4.不慣れな航海
『出港』
ドタドタ
盗賊「何だ結局船に乗るのはちびっ子と旦那の2人だけか?」
少女「超ウルフも忘れるな?」ズイ
中年の男「私は他に誰が乗るとか聞かされて居ません」
盗賊「おいおいどうなってんのよ…ちったぁ俺にも情報欲しいもんだ…」
学者「兄貴ぃ!!これで全員揃ってるみたいっすね…見回した感じ隠れて乗ってる奴も居ない様っス」
盗賊「まぁ良いか…おい嬢ちゃんよ!出港させて良いんだな?」
少女「さっさと出ろ!お前色々遅い」
盗賊「行先はバン・クーバで良いんだな?」
少女「何度も言わせるな」
盗賊「くぁぁぁぁ生意気なクソガキだ…リッカとミライ!!帆を広げてくれぇ!ゲスは舵を頼む」
学者「へいへい!!」ダダダ
盗賊「碇上げるぞぉぉ!!」ガラガラ
ユラ~ グググググ
少女「おぉぉぉ…出航!出港!行けぇぇ!!」ユビサシ
盗賊「こっちは重労働やってんのに気楽なもんだ…」エッホ エッホ
バッサーーー バサバサバサ
盗賊「おぉぉぉ…やっぱデカい縦帆有ると違うじゃ無ぇか…」
剣士「帆は全部開くよね?」ドタドタ
盗賊「勿論だ!!全速力試すぞ!!」ドタドタ
中年の男「ほぉ?帆装が変わりましたな?縦帆3枚…」
盗賊「小さいの合わせたら6枚だ…手隙なら手伝って貰って良いか?」
中年の男「いやぁ久しぶりですな…」
盗賊「んん?もしかして船乗りだったか?」
中年の男「まぁ少しだけ…」
盗賊「じゃぁ心強えぇ…航海中はどうせ暇になるから色々聞きたい事もある」
中年の男「ハハハ…知って居る事なら何なりと」
盗賊「俺の名はアランだ…職業は泥棒さんよ」
中年の男「私はリコル…自警団では戦士役を務めています」
盗賊「よろしくな?リコル!」スッ
戦士「こちらこそ!!」ガシ
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『帆走』
ザブ~ン バサバサ
盗賊「うほーーー倍ぐらいのスピード出る様になったじゃ無ぇか!!」
学者「船が重いせいか安定していやすね…操舵しやすいっす」
戦士「帆装が今流行のキャラベル船ですが荷の積載量が多いので遠洋航海向きの船ですね」
盗賊「あんま違いが分からんのだがよう…」
戦士「小型のキャラベル船は快速で小回りが利くので商船に良く使われています…浅瀬でも帆走出来るのが特徴」
戦士「この船は船底が深いので浅瀬には不向き…でも荷が多く積めるので補給無しで海を渡れる」
戦士「船が大きくなればなるほど横帆の重要性が増すのですが…これだけ速度が出るなら縦帆でも良いでしょう」
盗賊「なるほど…じゃぁ沖に出ても良い訳だ?」
戦士「その場合ちゃんと測量出来る航海士を雇った方が良いですな」
盗賊「もうちょっと楽に話して貰って良いぞ?」
戦士「ハッハッハ初対面だとどうしても…慣れれば地も出て来るでしょう」
少女「ちちーーー」シュタタ ピョン
盗賊「おっとぉ!!その手は食わんぞ」ササ
少女「この男!夜に隠れて家まで来てた!」
盗賊「おいおい何を言いだす」タジ
戦士「ハッハッハ勘が良くて驚いて居るでしょう…」
少女「消える技を持ってる!秘密をしゃべらせろ!」
戦士「まぁまぁ…アランさん…隠して居てもしょうがないので話して置きますが…」
盗賊「んん?何だ?」
戦士「この子達は特殊な感覚で意思伝達できる能力があるんですよ…匂いとか音とか…感覚が鋭いのです」
盗賊「ほう?」
戦士「因みに私にはその感覚が有りません…だからアランさんの思うその手の者とは関わって居ないのです」
盗賊「おいおい…それってもしかしてウルフの遠吠えか?」
戦士「ハッハッハ…お気付きで?…遠吠えだけでは無いのですがね」
盗賊「なるほど分かったぞ…情報伝達は俺らの知らない方法で共有されてる訳か…」
戦士「察しの通り…そして私にはそれを教えて貰えない」
少女「ちち秘密を話すな!ははに言うぞ!」
戦士「同じ船に乗って居るのだから互いの探り合いで関係を悪くしたくないだろう?」
盗賊「…」---盗賊ギルド…こりゃレベルクソ高けぇな---
少女「お前に言っておく…敵も違う方法で情報のやり取りする」
盗賊「敵?なんだ敵ってのは?」
少女「お前達の敵…機械だ…秘密の手紙がソレだ」
盗賊「マジか…白黒の模様が記された…そうか俺らには読めない…つまり密書だった訳か」
少女「お前いろいろ遅い!!トロイ!ノロマ!」
盗賊「おぉ悪りぃ…今全部理解したわ…」
少女「だったらもう口に出して喋るな!誰が聞いてるか分からないから!」
戦士「この船に機械の者は誰も乗って居ないのはもう確認しただろう?」
少女「普段からそうしろと言ってる」
盗賊「分かった分かった…背中撫でてやるから許せ」
少女「お!!?早く撫でろ」クルリ
盗賊「ほらよ…」ナデナデ
少女「もっと優しく撫でろ」
戦士「ハッハッハ娘の扱いもご存じで…」
盗賊「しかしまぁ…これで色々分かったわ」ナデナデ
戦士「快適な船旅になりそうですな?ハッハッハ…」
盗賊「そうだと良いな?」ナデナデ
---どうも俺は盗賊ギルドを舐めてた様だ---
---機械化兵団も…機動隊の連中も---
---相当レベルの高い情報戦をやってんだ---
---そこに姉御が首を突っ込んだ訳か---
---こりゃマジ本気でやらんと足引っ張っちまうな---
『甲板』
ザブ~ン ユラ~リ
盗賊「波で樽が転がって行かん様にしっかりロープで縛って置いてくれ」グイ ギュゥ
学者「食材は何処に置きやす?」
盗賊「船尾楼はもうパンパンだな…」
剣士「船首楼側の小部屋…あそこを作業場にしたいんだけどさ」
盗賊「作業場?」
剣士「ほら?作り物すると音が出るじゃない?」
盗賊「なるほど…構わんが…食材もそこに置けんか?」
剣士「作業用のテーブル置いたから…調理場としても使おうか」
盗賊「それが良い」
剣士「僕と姉さんも船首楼側に移動するよ…船尾楼の居室が広く使える様になる」
盗賊「良いのか?寒いんじゃ無いのか?」
剣士「大丈夫!寒さ対策はしてあるから」
盗賊「じゃぁそうするか」
剣士「姉さん!!部屋の引っ越しだよ!!」メパチ
女オーク「分かったわ…」メパチ
学者「そうそうミライ君!作業場作るなら俺っちの錆びたクロスボウも整備してくれやせんかね?」
剣士「んん?」
学者「ボルトが無いもんで作れたら作って欲しいんす」
剣士「あぁボルトかぁ…心材で木を使って先端にガラクタから切り出した鉄を使えば作れそうだな…」
学者「ソレソレ!そういうので良いんす」
剣士「おけおけ!!材料を運んどいて」
盗賊「ふむ…船尾楼からガラクタが無くなればちったぁマシな居室になる」
剣士「ハハ…船首楼は物置小屋になっちゃうけどね」
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『船首楼』
ヨッコラ ドサ
学者「へぇ?結構良い作業台を作りやしたね?」
剣士「金床が無いのが残念だけどね?」ゴソゴソ
学者「ガラクタの鉄板は好きに使って良いですぜ?」
剣士「うん!そうさせて貰う…鉄板があるだけで大分違うから」
学者「これ資材入れたら寝るスペース無くなるんじゃ無いすかね…」
剣士「大丈夫!僕と姉さんはずっと小さな馬車の中で生活してたんだ…慣れてるよ」
女オーク「馬車よりも少し広いわ?」
学者「なら良いっすね!」
剣士「ここに調理場が有ると言う事は…調理担当は僕かな?」
学者「そうなりそうっすね…大丈夫っすか?」
剣士「味付けが薄いって良く言われるんだけど…大丈夫かな…」
学者「まぁ食えりゃ何でも良いんすが…」
剣士「後で作ってみる」
学者「楽しみにして居やす…じゃぁ資材運んで来るっす」タッタ
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『船尾楼』
ボフッ ボフボフ
少女「このおが屑のクッション気に入ったぞ!!」ノビー
盗賊「ボロキレとおが屑で簡単なベッドを作った訳か…ミライの奴考えたな」ウムウム
戦士「寝床は此処で?」
盗賊「奥の方使ってくれ…手前側はテーブルに海図を広げておきたい」
戦士「中々味のある居室な様で…」キョロ
盗賊「古臭いってか?確かに…30年前の雰囲気はあるな?」
戦士「ほとんどの物が手作り…ほぅ?ランプまで工夫が見える…ここで湯を沸かすのですな?」
盗賊「そうだ…それが意外と暖かいのよ」
戦士「癒されますなぁ…静かな海に…ランプで沸かす湯の音…営みを感じますな」
盗賊「そうか?まぁ…海の静かさは格別だな…どうだ?一杯やるか?」クイ
戦士「私も少し持って来ているのです」
盗賊「ヌハハ話が分かるじゃ無ぇか…片づけは後にして先ずは景気付けだ…飲め」トクトク
戦士「では遠慮なく…」グビ プハァ
盗賊「ウハハハハ病みつきになりそうだ…船で飲むのはよぅ…」グビグビ
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『船首楼_作業台』
ゴシゴシ ガリガリ
剣士「よしよし大分溜まったな…集めておかないと」ゴソゴソ
学者「クロスボウの錆びなんか集めて何するんすか?」
剣士「これね…染料になるのさ…他にも色々使い道があるんだよ」
学者「いやぁぁぁ大したもんっすね…そんな物まで使うんすね」
剣士「大体これで錆は落ちた…後は貝殻の粉で擦ればピカピカさ」ゴシゴシ
学者「勉強になるっすわ…何処で覚えたんすか?」
剣士「キ・カイで拾った書物だよ…みんな引っ越した後に書物とか邪魔だから放置して行くんだ」
学者「そうだったんすね…キ・カイも意外と宝が落ちてるんすね」
剣士「ゲスさんは医術を学んだとか?」
学者「俺っちは半端に学んだんで戦場医くらいでしか活用出来んす…どっちかと言うと機械とか錬金の方を勉強しやした」
剣士「機械も面白そうだなぁ…」
学者「結論を言うとですね…人殺しの兵器を作るって事なんすよ…人間はそういう風にしか知識を活用出来んのです」
剣士「なんか…深い事を言った?」
学者「まぁ俺っちの戯言なんで気にせんで良いっす」
剣士「まぁ何となく分かったよ…良かれと思って作っても結局戦いの道具に利用されるだけ…何作ってもそうなっちゃう」
学者「おろろ?理解早いっすね?」
剣士「僕は色んな物作るけどさ…例えばこのおが屑で作ったクッションも…便利だから戦いに使われちゃう」
学者「そうそう…そんな感じで何作っても人殺しの道具にされるのが機械工学なんす」
剣士「でも今の時代は戦う相手は機械なんでしょ?」
学者「今までは…と言った方が良いかもしれんす」
剣士「どうして?」
学者「人間の中に機械化…いえ電脳化した人間が入り込んでるんす…内ゲバを起こす為っすね」
剣士「じゃぁ味方同士で戦う事になる?」
学者「かもしれやせん…ほんで機械と戦うために作った兵器はそのうち人間に向けられるんす」
剣士「ハッ!!それってもしかして機械達がそうさせてる?」
学者「恐ろしい話しっすよね…」
実はっすね…機械化兵団の奴らは人間の住む領地に攻め込んで来る事なんか無いんすよ
多分自分たちの守る場所から遠くまで離れられんのです
だからここ20年ぐらいは人間側が攻める一方だったんす
機械は自分たちが動ける為にエネルギーが必要なんすが
今の所人間に奪われっぱなしで勢力が小さくなってる様に見えやす
でもですね?
もし人間のお偉いさんに電脳化した人間が混ざるとどうなると思いやすか?
剣士「奪ったエネルギーをこっそり機械に渡す…かな?」
学者「正解!…多分そうなるっす…戦って獲得した意味が無くなるんすね…でも戦死した人は帰って来ない」
剣士「もしかしてそういう事がもう起こってる?」
学者「多分そうっすね…ミライ君達と出会ったのもその中の出来事だと思って居やす」
剣士「じゃぁ船を盗んでフィン・イッシュに行こうとしてるのもその一環なの?」
学者「兄貴はそういう流れにあまり首を突っ込みたがらないんでフィン・イッシュに行く目的はちょっと違いやすね」
学者「でも…多分電脳化した人間が入り込んでるのはフィン・イッシュも同じだと思いやす」
剣士「関わらなくても巻き込まれてしまうという事か…」
学者「俺っちの予想では直に大きな戦争になると思いやす…だから姉御は危険を承知で盗賊ギルドに接触した…」
剣士「知らなかったよ…世界がそんな事になってるなんて…」
学者「要らん話をしちまいやしたねぇ…知らんくて良かったんすよ」
ガチャリ バタン!!
少女「お前ーー!!その話を他でしゃべるな!!」
学者「おわっ…びっくりしやしたよ…」ドキドキ
少女「分かったか!!今の話を陸でするな!!」
学者「へいへい…なんなんすかねこの子は…」
少女「お前口軽い!!しゃべったら超ウルフの餌になる!!覚えておけ!!」
剣士「まぁまぁ…撫でてあげるからこっちにおいで」
少女「撫でる…許す」クルリ
剣士「君は僕と一緒で耳が良いんだね?」ナデナデ
少女「ふむ…お前は通ずる物があるな…ふにゃー」コテン
剣士「…」ナデナデ
---なんか進まなきゃいけない方向が見えて来た気がする---
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--------------
『数日後』
カン カン コン
盗賊「ふぅぅやるな?老体のクセに」ズザザ
戦士「まだまだ!!」ダダ ブン
学者「まだ立ち合いやるんすか?そろそろ甲板開けて欲しいんすが…」
盗賊「ちと休憩にするか…」
戦士「フフ良い汗をかいた…ふぅ」スタ
学者「俺っちはクロスボウの試し撃ちをっすね…」ゴソゴソ
タッタッタ
剣士「リコルさ~ん!!出来たよぉ~!!」
戦士「お!?」
剣士「装着して見て」ガサリ
戦士「ふむ…中々に…」ガチャガチャ
盗賊「おいおい…ガラクタから鉄の鎧を作ったってか?」
剣士「盾もあるよ…ホラ」ドサ
盗賊「今時そんな重装着てる奴なんか居ないんだがな…銃弾は良いが榴弾でポーンよ」
戦士「良いでは無いか…私は戦地では無く魔物から村を守るのが仕事だ」
盗賊「そんなもん来てバン・クーバを歩いてたら笑いの的だがな?ヌハハ」
剣士「まぁまぁ…ガラクタはどうせ邪魔だったし僕の趣味だよ」
バシュン ストン!
盗賊「おっと!危無ぇな馬鹿野郎!」
学者「ミライ君…やっぱり少し狙いが逸れやすね…クロスボウの調整じゃ限界っすかね?」
剣士「それ多分ボルトの側が問題なんだよ…心材に木材を使ってるから微妙に曲がってるのさ」
学者「ボルトが軽い分威力も微妙なんすよね…」
剣士「飛距離は相当出るから火矢みたいな使い方が良いかもね…ボロキレと油は一杯有るからさ」
学者「火矢…なんつーか使う想定が出来んっす」
戦士「そうでも無い…陸沿いの航海は海賊船に遭遇しやすいから対海賊船であれば使い道も…」
盗賊「海賊?」
戦士「この船では海賊達が乗るスクーナーからは逃げられない…だから火矢で対抗するのは有効だと思う」
盗賊「なるほど!!帆を燃やしちまえば勝ちか」
学者「大砲の飛距離に勝てるとは思えんのですが…」
戦士「そのクロスボウの飛距離は?」
学者「目視で200~300メートルっすね…大砲は1000メートル以上飛ぶっす」
戦士「それは戦場で使って居る大砲の話…海賊の持つ大砲は大きくて丸い砲弾」
学者「丸い砲弾?それ旧世代の大砲じゃないっすか…」
戦士「そもそも揺れる船で1000メートル向こうの標的には命中しないから近距離から威嚇目的で使うのだよ」
学者「あぁぁそれなら旧式で十分って事っすね…」
戦士「だから連射の聞く火矢が有効だと思う…200メートルでそこそこの命中があれば脅威な筈」
剣士「火矢を作るのは簡単だから作りためておくよ」
戦士「もしも一気に接弦されて乗り込まれる様な事があれば…この鎧と盾が役に立つ」バンバン
盗賊「立た無ぇよ!!そんなもん銃器で一掃だ」
剣士「相手が銃器を持って居た場合は?」
盗賊「そらお前…ドンパチになっちまう」
戦士「フンフン!!」バンバン
盗賊「その鎧と盾で耐えるってか?マジか…人間キラーマシンだな…」
戦士「戦士とはそういう役だ」
学者「なんか連携の取り方が分かってきやしたねぇ?」
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『海賊船?』
ザブ~ン ギシ
剣士「…やっぱり追いかけて来て居そうだね」
盗賊「ちぃぃ…言った傍から遭遇しちまうとは…」
戦士「望遠鏡は持って居ないのか?」
盗賊「無い…」
戦士「4本マストのスクーナーか…只の商船の可能性もある」
盗賊「こりゃ望遠鏡も必須だったな…しゃぁ無ぇ…備えるか」
戦士「日暮れまで逃げきれば追っては来ない筈…」
学者「このままの感じだと2時間後くらいって感じっすか?」
盗賊「向こうが速度上げなけりゃな?」
剣士「ダメだやっぱり近づいてる!!僕火矢を船尾楼の上に準備する!!」ピョン シュタ
学者「木材しか積んで無いのを見せればなんとか見逃して貰えやせんかね?」
盗賊「いや…海賊ならむしろ木材が欲しいだろ」
学者「あらら…そういうもんなんすかね?」
戦士「ううむ…もしもドワーフ国の海賊船なら何もしてこない…望遠鏡が無いとどうにも確認が出来ん」
盗賊「向こうはこっちが見えてんだろ?こっちが何者か分かる様にすれば良いんじゃ無いか?」
学者「あ!!旗印っすね…そういやこの船は旗印が無いっす」
戦士「何も旗を掲げて居ないから只の商船だという認識になるのだよ…」
盗賊「それでも近づいて来るって事はやるしか無いか…」
戦士「仕方ない…備えよう」ダダ
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『1時間後』
ザブ~ン ユラ~
剣士「向こうの大砲は船尾の方に1台…後ろ向いてる!!」
戦士「どうやら海賊に間違いない…こちらに大砲が無いと知って追い越しを掛けて船首側から接近してくる」
盗賊「真後ろに居てどうして大砲を持って居ないと分かる?」
戦士「乗っている人数だ…大砲を1門使うのに4~5人必要なのだ」
剣士「向こうは10人以上居るよ!!」
盗賊「くそう!折角手に入れた俺の船に大砲なんぞ当てられたく無ぇ!!」
剣士「少し進路変えた!!右側から追い越して来そうだ」
盗賊「ようしやってやる…クロスボウ2台はゲスとリコルが使え!向こうが後方に居る内に俺らの方から寄せて行く」
戦士「先制するのか?」
盗賊「やらなきゃやられる!戦いはそういうもんだ…ミライ!!お前は監視台の上でしっかり観察しとけ!!」
剣士「分かったぁぁ!!」
盗賊「右に寄せて行くぞ?」グイ
グググググ ユラ~
盗賊「射程に入ったらじゃんじゃん撃ってけ!!」
学者「ほっほっほっほ…炉と油を持って来やしたぜ?」ドタドタ
戦士「炉で火を点けてからから撃つのか…」
盗賊「リッカ!!乗り込まれたらお前が敵を引き付けろ!!戦闘の準備だ」
女オーク「え!!?私が人間と戦う…の?」
盗賊「戦わなきゃ皆やられるぞ…黙って準備しろ」
女オーク「そんな…」オロオロ
剣士「姉さん!!向こうの船の人はやる気みたいだ…もう武器を振り回してる」
女オーク「分かった…」ダダ
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『海賊船』
バサバサバサ グググググ
海賊1「ぐへへへへ…あいつらビビッて船尾楼の上で立ちんぼだ…船ごと奪っちまうぞ!!」
海賊2「女が走り回ってるな?こりゃ楽しみだ」
海賊1「おい!!あいつらクロスボウ準備していやがる…ちぃぃ何処ぞの傭兵が乗ってるな?」
海賊2「この距離じゃ当たりゃしねえよ…そんな事よりお前等ぁ!乗り込む準備だ!!」
海賊共「うおぉぉぉぉ!!」バンバン
シュン! ストン! ボゥ…
海賊1「何ぃ!!火矢だと?」
海賊2「弓だ!!撃ってる奴を撃ち落とせぇぇぇ!!」ドタドタ
海賊1「馬鹿野郎!!こっから弓で届く訳無いだろう!!」
シュン! ストン! ボゥ…
海賊1「ええい!!火を消せ!!ゴルァ舵は何やってる!!距離開けろタワケ!!」
舵取り「向こうの方から近づいて…」グルグル ググググ
海賊2「水だ水!!海水でも何でも良い!!火を消せぇ!!」ドタドタ
シュン! ストン! ボゥ…
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『キャラック船_デッキ上』
ガチャコン バシュン!
学者「でっかい的なら結構当たりやすね?」ガチャコン
戦士「こちらの作戦勝ちか…」バシュン!
盗賊「休まないで撃て!!距離を開けられ始めてるぞ!!」
剣士「やったぁぁ!!見て!!帆の一枚が燃え始めてる!!」
盗賊「ヌハハこりゃ火消しに必死だな…ようし!!進路戻して振り切るぞ」グイ ググググ
学者「いやぁぁぁ…火矢なんて古典的な方法で結構いけるもんすね…」バシュン!
盗賊「まさか射程の長い火矢を使って来るとは思って居なかっただろうな…」
戦士「待て!!まだだ…こっちの火矢が届かない距離で並走している!!」
盗賊「なぬ!?まだやるのか?」
学者「あ…あ…あぁぁ…マズいっすね…大砲を触り始めやした」
盗賊「クソがぁ!!帆を焼かれてまだ食いついて来るか!!」
ドーン!! ポチャ
戦士「大砲1門…アレは3分置きに撃って来るぞ!!」
剣士「あの船…大砲を撃つと横にすごく揺れてる…」
盗賊「船底が浅いからあんな風になるんだ…そのまま転覆しちまえば良いのに…」
学者「ゆっくり追い抜かれて行ってやすぜ?」
盗賊「うむむ…どうする?」
学者「こっちに火矢がある事がバレてるんで近付いては来んっすよね?」
盗賊「転進して距離開ける!!ミライ!降りて来い!!帆を張り替えるぞ!!」
剣士「ええ?」
盗賊「この船の回頭性を今発揮する時だ!!お前は前の帆を張り替えろ!!リッカはメインの帆だ!!ゲス!!操舵変われ!!」
学者「へい!!」ダダ
盗賊「もうすぐ凪で風向き変わる…上手く風に乗って逃げる!!」ダダ
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『凪時』
ユラ~ ギシ
盗賊「ようし…この距離なら大砲も当てらんないだろう」
学者「風が無くなってお見合い…すか」
盗賊「陸から吹き下ろす風に変わる…それまで待ちだ」
少女「お前ーー!!腹減ったぞ!!」シュタタ
盗賊「ええい今忙しいんだ…スッ込んでろ」
戦士「アラン!!その子は風を読む…今来るぞ!!」
盗賊「なぬ!?」
ソヨ~
盗賊「ミライ!!帆で風拾って上手く回頭させろ!!沖へ向かう!!」
剣士「今やってる!!…ぐぬぬ」バサバサ
盗賊「リッカ!!メインの帆を張ってくれぇ!!沖へ逃げろぉ!!」グイ バサバサ
女オーク「むむむ…」グイ グイ バッサー
学者「このまま沖っすね?」グイ グググググ ギシ
戦士「おぉ…海賊船は回頭しない…」
盗賊「どうやら向こうさんは回頭させる為の帆を無くしてんだ…その分差が出る」
戦士「フフこれは逃げられそうだ…」
盗賊「よしよしよし!どんどん離れて行ってんぞ!!」
学者「兄貴ぃ!!帆船に慣れて来やしたね?」
盗賊「まぁな?後で反省会すっぞ!!色々足りない物が分かったからな」
少女「お前ー!!話聞いてるのか!!飯ぃぃ!!」
盗賊「ぬぁぁうるせぇな…ミライ!!帆を張り終わったら魚でも食わしておけ!!」
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『夜_バーベキュー』
ジュゥゥゥ モクモク
少女「はむ…」ガブ モグモグ
盗賊「まず足りない物が…クロスボウを設置するスタンド…これが有れば命中率が格段に上がる」
盗賊「それから篝火を焚く台…鉄板に余りあんだろ?どうにか工夫して作ってくれ」
盗賊「あとな?雨に備えて雨除けも必要だ」
剣士「あ!!雨だと火矢が使えないじゃない!!」
盗賊「雨で濡れている場合は油が有効になる…油でヒタヒタの矢を撃ち込むのもそれなりに効果が在る」
学者「濡れた所に油があるとツルッツルなんす…そこに上手く着火したら延焼も狙えやすね」
盗賊「まぁ兎に角…こっちの射程でどんだけ撃てるかがカギだ…もっとクロスボウが有れば良いんだが…」
学者「あの重クロスボウはガラクタを漁らんと中々手に入らんすね…骨董品すよ」
盗賊「無い物はしゃー無ぇ…今のでやりくりするだ…後何か気付いた事は無いか?」
戦士「帆角を調整する時に目印となる番号か何かを記してみたらどうだ?」
盗賊「おぉ確かに…どの角度で固定したいか…今の所それぞれの勘便りだな…」
盗賊「ようし!!それは俺がやるわ」
女オーク「こっちの船に火矢を撃たれた場合は?」
盗賊「ふむ…水の入った樽は消火用でバラけて配置したほうが良い訳か…」
剣士「マストの下にくくり着けたら?登りやすくもなるし」
盗賊「それで行くか…まぁ今晩はもう追っては来んだろうから明日明るくなったら準備しよう」
学者「いやぁ…よくよく考えたら良く凌ぎやしたねぇ…」
盗賊「決め手は帆が一枚燃えた事だな?」
戦士「その後こちらの小回りを活かして逃げ回る機転も良かった」
盗賊「帆の操作は体力使うのが難点だ…もう体がクタクタよ」
学者「さぁて!!夜の交代に備えて俺っちは先に寝るっす」スック
盗賊「おう!休んでおけ…しばらくは俺が見て置く」
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