「おう!やってみろ」



ガチャリ ギギー



学者「うほほ!!やっぱ兄貴は神っすね…」


盗賊「ちっと時間掛かったが…まぁこんなもんだ」


学者「入って下せぇ…一応施錠しときやすね?」ガチャリ


盗賊「さてさて…外がどうなって居るのやら…」


学者「あ!!看守の部屋に武器が有りやしたよ」


盗賊「ほう?」


学者「普通の剣とか槍なんすが…バレンさんは使わんすか?」


戦士「いや…このハンマーが中々使い勝手が良くてね…私はこれで良い」


盗賊「なんだかんだでそのハンマー出番多いな?」


戦士「そうなのだよ…一発でラットマンの頭部を粉砕出来る威力も申し分無い」


学者「ほんじゃ帰りに持って帰るぐらいにしときやしょうか」


盗賊「だな?行くぞ!!」




『隠された軍港』



ヒュゥゥゥゥ サラサラ



盗賊「岩の洞穴を軍港にして使ってたんか…誰も居無えな…」キョロ


学者「キャラック船が2隻有るんすが…これ盗めるんじゃないすか?」


盗賊「夏だとイケるかもな…一応覚えとくぞ」


戦士「恐らくあのキャラック船は夏の間に物資を此処に運んで居る船に思う…」


盗賊「夏はどっか行ってるってか…」


戦士「この軍港には来た事が有るから案内出来るが?」


盗賊「ほんじゃ頼むわ…」



今来た所が衛兵が詰めて居る宿舎だ…牢屋はその地下に有ったね


そしてこの隠された軍港は当時軍船の補修所として使われて居たのだよ


多くの兵隊が降りて来る事も有って裏手にちょっとした町が有る


今も有るか分からないが多くの娼館が並ぶ兵隊達の歓楽街があったのだ



盗賊「歓楽街なぁ…とりあえず行ってみようぜ?」


戦士「こっちだ…」スタ




『軍港の町』



ビュゥゥゥゥ サラサラ



盗賊「風がクソ寒い…」


学者「木が一本も生えてないっすね…」キョロ


戦士「南極圏に入って居るから一年中氷が溶ける事も無いのだね…昔は温かくて良い港だったのに…」


盗賊「一応町っぽいのは有るが…誰も居そうに無いんだが…」


学者「こんなんだったら軍港の洞穴の方が風入って来ないんで過ごしやすいと思うんすけど…」


盗賊「だな?つまり誰も居ないって事だ」


戦士「まぁまぁ…私の思い出にも付き合ってはくれないか?」


盗賊「思い出?」


戦士「若き頃の思い出だよ…陸軍と海軍とは仲が悪くてね…良くここで騒ぎを起こしたのだよ」


盗賊「バレンは陸軍だったか…」


戦士「海軍の方が海の富をもたらすと言って発言力が強かった」


戦士「陸軍の方はというと捕らえたエルフの処遇で内部でゴタゴタして居てね…一枚岩にはなれなかった」


盗賊「捕らえたエルフ…」


戦士「貴族達は競って捕らえたエルフを買うのだよ…軍規で捕虜の処遇は決まっているのに勝手に買っていく」


学者「揉め事になりそうっすねぇ…」


戦士「まぁそう言うのも有って大手を振って戦果のアピールが出来なかったのだ…だから海軍には下に見られた」


盗賊「そんな時代の苦い思い出が此処に有る訳か…」


戦士「私は立場上捕らえたエルフを逃がすとか出来なくてね…」


盗賊「そらそうだ…」


戦士「その行く末を知りながら可哀想な思いもさせてしまった…まぁ苦い話だ」


学者「もうこの極寒の地にエルフなんか感じやせんけど?」


戦士「まぁそう言わず付き合ってくれたまえ…30年変わらずそこに有る物もあるかも知れない」スタ


盗賊「こりゃクソハズレの町だ…ゲス!!付いて行くぞ」


学者「へいへい…」




『娼館だった建屋』



ドンドンドン ドンドン



盗賊「誰も居ないんじゃ無いか?」ブルル


戦士「ううむ…残念だ…」



ガチャリ ギー



女「ど…どなたでしょう?」オドオド


戦士「おお!!」


盗賊「あぁ悪い…旅の者だ」


女「旅?船でこちらへ?」ジロジロ


盗賊「そうじゃ無いんだが…この建屋は昔娼館だったらしいな?」


女「え?」


戦士「済まないが当時の思い出が有ってね…」


盗賊「まぁ…わざわざこうして尋ねに来た訳だ…ちっと入れてくれんか?」


女「こ…困ります…冬に誰か訪ねに来るなんて今まで一度も…」


戦士「どうか頼む…地下に有る小部屋を少し確認させて欲しい…」


女「あれ?もしかして貴方は…バレンシュタイン卿…」


戦士「済まない…名を名乗れる立場では無い…」


盗賊「もしバレンシュタイン卿だったとしたら入れて貰えるんか?」


女「いくつか質問に答えて頂けるのでしたら…」ジロリ


盗賊「どうする?」


戦士「仕方あるまい…私はバレン・シュタイン…忍んで此処に参った…何も危害を加えるつもりは無い故…」



ガチャリ ギギギー



女「どうぞお入りください…」


戦士「済まないね…何もする気は無い故に気を張らんでくだされ」スタ


盗賊「ふぅぅぅ助かった…寒かったわ…」ブルル




『カウンター』



ドタドタ



学者「ほえ~?ここは何の店っすか?なんでこんなに錬金術の材料揃ってるんすかね?」キョロ


女「夏の間だけ錬金術の素材を売って居ます…普段は花売りをして居ますが冬に誰か訪ねに来た事はありません」


学者「花売り?」チラリ


盗賊「…」チラ


女「それで皆さんはどのようなご用件で?」


戦士「その昔この建屋が娼館だった頃にね…地下の一室にエルフを匿って居た事があるのだよ」


女「そうでしたか…ご案内しても良いのですがその前に質問をしたいのですが…」


戦士「私に答えられる事で有れば…」


女「イエスかノーでお答えください」


戦士「承知…」


女「シュタイン家はセント・ラル領の主権を主張しますか?」


戦士「シュタイン家?」


女「質問を変えます…バレンシュタイン卿は王権の復興を目的にしていますか?


戦士「ノー」


女「ワイマー家との繋がりは有りますか?」


戦士「ノー」


女「旧セントラルは滅亡しましたか?」


戦士「イエス」


女「以上です」


戦士「失礼だが君は何か事情に詳しそうだな…」


女「いえ…一般的な疑問だと思います」


戦士「今の問答で君が何を得たのか理解出来ない…」


女「お気になさらず…地下の一室をご覧になりたいのでしたらどうぞ…」


戦士「ええと…それは良いが私を案内しなくても?」


女「今この建屋には私一人しか居ませんのでお連れ様を見て居る必要もあります」


盗賊「何も盗むつもりも無いがな?ヌハハ」


戦士「まぁ3人に囲まれては怪しまれて当然だねぇ…一人で行動して良いのなら行かせて貰うが?」


女「どうぞ…お約束ですので…」


戦士「では済まんがアラン殿…ちと離席する」


盗賊「へいへい!!」


戦士「失礼…」スタ


女「…」ジロリ


学者「なはは…そう睨まんで下せぇ…俺っち医者なんすよ」


女「錬金術に興味が?」ジロジロ


学者「それもそうなんすが…俺っちの話をちっと聞きやせんか?」


女「どの様なお話でしょう?」ジロリ


学者「ズバリ言いやすよ?」


女「どうぞ…」


学者「ホムンクルスの石化を治せるんす」


女「…」ピク


学者「これ…手紙なんすが」パサ


女「手紙?」


学者「読んでも良いっすよ?」


女「誰に宛てた手紙でしょう?」パサ ヨミヨミ


学者「誰って訳でも無いんすが…花売りをやって居る人に渡す為の手紙っす」


女「罠!!」スチャ


盗賊「おっと!!!マテマテ」グググ


女「くぅぅ!!」


学者「落ち着いて下せぇ…ほんで頭の機械を自爆させるのも待って下せぇ」


女「あなた達は誰!!?」バタバタ


学者「その手紙はガチで古代人の命を救う情報っす…賢者の石が無くても石化を止められるんす」


女「証拠は?」


学者「今は連れて来て居ないんすがホムンクルスとして成長した人が石化せずに無事に生きてるっす」


女「…」


学者「どうかその情報を必要な人に届けて欲しいと言うのがその手紙の役割なんす」


女「証拠が無いと誰も納得しない!!」


学者「困りやしたねぇ…そこに書いてあるんすがハーフオークの髄液の移植だけで事が済みやす」


女「だから何?」


学者「今ここで移植出来やすよ?証拠になれやすよ?」


女「私が証拠に?」


学者「そうっす…バレンシュタインさんはハーフオークなんで髄液の移植が可能っす」


盗賊「ここで頭の機械を爆発させるより随分良い選択だと思うが?」


女「まさかバレンシュタイン卿が此処に来て居る目的って…」


盗賊「国を取り戻すとかそういうのじゃ無え…世界を救いに来てる…それは古代人も含めてだ」


学者「ロールバックの阻止ってのも有りやすね…あとバックアップっすか…」


女「そんな情報が何処から…」アゼン


学者「さぁ?移植やってみやす?ちょっと腰のあたりにチクっと刺すだけなんすが…」


女「その後私をどうするつもり?」


盗賊「どうもしやし無え…俺らはサッサと去る」


学者「こっちの願いはその手紙が必要な人達に渡る事っす…賢者の石を作るのに人の命を無駄にもせんで良いんすよ」


女「証拠…私が証拠になれば納得させられる?」


学者「そう願って居やす…重ねて言うと子供も産める筈っすよ?もうそういう子が無事に育ってるんで」


女「イクラシア・ギンジャール…」


学者「お?知って居やしたか…多分彼の父親はハーフオークっすよ…それも手紙に書いてるんで良く読んで下せぇ」


盗賊「とりあえずだ…懐のデリンジャーから手を離さんか?」


女「…」ジロリ


盗賊「だから危害を加えるつもりは無え!むしろどうにかして生きろと言う話だ」



ポロ ガチャ ガラガラ



盗賊「おうおう…やっぱ2連装デリンジャーな?危無え危無え…」


学者「弾抜いときやすぜ?撃たれると敵わんので」カチャカチャ


女「手を放して…痛い」


盗賊「暴れんなよ?あんま暴れるとポッキリ折れちまうからな?」スッ


学者「いやぁぁヒヤヒヤっすねぇ…」


盗賊「バレンが戻って来るまで移植は出来んのだからよ?手紙をしっかり読んでみたらどうだ?」


女「…」ジロリ


盗賊「ヌハハそう怖い顔すんな」


女「バレンシュタイン卿はその事を知ってセントラルを離れて?」


学者「いろいろ事情は知ってたと思いやすよ?でも石化を治療出来る事を見つけたのは最近の事なんす」


女「手紙を読ませて貰う…」ヨミヨミ


学者「俺っちは錬金術の材料を眺めときやすね」




『髄液移植』



チク チュゥゥゥゥ…



女「ぅぅぅ…」


学者「はい!終わりっす!!」


女「こ…これだけ?…たった10分足らずで?」


学者「しばらく足に痺れが出ると思いやすが2~3日で軽快しやす…」


女「どうやって効果の確認を…」


学者「傷の治りを観測するのが一番早いっす…血中のエリクサー濃度が上昇するんで治りが早いんすよ」


盗賊「さて…用事は済んだな?そろそろ行くか…」


学者「そーっすね…あんま長居しても何も無いんで行きやすか」


戦士「あぁ済まないがもう少し付き合って欲しい…」


盗賊「まだどっか行きたいんか?」


戦士「鍛冶場の有った場所だ…そこを見て終わりにする」


盗賊「むむ…娼館に鍛冶場…もしかして先王の落とし子か?」ジロ


戦士「ハハハ…バレてしまったか…姉と兄に当たるのだ…もう何処に行ったのか分からなくてねぇ」


盗賊「そら一回見に行かんとな?」


女「冬の間は鍛冶場の方も誰も居ない筈…」


戦士「まぁ良いのだよ…当時の兄が叩いた金床が見たいだけなのだ」


女「当時…」


戦士「もう30年も昔の話…100日の闇を乗り越えられたのかも不明だからせめて記憶だけは忘れたく無いと思ったのだ」


学者「でもまだ生きてるかもしれんすよね?」


戦士「そう願っては居るよ…只貴族では無かった2人が生き残った可能性は残念ながら低い」


学者「そーっすか…ほんじゃ記憶を探しに行きやすか!!」


戦士「済まないねぇ…」ノソリ


盗賊「じゃぁ俺等サッサとおさらばするわ…後ろからデリンジャー撃ってくんなよ?」


女「…」ジロリ


学者「てかしばらく安静にしといた方が良いっすよ?骨髄に注射打ってるんで下手すると後遺症残りやす」


戦士「それは私も同じでは無いかい?」


学者「バレンさんは既に回復力マックスなんで大丈夫っすね」


戦士「ハハハそうかね…要らぬ心配だったか…」


盗賊「じゃぁ行くか!!長生きしろよ!!ノシ


女「…」ウツムキ




『鍛冶場』



ヒュゥゥゥゥ サラサラ



盗賊「炉に火も入って無えし…屋外だし…クッソ寒いわ…」


学者「町の作りからして昔は賑わってたんでしょうねぇ…」キョロ



カーン カンカン



盗賊「うお…バレンの奴ハンマーで金床打ち始めたぞ…」


学者「なーんか…寂しいっすね…」


盗賊「だな?」


学者「あれで昔を思い出せるんすかね?」


盗賊「さぁな?…ただアイツも失った物が多いんだろうな?」



カーン カンカン ピカピカッ



学者「あ…火花が散って…」


盗賊「あのハンマーは色んな物混ざった謎金属なんだ…多分黄鉄鉱も混ざっとる」


学者「分かって来やした…」


盗賊「何がよ?」


学者「あの光も妖精っすよ」


盗賊「なぬ!?」


学者「こういう雰囲気のある所にあんな感じで妖精が出て来るんす」


盗賊「マジか…」


学者「なんか金床打つ音が弔いの音に聞こえて来やしたよ」


盗賊「おっとおっと…俺はそういう感性が無いかもなぁ…」



カーン カンカン キラキラ



学者「ほら?会話してるみたいに聞こえやせんか?」


盗賊「ふむ…いろんな解釈が出来そうだが…そういうのもアリだな」


学者「いやぁ金床打つだけでこんな事感じた事今まで無いっすよ…」


盗賊「俺ももうちょい感性豊かになりてぇ…」



カーン カンカン


カーン カンカン




『オーロラ』



ユラユラ ユラユラ



学者「見て下せぇ!!コレっすよ!!妖精の効果っすよ!!」ユビサシ


盗賊「スゲェな…」ポカーン


学者「なんか祝福されたみたいで嬉しくなりやすね?」


盗賊「どっかパワーアップしてるかもな?ヌハハ」


学者「でもやっぱ昼間が短いっすねぇ…あっちゅう間に日が暮れやしたね…」


盗賊「今から又冷えて来るか?」


学者「風が止んだんで大分マシになったじゃないすか」


盗賊「こういう日はキンキンに冷えるのよ…しかしまぁ壮大な空だこと…」アーングリ



スタスタ



戦士「済まない…待たせてしまったね」


盗賊「おお気が済んだか?」


戦士「兄の声が聞こえた気がしたよ…それでつい夢中に金床を叩いてしまった」


盗賊「そら良かったな」


戦士「それで気が付いたのだがこのハンマーで金床を打つと火花が散るねぇ」


学者「そーっすね…見て居やしたよ」


戦士「どうやら私はその火花を少し操る事が出来る様だ」


盗賊「なぬ?」


戦士「少し見て居てくれたまえ…」スタスタ



カーン!! ヒラヒラ フワフワ



学者「お!?これ操ってるんすか?」


戦士「そうだよ…少しの間だけど右にも左にも自由に操れる…」ヒラヒラ


盗賊「ほーん…何に使うんだ?」


戦士「私の兄も金床を打ちながら火花を操って居てね…ただそれだけなんだが…綺麗では無いかい?」


盗賊「そんだけかい!!」


戦士「ハハハ私にしては良い発見だったよ…さぁ…そろそろ戻ろうか」


学者「そーっすね…戦車に戻って暖まりやしょう」


盗賊「ふぅぅぅやっと帰れるか…」


学者「あ!!誰かクマにソリ引かせて居やすね…」


盗賊「クマ?」キョロ


学者「あそこっス…シロクマっすね…」ユビサシ


盗賊「そんな猛獣を飼い慣らせるんか…」


戦士「ムム!!あれは花売りの女では無いかね?」


盗賊「ハハーン…もう手紙の情報をどっか持って行こうとしてんだな?」


戦士「あの方向はノ・ヴォの町の方角だね…ソリなら一日足らずで行ける筈…」


学者「安静にしてた方が良いんすけどねぇ…」


盗賊「情報が情報だから急ぎたいんじゃ無えのか?」


学者「こっちを追いかけて探しに来んで良かったって言う見方もありやすね」


盗賊「うむ…俺らは戦車戻るか」


学者「そうしやしょう…寒いっす」






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