62.ウ・クバの港町
『地下通路の出口』
ガチャリ! ガチャガチャ
盗賊「おーし!!これで俺以外鉄柵の解錠は出来ん!!」
ビュゥゥゥ
女ハンター「外は寒そう…」ブル
学者「兄貴!!これ出口は断崖になっていやすぜ?」
盗賊「なぬ!?出られんのか?」
学者「いやいや…階段があって上の方には行けるっぽいっす」
盗賊「おおなるほど…そっから物資運んでるか…」
学者「それより地下通路がなんで断崖の中腹なのかって事っすよ」
盗賊「ちっと俺も見るわ…」ダダ
学者「こんなんなってるの初めて見やした…」
盗賊「おお…結構高さ有るな…50メートルは有りそうだ…」
学者「おかしいっすよね?大体海に通じてるんすが…」
戦士「20年前の転変地異で沿岸部は大きく地形が変わったのだよ…その影響だと思う」
学者「こんな断崖になっちまいやすかね?」
戦士「霜柱という現象を知って居るかね?」
学者「ええ!?もしかして地中の水分が霜柱になって地表を押し上げてるんすか?」
戦士「誰かがその様に話して居るのを聞いた事がある」
盗賊「って事はよ?地下通路の水が排出されないでどっかに溜まるとかなりそうだな?」
学者「そうっすね…ほんで海を見て下せぇ」ユビサシ
盗賊「うむ…ムン・バイと同じだな…海水が引いて建造物が少し露出しとる」
戦士「あれは防波堤では?」
盗賊「そんな役割になってるかも知れんが…古代の倒壊した建造物だ」
戦士「あんな物が海に沈んでいたとは…」アゼン
盗賊「まぁちっと外に出て見るぞ…先頭行くな?」スタ
『階段の上』
ビュゥゥゥ サラサラ
盗賊「雪が降ってる訳じゃ無いが…風に舞って見通し悪いな…」
女ハンター「アラン!近くに小屋が有る!!」ユビサシ
盗賊「どうせ地下通路の監視所だろ…ちっと見て来るわ…待ってろ!!」
スゥ…
学者「これ只待ってるのってきつくないすか?」
戦士「見たまえ…見通しが悪いが砦と小さな町が見える…恐らくあれがウ・クバ砦…」
女ハンター「ここから1キロ有るか無いか…なんとか行けそう」
スゥ…
盗賊「おい喜べ!!小屋の中は誰も居無え…ほんでソリが有るぞ!!」
学者「じゃぁ宿が無かった場合は小屋で休める感じっすね?」
盗賊「そうだ!!俺らは石炭も持ってるから暖にも困らん」
女ハンター「そんなワザワザ寒い思いをするくらいなら戦車で休むわ」
盗賊「ナハハそらそうだ…まぁとりあえずソリが有るもんだから移動はかなり楽だ」
学者「ここで寒い思いするのもアレなんでサッサと行きやしょうよ」
盗賊「おう!!行くぞ!!」
『ウ・クバの港町』
ザック ザック
盗賊「ソリ引くのは良いが…俺だけシンドイ思いすんのがなぁ…」ザックザック
戦士「私が変わろうか?」
盗賊「バレンは防寒装備がショボイから大人しくしてろ」
戦士「済まないねぇ…」
学者「バレンさん…此処って要塞なんすか?」
戦士「そうだよ…高台にある砦には大砲が沢山据えて有ってね…そこから海を狙える様になっているのだよ」
学者「なんか櫓もあちこちにあっていかにもって感じっすね…」
戦士「うむ…」
その昔フィン・イッシュは海軍力が凄くてね…
このウ・クバ砦はフィン・イッシュの軍船を寄せ付けない要衝だったのだよ
ここからフィン・イッシュ側にある区域が係争地で領地の取り合いを何十年も続けて居たのだ
フィン・イッシュからすればウ・クバ砦を攻略したかっただろうが
海底にある古代の建造物が邪魔で軍船で近寄る事が出来なかったのだね
学者「バレンさんは係争地の争いに加わってたんすか?」
戦士「いや…私はもっぱらエルフの森だね…そこで大軍を率いて居た事もある」
盗賊「要衝になれた理由が例の地下通路だな…そっからの補給有りきだろ」
戦士「今思えばそうだったのだと思う…当時の私は知らなかった…」
盗賊「それにしても誰も居無えな…」キョロ
女ハンター「寒いのだから当然でしょう…建屋の中に籠って居るのよ」
学者「冬の間はそんな感じが続くんでしょうね?」
盗賊「船も何隻あんだ?20隻は停船してる…」
学者「みんな船底が浅い船っす…あそこにも人が住んでるかもっすね」
盗賊「こっちはキ・カイと違って地下が無いもんだから生活すんのに厳しそうだ」
戦士「こっちの大陸は建屋に必ず地下を作るから意外と寒さは凌げるのだよ」
盗賊「ほーん…そういやフィン・イッシュの建屋も地下が有ったな…」
女ハンター「アラン?あそこの建屋…煙が出てる…宿屋じゃない?」
盗賊「行ってみっか!!」ザック ザック
『とある建屋』
ガチャリ ギギー
男「おっとぉ?誰だお前等?」
盗賊「こりゃ宿屋とは違いそうだな…」キョロ
男「そんな物此処に有る訳無いだろう…お前達は傭兵か?」
盗賊「只の旅人なんだが寝泊まりする所が無くてなぁ」
男「どっから来たのよ?ノヴォか?オムスクか?」
戦士「オムスクだ…」シラジラ
男「おお良い体してんな…残念だが今傭兵の募集は閉め切っちまっててな…」
盗賊「とりあえず寝泊まり出来る所を探してるんだが…あとは食い物だな」
男「食い物は漁船の方だ…寝泊まりするってなると砦に行ってもらった方が良いんだが今は入れてくれんだろうなぁ…」
盗賊「この建屋はどうなのよ?てか何してる建屋だ?」
男「ここは傭兵ギルドなんだ…ならず者の集まる場所よ」
女ハンター「アラン…ここには用が無さそう…他を当たりましょう」
男「おっと!?女が居るのか…」
女ハンター「だったら何?」
男「一晩で金貨100は稼げる場所を紹介するぞ?」
女ハンター「私は娼婦じゃない…」
男「ガハハ分かってるじゃ無えか…そこに行けば寝泊まり出来る場所は有るんだがな?」
女ハンター「アラン!!出るわ…」スタ
盗賊「まぁ食い物調達して戻るか?」
男「おいおい待て!戻るって何処に戻る気よ?」
女ハンター「関係無いでしょ!」フン!!
『漁船』
ギシギシ
漁師「売れるのはこれだけなんだが…金貨はあるんかぁ?」
学者「へいへい…」ジャラリ
漁師「うお!!全部買い寄るか…」タジ
学者「ついでなんすが毛皮とか肉とかどっか売って無いすかね?」
漁師「ここから見えるんだが丘の方に少し大きめの小屋があるやろ」
学者「あーアレっすね…」
漁師「冬の間は商隊が儲からんであの小屋にトナカイを入れてるんだ…エサが足りんから安く譲って貰えるかも知れん」
学者「ウホホ!!トナカイが買えるっすか!!」
盗賊「こりゃ肉に在り付けそうだ」
学者「皮とか角も手に入りやすよ…ポーションの材料に欲しかったんすよね」
漁師「こんなに食料買い付けて何処に持って行く気だ?」
戦士「オムスクに戻る…」シラジラ
漁師「おおぅ…そりゃ大変だ…てかこんな金貨持ってるって事はオムスクの方は景気が良い様だ」
学者「ナハハ…ま…まぁそうっすねぇ…」
盗賊「おい!!トナカイ買いに行くぞ!!」
学者「そうっすね…ソリ引くのも楽になりやすね」
漁師「気を付けてな!!?」
ザック ザック
学者「バレンさん…オムスクに戻るってどういう事すかね?」ヒソ
戦士「どうやら私達を不審に思ってる男が居る様だからね…」
女ハンター「正解…さっきの傭兵ギルドの男が付け回ってると思う」チラ
盗賊「俺が口滑らしたせいか…マズいこと言っちまったな」
戦士「どちらにしても不審だと思われる…オムスクに戻ると言いふらせば少しは言い訳になるかと…」
『トナカイ小屋』
グーグー ブォー ゲヒゲヒ
管理人「2匹合わせて金貨10枚でどうだ?」
学者「なぁぁぁ高いっすねぇ…ソレだとシカより高いじゃないすか」
管理人「ええいクソ!!じゃぁ8枚!!これ以上は負けられん」
学者「シカ並みっすね…しゃーない買いやす!!」
管理人「まいどぉ!!」
学者「好きなの選んで良いっすか?」
管理人「良いから金貨を確認させてくれぇ!」
学者「へいへい…」ジャラリ
管理人「おおおお!!本当に金貨が…」
学者「なんか漁船でも金貨出して驚かれたんすが…何でなんすか?」
管理人「この時期に金貨を稼げる事なんて殆ど無いんだ…稼いで居るのは傭兵相手に体を売ってる娼婦ぐらいだ」
学者「へぇ…因みにその娼婦って何処に居るんすかね?」
管理人「傭兵ギルドに聞くんだな…奴らはそれをエサに傭兵を募ってる所も有るからな」
盗賊「もしかしてよう?全然女を見かけないのはそういう事か?」
管理人「お前達は知らないのか…女は子供まで含めて全員娼婦になって囲われてる」
盗賊「それは娼婦じゃなくて奴隷って言うんだ」
管理人「領主の方針だから文句は言えん…ただ生まれて来た子供はちゃんと安全な場所で育てられてるからそれで良い」
盗賊「そうかい…要らん事聞いちまったな」
学者「兄貴ぃ!!良さそうなトナカイ選んだんでソリに繋ぎやすぜ?」
盗賊「おう!!」
『トナカイのソリ』
ドドドド ススーー
盗賊「しかし胸くそ悪い話を聞いちまったわ…」
女ハンター「娼婦の件ね…」
盗賊「うむ…ヤン・ゴンで奴隷の子供達が賢者の石にされる実験されてただろ…多分その出所だ」
学者「あぁぁぁ…フーガ君の…」
盗賊「生まれて来た女以外は皆あの小僧みたいになってる訳だ…ぶっ潰してやりたい所だが…」
女ハンター「早まらないで…もうアナールは捕らわれなんだから」
盗賊「分かってる…まぁやってる事はフィン・イッシュと変わらんって事も理解出来た」
女ハンター「どういう事?」
盗賊「フィン・イッシュは食料牛耳って民をコントロールしてたろ…此処は女を牛耳って全体コントロールしてんのよ」
学者「ゲスい政策なんすが…男を動かして更に金を搾り取る良い政策かも知れんすね」
女ハンター「女の人権は?」
学者「男みたいに捨て駒にされん分良いっていう見方もありやすぜ?」
女ハンター「…」
学者「生まれた時からそういう環境が普通だと思い込ませられてるんで何も苦痛を感じて無いと思いやす」
女ハンター「それは家畜と一緒…」プルプル
学者「住んでる世界が違うんすよ…フィン・イッシュとはそういう思想の違いが有るんすね」
戦士「ゲス殿の言う通り…思想の違いはそう簡単に混ざり合わない…恐らくアナール卿が失脚しても続くと思われる」
盗賊「さっきのトナカイ売りの男も悪びれた物言いはしてないから女を買うってのは普通の事なんだ…マジ狂ってるわ」
戦士「ところでアラン殿…先ほどヤン・ゴンの話が出て来たが…もしかして私の軍船に接触して来たのは…」
盗賊「おお!!そういや軍船2隻の庇護下にしばらく入ってたな」
戦士「船が違うからまさかとは思って居たのだ…そうかすれ違いが有ったか…」
女ハンター「後方!遠くで行き先を監視して居そう…」
盗賊「面倒臭い事になりそうだな…」
女ハンター「どうするの?このまま地下通路の方へ?」
盗賊「トナカイを処理する時間が欲しい…一旦このソリが有った小屋に入るだな」
学者「こっちバヨネッタ持ちが2人居るんで余程大丈夫っすけどね?」
盗賊「向こうに襲わせて身ぐるみ全部頂くと言う手もある…どうする?」
戦士「こちらに4人居る事が分かって居るから襲うならその倍以上揃えて来る筈…そんなに人が居るのだろうか?」
盗賊「ふむ…良し分かった…俺は鉄柵の鍵開けてちょっと石炭持って来るからゲスはトナカイの血抜きやっといてくれ」
学者「そら良いんすが…どうする気っすか?」
盗賊「そんなもん物資を全部トロッコに積んでサヨナラすんのが早いだろ…鉄柵が開いてりゃ直ぐに終わる話だ」
女ハンター「石炭をどうするつもり?」
盗賊「小屋の中で暖を取りながら此処で一泊寝泊まりしますよというアピールだ…深夜まで襲って来ん」
女ハンター「その間に戦車に乗って行く訳ね」
盗賊「そういう事だ…ラスは向こうの事を見張っててくれ」
女ハンター「分かった…」
盗賊「じゃぁ俺は先行して鉄柵開けて来るから例の小屋で待っててくれ」
学者「へ~い!!」
『断崖の傍の小屋』
スゥ…
盗賊「戻ったぜ?どうよ?トナカイの血抜きは終わったか?」
学者「見ての通りっス…毒牙のナイフが有ると暴れんからメチャ楽っすわ」
盗賊「しっかり血が抜けるまでもうちょい掛かるか…」
学者「寒いんで火を起こしやせんか?」
盗賊「石炭はちょろっとしか持って来て無いぞ?」
学者「ほんじゃソリを解体して燃やしちまいやしょうか」
盗賊「おお…そうだったな…石炭なんか要らんかったな…」
学者「バレンさん!頼んます!」
戦士「フン!!」メキメキ バリバリ
盗賊「うはぁ…素手で解体するってか…」
学者「暖炉に突っ込んで下せぇ」
戦士「細かいクズに火を…」ゴソゴソ
チッチ メラメラ
盗賊「今のうちに魚とか運んどくな?」
学者「そうっすね…魚は凍ってるんで滑って落とさんで下せぇよ?」
盗賊「へいへい…もっかい行って来るわ」ゴソゴソ
『30分後…』
ドタドタ
盗賊「ぅぅぅ寒ぶ…凍った魚持つのは手がヤベェ…」スリスリ
女ハンター「アラン!砦の方から衛兵らしい人達が出て来てる」
盗賊「おっと?意外と早い展開か?」
学者「当然の流れじゃないすか?勝手に此処に居座ってるんで」
盗賊「距離は?」
女ハンター「800メートルぐらい…雪の中の徒歩だから20分は掛かると思う」
学者「真っ直ぐ来やすかね?」
女ハンター「多分…衛兵達と傭兵の人達合わせて10人位ね」
盗賊「しゃぁ無え…もう移動するか…バレン!!トナカイを一匹頼む」
戦士「承知!!」
盗賊「ゲス!!炉で燃えてる木材をその辺に巻き散らかせ…時間稼ぎたい」
学者「分かりやした…」ガッサ ガッサ
メラメラ
女ハンター「行って!!この距離ならまだ何してるのか分からない筈だから…」
盗賊「おう!!ラスも遅れんなよ?」
『断崖の鉄柵』
ビュゥゥゥ
盗賊「暗いから足元気を付けろ…入れ入れ!!」
戦士「先に行かせて貰う」ドタドタ
盗賊「バレン!!このトナカイも頼む!!俺はゲスとラスが鉄柵潜ったら施錠する」ドサー
戦士「分かった…」スタ
盗賊「おい!!2人共早く降りて来い!!」
学者「へいへい…」ドタドタ
女ハンター「上手く行きそうね…」スタ
盗賊「ようし!潜ったな…施錠する!」
ギギギー ガチャン!!
女ハンター「まだ距離は200メートルくらい離れて居たから余裕ある筈…」
盗賊「おーし!一枚目施錠完了」カチャン
シュン! グサ
戦士「ぐぁ!!」ヨロ
女ハンター「え!!?」キョロ
戦士「戦車の影に隠れろ…異形が居るぞ!!」
シュン! シュン! グサ グサ
戦士「ええい…トナカイを盾替わりにするしか…」タジ
盗賊「ちぃぃ…挟まれちまってるか…」カチャカチャ
女ハンター「見えた…放置してあったトロッコの影に2体か3体…」
盗賊「ええいクソ!!弓で狙われてそっち側の鍵を開けられんか…」
学者「これ両側から弓で狙われたらマズくないすか?」
戦士「私が今の内に異形の弓は防ぐからゲス殿とラス殿は戦車の中に!!」
学者「さーせん!!そうさせて貰いやす」ダダ
シュン! シュン! グサ グサ
学者「ラスさん!先に入って下せぇ!!」
女ハンター「ありがとう!!」スタタ
盗賊「うらぁ!!2枚目施錠!!」カチャン
ブーン ウィーン ガコン
女ハンター「戦車起動した…熱探知…あ!!多数…」
盗賊「何ぃ!!?」
女ハンター「トロッコの所に2体…通路の奥に6体ぐらい…その向こうに馬車みたいな物!!」
盗賊「先に6体と馬車狙え…スナイパーライフル行けるか?」
女ハンター「届く…まず馬車の車輪を狙う」ガチャリ
戦士「私はどうする!?」
盗賊「とりあえずトロッコの中に身を隠せ…そこの中にアサルトライフル有るからそれで牽制しろ!!」
戦士「銃器は使った事が無い…」
盗賊「使って覚えろぉ!!」
ターン!!
女ハンター「ヒット!」ガチャリ
学者「俺っちもバヨネッタで…」
盗賊「待てゲス!!出口側に火炎放射準備しろ」
学者「わ…わかりやした…」ドタドタ
盗賊「俺もトナカイ盾にしながら鉄柵を解錠するしか無えか…」グイ
シュン! シュン! グサ グサ
盗賊「俺の肉に何すんだゴラァ!!」ドドド
学者「兄貴!!トロッコから重装荷車降ろして使って下せぇ」
戦士「これを使え!!どるぁぁ!!」ズドーン
盗賊「うほほ…そいつを放り投げるか…」
戦士「これで広くなった…トナカイをこちらに」
盗賊「俺の肉を頼む!!」ブン ドサー
ゴゥ ボボボボボボ
盗賊「ぐぁ!!異形は魔法を使って来るか…バレン!!火薬に飛び火せん様にトロッコに蓋を!!」
戦士「むううううん!!」ドターン!
学者「兄貴は重装荷車だけで大丈夫すか!?」
盗賊「うるせぇ!!異形が魔法撃てん様にどうにかしろ!!」
女ハンター「手数が足りない!!バレンさんも射撃を!!」ターン ガチャリ
ターン ターン ターン ターン
盗賊「よーしよしよし…今の内に重装荷車押して鉄柵に…」ゴトゴト
学者「出口に誰か来やしたぜ!?」
ガチャガチャ
クソう!!鍵が掛かってる!!誰か此処の鍵を持って居無いか!!
なんだと!?施錠されてるだと!?…誰か裏切ってるな!?
ゴタゴタ言って無いで鍵を探してこい!!向こうにゃ例の戦車有るぞ!!
学者「集まって来やしたねぇ…火傷したら雪に飛び込んで下せえよっと…」ボボボボボボボ
傭兵「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」ヒューーー ドサー
盗賊「火炎放射はトロッコの影の異形を狙えんか!?」
学者「遠いっす…あと2枚くらい鉄柵開けないと近付けんっす」
盗賊「ええいクソ!!」
ゴゥ ボボボボボボ
盗賊「このままじゃ重装荷車が燃えちまう…バレン!ゴルァ!!ライフルちゃんと当てろボケェ!!」
戦士「何処を狙えば良いのか…」ターン ターン ターン ターン
女ハンター「遠方の6体は距離を取り始めた…トロッコの2体は私が…」ターン
盗賊「異形に魔法撃たせんな!!今一枚鍵開ける…」カチャカチャ
女ハンター「アラン!!即席の爆弾を持って居ないの?」ターン
盗賊「んなもん持ち歩いて無え!!トロッコの中だ…」カチャカチャ
学者「奇襲を食らった形なんでしゃぁ無いっす…榴弾は投げられやせんか?」
盗賊「鉄柵が邪魔だ」カチャカチャ
学者「俺っちも異形の方集中した方が良さそうっすね…」ドタドタ
盗賊「魔法を撃たれにゃなんとか…うっしゃぁ!!」ガチャン!
ギギギー
女ハンター「戦車を少し移動させる…」ウィーン ゴトゴト
戦士「異形が逃げるぞ!!」ターン ターン ターン ターン
盗賊「おーし!!そのまま向こうに撃たせるな…次だ次!!」
『追撃』
ウィーン ゴトゴト
女ハンター「異形の魔物は全部で8体…馬車を置いて纏まって逃げてる」
盗賊「馬とか居無いのか?」
女ハンター「見てない…多分異形の魔物が引いて来たんだと…」
学者「こっちに補給に来てたんじゃないすかね?フィン・イッシュでも食い物持って行こうとしてたんすよね?」
盗賊「かもな?」
女ハンター「馬車をどうする?」
盗賊「もう車輪をぶっ壊してんだろ?要らんわ!」
女ハンター「じゃぁこのまま踏みつけて異形の魔物を追う形ね」
学者「距離結構近いんで狙撃で倒せやせんか?」
女ハンター「回復されてしまうから弾が無駄になってしまう…」
盗賊「距離800メートルって所か…逃げられちまうくらいならガトリング撃って全部纏めて倒したいな…」
女ハンター「ガトリングはトロッコの中ね?」
盗賊「おう!!」
女ハンター「戦車止める?」
盗賊「いや…このまま追尾しろ…向こうは徒歩だから直に疲れて速度落ちる…そこが狙い目だ」
女ハンター「もう直ぐ馬車を踏みつける形だから揺れに注意して」
盗賊「分かってる…ちょいトロッコ行って来るわ」ガコン ギギギー
『トロッコ』
グイ ググググ
盗賊「おいバレン!!無事か?」
戦士「まぁ…背に矢を受けて出血している様だ…ぅぅぅ」
盗賊「早いうちに止血した方が良いな…戦車まで移動出来るか?」
戦士「大丈夫だ…」ノソリ
ガタン バキバキ ゴトゴト…
盗賊「うぉっと!!馬車を踏みつけたか…」
戦士「なかなか休めんな?」ノソノソ
盗賊「異形の魔物を見ちまったからな…あいつ等を倒せばちっとは休める」
戦士「ルーデウスが居る感じは?」
盗賊「居無え…ルーデウスはもっと狡猾だ」
戦士「フフ確かに…」
盗賊「おい!!そこに有るガトリングを取ってくれ」
戦士「これか?」ガサリ
盗賊「それだソレ!!こっちに寄越せ!!」
戦士「フン!!なかなか重い…」ヨッコラ
盗賊「鉛が沢山入ってるからな?…さぁ戦車に移ってゲスに処置して貰え」
戦士「そうさせて貰う…」ポタポタ
盗賊「おっとこりゃ結構深々と矢が刺さってんな…」
戦士「やはり毛皮だけでは守備力が足りん様だ…足を引っ張って申し訳ない」
盗賊「不意打ちだったからしゃぁ無え…おら引っ張るぞ?」グイ
『戦車の上』
ウィーン ドスドスドス
盗賊「ゲス!!バレンが出血してる!!手当頼む!!」
学者「へいへい…バレンさん中に入って横になって下せぇ」
戦士「あぁ済まない…」ノソリ ドター
女ハンター「アラン?距離は800のまま…どうする?」
盗賊「集弾性悪いが…地下通路の中なら反射して当たるだろ…このままブッパで行く」
女ハンター「あまり当たらない様なら弾を節約して」
盗賊「へいへい…倒れた奴は火炎放射で焼いてくれな?」
女ハンター「任せて…」
盗賊「おーし…皆殺しだ…行くぞ?」ガチャリ
ダダダダダダダダダン! ダダダダダダダダダン!
女ハンター「当たってる…転倒したのが居る!!」
盗賊「おーし!!効果有りだ!!このまま行く!!」
ダダダダダダダダダン! ダダダダダダダダダン!
『殺戮』
ボボボボボボボボボ
盗賊「どんどん燃やせぇ!!」
女ハンター「一匹逃げる!!」
盗賊「逃がすかゴルァ!!食らえ!!」ポイ
ドガーン!! パラパラ
女ハンター「ちょっと!!手榴弾も沢山有る訳じゃ無いから無駄に使わないで!」
盗賊「奴らはバラバラにしないといつ復活するか分からんのだ…念には念をだ!!」
学者「兄貴!!石炭使わんとしっかり燃やせんですぜ?」
盗賊「分かってる…戦利品の魔石集めながら死体集めてまとめて焼くぞ」
学者「ウホホ…魔石落とすんすか…」
盗賊「ゲスは使えそうな物集めろ…俺は一匹づつ止め指しながら死体集める」
学者「分かりやした…」
女ハンター「気を付けて…死んだフリをしながらチャンスを伺ってるかも知れないから」
盗賊「へいへい…行くぞゲス!!」ダダ
『死体の山』
メラメラメラ ボゥ…
戦士「…」
盗賊「どうしたバレン?」
戦士「人の皮を被った異形は…その昔の…セントラルの貴族達だと聞いた」
盗賊「心が痛むか?」
戦士「私が守って来た者達が…こんな風になってしまって居るのが悲しい…」
ルーデウスはアナール卿にこう言ったそうだ…
元々セントラルに居た民の命は全部僕の物だ…どんな扱いをしようが僕の勝手だと…
戦士「そうやって虐殺を行い…その生皮を剥いで身に付ける…どうしてそんな事が出来る様に育ってしまったのか…」
盗賊「はっきり言わせて貰うが…狂ってるとしか言い様が無え…悪いが皆殺しにさせて貰う」ギロ
戦士「分かって居る…只少し…祈らせてくれ」
盗賊「何を祈るつもりよ?」
戦士「どうかその魂に救いがある様に…」
盗賊「魂に救い…」
学者「あれ?神様に祈る訳じゃ無いんすね…何に祈ったんでしょう?」
戦士「んん?どういう事かね?」
学者「今の祈りは魂が天に召される様な祈りと違うと言ったんす…何に祈ったんすか?」
戦士「ハッ!!私は…無意識に世界の倫理に対して祈りを…」
学者「倫理…それシステムって奴っすね…なんか俺っち分かって来やしたよ?」
盗賊「ゲス…システムの在処ってもしかして…」
学者「兄貴も同じ事感じて居やすね?俺っちが思うに物理的には存在してないと思いやす」
盗賊「祈りか…」
学者「うほほ…流石兄貴っすね…多分なんすが古代人にはそれが分からんのですよ…」
盗賊「それで古代遺跡漁って集中制御端末を探してるってか…」
学者「確定じゃないんすが…なんかそんな気がしやすよね」
盗賊「祈りが世界のシステムを変える可能性…」
学者「そこら辺の話はカイネさんかホムコさんにもっかい聞いて見ても良いっすね」
盗賊「祈りか…ううむ…祈りなぁ…」
『バラバラになった馬車』
ガサゴソ
盗賊「ちっとこの木材使ってキャンプするか」
学者「お!?やっと纏まった休憩っすね?」
盗賊「肉が食いたくてよ…トナカイが凍っちまう前に皮剥いどく必要も有るしな」
学者「良いっすねぇ…」
盗賊「馬車の幌もまだ使えそうだから回収しといてくれ」
学者「あれ?兄貴はどうするんすか?」
盗賊「まだ鉄柵が2枚施錠してないもんだからちっと行って来るわ」
学者「そういう事っすね」
盗賊「直ぐ戻るから肉焼いといてくれ」
学者「分かりやした…今日はここで休憩しやす?」
盗賊「少しな?どうせ直ぐに木材は燃え切っちまうだろ」
学者「そーっすね…冷えた体を温めるだけで違いやすもんね」
盗賊「じゃぁ行ってくんな?」
学者「弓撃って来るかも知れんので気を付けて下せぇ!!」
盗賊「鉄柵が何枚も有んのに当たりゃし無えよ!!じゃぁな!!」ダダ
『キャンプ』
メラメラ パチ
盗賊「うぇ~い…戻ったぞぉ…」スタ
学者「どうすか?外の連中は?」
盗賊「なんか騒いでんだがガン無視だ…一枚目の鉄柵すら開けて無え」
学者「異形の魔物が来たら皆殺しに合うかも知れんのにのん気なもんすねぇ…」
盗賊「まぁどうでも良い…肉焼けてるか?」
女ハンター「アランの分はコレ…」スッ
盗賊「お!?ん?かじって無えな…」
女ハンター「かじって欲しいの?」ジロ
盗賊「いやまぁ…そのままで良いんだが…」
学者「ラスさんが岩塩まぶしてくれてるんすよ…かなり美味いっす」
盗賊「おお!!そりゃ良い」ガブ モグ
女ハンター「どう?」
盗賊「めちゃくちゃ美味い!!」モグモグ
学者「まともに肉食うの久しぶりっすよね」ガブモグ
盗賊「バレンは食わんのか?」
戦士「ハハ…私はレーションで十分なのだよ…」ゴソゴソ
盗賊「ほーん…ほんで何やってんのよ?」
学者「あーー皮が入手出来たんで鱗の鎧を自作中っす」
戦士「やはり最低限急所は守らないと矢が痛くてねぇ…」ゴソゴソ
盗賊「そらそうだ…黒曜石の矢尻は大丈夫だったんか?」
学者「直ぐに取り出しやしたよ…しばらく安静にしてれば問題無いっす」
戦士「あぁそうだ…トロッコに積んで有った弓を私が使っても良いかね?」
盗賊「おおそれ俺のだ…なんで又弓なんよ?」
戦士「私は銃器を使うより弓の方が良さそうだと思ってね」
盗賊「矢があんま無かった気がするが…」
学者「トナカイに何本も刺さってたんでトロッコに積んでたのと合わせて20本くらい有りやすね」
盗賊「まぁ…シカ狩り以外には使わんからバレンが使うというならそれでも良いわ」
戦士「私は弓も得意なのだよ?」
盗賊「そら結構なこって…銃器より当てられるならそっちのが良い」
戦士「ハハハ…あの銃は一発も異形に当てられなかったねぇ…」
女ハンター「照準の見方を分かって無いだけに思う」
戦士「まぁ弓が有るからコレを使うさ…」
盗賊「ほんで話が変わるが…馬車には何も積んで無かったか?」
学者「少量の芋と水だけっすね…やっぱ補給欲しくてこっち来たと思いやす」
盗賊「食料取りに来たは良いが鉄柵に施錠されてて何も出来んかった感じか…」
女ハンター「食料が欲しいのは誰?」
盗賊「さぁな?逆に俺らが兵糧攻めする番だ…面白くなって来たじゃ無えか」
女ハンター「本当に食料を取りに来たと思う?」
盗賊「他に何か有るか?」
女ハンター「砲弾…砦に沢山大砲が有ると言ったでしょ」
戦士「ムム!!そう言えばウ・クバ砦の大砲は長射程の…」
女ハンター「見れば分かる…いくら高台だからと言って海に向かって飛ばすならそれなりの大砲…」
盗賊「砲弾をそんな沢山馬車で運ぶとかかなり無理があるぞ…馬が居た訳でも無えし…」
学者「もともと此処に食料を運ぶかわりに砲弾をもらう約束だったとか?」
盗賊「ほう?それならトロッコが沢山ある理由にもなるな…」
学者「バレンさん…戦車の砲弾を保管してあるのって何処だったのか知らんすか?」
戦士「いやいや…エルフの森南部にあった古代遺跡だとは思うが…その後どうしたかまでは…」
学者「30年以上昔の話でしたっけ…今がどうなのかもう分からんすね…」
盗賊「逆に言うとその砲弾欲しさにこっち側へ又異形の魔物が来るかも知れんって事だ」
学者「魔石が手に入るんで美味しい敵っすね」
女ハンター「ちょっと待って…ガトリングの弾に余裕が無くなって来てる」
学者「あたたた…そうでしたね」
女ハンター「何処かで補給出来れば良いのに…」




