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5.海賊


『数日後』



ザブ~ン ユラ~リ



学者「海賊船の対策で色々作ったは良いんすが…あれっ切り出会わんすね…」


盗賊「そうそう出会わんってこった」


学者「もう陸地を見失ってるんすが…現在地も見失っていやすよね?」


盗賊「うむ…羅針盤頼りよ」


学者「やっぱ航海士居ないとこうなっちゃうんすね…」


盗賊「海賊に追いかけまわされるよりは良いと思うがな?」


学者「しっかし…随分暖かくなりやしたねぇ…折角ロボの筐体に白金カイロ仕込んだんすが…」


盗賊「おぉ!!いつの間に…」


学者「一日一回油を差してやって下せぇ」


盗賊「おぉ分かった」


学者「それにしても暇っす…な~んもやる事無いっす…」グター


盗賊「ミライが何冊か書物持ってただろ?お前も読んでみろ」


学者「アレは魔術の本で俺っちには読めないんすよ」



トンテンカン トントン



盗賊「ミライは常に何か作ってんな?」


学者「面白そうなんでちっと見て来やす」スック


盗賊「おう!!ついでに後で酒を持って来てくれぇ」


学者「へいへい…」ダダ



--------------




『船首楼_作業場』



ガチャリ バタン



剣士「よし!出来たぁ!!…あれ?ゲスさん?」


学者「何作ってるのか見に来たんすよ…退屈なもんで」


剣士「そんな大した物じゃ無いよ…コレさ」ジャーン


学者「木槌…なんかやたらデカい木槌っすね…」


剣士「姉さんがさ…人間の血を見たく無いって言うから代わりの武器を作ったんだよ」


学者「なるほどーリッカさんが持つなら丁度良さそうっすね」


剣士「この木槌なら鉄の鎧だってへこませられる…結構強力な武器だね」


学者「そこで乾かしてる卵みたいな奴って…もしかして爆弾っすかね?」


剣士「あぁコレ?火薬があれば爆弾になるけど…これには油を入れるつもりなんだ」


学者「へぇ…上手く作りやしたね?」スッ


剣士「あああ!!まだ触ったらダメ!!」


学者「済まんっす…これ何で出来てるんすか?」ツンツン


剣士「貝殻の粉と骨粉を練った物だよ…乾いたら卵の殻みたいになる」


学者「手投げ用の火炎瓶みたいなもんすね…」


剣士「僕…思うのがさ?何もしないで船に接近させて確実に火を点けた方が良いと思うんだ…その為の備え」


学者「良く考えていやすねぇ…」


剣士「接近戦なら姉さんに勝てる人なんかそうそう居ないから木槌で暴れて貰う…その隙に向こうの船を燃やせば良い」


学者「いやぁ…そんな木槌でぶっ叩かれたく無いっすね…」タジ


剣士「積んでたソリを解体して材料にしちゃったからアランさんに謝らないと」


学者「どうせもう使わんので好きにして良いっすよ」


剣士「それ聞いて安心した」



--------------




『船尾楼』



アーデモナイ コーデモナイ



盗賊「そろそろ外海に出る海峡の筈なんだが…」


戦士「ふうむ…確かに羅針盤と進路は合って居る…」


盗賊「真っ直ぐ進んでる様に見えて少し横に流れ続けて居たのかもなぁ…」


戦士「海図を見る限り何処に流れていたとしても直に陸地が見える筈…」


少女「少し左に煙匂う…」クンクン


盗賊「煙?」


少女「火薬匂い違う…なにか燃える匂い」クンクン


盗賊「陸で何かやってるのかもな…ちっと進路修正するわ」グイ


戦士「海賊が何処かの漁村を焼き討ちしているのでは?」


盗賊「なぬ!?」


戦士「地庄炉村に商船が入って来なくなったのはそもそも海賊に襲われるリスク回避…この辺りに居てもおかしく無い」


盗賊「くぁぁぁ無法地帯だな」


少女「父…悪い海賊倒せ」


戦士「海の上では分が悪い…陸ならどうにか…」


盗賊「もしも襲われてるとしたら…なんか放って置けんな…」


戦士「海賊船が漁村の焼き討ちで手隙になっているとしたらどうする?」


盗賊「焼き討ち…誰かが襲われてるか…行くしか無えだろ…船さえ無けりゃ只のごろつきだ」


戦士「決まりだな?」ギラリ


盗賊「おぉぉ…その眼…好きだぜ?」



---------------



『漁村_近海』



モクモクモク



盗賊「やっぱり焼き討ちに会ってんな…丁度日が落ちてこっちに気付いて居ない…チャンスだ!」


戦士「スクーナー2隻か…30人近く村に降りて行ってるな…」


盗賊「船を燃やせばもうこっちには近づいて来ん!!後は様子見ながらクロスボウ撃てば良い」


学者「兄貴ぃ!!見張りの一人が気付いて騒いでいやすぜ?」


盗賊「一気に接近して燃やすぞ!!ミライ!!油玉投げる準備は良いか?」


剣士「いつでも投げられる!!姉さんも一緒に投げるよ?」


女オーク「う…うん…」ドタドタ


学者「射程に入ったんで火矢を撃ちやすぜ?」


盗賊「撃て撃てぇ!!」



バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!



学者「うほーースタンド有るとやっぱ安定して狙えるっす!!」ガチャコン


盗賊「無駄口は良いから撃て!!」



バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!



剣士「もっと寄せて…もっともっと…」


盗賊「やってる!!慌てんな!!」グイ


少女「父ぃーー!!悪い海賊気付いた!!戻って来る」


戦士「そのまま見張り役を頼む…」バシュン! ガチャコン


剣士「届けぇ!!」ポイ


女オーク「フン!!」ポイ



ボゥ メラメラメラ



剣士「行ったぁ!!」ガッツ


盗賊「どんどん投げろ俺は帆を畳んで船を停める」ダダ


剣士「姉さん!!あっちの船も!!」ダダダ ポイ


女オーク「フン!」ダダダ ポイ



ボゥ メラメラメラ



学者「これはもう火消し出来んすね…」アゼン


戦士「奇襲成功だ…次はこの船に乗り込んで来るかもしれん…クロスボウで迎え撃つ」ダダ


学者「小さい的に当てる自信無いんすが…」ダダ



ドーン ドカーーーン パラパラ



盗賊「うぉ!!火薬に火が付いたか!!」タジ


剣士「うわっ…こっちにも火の粉が…」


盗賊「帆を畳んでセーフだ!!船に燃える物が乗っかって無いか確認しろぉ!!」


剣士「分かったぁ!!」シュタタ



---------------




『撃ち合い』



バシュン! バシュン!



戦士「高さの利が有ってこちらが有利…」ガチャコン バシュン!


学者「ボルト足りやすかね…」バシュン!



シュン ストン!



盗賊「やっぱ弓で応戦して来んな…」


戦士「向こうに火矢が無いのが救いだ」ガチャコン バシュン!



シュンシュン ストンストン!



戦士「ミライ君!!盾を持って来てくれ!!」


剣士「分かった!!姉さんも盾で矢から身を守って!!」ダダ


女オーク「盾ね…」ドスドス


盗賊「ええいクソ!!弓を作って置けば良かったな…」ウロウロ


学者「これで船体に刺さった矢を回収したら次から弓矢使えやすね」



ヒュルヒュルヒュル ドスン!バキバキ!



盗賊「どわっ!!危無ぇ!!投げ斧まで使って来るか…」


戦士「フフ必死だな向こうは…武器がタダで手に入ると思えば良い」


盗賊「俺の船が傷んじまうんだが…」


剣士「盾を持って来た!!」ドタドタ


盗賊「おぉ…俺はコレで投げ斧と矢を受けりゃ良いんだな?」スチャ


剣士「僕も盾を構えておくよ」スチャ



ヒュルヒュルヒュル カーン!



盗賊「うらぁ!!ゲッツだ!!」


学者「ええと…この船に矢を撃って何がしたいんすかね?アイツ等は…」


戦士「逆上しているのだよ…やらせて居れば良い」


学者「そろそろこっちもボルトが無くなるんすが…向こうも同じっすよね?」


盗賊「次は泳いで来るんじゃ無ぇか?」


学者「泳いで来ても船体丸いんで這い上がれんと思うんすが…」



ヒュルヒュルヒュル カーン!



剣士「おぉぉ!!剣も投げて来てる…やったぁ!!」


盗賊「アイツ等…もしかすると相当アホだぞ?接近武器無くしてその後どうすんだ?」


戦士「挑発とはな?こうやってやるんだ…見てろ」スタ



ジョロジョロジョロ



盗賊「だはははは…ションベンすんのか!!俺にもやらせろ!!」ダダ


学者「俺っちもやるっす!」ダダ


剣士「ええと…じゃぁ僕も?」シュタタ


女オーク「…」アゼン



ジョロジョロジョロ



盗賊「見ろ!!泳いで来る奴が居る!!だははははは!!」


学者「これ完全に怒ってるっすね…アハハハ」



ヒュルヒュルヒュル カラーン! カラン!カラーン!



剣士「あぁぁ武器が一杯手に入る…」シュタタ


盗賊「さて…馬鹿共は投げる物が無くなった訳だが…こりゃどうする?」


学者「高みの見物で良いんじゃないすか?船降りると一気に乗り込んで来そうっすよね?」


盗賊「ううむ…村の方が心配ではあるんだ…」



アオ~~~ン アオ~~~ン



少女「超ウルフが仲間呼ぶ…餌いっぱいある」


盗賊「おぉ…そんな手が使えるんか」


戦士「ミライ君…矢尻は無くて良いから簡単なボルトは作れないかい?」


剣士「ん?木材をちょっと切り出すだけなら直ぐ出来る…ただ真っ直ぐ飛ばないよ?」


戦士「良いんだ…海賊達を少し手負いにするだけで良い」


剣士「じゃぁ直ぐに切り出して来る…待ってて」シュタタ



---------------




『10分後』



ジャブジャブ


ゴラお前等ぁ!!こんな事してタダで済むと思ってんのかぁゴラァ!!


船から降りて来やがれ!!どこのどいつだゴルァ!!



学者「何か言っていやすねぇ…撃っちゃって良いすか?」


戦士「真下は狙いにくいが…」バシュン! グサ


海賊1「ぐぁ!!この野郎!!」


学者「ズルいっすよ…俺っちにもやらせて下せぇ」バシュン! グサ


海賊2「うがぁ!!くっそまだ矢が有るのか…野郎共!!潜って回避だ!!」ジャブン


学者「あたたたた…そんな息継ぎに出て来た所狙われるだけでしょうに…」


盗賊「どうやらそこら辺考える脳みそが足りん様だ…」


戦士「泳ぐために装備も脱ぎ捨てたな…」


盗賊「おいミライ!!まだ油玉残ってるか?」


剣士「有るよ?」


盗賊「一部海賊船の消火に行ってる奴が居る…武器とか持ち出しそうだから追加で燃やしてくれ」


剣士「おけおけ…でもちょっと遠いな」


盗賊「帆一枚で少し寄せてやる…」ダダ



ユラ~ ググググ



海賊1「ゴルァ!!何処行くんじゃい!!」ジャブ


海賊2「おい…陸で何か騒いでるぞ?」


海賊1「村の奴らが反撃して来てんのか?」


海賊2「一旦戻るか…」


学者「何言ってるんすか…逃がさんですよ」バシュン! グサ


戦士「ボルト全部撃ち尽くすぞ」バシュン! グサ


剣士「届けぇ…」ダダダ ポイ



ボゥ メラメラメラ



盗賊「こりゃ引き上げても良さそうだが…まぁ暗いから朝まで待つかぁ…」


戦士「うむ…浅瀬だから座礁しては元も子もない」


盗賊「少しづつ風で流れてんのよ…碇降ろすと多分登って来るよな?」


剣士「碇の鎖に油を塗ろうか?錆び防止にもなる」


盗賊「おぉ!!そりゃ面白い絵が見れそうだ」


剣士「碇降ろして良いよ…油塗って来る」スタタ



---------------


---------------


---------------




『翌朝』



ザブン ザブン



盗賊「夜が明けたら燃えた海賊船をちっと見に行こうと思ってたんだが…」


学者「漁村の住人に先越された感じっすか?ふぁ~ぁ…」ゴシゴシ


盗賊「こりゃ…行けそうに無ぇなぁ…」


学者「良いんすか?兄貴は漁りに行くの好きっスよね?」


盗賊「そうなんだが…見ろ」


学者「死んだ海賊の死体囲んでケリ入れて居やすね?」


盗賊「まぁ多分犠牲者が出てんだろ…そんな中俺が海賊船漁りにも行けない訳よ」


学者「他の海賊共はウルフに追われて散った感じっすね?」


盗賊「だろうな?…さて…帆を開いてくっから舵頼む」


学者「へい!!」


盗賊「寝てる奴はまだ起こすな?」ダダ


学者「分かって居やすとも…」


学者「なんちゅぅか…漁村にも営み有ったんすよねぇ…誰か死んだらそりゃ悲しい…」


学者「どうしてこんなんなっちゃうんだか…」



バサッ グググググ



盗賊「碇上げるぞ?陸沿いに進め」ダダ


学者「へ~い!!」グイ



-------------


-------------


-------------




『外海に出る海峡』



ザブ~ン ユラ~リ ギシ



盗賊「この灯台を超えたら左手に陸を見ながら行けばバン・クーバだ」


学者「あとどんくらいっすか?」


盗賊「丁度折り返しだな…1週間は掛からん筈」


学者「まだ先が長いっすねぇ…」


盗賊「陸沿いは海賊が出るらしいからまだ気は抜けん」



ガチャリ ギー



剣士「船体に刺さった矢を全部回収してきたよ」ドサリ


盗賊「おぉ!!何本くらいある?」


剣士「う~ん…50本くらい?」


盗賊「無いよりマシだな…お前弓は作れんか?」


剣士「材料が無いなぁ…今の木材で作ってもあまり飛ばない」


学者「堅い木が必要なんすね?」


剣士「それもあるけど弦にも問題がある…ロープじゃダメだよ」


盗賊「まぁ仕方無ぇ…昨夜手に入れた武器類はどうだ?」


剣士「普通の炭素鋼の武器だね…僕は斧が欲しかったから満足してる」


盗賊「斧なんぞ使うんか?」


剣士「金床が無かったからさ…鉄を打つのに丁度良かったんだ」


学者「なんちゃって鍛冶屋が出来るんすね?」


剣士「釘を作る専門の鍛冶屋だね」


盗賊「釘がありゃもっと色々作れそうだな?」


剣士「うん!!木組みだけで作るのは結構大変だったんだよ…釘が有れば船の補修も出来るね」


盗賊「そうだ斧がぶっ刺さった所に板を張っといてくれよ…割れちまってんだろ」


剣士「一回戦闘すると結構傷んじゃうね?矢が刺さった跡も穴が開いちゃってさ」


盗賊「もうやりたく無ぇ…まだフィン・イッシュまで行かなきゃなんねぇからな…」


剣士「上手く補修するなら…骨粉でノリを作ってピッタリハマる木材貼り付けるか…」


盗賊「板を貼るだけじゃダメってか?」


剣士「それだと只のぼろ隠しになる…しっかり補修してから板を貼らないといけない」


盗賊「うは…手間が掛るな…」



--------------



『外海』



ザッパ~~~ン ユラ~~~



盗賊「やっぱ外海は波が全然違うな…」


戦士「ううむ…風が強い…」キョロ


盗賊「嵐が来るってか?」


戦士「いや…嵐とまでは行かんが雨が降るだろう」


盗賊「てことは視界も悪くなる…海賊に見つからんで済むという見方もある」


戦士「この船…見た所かなり古そうだが浸水は大丈夫だろうね?」


盗賊「おっとぉ!!考えて無かったわ…」


学者「丁度今ミライ君が船の補修やってるんで言ってきやしょうか?」


盗賊「おう!!…てかお前もゴロゴロして無いで手伝ってやれい!!」


学者「あちゃーー分かりやしたよ…トホホ」スタ


盗賊「しかし全然考えて無かったな…そういや甲板の板は隙間だらけだ…」


戦士「水を汲みだす準備もしておいた方が良かろう」



--------------



『甲板』



カクカク シカジカ…



剣士「ええええ!!?穴の補修だけじゃ済まない!?」


学者「俺っちも手伝いやすよ?」


剣士「そんな…甲板もだけどそこら中隙間全部埋めるなんて材料が足りない…」


学者「板貼るだけじゃやっぱダメなんすかね?」


剣士「水漏れは簡単に止まんないさ…どうしよう…」


学者「何が足りんのですか?」


剣士「隙間を埋める練り物…ええと骨粉と貝殻の粉の奴」


学者「油玉作った奴っすね?」


剣士「どうするかな…今から骨砕いて作るのに…」


学者「手伝いやすよ?」


剣士「船底に骨と貝殻が捨ててあるんだ…それを拾ってハンマーで細かく砕いて欲しい」


学者「分かりやした…どの位必要で?」


剣士「釜一杯分あれば足りると思う」


学者「えええええ!?そんなに…」


剣士「姉さん!!釜で湯を沸かしておいて!!骨粉で接着剤作る」


女オーク「いつもの奴ね?」


剣士「うん!!…ええと練り物を量増ししたいな…ボロキレ崩して繊維にするか…」


学者「骨砕くのに作業台使わせてもらいやすぜ?」


剣士「急いでね!!」



-------------



『練り物』



グツグツ…ポコ



剣士「ゲスさん!釜の中混ぜるの代わって!」グルグル


学者「これ時間掛かりやすね?」


剣士「骨がしっかり溶けるまで茹でなきゃいけない…」


学者「貝殻の粉とボロキレの繊維はいつ入れるんすか?」


剣士「それ姉さんに聞いて?僕は板の切り出しに行って来る」スック


学者「わかりやした…これ混ぜるのも力が居るんすね…」グルグル


剣士「焦がしたらダメだから!!休まないで混ぜて!!」タッタ


学者「ひぃ…ひぃ…」グルグル



--------------



『デッキ』



ザブ~ン ユラ~



盗賊「雲が張って来始めたな…」


戦士「やはり雨が来るか…」


盗賊「おい!嬢ちゃんよ…お前風が読めるんだろ?天気はどの位持ちそうだ?」


少女「お前…馴れ馴れしい」プイ


盗賊「くぁぁぁ頼む嬢ちゃん!水浸しにゃなりたく無いだろ」


戦士「持って半日か…私も手伝って来るか」ボソ


少女「舵やらせろ…お前も手伝え」


盗賊「んぁ?嬢ちゃんに舵動かせるか?こりゃクソ重いんだぞ?」


少女「うるさい…サッサと行け」グイ


盗賊「ヌハハやれるもんならやってみろ…壊すなよ?」


少女「ふぬぬぬ…」グググ



--------------



『甲板』



ヌリヌリ…



剣士「そうそう…隙間に入れ込む感じで塗り込むんだ」


学者「こりゃ全部やるの大変っすね…」


剣士「木材が縮んでそこら中スッカスカだよ…大きい隙間見つけたら教えて?下から板を当てて来る」


学者「へい!!」


盗賊「よう!!手伝いに来たぜ?」


剣士「あぁぁ助かる…練り物を板の隙間に塗り込んで欲しいんだ」


盗賊「これだな?」


剣士「うん!まだ甲板しかやって無いから船首の方とか船尾も全部塗って欲しい」


盗賊「こりゃ練り物足りるんか?」


剣士「姉さんが作り増してくれてるさ…えーと!大きな隙間を見つけたらソコに何か目印置いといて…後で処置する」


盗賊「分かった!ほんじゃ俺は船尾側行くわ」


剣士「船尾楼のスキ埋めはもう住んでるからその後ろ側ね」


盗賊「分かってる分かってる!!リコルは船首側頼むな?」


戦士「承知…」スタ



--------------



『2時間後』



ゴシゴシ ゴシゴシ



剣士「骨粉と貝殻の粉を撒いて行った所からブラシでしっかり擦って!」


学者「へいへい…」ゴシゴシ


盗賊「うはぁ…俺がミライに掃除させられる事になるとはよう…」ゴシゴシ


女オーク「ウフフ…」ゴシゴシ


剣士「…これで水が流れて行く所に上手く溜まってくれれば良い」マキマキ


盗賊「これで仕上げか?」


剣士「まだ!!油をしみこませたボロキレで全部拭く」


盗賊「まだ在んのか…そろそろ腰が痛くなって来たんだが…」


剣士「今までほったらかしにしたツケだね…時間一杯有ったのにさ」マキマキ


戦士「磨き終わった所から油で拭けば良いのか?」


剣士「うん!!油を直接垂らすのはダメ!!ボロキレに染み込ませて薄く塗る…その後おが屑撒く」


戦士「ハハ中々にいろいろ工程がある…」


剣士「船の手入れという意味だと本当は船内も全部やった方が良いね」


学者「あぁぁぁ…なんかミライ君がいつも作り物してる理由が分かって来やしたよ…」ゴシゴシ


盗賊「何やるにしても手間が掛ってんだ…」ゴシゴシ


学者「一朝一夕じゃ何も出来んてこってすね…」



--------------



『雨』



ポツポツ ポツ…



盗賊「降って来やがったが…なんとか間に合ったか?」


剣士「雨漏りを受ける容器が沢山必要だよ!!食器を全部集めて!!」ドタドタ


盗賊「こりゃ休まらんな…」


剣士「積み荷の木材が水吸っちゃうと重くなりすぎて沈没するかもしれないよ」


盗賊「マジか…」


学者「容器持って荷室行きゃ良いっすかね?」ガサ


剣士「うん!漏れの多い所は補修しなきゃいけないから教えて欲しい」


盗賊「うっし!!久しぶりに体全部洗えると思って気合入れて行くか!!」ヌギヌギ


剣士「ええ?裸で?」


盗賊「おうよ!!溜まった雨水で体洗うんだ」


剣士「アハハ…良いね?」


盗賊「湯を沸かして樽に入れれば風呂にもなるぞ?」


剣士「おお!?それ採用!!よし…姉さんに湯を沸かして貰う」


盗賊「楽しみが増えたか?」


剣士「雨はそんな楽しみがあるかぁ…ワクワクしてきたぞぉ!」



--------------



『樽湯』



チャプン モクモク



剣士「姉さん!湯加減はどう?」


女オーク「すこし冷めて来たから足し湯が欲しいわ…」チャプ


剣士「これ…一緒には入れなさそうだね」チョロチョロ


女オーク「無理ね…湯が全部溢れてしまう」


剣士「この場所…船首楼で丁度隠れて良い水浴び場になりそうだ」


女オーク「良いの?雨漏りの処置に行かなくて?」


剣士「まだどこで雨漏りするか分からないからさ…もう少し雨が降ってからだね」


女オーク「雨に当たりながらの湯は気持ち良い…」


剣士「姉さん沢山働いたから体を温めてゆっくりしてて良いよ」


女オーク「ウフフ…」チャプン



シュタタ シュタタ



少女「ミライ!!何か来る!!休む暇無い!!」シュタ


剣士「え!!?」


少女「雨で匂い流れる…父…何処行った?」


剣士「荷室に降りてる筈…」


少女「急げ!!何か来る!!」シュタタ


剣士「ちょ…」キョロ



シュルシュル ガツン!



女オーク「え!!?」ザバァ


剣士「ロープが掛けられた音だ…マズい!!」



海賊1「うらぁぁぁ乗り込めぇぇ!!」


海賊2「ひゃっほーーーう!!」



女オーク「ミライ!!私が時間を稼ぐ!!皆呼んできて!!」ザブ ダダダ


剣士「姉さん…裸で戦うの?」


女オーク「気にならない…木槌で戦うから早く行って!!」ダダ



--------------




『乱戦』



ドヤドヤ


ロープもう一本引っかけろアホがぁ!!


おい止まるな!!早く乗り込めぇ!!


梯子はどうした!梯子は!!乗り遅れんぞ!!




海賊1「おやおや裸の女が飛び出して来るとはこりゃツイてる…ぐへへへへ」ブン ブン


海賊2「ウハハハ…デカい木槌で俺らをぶっ叩こうってのか?」ペロリ


海賊3「この女良く見たらオークだ…こりゃ毎晩楽しめるぞ?」ヘコヘコ


女オーク「…」---多い---


海賊3「さぁ大人しくしてりゃ殺しゃし無ぇ…武器を降ろ…」


女オーク「…」ダダ ブン


海賊3「ぶへぇぇ…」ポーン ボチャーン


海賊2「やりやがったなゴルァ!!」ブン スパ


女オーク「くぅ…これくらい!!」ダダ ブン


海賊2「げひぃぃ…」ポーン ボチャーン


海賊1「くそコイツ…」タジ



ヨジヨジ ヨジヨジ



女オーク「…」---ロープを伝ってどんどん登って来る---


女オーク「…」---時間を掛ければ不利になる---


女オーク「…」タジ


海賊1「お前等ぁ!!早く登って来い!!」


女オーク「…」---私の剣は船首楼の中---


女オーク「…」ダダ


海賊1「ウハハ逃げやがった…お前等ぁ!!早く乗り移れ!!船尾楼を占拠するぞ!」


海賊4「こりゃどうなってる?何で2人海に落ちたんだ?」スタ


海賊1「オークが乗ってたのよ…まぁ逃げたんだがな?…他に乗ってる奴探すぞ…女以外皆殺しで良い」



ガチャリ ダダダダ ブン!



海賊4「どわぁっ…」ポーン ボチャーン


海賊1「何だ?剣と木槌の二刀流か?」タジ


女オーク「…」ダダダ ピョン


海賊1「おい!!俺らの船に…飛び移る…だと?」


海賊5「何だ今の!?裸の女が飛んでったんだが…」



ガチャリ タタタターン!



海賊1「ぐはぁぁ…」ブシュー


学者「何勝手に乗り込んでるんすかねぇ…」タタタターン


海賊5「銃器…だと?」ガク ドクドク


学者「雑魚相手に使いたく無かったんすよね…」スタスタ


剣士「姉さんは!!?」キョロ


盗賊「おい!!ロープで乗り移って来る前に切っちまうぞ!!」


剣士「あああ!!姉さんが向こうの船に…」ダダ


盗賊「何ぃ!!」



コーン コーン コーン



盗賊「うぉ!!マスト切り倒そうってのか…」


剣士「ロープ切ったら姉さんが向こうの船に取り残される…」


盗賊「ちぃぃ…しゃぁ無ぇ!!乗り込む前に蹴り落とせ!!」ダダ ドカ



シュン! グサ



盗賊「ぐぁ!!くっそ下から弓撃って来やがる…」


学者「任せて下せぇ!!」タタタターン


海賊共「ぎゃぁぁ…」ボトボト ボチャーン



メキメキメキ ガッサー ザブーン



盗賊「うほーーメインマスト切り倒しやがった…」


剣士「姉さんが走ってロープに掴まった…他のロープを切っちゃおう!!」ダダ スパ


盗賊「リッカが掴まってるロープ引き上げるぞ!!」グイ


剣士「姉さん弓で撃たれてる…早く!!」グイ


学者「援護しやすぜ?」タタタターン



--------------



『甲板』



グイグイ ドタリ



盗賊「ふぅぅ…危機一髪だぜ…リッカ!!随分弓で撃たれた様だな?大丈夫か?」


女オーク「くぅぅ…背中の矢を抜いて」


盗賊「血だらけだな…ちっと痛むぜ?」ズボォ ドクドク


女オーク「ぅぅぅ…」


剣士「姉さん!!今治してあげる…」スッ


女オーク「ミライ駄目!目隠しを外しては駄目…その力は必要無い」グイ


剣士「でも血が…」


盗賊「ゲス!!治療出来るか?」


学者「へい!!ちっと見せて下せぇ…」ジロジロ


盗賊「他の矢も抜くぜ?」ズボォ ドピュー


学者「ポーションあるんで一口飲んで下せぇ…」クィ


女オーク「むぐっ…」ゴクン


学者「さすがオークっすね…筋肉の奥までは刺さって無さそうっす…ミライ君!!ボロキレ持って来て下せぇ」


剣士「直ぐに持ってくる!!」ダダ


学者「傷も縫わん方が良さそうっすね…圧迫止血だけで元通りっすよ」


盗賊「…だそうだ?まぁ…これぐらいでオークが死ぬとは思えんがなヌハハ」


女オーク「他の矢も抜いて欲しい…手が届かない」ググ ピュー ドクドク


学者「動かんで下せぇ!出血して勿体無いっす」


盗賊「抜くのは少し待て…ミライがボロキレ持って来てからだ」


剣士「持って来たぁ!!」ドサァ


学者「俺っちが矢を抜いた痕に圧迫止血していくんで順に矢を抜いて欲しいっす」グイグイ ギュゥ


剣士「姉さん痛く無い?」オロオロ


盗賊「…」---こいつ…何か力を隠し持ってる様だな---



---あの目隠しの下に秘密有りか---


---状況からみて治癒魔法の類---


---しかし何故隠す必要がある?---




『船尾』



ザザザザーーーー



盗賊「リコル!ここに居たか…何をしている?」


戦士「他の海賊船が居ないか見張って居るのだ…雨だと思って警戒を怠ってしまったからな」


盗賊「丁度ここは船尾楼の梁に隠れて雨に当たらんか…」


戦士「フフ…しかし何処から接近されたか分からなかったな?」


盗賊「船が並走していたから後ろから追い越して来たのだろう」


戦士「あの海賊船…帆を一枚焼いた船だ」


盗賊「そうだったのか…気付かなかった」


戦士「ここまでずっと追って来た事を思うと…仲間の海賊船が居るかもしれない」


盗賊「なるほど…」


戦士「娘の鼻は雨の日は役に立たない…私はここでしばらく監視を続ける」


盗賊「ふむ…ここは雨が当たらんから篝火を焚いても良さそうだ…」


戦士「それほど寒くは無いぞ?」


盗賊「老戦士へのいたわりだ…篝火で芋でも焼くと良い」


戦士「フフ…そうさせて貰う」



--------------




『船首楼』



ポタポタ ピチョン



剣士「姉さん…木の芽を蒸かしたよ…食べて?」


女オーク「私はもう大丈夫なのに…ミライが食べて?」


剣士「何言ってるんだ…血が足りないんだから…ほら」


女オーク「はむ…」モグモグ


剣士「なんだろう…姉さんの血を見ると落ち着かない…腹が立つ」イラ


女オーク「もうあの力を使っては駄目よ?約束して」


剣士「…分かってるさ…でも姉さんが死ぬくらいなら…使う」


女オーク「…」


剣士「危険な力なのは分かってる…魔術書で調べたから」



---そう---


---力を使うと僕が消える---


---でもその力は…僕の思い通り…世界を作る事が出来る---


---量子転移---


---究極の魔法---




『深夜』



ユラ~ ギシ



剣士「すぅ…」zzz


女オーク「…」---またあの力を使ってしまうくらいなら---


女オーク「…」---旅になんか出ない方が良かったかも知れない---



あなたは力を使って


自分を犠牲にして…居なくなった


夢の中の出来事


でもそれは本当に有った出来事…暁の使徒の記憶


だからもう…失わせない



女オーク「生まれ変わって…幸せですか?」


剣士「むにゃ…ごにょごにょ…」zzz


女オーク「あなたを愛しても…良いのですか?」


剣士「すゃ…」zzz


女オーク「…」



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