6.傭兵ギルド
『数日後』
ザブ~ン ユラ~
盗賊「また雨が降りそうだな…」
学者「降ったり止んだりっすねぇ…」
盗賊「しゃー無ぇ…ミライに言われる前に床磨くかぁ…」ノソ
学者「もう雨漏りは大分良くなったんすがね…」
盗賊「多分アレだ…雨が降る前に必ずやっとかなきゃイカン系のやつだ」
学者「じゃぁ俺っちも粉作って来るっす」スタ
スタタタ
剣士「アランさん!!大変だ!!前方に大きな船が見える」
盗賊「なぬ!?どこよ!?」キョロ
剣士「船首から見えた…まだ遠いけどね」
学者「見に行きやしょう!!」タッタッタ
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『船首』
ユラ~リ ギシ
盗賊「おぉ!!アレか…帆の陰になってたんか…」
剣士「大きいよね?」
盗賊「ありゃ軍船だな…くそデッカイキャラック船だ」
スタスタ
戦士「どれどれ?」ジー
盗賊「おぅリコル…船尾の監視は飽きたんか?」
戦士「声が聞こえたから見に来たのだ…ふむ…もう海賊は出ないな」
盗賊「やっぱ軍船だよな?」
戦士「海の治安を守っている船だ…他にも沢山小さな船が居る筈」
剣士「あぁぁ!!居る居る!!三角帆一枚の小さな船」
戦士「高速のスループ船…3~4人が乗って巡回しているのだ…スクーナーよりも早い」
盗賊「ってことはバン・クーバに近いんだな」
戦士「どうやら無事に辿り着けそうだ…なかなか楽しい航海だったなハハハ」
剣士「うわぁ…あの船早いなぁ…」アゼン
盗賊「こっちに近付いて来てるのは様子見に来てんだな?」
戦士「恐らく…」
剣士「小さな船が沢山こっちに来るよ」
戦士「ところでミライ君…君の目隠しはどういう仕組みなんだい?」
剣士「え?只の目の粗い布さ…透けて見えてるだけだよ」
戦士「目を隠さなくてはならない理由でも?」
剣士「姉さんが隠せって…その理由は言えない」
戦士「そうか…まぁ気にしないでくれ」
剣士「目隠しをしてた方が良い事もあるんだよ?すごく遠くが見やすいんだ」
戦士「ほう?」
剣士「そして近くを見る時は音とか匂いを感じながら見る…だから戦いの時に良く動けるんだ」
戦士「なるほど…今度理由を聞かれた時はそう答えると良い…余計な誤解を生まないで済む」
剣士「ハハそうだね…」
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『行き会い』
ザブ~ン ユラ~リ
剣士「大きいなぁ…」フリフリ
学者「こっちと比較にならんっすね…」
剣士「あ!!向こうも手を振った!!やった!!」ブンブン
盗賊「いやしかし間近に見ると圧巻だな…」タジ
戦士「主力はスループ船とスクーナーの方だ…このキャラック船は補給船だよ」
盗賊「俺がガキの頃はよ…このでかいキャラック船よりも更にデカい船が有ったんだ…機械で出来た船な?」
剣士「そんな大きな船が…」ポカーン
盗賊「キ・カイの軍港に良く出入りしてたのよ…機械の反乱の後は何処行ったか分からん」
学者「噂じゃ外海に行ったっきりっすね」
盗賊「近くで見て見たくて何回も軍港に忍び入ったんだが…毎回捕まってお袋が謝りに来てた」
学者「最近だと機械じゃなくて蒸気船ってのが出て来たらしいっす」
盗賊「ほう?何だソレ?」
学者「帆に加えて蒸気でプロペラを回すとか…ミネア・ポリスで造船されたらしいっすよ?」
盗賊「なぬ!?海に接して無いだろう」
学者「湖に流れてる川を登るらしいすよ?」
盗賊「マジか…逆流でもスイスイってか?」
学者「地下列車も蒸気で動かす様になったんでこれからは蒸気機関の時代っすね」
盗賊「魔石が入手出来んくなった代わりか…」
学者「メチャクチャ高くなりやしたよね…俺っちのバヨネッタも魔石必要なんでいつまで使えるか…」
盗賊「ロボの魔石もそろそろ交換時期だ…バン・クーバに戻ったら買わなきゃならん…」
学者「金有るんすか?」
盗賊「んむむ…又ドロって来ないと足りんな…」
学者「兄貴は良いっすねぇ…どうにか資金調達出来るんで…」
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『船尾楼』
ユラ~ ギシギシ
盗賊「さっき見えた灯台が…海図で言うココだから…ちょい進路右だな」グイ
学者「これこのまま行ったら夜中の内に着いちゃうんじゃないっすか?」
盗賊「他の船と結構行違う様になったから速度落とさにゃならん…まぁ明日の朝だ」
学者「朝になったら雨止むと良いっすね」
盗賊「うむ…」
戦士「アラン達は到着した後どうする?」
盗賊「とりあえず姉御の事が心配だから一度傭兵ギルドの方へ顔を出す…リコルはどうするんだ?」
戦士「宿屋だな…」
盗賊「積み荷をどうするとか聞いて居ないのか?」
戦士「あぁ…それは向こうがこちらを見つけてくれるのを待つんだが…」
盗賊「向こうって何ヨ?」
戦士「まぁ隠して居ても無駄だから言うが…私の妻が先にバン・クーバに移動しているのだ」
盗賊「なるほど?つまり宿屋で待ち合わせという事か…」
戦士「う~ん…ハッキリ言うと何処に居るか分からん」
盗賊「くぁぁぁ何だソレ!!」
少女「母…父来たの匂いですぐわかる」
盗賊「…なるほどな?」---母親もそっち系か---
戦士「実を言うと今回の船旅は私からすると家族旅行なのだ」
盗賊「んん?」
戦士「この子の他にあと2人姉が居てな…フィン・イッシュの祖父の所で世話になっている…家族で会いに行くという事なのだ」
盗賊「娘が3人居たってか…」
少女「父…秘密はしゃべるな…母に言うぞ」
盗賊「ヌハハなんかお前ん所の家族が大体分かって来たぞ…能力持って居ないのはお前だけだな?」
戦士「まぁ言うな…」
盗賊「家族全員揃うってのは羨ましい限りだ…ほんで?嫁と合流するまではどうなるか分からんと」
戦士「その通り…荷の入れ替えは少なくとも3日は必要になるだろう…それまで自由だ」
盗賊「俺も色々やりたい事があるからその方が良い」
少女「お前ー!!母は怖いぞ?…覚悟しておけ?」
盗賊「俺は何もして無ぇだろ…怒られる理由が無ぇ!!」
少女「手紙…」
盗賊「う…」ギク
少女「忘れるな?」ジロ
盗賊「わ…分かってらい!!」
--------------
『翌日_バン・クーバ港』
ガコン ギシギシ
盗賊「うっしゃぁぁ!到着!!」
学者「兄貴ぃ…これ船泊めとくのやっぱタダじゃないっすよね?」
盗賊「悪りぃ…ちっと立て替えて置いてくれ…後で返す」
学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」
盗賊「リコル!!荷物持って居りて良いぞ!!…連絡は追ってだな?」
戦士「ハハハそう慌てなくても良い…と思う」
盗賊「わーってるわーってる!!嫁によろしくな?」
少女「うぉーーーー!!都会ぃぃ!!」シュタタ
ウルフ「ワフワフ!!」シュタタ
戦士「ハハハやっと船から降りられて嬉しい様だ…では又」ノシ
盗賊「おう!!又な?」ノシ
学者「兄貴ぃ!!俺っち先に金払って傭兵ギルド行っときやすね?」
盗賊「分かった…俺は後からミライとリッカ連れて向かう…おっと待て!!」
学者「なんすか?」
盗賊「お前のバヨネッタ…ロボの筐体ん中入れとけ」
学者「うおっと忘れて居やしたね…」ガチャ ガチャ
ロボ「ピポポ…」クルクル
学者「じゃぁ行っときやす!」タッタ
盗賊「さぁて…俺の荷物と言っても何も無ぇな…さっさと2人連れて行くか?」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
--------------
『桟橋』
ギシギシ
盗賊「包帯はまだ取れ無いのか?」
女オーク「ゲスさんがまだ取るなって…もう痛く無いのに」
盗賊「アイツはまぁ腐っても医者だからな…何か理由あんだろうな」
剣士「姉さん!!剣忘れてるよ…」
女オーク「そうだったわね…」スチャ
盗賊「武器携帯か…禁止されちゃ居ないが…毛皮の中にしっかり隠しとけ」
女オーク「分かった…」ファサ
剣士「なんか…他の人はみんな薄着だね」キョロ
盗賊「割と温かいからな?まぁ…毛皮着こんだからと言っておかしい訳では無いぞ?」
盗賊「高級品だから洒落て着こむ奴も多い」
剣士「僕この港の方までは来た事無いんだ…遠くから見てるだけだった」
盗賊「軽く説明するか?」
ええと…こっち側の大陸じゃ珍しく殆どの建物が地上に建ってる
一応地下都市は有るんだが先の大戦で大部分が埋まっちまった
キ・カイよりかなり気候が良いもんだから皆こっちに移住した訳だ
ほんで今は建築ラッシュ…木材が必要な訳よ
剣士「へぇ…入り組んだ地形が港に適してるのかな?」キョロ
盗賊「それもあるんだろうが…古代でも港だった様で色々都合が良いらしい…防波堤とかな?」
剣士「今日は何処で寝るの?」
盗賊「宿屋でも良いんだが…傭兵ギルドに宿舎があってそこを自由に使えるんだ」
剣士「僕達ギルドに入って無いけど?」
盗賊「あぁ気にすんな…そんな奴他にいくらでも居る」
剣士「なんか人が多い所は姉さん怖がるんだ…」
盗賊「そうか…ほんじゃ俺らの隠れ家が良いな」
剣士「俺ら?」
盗賊「昔の連れが集まる場所だったんだがよう…今は誰も使って無い…まぁ物置だな」
剣士「物置の方が落ち着くかな…」
盗賊「とりあえず俺は傭兵ギルドに預けてる金を取りに行くんだ…まぁ観光だと思って付き合え」
剣士「分かった…姉さん行くよ」グイ
女オーク「手は繋がなくてもちゃんと付いて行くわ」スタ
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『商店街』
ワイワイ ガヤガヤ
剣士「ああああああ!!松ぼっくりだ…マンドラの根もある…」アレモ コレモ
盗賊「ヌハハ買い物は後でたんまり買えるぞ?」
剣士「姉さん!!すごく安いよ…お金いくら持ってる?」
女オーク「銀貨70枚くらい…」
盗賊「おいおい…慌てなくても逃げんぞ?」
剣士「なんでこんなに安いの?」
盗賊「お前いつも何処で買い物してたのよ…」
剣士「地下の列車降りて直ぐの所…」
盗賊「そら向こうの大陸の物は港に近い方が安いわな…地下で安いのは硫黄とか鉱物系だ」
剣士「そうだったんだ…」
盗賊「まぁ傭兵ギルドまで行ったら船での働き分は俺が金を出してやる…そうだな…金貨10枚って所か」
剣士「うおおおおおおお!!姉さん!!3年は暮らせる!!」
盗賊「何言ってんだ!!サッサと行くぞ!!」スタ
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『傭兵ギルド』
ザワザワ ヒソヒソ
ヒュー・ストンの大穴攻略失敗したんだってよ…
それでしばらく後退して再編成か…こりゃ又仕事が来そうだな
見ろ!ロストノーズの奴らが来た…目を合わすな
盗賊「いよう!!しばらくぶりだな?」
受付の叔母さん「あら?アラン君何処行ってたんだい?」
盗賊「ちっと野暮用でな?ほんで…預けた金を受け取りたいんだがよう…」
受付の叔母さん「はいはい…ええと…金貨40枚ね」パラパラ
盗賊「あれ?そんだけだったか?」
受付の叔母さん「嫌だねぇ…あんた酒場でツケ沢山有ったでしょう」
盗賊「ぬぁぁぁぁ忘れてた…」
受付の叔母さん「はい金貨40枚…袋に入れとくね」ジャラリ
盗賊「ちぃぃぃ…70枚のつもりだったんだが…」
受付の叔母さん「なんだい急にそんな大金が入用なのかい?」
盗賊「まぁちっと野暮用でな…ニーナ帰ってるよな?宿舎に居るか?」
受付の叔母さん「あらあら?あんたゲス君に聞いて居ないのかい?」
盗賊「なんだよ…」---まさか---
受付の叔母さん「ニーナちゃん気の毒だったねぇ…遺品の引き取り手が居なかったら部屋を片付ける所だったよ」
盗賊「お…おい!それってまさか…」
受付の叔母さん「部屋の方に遺骨が納めて有るから会いに行ってあげ…あら?ニーナちゃん?生きてるじゃないか」チラリ
女オーク「あ…いえ…」ハテ?
受付の叔母さん「じゃぁあの遺骨は一体誰の…」
盗賊「あぁぁ…違う…人違いだ」
受付の叔母さん「ええ?」ジロ
盗賊「悪りぃ…部屋見て来る…叔母さん騒がないでくれよ?」
受付の叔母さん「どうなって居るんだい?これは…」
盗賊「リッカ!ミライ!行くぞ!付いて来い…」グイ
女オーク「え…あ…」スタ
剣士「…」---なんだろう?視線が気になる---
--------------
『ニーナの部屋』
ガチャリ バタン
学者「うえっ…うええっ…姉御ぉ…なんでこんな…」ヨロ
盗賊「どけぇ!!」ドン ゴロゴロ
学者「姉御が…ぅぅぅぅ」
盗賊「こ…これが…」プルプル
学者「火葬して…骨だけに…ぅぅぅ」
盗賊「おいこりゃ夢だ…そうだ夢だ…こんな夢何回も見てる…」プルプル
女オーク「…」
盗賊「おかしいな何で冷め無ぇんだ」ゴン!
剣士「…」
盗賊「痛てぇな…おかしいな…」ポロポロ
学者「ぅぅぅ…」
盗賊「何でだよ…何でこんな事になってんだよ…何でこんなに小っちゃいんだよ…」ポロポロ
ロボ「ピ…」シュン
学者「俺っち達が…ヒック…地下列車に乗った時にはもう…死んでたらしいっす…」
盗賊「クッソ誰がやったんだ…」グググ
学者「味方の砲弾…2発直撃…うぇっ…そら死にやすよね…」プルプル
盗賊「だからこんなに小さく…」
女オーク「牙が残ってる…オークは死んだ仲間の牙を形見にする…」
盗賊「牙…そうだ…この牙をからかった事も有った」スッ
女オーク「その牙を持って居る限り…忘れない…ずっと心の中に生きる」
トントン
盗賊「誰だ!!」
受付の叔母さん「あんたにお客さんが来てんだよう…」
盗賊「取り込み中だと言ってくれ…そっとしといてくれ」
受付の叔母さん「そうかい?」スタスタ
盗賊「フー…フー…泣いてる場合じゃ無ぇ」ゴシゴシ
学者「兄貴ぃ…」
盗賊「書簡だ…姉御は書簡の秘密に気付いて殺されたんだ…探せ!!」
学者「ここは前に来た時に俺っちが見やした…」
盗賊「そうか…確かに誰でも入れる様な場所なら既に家探しされてるな…」ギラリ
盗賊「ロボ!姉御の遺骨は大事に預かっててくれ」パカ
ロボ「ピポポ…」ウィーン
盗賊「ここの遺品持ってズラかるぞ…どっかに電脳化した奴が紛れてる」
学者「ズラかるって何処にっすか…」
盗賊「ギャング達の隠れ家だ…俺についてくりゃ良い」
剣士「さっき受付の所でスゴイ視線を感じたんだ…もしかして姉さんの姿見て勘違いして無いかな?」
盗賊「その可能性が高い…悪いな…騒動に巻き込んじまって」
女オーク「もしかして…狙われて?」
盗賊「相手はプロの暗殺者だと思って間違いない…窓から外に出るから準備しろ」ゴソゴソ
学者「扉に鍵を掛けて置きやすね」カチャ
盗賊「ロボ!先に窓から出すぞ…」グイ ポイ
ロボ「ピピ…」ガチャン プシュー
盗賊「最後に窓にも鍵かって行くから先に出ろ…」
学者「へい…」グスン スタ
盗賊「音を立てるな?」カチャカチャ カチン
盗賊「こっちだ…」タッタッタ
-------------
『隠れ家』
シーン…
学者「ここが…兄貴たちの隠れ家…」キョロ
盗賊「ちぃぃ!!ここも荒らされて居やがる…」ガサガサ
学者「ギャング達しか知らない場所なんすよね?」
盗賊「なんでこの場所を知ってんだ!!?」ドン ガラガラ
学者「誰かが話した以外に考えられないんじゃないすか?…もう誰も信じられんすね」
盗賊「くっ…だから姉御は俺から距離を置いた…俺も疑われてた訳だ」
剣士「今日はここで泊る?」
盗賊「いや変更だ…こりゃ早い所盗賊ギルドに保護して貰わんと危ない」
学者「リコルさん達と合流っすね」
盗賊「うむ…しかしどの宿屋なのか…」
学者「兄貴ぃ…ここに装備品が色々あるんすが…変装しやせんか?」
盗賊「おぉ名案だ…特にリッカだな」
剣士「これどれ選んでも良いの?」ゴソゴソ
盗賊「今羽織ってる毛皮のマントはここに置いて行け…その辺の適当なやつに着替えろ」
剣士「姉さん!これなんかどう?」ファサ
女オーク「私は何でも良い…」
盗賊「顔を隠す必要が有るからフードの深い奴にしろ」ファサ
剣士「よし!僕も!!」ファサ
盗賊「そうだリッカ…先に金を渡して置く…金貨10枚だ」ジャラリ
女オーク「…」
盗賊「お前達は今回の件とは無関係だから…俺達に何か有った場合はその金使って上手く逃げろ」
盗賊「ここから列車でキ・カイに戻って元の生活をしても良い…商船に乗ってフィン・イッシュにも行ける」
女オーク「分かったわ…自分の命は自分で守る」
盗賊「うむ…ちっと俺は本気モードに入る…暗殺者をぶっ殺してやる」ギラリ
学者「…で?どうしやす?」
盗賊「今の所この場所は安全そうだ…ちっと俺が宿屋探して来るから待っててくれ」
剣士「じゃぁ装備品をゆっくり選ぼうかな」ゴソゴソ
盗賊「確か火薬も少し何処かに置いてあった筈だ…適当に持ってけ」
剣士「おぉ!!探してみる」ガサゴソ
盗賊「じゃぁな!」スゥ
剣士「ええ!!?き…消えた!!」キョロ
女オーク「え!?え!!?」キョロ
-------------
-------------
-------------
『1時間後』
スゥ…
剣士「うわ!!びっくりするなぁ…急に目の前に現れないでよ」ドキドキ
盗賊「これを装着しろ…」ポイ カラン
剣士「ん?木製の仮面…何コレ?」
盗賊「顔を隠すんだ…特にリッカな?」
剣士「こんなの付けてたら逆に目立たない?」
盗賊「今バン・クーバで流行ってる…手足の無い奴が木製の義足付けてるのと同じで…鼻を削がれた奴が付けてるんだ」
剣士「鼻?…あーそう言えば傭兵ギルドの中にも木製の鼻を装着してた人居たなぁ…」
盗賊「そいつらはロストノーズっていう有名な傭兵団だ…そん中のラシャニクアっていう女がこの仮面を流行らせた」
剣士「へぇ?」
学者「この辺じゃ有名っすよ?木製の鼻はその女が最初に付けてたんす…凄腕のスナイパーっすね」
盗賊「因みに俺らは元々パイアボーンっていう傭兵団だ…もう2人しか残って居ないがな」
学者「俺っちはその一人っすよ」
盗賊「リッカ!仮面を付けろ…宿屋に行くぞ」
女オーク「…」スチャ
剣士「もうリコルさん見つけたんだ?」
盗賊「あぁ…話は付けてある…大部屋に変更してそこに泊る」
学者「それが安全そうっすね…」
盗賊「行くぞ!!」スタ
-------------
『宿屋_大部屋』
ガチャリ バタン
盗賊「悪いな?分かれて直ぐに合流する事になっちまってよ…」
戦士「ハハハ気にしなくて良い」
少女「お前ー!やっと事態を自覚したな!?」
盗賊「保護を頼む…」
少女「グラスは3つだと聞いて居るぞ?1…2…3…4…多いな」
盗賊「俺は抜きで構わん」
少女「母は気まぐれだ…背中を撫でたら頼んでやっても良い」
盗賊「分かった分かった…」ナデナデ
少女「父ぃー…母遅いな」
戦士「気まぐれだから…ゆっくり待つしかない」
盗賊「さて俺はちっと調べたい事が有って出かける」
少女「何処行く…勝手に騒ぎ起こすな」
盗賊「分かってる…姉御の行先で思い出した事が有るんだ」
学者「え!?マジすか…」
盗賊「孤児院だ…姉御は孤児院に通ってただろう」
学者「あぁぁそうっすね…」
盗賊「遺骨は孤児院にでも埋めて来る…そこにもきっと姉御の心が宿ってるだろうから…」
少女「許す…行って来い」
盗賊「ロボ…これで姉御とはおさらばだ…」パカ
ロボ「ピ…」シュン
盗賊「じゃぁ行って来るな?」ダダ
---------------
『談話』
…そのラシャニクアっていう女は
子供の頃不幸な事に奴隷として貴族に連れまわされてたんす
船での観測ってずっと見張りして無きゃいけないんで大変っすよね?
それをやらされてたんす…その甲斐が有ってか今じゃ凄腕スナイパーっすよ
ほんである時…海賊王の娘が乗る船に遭遇して捕らわれの身っすよ
海賊王の娘はその船に乗ってた人全員の鼻を削いじまった
女も子供も全員っすね
剣士「鼻って削いだらもう生えて来ないよね?」
学者「そうっすね…でも命に係わる事は無いもんで良かったっすね」
剣士「それで鼻が無いのかぁ…気の毒だなぁ…」
学者「子供の鼻も削いじまったんすからねぇ…その後の生活で苦労は有ったと思いやす…差別とか…」
剣士「差別か…」チラ
女オーク「気にしてない…」ボソ
学者「まぁ今ではラシャニクアを知らん傭兵は居らんですね…戦場の女神なんて呼ばれてた事もありやす」
剣士「傭兵ギルドにその人居たの?」
学者「俺っちは見てないっす…只ギルドにロストノーズの連中が集まってたんで居るかも知れんっす」
少女「むふ…」ニヤニヤ
学者「何すか?」
少女「何でも無い…思い出し笑いだ」
学者「ちょっと何かお腹に入れたくなって来たっす…」
剣士「僕もお腹空いて来たなぁ…」
少女「父ぃーー!!何か買って来い」
戦士「んん?構わんが…何が食べたい?」
少女「松の実を見た」
剣士「おおおおお!!僕も見た!!松ぼっくりが安かったんだ!!」
戦士「そりゃ良い…丁度酒のつまみが欲しかった」
学者「俺っち肉が食いたいんすけど…」
戦士「適当に調達してくる…ここで待ってろ」スック
--------------
『食事』
ガツガツ ムシャムシャ
学者「うんま!!うんま!!」ガブリ モグ
少女「死肉がそんなに美味いか?」
学者「死肉?…これ普通の肉っす」モグモグ
少女「ゾンビを食べてる様にしか見えん…」ウゲー
学者「生魚食べるのもどうかと思うっすよ?」ガツガツ
女オーク「ミライ?松の実だけ取り出したわ…食べて?」
剣士「半分こしよう…姉さんも食べてよ…血が足りないでしょ?」
学者「ああ!!忘れてた…リッカさん傷を見せて貰って良いっすか?」
女オーク「え…そろそろ包帯を外したいのだけれど…」
学者「実験中なんす…」スルスル
剣士「姉さんの体で実験!?」
学者「ふむふむ…やっぱりっすね…」
女オーク「何?」
学者「オークは薬草とかポーションの類に効果が無さそうっす…使う意味無いっすね」
剣士「え?」
学者「リッカさんにポーション飲ませたんすけど普通は反応が出るのに出ないんすよ…傷も薬草有り無しで差が無い」
剣士「傷はもう塞がってるけど?」
学者「元々治癒力が高いんで塞がってるんすね…皮膚の具合に差が無い…薬草塗るとそもそも変色するのにそれも無い」
女オーク「オークは傷付くと薬草を少し食べる…他には琥珀とか」
学者「回復のさせ方が人間と違うんすね…でもポーション飲んで反応出ないのはどうしてなんすかねぇ…」
女オーク「病気に掛からない…から?」
学者「あああ!!そういう事っすか…実はっすね…オークの血は人間への輸血にスゴイ適してるんすよ」
女オーク「え?そんな事初めて聞いた…」
学者「戦場では失血が命取りなんすけどオークが居るとスゴイ助かるんす…輸血要員として」
剣士「それってオークを道具にしてるという事だよ」
学者「分かって居やす…だからオークを癒すのはどうすれば良いのか考えてるんす」
剣士「姉さんを癒すのは温かい湯…それから食事」
学者「温度を上げる…湯に効果あり…うーむ」
戦士「そうそう…この宿屋には湯を張った水浴び場があるのだよ?」
剣士「お?姉さん!!」
女オーク「湯に浸かりたかった所」
少女「私も行く…お前危険ある」
女オーク「じゃぁ一緒に…」スック
--------------
『1時間後』
ホクホク
女オーク「ふぅぅぅ気持ち良かった…」ホクホク
学者「リッカさん戻ってきやしたね?」
女オーク「何か?」
学者「ちっと実験っす…これ食ってみて下せぇ」スッ
女オーク「これは…何?」
学者「オークは見た事無いっすよね?泳げないんで…これ海藻っすよ」
女オーク「食べられる…の?」
学者「良いからちっと食って見て下せぇ…ほんで感想が聞きたいっす」
女オーク「平気かしら…はむ」パク モグ
学者「どうっすか?」
女オーク「!!?お…美味しい」モグモグ
剣士「おお?ちょっと僕にも頂戴」パク モグ
学者「ウヒヒヒ…やっぱりそうっすね」ニヤー
剣士「あれ?何だこれ美味しい…」モグモグ
学者「次行きやすよ?…これ飲んで下せぇ」ゴトン
剣士「お酒…かな?」
学者「蒸留酒っすね…」
剣士「姉さんお酒は全然酔わないよ?」
学者「ヌフフフフフ…良いから飲んで下せぇ」キュポン
女オーク「飲めば良いのね…むぐっ」ゴクゴク プハー
学者「どうっすか?」
女オーク「これも美味しい…どうして好みの味を?」ゴクゴク
学者「ウハハハハハやっぱりそうっすか!!」
剣士「ねぇねぇ…どういう事?」
学者「その海藻も蒸留酒もポーションを作る時に使う薄め液になるんす…多分それが造血剤になりやす」
女オーク「私の体でポーションが作られてる?…と言う事?」
学者「結論を言うとそうっすね…それがオークの生命力の秘密…」
学者「ポーションが効かないんじゃ無くて元々ポーション飲んでるのと同じなんすよ」
剣士「僕はお酒酔っぱらっちゃうんだよなぁ…」グビグビ クァァァァ
学者「ミライ君は人間っすからね…でも食べ物の好みはオークに似てるんでちっとだけポーション作られてるかもっすね」
女オーク「これって蒸留酒と海藻が有れば戦場で死ぬオークが減る…という事?」
学者「そう期待してるっす…大体オークが死ぬのは失血死なんすよ…体半分無くなっても血が有る限り死なんっす」
剣士「なんか良い発見したね」
学者「ミライ君も覚えておいて下せぇ…リッカさんが血を流した時は蒸留酒と海藻食わせて湯に浸かる」
剣士「覚えた…」
学者「海藻からエキスを取り出した薬も効果あると思いやす」
女オーク「あぁぁぁなんか…ポカポカして来た」
学者「その状態で寝ると効果倍増っすよ?」
剣士「ちょっと昼寝しようかぁ!!」
学者「俺っちはこれをちっと文章に残さんとイカンすね…」ドタドタ
---------------
『孤児院』
ワーイ キャッキャ エーン
盗賊「…」スタスタ
管理人「誰かに面会で?」ジロジロ
盗賊「いや…ここにニーナと言う女オークが通って居ただろう?」
管理人「あぁ…最近姿を見せなくなりましてね…お知り合いでしょうか?」
盗賊「これを…」スッ
管理人「え?…遺骨…」
盗賊「それからこれが最後の援助金だ…金貨30枚ある」ジャラリ
管理人「彼女はお亡くなりに…そうですか…残念です」
盗賊「アイツは良く此処に通っていた…多分稼いだ金は此処に落として行った筈…」
管理人「はい…ご存じでしたか」
盗賊「孤児を放って置けなかったのは知ってるんだ…アイツも身寄りがない…せめて遺骨は此処にと思って訪ねに来た」
管理人「そうでしたか…どうですか?子供達をご覧になって行きませんか?」
盗賊「俺は人相が悪い…怖がらせてしまうだろう」
管理人「遠慮なさらず…ニーナさんが良く座っていた場所にご案内しますよ?」
盗賊「座っていた?」
管理人「ええ…昔を思い出すと言って居ましたね」
盗賊「案内してくれ…」
管理人「ではどうぞ…」スタ
---------------
『地下室』
ピチョン ポタッ
管理人「こちらです…そこの箱に腰かけて良く子供達を見て居ました」
盗賊「中々辛気臭い場所を選んだもんだ…」
管理人「済みませんねぇ…子供達を見るなら他にも良い場所は有るのですが…」
盗賊「まぁ…ちっと俺もニーナが何思ってたのか感じて見るわ…」
管理人「どうぞごゆっくり…私は上に居ますので帰りの際はお声を…」
盗賊「分かった…」
管理人「では…」スタ
盗賊「…」---木箱か…こんな所に座って何思ってたんだろうな---
ヒソヒソ
誰あの怖い人…
きっと僕達をさらいに来たんだ
姉御!どうする?
シーーーッ黙ってな
大事な物はちゃんと仕舞っとくんだよ
盗賊「…」---大事な物---
盗賊「…」---まてよ?---
盗賊「…」---キ・カイの8番---
盗賊「…」---そうだ俺達の隠し場所がある---
盗賊「…」---既にソコに隠してる可能性が…---
盗賊「…」---なるほど…そういう計画だったのか---
盗賊「…」スック
子供達「うぉ!!」タジ
盗賊「お前等!!仲良くやれよ!?」タッタッタ
子供達「え!?何?何?」
--------------
--------------
--------------
『宿屋_大部屋』
ガチャリ バタン
学者「兄貴ぃ!!シーーーーーッ!!リッカさんが寝てるんす…静かに…」
盗賊「ゲス!ちょい金貸せ…金貨2枚で良い」
学者「兄貴の金はもう使っちまったんすか?」
盗賊「姉御の葬式代で全部使った」
学者「うは…もう…」
盗賊「俺はちっと2日くらい外に出る…出航までには戻るからお前等此処でリコルと一緒に居ろ」
学者「ちょちょ…急にどうしたんすか?」
盗賊「キ・カイに忘れ物よ…今から列車に乗ってキ・カイにとんぼ返りだ…金出せ」
学者「マジすか…」チャリン
盗賊「リコル!!こいつ等頼むな?」
戦士「ハハハ何が有ったか知らないが気を付けて行って来い」
盗賊「ゲス!ロボの許可証だ…一応お前に渡しておく」パス
学者「へ…へい…」タジ
盗賊「じゃぁな?行って来る」タッタッタ
学者「あらら…」ポカーン
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『地下鉄道_列車』
ボエーーーーーー プシューーーーー
盗賊「…」ギラリ
盗賊「…」---前の時とは随分気持ちが違う---
盗賊「…」---姉御は多分こんな感じで列車に乗った筈---
盗賊「…」---いつ襲われても良い様に常に武器に手を掛け---
盗賊「…」---フードとマントを深く被る---
盗賊「…」---そうだ…8番に居た頃はいつもそうだった---
盗賊「…」---この世界じゃそうしないと生きて行けない---
ガコン ガタン ゴトン
盗賊「…」---姉御…もうすぐ追い付くぜ?---
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