44.シン・リーンの玄関口
『船尾楼』
ガチャリ バタン
闇商人「さぁこっちだよ…」ホクホク
賢者「はい…」スタタ
闇商人「ええと…何処にしまったっけなぁ…有った有った」バサ
賢者「確かに古代文字ですね…この一冊だけですか?」
闇商人「他にも3冊くらいある…荷室の本棚に入れてあるんだ…これは多分この船の航海日誌だと思ってる」
賢者「ちょっと読ませて下さい…」ヨミヨミ
闇商人「どう?何か分かる?」
賢者「これは航海日誌と言うよりも長年綴った日記ですね…一番古い日付で50年くらい昔の事が書かれています」
闇商人「50年…」
賢者「全部読むのは少し時間が掛かります…直ぐに分かる事と言うと…OV-073機というシャトル?」
闇商人「全然分からない…何の事だろう?」
賢者「箱舟の事だと思います…その箱舟から降りた1年後にこの日記を始めた様です」ペラペラ
闇商人「なるほど…50年前既にホムンクルスの体を持った古代人がこの世界に降り立っていた記録と言う訳か…」
賢者「荷室に保管している書物も見せて頂いて良いですか?」
闇商人「うん…君に預けるから全部読んで欲しい」
賢者「分かりました…」
闇商人「よし!保管してある書物を探しに行こう」グイ
賢者「ウフフ…手を繋いで歩くのってなんか嬉しくなります」ニコニコ
『荷室』
スタスタ
盗賊「いよーう!!カゲミとイッコ…揃って湯上りか?」
闇商人「ハハ…まぁね」
盗賊「これ見て見ろ!!魔石が一袋分だ」ザラザラ
闇商人「良い収入になったね…山分けかい?」
盗賊「金目の物は均等分けのルールだからな?あとでお前にも配るから待ってろ」
闇商人「銃器はどうする?」
盗賊「あれは目に着く所に置いとくと御用になっちまうから隠した」
闇商人「それが良い…ところでラス!?今樽湯が空いてるから浸かって来ると良いよ」
女ハンター「本当?体が冷えて丁度湯に浸かりたかった」
闇商人「ミライ君が気を利かして沢山湯を沸かしてくれてるんだ」
女ハンター「アラン?荷の整理はあなたに任せた…湯に浸かって来る」
盗賊「へいへい…」
闇商人「なんか荷物が移動されてるな…本棚は何処に?」キョロ
盗賊「邪魔だからお前のベッド横に突っ込んだ…狭いが寝るには困らんだろ」
闇商人「荷が増えてゴチャゴチャになったなぁ…」
盗賊「俺はこういうのが好みだけどな?」
闇商人「まぁ良いや…イッコ!!こっちだよ」スタ
賢者「はい…」スタ
盗賊「なんだ2人で読書でもしようってんのか?」
闇商人「アランに言って無かったっけ?イッコは古代文字が読めるんだ」
盗賊「おおそらスゲェ…この船の航海日誌か」
闇商人「そうそう…ビックリ情報が眠ってる様だよ」
盗賊「後で俺にも教えてくれな?」
闇商人「勿論さ…なんかこれで機動隊が何者なのか秘密が分かる気がする…目的が何なのかもね?」
盗賊「奴らの目的は何処かにある集中端末の復活だ」
闇商人「どうしてその必要が有るのかって言う事だよ」
盗賊「ふむ…確かにそうだな…」
闇商人「期待して待つんだね」
盗賊「おう!!」
『数日後_甲板』
ヒュン ヒュン クルクル ガツン!!
魔法使い「あ…」
盗賊「隙アリ!!」ダダ スチャ
魔法使い「あぁぁぁ…」タジ
盗賊「ふむ…やっぱ狭い所だと槍は引っかかるか…」
魔法使い「う~ん…くやしい…」
盗賊「まぁ広い場所だと今の戦い方で十分よ…このまま練習すればかなり良い線行く」
魔法使い「どうやって追い詰められない様に立ち回れば良いんだろう…」ブツブツ
盗賊「甲板だとしょうがないぞ…まぁ少し休憩すっか!!」
スタスタ
盗賊「お?イッコか…どうした?書物に飽きたか?」
賢者「体を動かさないと眠くなってしまって…外の空気を吸いに来ました」
盗賊「お前もちっと立ち回りやって見っか?」
賢者「ええと…槍は使った事無いです」
盗賊「まぁ武器は何でも良いんだが…何なら使えそうだ?」
賢者「使った事あるのは斧です」
盗賊「斧?その細っそい体でか?」
賢者「島では父の手伝いで木を切る為に斧を使う練習をしました…ドワーフの皆さんも斧を愛用しています」
盗賊「斧か…確か売っちまってもう無いな」
賢者「無いのであれば無理に立ち合いはしなくても…」
盗賊「斧の代わりなら俺が持ってる銀のピッケルだな…これお前にやるわ…武器何も持って無いだろ」ポイ
賢者「ピッケル…長さも丁度斧と同じくらいですね」ニギニギ
盗賊「そいつは武器の性能として馬鹿に出来んぞ?斧並みの致死率があって更に軽い…ちっと剣より短いが…」
賢者「これを頂けるのですか?」
盗賊「俺はダガー持ってるからそれはお前にヤル…ふむ…お前盾使った事有るか?」
賢者「いいえ…」
盗賊「よし!!ちったぁ身を守る練習はした方が良い…盾とピッケルは相性が良いから練習すっぞ」
賢者「はい…どうすれば?」
盗賊「盾持って来てやるからちっと待ってろ」ダダ
『数分後…』
ドタドタ
盗賊「イッコ!!この盾使え…バックラーだ」ガサ
賢者「はい…ドワーフの皆さんも盾と斧を使いますね」スチャ
盗賊「とりあえずだな?俺が攻撃を仕掛けて行くから良く見て盾で凌げ」
賢者「わ…分かりました…」オドオド
盗賊「いくぞ?」ダダ
ガス! ガス! ゴン!
盗賊「ほう?良く見えてんな?」
賢者「目は良いので良く見えます」
盗賊「もうちっと早めに行くぞ?ほんでピッケル当てる隙を探してみろ」
賢者「は…はい!!」スチャ
盗賊「うら!!」ダダダ
ゴン!ゴス!ドン!
賢者「えい!!」ブン
盗賊「おわっと!!」ヒラリ
賢者「このぉ!!」ダダッ ブン
盗賊「おとととと…」ガシッ
賢者「あ…捕まった…」ジタバタ
盗賊「マテマテ…お前何か訓練やったか?」
賢者「はい…斧を振るう訓練を何年もやって居ます」
盗賊「いや…足裁きだ…素人の踏み込みじゃ無え」
賢者「あ…すみません言うのを忘れて居ましたがホムンクルスの反射神経は人間よりも早くてエルフと同等です」
盗賊「なぬ!?ほんじゃ目が良いのもエルフ並みってか?」
賢者「はい…母からはそう聞いて居ます」
盗賊「そういう事か…機動隊の奴らの動きが尋常じゃ無いのはソレが理由か…」
賢者「只体重が人間よりも少し軽いので接近戦には不向きな様です」
盗賊「訓練無しでその速さ…ちゃんと鍛えればエルフ並みに動ける訳だ」
賢者「私も戦う想定で居るのですか?」
盗賊「進んで戦う事も無いが身は守れる様にしといた方が良い…町に行ったらお前の体狙いの奴はゴロゴロ居るぞ」
賢者「体…ですか…」
盗賊「おいマイ!」
魔法使い「へ?」
盗賊「お前の丁度良い対戦相手が出来たぞ…いろいろ教えてヤレ」
魔法使い「え?私が?」
盗賊「俺はお前等と体重差があって絶対俺の方が有利なのよ…お前等は丁度合ってそうだ」
魔法使い「盾持ち相手かぁ…行けるかなぁ…」
盗賊「とりあえずやって見ろ…攻撃は寸止めな?」
魔法使い「じゃぁ…体が冷える前に少しやってみようか…」
賢者「はい…よろしくお願いします」
盗賊「こりゃ面白れぇ…俺は観戦しとくわ」
『30分後…』
カン カン コン ドタドタ
学者「な~んすか…足音がするんで見に来たらイッコさんがやってるんすか」
盗賊「おおゲス!なかなか面白いぞ」
学者「イッコさんに怪我させんで下せぇね?」
盗賊「これから怪我せん様に盾の使い方を訓練してんのよ」
学者「ふむふむ…イッコさん攻められっぱなしっすね?」
盗賊「まぁ素人だからしょうがない…只反射神経が良いもんだから上手く盾で攻撃をいなせるんだ」
学者「体当てて行かんとありゃ勝てんすよ」
盗賊「良い運動になってるしこれからだろ…てかマイの槍はかなりのもんだぞ?」
学者「そんな感じっすねぇ…」
盗賊「お前もちっとやって見ろ…体格はお前が上だから良い勝負になる」
学者「此処ん所運動不足なんでちっとやってみやすかぁ…」
盗賊「お~い!!マイとゲス交代だ!!」
魔法使い「はぁ…はぁ…」モクモク
盗賊「ウハハ…マイ!湯気が出てんぞ!!」
魔法使い「はぁ疲れた…暑い!」
盗賊「イッコもなかなかやるだろ?」
魔法使い「うん…練習になった」
盗賊「手を抜いてんの見え見えだったがな?」
魔法使い「えへへ…でもフェイント入れないと中々当てさせて貰えないから苦労した」
盗賊「イッコの実力も大体分かって来たからゾンビ倒すぐらいなら連れて行っても良さそうだ」
魔法使い「どうしてゾンビ?」
盗賊「イッコにやったピッケルは銀製なんだ…ゾンビ退治特化武器だな」
魔法使い「又変わった武器なんだね?」
盗賊「あれで鉄の鎧も貫くからかなり強力だぞ?鉄より重いもんだからまともに食らったら一発で死ぬわ」
魔法使い「重そうに見えなかった…」
盗賊「斧を振るう訓練はしてたらしい」
魔法使い「なんか今更怖くなって来た…」
盗賊「槍の間合いなら食らう事無えからお前には当たらん」
魔法使い「追い詰められたらって思うと…」ブルル
『岩塩の小島』
ガラガラガラ
盗賊「碇降ろしたぞぉぉ!!」
航海士「ゲート開くでぇ!?」
ガラガラガラ ドターーン!!
航海士「ミライ!2時間や…2時間で戻ってくるんやで?」
剣士「おっけー!!双胴船出すからイッコさんも手伝って!!」
賢者「はい…」スタタ
盗賊「ラス!他の船もチラチラ居るから見張り頼む!」
女ハンター「言われなくても…」
学者「やっぱみんな岩塩目当てで来てるんすかね?」
盗賊「ゴッツが言うにはそうらしい…ちょっとした金儲けだ」
学者「そんな高く売れるもんなんすか?」
闇商人「フィン・イッシュまで運べば高く売れるよ…バン・クーバーならもっと高い」
盗賊「俺等今金貨落としちまったからちっと金稼がんとな」
闇商人「そうだね…400枚ぐらいどっか行っちゃったからね…」
盗賊「例のガレオン船に金貨ありゃ良かったのになぁ…」
闇商人「あ…硫黄とか有ったじゃない…あれはシン・リーンで高く売れる筈」
盗賊「そら木材と布買うのでなくなっちまいそうだ」
闇商人「布はまだ足りないのかな?」
盗賊「らしいぜ?メインマストのデカイ帆が継ぎはぎだらけで張り替えたいらしいわ」
闇商人「シン・リーンは産地じゃ無いから布が高いんだよなぁ…」
盗賊「どうせ拾ったもんだからケチケチしないで必要な物揃えるぞ…あ!!アイツ…」
学者「どうかしやした?」キョロ
盗賊「ミライの奴…双胴船の帆をデカいのに変えて居やがる…そうかそれを試したくてワザワザここに寄ったか」
闇商人「ハハハ…まぁ良いじゃ無いか」
学者「ガレオン船で入手した布は早速使ったんすね…」
盗賊「ったく…布が足りんと言ってるのにコレだからな…」
女ハンター「ねぇ!!スループ船2隻がこっちに来そう」
航海士「小型の気球も飛んどらんか?やたら早い気球や」
女ハンター「え?…あ…小さな気球も居る」
航海士「ほんなら魔術師が乗っ取るな…大人しくしとった方がええ」
盗賊「こんな所まで哨戒してるってか…」
航海士「ここから西に行けばハジ・マリの町に割と近いんや…俺は知らんが密輸ルートが有るらしい」
闇商人「密輸?何の密輸だろう?」
航海士「麻薬やな…森の中でスプリガンちゅう魔物が生息する所にケシが生えるんやと」
学者「あ!!そういやスプリガン狩りのクエスト受注ありやしたね」
航海士「誰がケシを麻薬に精製しとるか知らんが流れて来とるんやな」
盗賊「ゴッツもムン・バイで麻薬運んでたんだろ?」
航海士「俺がというよりも没落貴族のアナールやな…俺は船を動かしとっただけや」
女ハンター「ねぇ…アナールは手足が無かった筈だけど今どうなって?」」
航海士「義手と義足をはめて自由に動いとったで?」
学者「ああ…ムン・バイで見つけた義手はそのアナールって奴の物だったんすね…アレ何処行っちゃったんすかね?」
盗賊「俺の船にあったチェストの中だ…船尾楼ごとどっか行ったわ」
『スループ哨戒船』
ゾロゾロ ドタドタ
兵隊「この船の責任者はだれだ?」ギロ
闇商人「責任者とは違うけど…コレ…商工会の身分証だよ」スッ
兵隊「ふむ…ハテノ自治領か…という事は河口の港町から来たのだな?」
闇商人「うん…只の商船さ」
兵隊「一応積み荷を確認させて貰うが良いか?」
闇商人「ハハ…断った所でどうせ確認するよね…今の質問に意味が有るのかな?」
兵隊「…」ギロリ
盗賊「おいおいカゲミ煽るな」
兵隊「見た所…只の商船にしては乗って居る者が若すぎる…全員左耳の後ろを確認させて貰う」
闇商人「え!?左耳?」
新兵「ドワーフも乗って居ますね…」
兵隊「ドワーフは除外で良い…下手に騒がせて外交問題になっては困る」
新兵「では一人づつ…」スタ
兵隊「小舟で出て行った者はどの位で戻って来る?」
闇商人「もう直ぐだよ…あと30分以内には戻ると思う」
兵隊「因みに言っておくが夏季以外に枯渇性資源を採取するのは違法に当たる」
盗賊「なぬ!?」
兵隊「只今はそれを取り締まって居る訳では無いから大目に見よう…大人しく取り調べに応じて居ればの話だが…」
新兵「今居る者は全員異常ありません!!」ビシ
兵隊「ふむ…手分けして船内の確認を急げ」
新兵「ハッ!!」ドタドタ
兵隊「さていくつか質問をさせてもらう…行き先は?」
闇商人「次の寄港地はシン・リーンの新しい港町…その後ス・エズー海峡を抜けてフィン・イッシュ」
兵隊「乗船員の構成は?」
闇商人「ドワーフ2人と男女混合の成人8人…そして子供2人」
兵隊「女の比率が高いのは何か意図が?」
闇商人「そんなの知らないよ…たまたまそうなっただけさ」
兵隊「海賊の多い海域をこの人員で航海出来ると思って居るのか?」
闇商人「魔法が使えると言ったら?」
兵隊「フフ…魔法が使える者!一歩前へ出ろ!」
魔法使い「は…はい!!」ビク
兵隊「なるほど…ハテノ自治領の魔法使いか…」ジロジロ
魔法使い「何か?」ドキドキ
兵隊「何を使う?」
魔法使い「エ…エレメンタル4種…」
兵隊「ルイーダの教え子だな…」
魔法使い「あ…はい…」
兵隊「よし質問は終わりだ…今免状を書いてやる」カキカキ
闇商人「免状?どういう事だろう?」
兵隊「この船は調査済みだという免状だ…余計な調べを受けんで済む」スラスラ
闇商人「まだ調査は済んで居ないんじゃ?」
兵隊「こちらにも事情が有る…ルイーダの教え子が居ると知って私も下手に動けなくなった…察してくれ」
魔法使い「私に何か?」
兵隊「千里眼と言う魔法を知って居るな?」
魔法使い「はい…」
兵隊「教え子の目を通して私が見られている可能性があると言う事だ…それ以上言わせるな」
闇商人「ハッ!!」---次元の外側から介入…目を通して見てる…カイネさんがやって居る事と同じだ---
”ザザー
”荷室は主に硫黄と石炭…黒炭…砂銀…
”通常の商船が運ぶ物資に相違ありません
”搭載している武器は主にクロスボウと弓矢
”作りかけの爆弾が有りますがかなり小型な爆弾です
”よし!引き上げる…次の船は20キロ陸の側だ
”ハッ!!
盗賊「なんだあれ?」ヒソ
闇商人「シン・リーンの魔術師は貝殻を使って連絡し合うんだよ」ヒソ
盗賊「マジか!めちゃ便利な物持ってんじゃ無えか…」
兵隊「この事はあまり口外しない様に…さて免状だ」パサ
闇商人「あぁ助かるな…」
兵隊「調べはこれで終わる…岩塩の件は見なかった事にするから隠して置く様に」スタ
『その後…』
ザブン ギシギシ
盗賊「ほーーシン・リーンの兵隊は行動早いな…速攻撤収して行きやがった…」
航海士「あれは間違い無く魔術師やで?」
闇商人「あの自信に満ちた感じで分かるさ…只者じゃ無い雰囲気ムンムンだよ」
魔法使い「あの…私の目を通じて見てるって…どういう意味?」
闇商人「眠り姫の事は知って居るよね?」
魔法使い「眠り姫?」
闇商人「あぁ忘れてた…一般には公開されて居ないのか…」
盗賊「まぁこういう事だ…お前の目を通じてシン・リーンの王女に見られてるかも知れんって事よ」
闇商人「そうだね…あの兵隊も下手な事をして色々問責されたく無いのさ」
魔法使い「へぇ…」
盗賊「とりあえず何事も無く免状まで貰ったんだから結果オーライだ」
ザブザブ
剣士「お~い!!何か有ったのぉぉ!?」
盗賊「大した事ぁ無え!!ちっと兵隊に船を調べられただけだぁ!!」
剣士「びっくりしたよ!!他の船が取りついてるからさぁ」
盗賊「済んだ事だからもう良いぞ!!それより岩塩採って来たか?」
剣士「大漁大漁!!イッコさんのピッケルで簡単に採取出来るんだ!!」
盗賊「おら!早く小舟寄せろ!!」
剣士「うん!!イッコさん先に飛び移って?」
賢者「はい…」ピョン スタ
盗賊「おーし!!さっさと荷上げして出発すっぞ!!」
ドタドタ
闇商人「…」---次元の外側から観察---
---あの古代の機械の様に---
---動く絵としてマイの目を通じて次元の外側から見ている可能性---
---そして介在してくる可能性---
---もしかするとマイの中にルイーダが既に居るのかも知れない---
---どうすればそれを確かめられる?---
『数日後…シン・リーン港町近海』
ザブ~ン ユラ~リ
盗賊「なんかやたら船が多いんだがどうなってんのよ?」
航海士「ここら辺はこんなもんやで?周辺の沿岸部に新しい町が色々出来とるんや」
闇商人「気候が良いから人が集まるんだね…冬だけど全然過ごしやすいよ」
賢者「はぁぁぁ…」ウットリ
闇商人「あれ?今日は髪型を…」
賢者「はい…下着も一番きれいな物を身に付けています」
闇商人「あのね…君はそう言うのを安売りしない方が良い」
賢者「万が一の備えです」
闇商人「う~ん…なんか危ないなぁ…」
盗賊「さぁて!!そろそろ俺らも降りる準備すっか!」
闇商人「そんな気を張る事も無いと思うけど?」
盗賊「俺はお尋ね者だから顔を晒せん…てかお前もだろ」
闇商人「アラン程目立ってはいないからフードを深く被る程度で十分さ」
学者「今回何日ぐらい陸に降りられるんすか?」
航海士「4日やな…それで丁度ス・エズー海峡行ける筈や」
闇商人「物資調達には丁度良いけど…運搬でガッツさんとゴッツさんに手伝って欲しい」
航海士「そらかまんが…船はええんか?」
盗賊「心配すんな…どうせミライとリッカが残る…俺等皆居ない方があいつ等の為にも良い」
闇商人「それってどう言う意味?」
盗賊「色々あんのよ…察してやれい」
『桟橋』
ガコン ギシギシ
闇商人「ちょっと僕が先に居りて免状を見せて来るよ」
盗賊「おう!!」
闇商人「イッコ!君には手順を教えておきたいから一緒に来て」
賢者「はい…」ワクワク
盗賊「おうイッコ!!一応盾を背負って行け…そんだけで襲われんくなる」
賢者「分かりました」
闇商人「じゃぁ行くよ…ゲート降ろしてぇ!!」
船大工「がってん!!」
ガラガラガラ ドターーン!!
盗賊「ラス!!いつも通りミファの手を引いてくれな?」
女ハンター「分かってる…」
盗賊「小僧は俺と一緒だ…ゲスとマイも装備品忘れんなよ?」
学者「俺っちはポーションの材料を市場に見に行きたいんでカゲミさんと行動しやすね?」
魔法使い「あ…私も触媒の種を探しに行きたい」
盗賊「ほーん…まぁ良い…とりあえず宿を探しとくから後で合流な?」
学者「へいへい…あんま地理分からんので近い所にして下せぇ」
盗賊「おう!!」
『宿屋_部屋』
…ではごゆっくり
ガチャリ バタン!!
盗賊「ラス!悪いな…また金出して貰っちまった…魔石一個やるからこれで勘弁してくれ」
女ハンター「あら?それだとお釣が出てしまう」
盗賊「この間の分と合わせてチャラって事でな?」
女ハンター「フフ…それじゃぁ頂く」
盗賊「大部屋2つ借りられたのは良いが…あいつ等此処が分かるか心配だ…」
少女「ア…ラン…だーじょーび」
盗賊「おお!?ミファ…少し話せる様になってるか…」
少女「だーじょーび」
少年「妖精居る…大丈夫」
盗賊「お前等こっそり話す練習してんな?」グリグリ
少年「俺…教える…もらった」
盗賊「よし!ほんじゃこれは褒美だ…使い古しの魔石だが一応売れる」パス
少年「宝石…」
盗賊「お前等2人でそれを市場で売って小遣い稼いで来い…好きな物買って良いぞ」
少年「おおおおお!!」
少女「フォーガ…うりゃかたおしゃーる…ちぃーてきて」スタタ ドテ
女ハンター「フフ…体は子供でも一応ミファの方が大人ね」
盗賊「うむ…転ばん様に気を付けろぉ!!」
女ハンター「じゃぁ私は水浴びにでも…」スック
盗賊「おいお前まで居なくなると俺が暇になっちまうだろ」
女ハンター「だって何もする事が無いじゃない」
盗賊「傍に居るだけで良いんだ…」キュポン グビ
女ハンター「暇なんだけど…」シラー
盗賊「じゃぁ膝でも貸せよ」
女ハンター「私はそういう女じゃない」
盗賊「じゃ逆にするか?俺が膝を貸してやる」
女ハンター「…」ジロリ
盗賊「実はな?ロックピックで耳の穴掃除すんのも得意なのよ」
女ハンター「耳?」
盗賊「まぁ騙されたと思ってやらせてみろ」グイ
女ハンター「ちょっと…」ドテ
盗賊「こりゃ又お宝一杯だな…」ススス
女ハンター「あ…耳なんか触られた事…ない」ビクビク
盗賊「なんじゃこりゃぁぁ!!」
女ハンター「…」---体が動かない---
---違う…私は彼を受け入れてしまってる---
---心の扉が開いてしまった---
---暖かい---
『賢者タイム』
ふぅぅぅぅ…
女ハンター「私を征服出来て満足?」ジロ
盗賊「んあ?なんだその言い方…一つ言っておく…お前は俺の女だ…言いたいのはそれだけだ」グビ プハァ
女ハンター「…」
盗賊「何か言えよ」
女ハンター「こんな汚れた体で…多分性病もある…子供も産めない…それで良いの?」
盗賊「もうそんな事は言うな…俺はそんな事ぁ気にして無え」
女ハンター「…」チャキリ
盗賊「うお!!おまリボルバーを…」タジ
女ハンター「あなたの女だと言ったでしょう?」
盗賊「それとリボルバーと何の関係があんのよ」
女ハンター「あなただけ満足して終わるのは納得が行かない…あなたの女だと言うならちゃんと私も喜ばせて」スチャ
盗賊「おいおい…銃を降ろしてくれ」
女ハンター「今度は私があなたを征服する番…こうやって銃口を向けられたまま大人しくして居れば良いの」
盗賊「なぬ?第2ラウンドかぁ?」
女ハンター「私が上…喜ばせてくれなかったらドン…そんなゲーム」
盗賊「おっし遊んでやるわ…来い!」
女ハンター「…」ギシ
---一線を越えて嫌悪感が出ると思ったのにそうはならなかった---
---それなら関係を続けてこの男の女になっても良いと思った---
---だから私に喜びを頂戴…そしたら私を全部あげる---
『夕方』
ガチャリ バタン
学者「兄貴ぃ!!戻ってきやしたぜ?」
盗賊「おお早かったな?」
学者「物資が一瞬で売れちやいやしたよ…一人っすか?」キョロ
盗賊「ラスは水浴びに行ってる…ミファと小僧は見なかったか?」
学者「カゲミさん達に合流して酒場に食事行きやした…俺っちは兄貴を呼びに来たんす」
盗賊「んあぁぁ…どうすっかな…どうせ手配書出回ってんだろ?」
学者「じゃぁ何か買って来やしょうか?」
盗賊「そら助かる…てかお前の奢りでな」
学者「へいへい…兄貴は宿屋から一歩も出てない感じっすかね?」
盗賊「そうだ…なんか良い情報でも掴んだんか?」
学者「海賊王の娘の噂っすね…近くに居るらしいっていう情報だけなんすが…」
盗賊「アレか…フィン・イッシュ女王とリカオンの天敵…」
学者「多分そうだと思いやす…懸賞金がえらい額なんでザワついて居やすね」
盗賊「そんな中俺が酒場に顔出して変に疑い掛けられると又めんどくせぇ…」
学者「じゃぁ代わりに俺っちが情報仕入れて来やすね」
盗賊「頼むわ…」グビ
学者「ラスさんどうしやす?」
盗賊「アイツも肉食いたいだろ…一応酒場に行くか聞いてみてくれ」
学者「分かりやした…食い物はシカ肉で良いっすか?」
盗賊「おう!!骨付きで頼む!!」
学者「待ってて下せぇ」
『酒場』
ワイワイ ガヤガヤ
シン・リーンの方で傭兵を大量に募集しているそうだ…かなり報酬が良いらしい
それであの旅団か…なんで急に募集し始めた知ってるか?
強い魔物が出る様になったんだとよ…山越えの道中も今では安全じゃ無い様だ
闇商人「お~い!!こっちだよ!!」フリフリ
学者「居た居た…テーブル確保出来たんすね」スタ
闇商人「あれ?アランは?」キョロ
女ハンター「アランは宿屋で留守番…」
闇商人「珍しいね…」
学者「手配書を気にしてるみたいっす…魔術師にメンチ切っちまたんで次会ったら殺さにゃならんとかボヤいてやした」
闇商人「なるほどそういう事か…」
学者「兄貴は一旦言った事は撤回しないんで必ず実行するんすよね」
闇商人「じゃぁ一人にしておくのも可哀そうだし早めに戻ろうか…」
女ハンター「私はミファとフーガ君を迎えに来ただけだから直ぐに戻る…皆ゆっくりしてて良いわ」
闇商人「そうかい?…君も一杯くらい飲んで行ったら?」
女ハンター「じゃぁ一杯だけ…」
学者「イッコさんが見当たらないんすが…」キョロ
闇商人「あぁ…男の人に話しかけられて…あそこだよ」ユビサシ
学者「あらら…大丈夫っすかね…」
闇商人「一応ゲスの言い付けを守ってお酒は飲んで居ないから酔っては居ないよ」
学者「そら良いんすがヒョイヒョイどっか付いて行っちゃいそうっすね…」
闇商人「ちょっと経験させないと分からないかなと思って放置してるけど…」
女ハンター「少し見守ってあげたら?年頃なんだし興味が有るのは仕方が無い」
闇商人「まぁそうだね…」
ワイワイ ガヤガヤ
金貨6枚でどうだ?部屋は有る
どうと言いますと?
そりゃ決まってるだろ…男と女の遊びだ
性行為ですか?
分かってんじゃ無えか
興味はありますがお金で売買するのはちょっと…
金じゃ無きゃ何が欲しい?
恋愛をしたいです
俺と恋愛で良いだろう
もっと運命的な出会いとか…そういう事が有れば良いのですが…
俺のナニとお前のアレが運命的に出会うんだ…
何か違う…ごめんなさい…とても興味のあるお誘いですがもう少し考えます
マテマテ分かったこうしよう…少し触らせてみろ…金貨2枚だ
触る…だけですか?
そうだ…その後考えてみろ
分かりました…少しだけなら…
よし決まりだな?金貨2枚だ…こっち来い
学者「あらあらあら…なんか体寄せ合ってるんすが…」
闇商人「う~ん…なんだろ…彼女を止める義理が無いんだ…」
女ハンター「さて…私はミファとフーガ君を連れて帰るから後はよろしく」
学者「あ!!ラスさん!!兄貴に肉と酒を持って行って貰えやせんか?」
女ハンター「分かった…私が一口かじった肉を持って行く」モグ
学者「ウハハやり返すんすか!!多分兄貴は全く気にせんすよ?」
女ハンター「お酒も持って行くから…じゃ…ミファとフーガ君!宿に戻るわ?来て」スタ
魔法使い「ねぇカゲミさん…イッコの様子が少し変…」
闇商人「え!!?」
魔法使い「あ…」
ドン! スタタタタ
賢者「ハァハァ…」フラ
学者「イッコさんどうしやした?あの男に何かされやしたかね?」
賢者「い…いえ…お金で体を求められたのですが断って来ました」
闇商人「やっぱりね?君はそう言うのに関わらない方が良い」
賢者「はい…こ…これ」チャリン
闇商人「ん?金貨?」
賢者「あの男の人に貰いました」
闇商人「ちゃんと断ったんだよね?」
賢者「はい…」
闇商人「じゃぁ君の物だ…好きに使うと良いさ」
学者「あんま知らない人に絡むと危ないんで気を付けて下せぇね?」
賢者「はい…」
闇商人「じゃぁ飲み直そうか!」
学者「イッコさん一杯だけなら飲んでも構わんですぜ?どうなるか見て見たいんで…」
賢者「本当ですか?」
学者「一杯だけっすよ?」
賢者「はい…」ゴクゴク プハー




