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39.陰口


『10日後_河口の港町』



ガコン ギシギシ



航海士「到着やぁ!!おまんら降りてもかまんでぇ!!」


闇商人「アラン!宿はどうする?」


盗賊「寝泊まるのは船でも良いんだがどうせ情報収集すっからやっぱ宿だな」


闇商人「じゃぁ僕は大口の取引を済ませてから宿屋に向かうよ」


盗賊「分かった…荷はどうする?運ぶの手伝うか?」


闇商人「それはゴッツさん達にお願いしてる…というか大口の取引はゴッツさん達の物資だからね」


盗賊「ほんじゃ先に行くわ…ラスとマイは一緒に来い!!」


女ハンター「思ったより雪が少ない?」


魔法使い「この地域はツンドラ区域なので雪が少ないんだ」


闇商人「ハテノ自治領方面に北上するとどんどん雪が深くなるよ」


盗賊「寒いのは変わらんぞ…足元滑るから気を付けろ」


女ハンター「うわっ…」ツル


盗賊「桟橋から落ちんな?」


闇商人「じゃぁアラン!後で合流する!」ノシ




『街道』



ツルッ!



女ハンター「足元が凍ってて歩きにくい…」フラ


魔法使い「もう氷が溶けない時期になってるからね…雪が降るともう少しマシになるんだ」


盗賊「クッソ寒いが意外と人が出てんのな?」キョロ


魔法使い「そうだね?昔より少し多い…どうしたんだろう?」


女ハンター「そこら中で上がってる黒い煙は石炭を燃やしてる?」


魔法使い「うん…ハテノ自治領から石炭が沢山運ばれて来てるから暖には困らないよ」


盗賊「ここまで線路が繋がってたりするんか?」


魔法使い「いや…運ぶのは船だね…川の上流まで行き来してる」


盗賊「おぉ!!ほんじゃ船使って行ける訳か」


魔法使い「今時期はもう動かしてない…冬の間はお休みなんだ」


盗賊「ぐは…」


魔法使い「残念ながら陸路も行き来して居ないよ…トナカイが凍死してしまわない様にこの時期は小屋の中に入れる」


盗賊「どうやらキ・カイには行けんか…」


魔法使い「聞いた事無いから…」


女ハンター「辺境なのに結構船が出入りしてる理由は?」


魔法使い「ハテノ自治領から運ばれて来る硫黄とか石炭の取り引き…他に布とか薬草とか…」


盗賊「一応貿易港になってんのな…」キョロ


魔法使い「シン・リーンからも商船が入って来るから結構物資が揃ってる…でも少し危ない町」


盗賊「見た感じ人相の悪い奴が多い…」


女ハンター「アランもね?」ニヤ


盗賊「お前もだ!何言ってんだ…」


魔法使い「始めは2人共怖くて近付けなかったよ…今は慣れた」


女ハンター「私はそんなに怖い顔をしてると思って居ないけど…」ムッ


魔法使い「雰囲気…只者じゃ無い雰囲気」


盗賊「まぁそれで暴漢には合いにくい訳だから良いだろ」


女ハンター「…」ジロリ


盗賊「ヌハハ!宿探すぞ宿!!」




『宿屋』



ガチャリ ドン!



盗賊「どわっ!!何すんだゴラ!!」グイ


男「うぉっと悪い悪い…急に扉が開いたもんでな…腕を離しやがれ」グググ


盗賊「俺の懐からスった物を出してからだ」スラリ


男「何難癖付けて…」



グサ! ポタポタ



男「んん?何しやがった…」ポタポタ


盗賊「お前の腕にブッスリナイフが刺さったんだ…痛い目見たく無えならとっとと失せろ!!」ドガ


男「ぐあ!!」ゴロゴロ


盗賊「危無え危無え…金貨持って行かれちまう所だった」ジャラリ


男「んのヤロウ…」



スパッ ブシュー



男「な…なんだ?」ドクドク


盗賊「その怪我は早い所止血し無えと死んじまうぞ?」


男「い…痛く無え…クソ!!覚えて居やがれ!!」ダダ


女ハンター「…」チラリ


盗賊「悪いな?店の前をちっと汚しちまってよ」


店主「い…いえ…」タジ


盗賊「しばらく泊まりたいんんだが部屋空いてるか?4人だ」


店主「は…はい…2人用のお部屋を2つご用意出来ますが…」


盗賊「それで良い…多分10泊くらいだ…これで足りるな?」ジャラリ


店主「十分でございます…ではご案内します…こちらへ…」スタ




『小部屋』



…ではごゆっくり


ガチャリ バタン!



女ハンター「アラン…さっきの男…仕返しに来ると思う」


盗賊「ほんなん分かっとるわ」


女ハンター「ちょっと厄介かも知れない…あの男…鼻無しの傭兵だから」


盗賊「ロストノーズか…なんでこんな辺境に居るんだか…」


女ハンター「面倒毎になってしまいそう…」


盗賊「まぁこの部屋はタゲ逸らしに丁度良いだろ…俺らは船で寝泊まりすりゃ済む話だからな?」


女ハンター「宿代が勿体無い…」


盗賊「情報料だと思えば良い…あいつ等ソロで行動する事はあんま無いよな?」


女ハンター「無いと思う…仲間が沢山居る筈」


盗賊「こりゃ酒場が面白くなりそうだ」


女ハンター「ちょっと待って…ロストノーズが居ると言う事は電脳化の連中を追ってる筈…」


盗賊「ふむ…どっかに潜んでると思って行動せんとイカンか?」


女ハンター「アラン?機動隊と電脳化の連中との関係はどう思って?」


盗賊「分からんな…仲間割れみたいな感じだとは思うんだがな…機動隊の中は昔から意見対立してんのよ」


女ハンター「どんな対立?」


盗賊「機動隊はなんやかんやで色々失敗してるんだ…インドラシステムの喪失だの要衝攻略の失敗だの…」


女ハンター「じゃぁ電脳化の連中は機動隊から離れて別働するグループと見て間違い無い?」


盗賊「そこが分からん…マッチポンプにも見えてな…そうやって上手く扇動されてる様にも思う」


女ハンター「こう考えれば良い?…機動隊の思惑通りに動く様に電脳化の連中がロストノーズを誘き出してる…」


盗賊「今までの感じからするとそんな感じだ…当人達から全く情報が聞き出せんから憶測なんだが…」


女ハンター「仲間を囮に使う…」


盗賊「そう言うのも機動隊の中で分裂を生じさせる原因よ…仲間を危険に投じさせる訳だからな?」


女ハンター「何がしたいのかさっぱり読めない…」


盗賊「機動隊は徹底して機械化兵団の殲滅と破壊だ…電脳化の連中は裏でコソコソ工作…」


盗賊「ほんでここから憶測だがフィン・イッシュもシン・リーンも上手く扇動されて機械化兵団の殲滅に動員されてる」


盗賊「その隙を狙って異形の魔物達が動き出した…その裏に潜んでるのがルーデウスだ」


女ハンター「漁夫の利…」


盗賊「なんとなく見えて来たな?ロストノーズがなんでこの辺境に集まってんのか…」


女ハンター「ロストノーズは銃器を持ってる…もし異形の魔物の殲滅に失敗して銃器が奪われてしまったら?」


盗賊「…」


女ハンター「向こうの大陸は一気に異形の魔物に占拠されてしまう」


盗賊「まてよ…もしかするとシン・リーンの旧港町を占拠しようとした理由はそれかも知れん」


女ハンター「はなからロストノーズが異形の魔物側に付くつもりで?」


盗賊「マテマテ!!お前が20年前に鼻を削がれた時に乗ってた船の貴族は誰だっけか?」


女ハンター「髭男爵の弟アナール…ハッ!!」


盗賊「気付いたか?ムン・バイから戦車に乗って逃げたのもそいつ…つまりロストノーズを先に雇ってるのはそいつだ」


女ハンター「向こうの大陸が危ない…」




『夕方_酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



マスター「いらしゃいませ…3名様で?」


盗賊「おう!後でもう一人来るから4人だ…テーブル空いてるか?」


マスター「あいにくテーブルは予約が入って居まして…カウンターなら空いております」


盗賊「まぁ良いわ…テーブル空くまでカウンターで飲むわ」


マスター「ハハ…どうぞ」


盗賊「景気が良い様だな?」


マスター「お陰様で…お飲み物は?」


盗賊「ラス!マイ!何飲む?」


女ハンター「軽いので…」


魔法使い「私も…」


盗賊「エール酒だな…俺の分はボトルで頼む」ジャラリ


マスター「かしこまりました…」


盗賊「しかし結構人が居るな…辺境だと思ってたんだが…」


マスター「傭兵が集まって居るのですよ…何やら作戦が有るのだとか…お客様は傭兵では無いのですか?」


盗賊「俺等は只の行きずりよ…」


マスター「そうでしたか…一人はクロスボウ…一人は槍…傭兵に見えてしまいますねぇ」


魔法使い「私一応傭兵だけど?」


女ハンター「私もそういう括りになるのかも…」


盗賊「ヌハハそういや2人共俺達に雇われてる傭兵か…忘れとったわ」


マスター「酒場に来たと言う事は情報を集めに来た訳ですね?」


盗賊「まぁな?面白い話が聞けないかと思ってよ」


マスター「今は冬季で何処にも行けないですからねぇ…」


盗賊「他の傭兵はやっぱ船に乗って来てるんだよな?」


マスター「そうですね…近々ミネア・ポリス方面から大型の船が来るとか言う情報くらいですか」


盗賊「ほう?」


マスター「お客様はどちらからお越しで?」


盗賊「シン・リーンだな…ちょっとした買い付けで来たんだ」


マスター「それはあまり周りに言わない方が良いですね…向こうの冒険者はこちらで嫌われている物で…」


盗賊「なんでよ?」


魔法使い「ランカーだとか言って振る舞いが横暴だからよ」


盗賊「ヌハハなんかショボイ理由だな」


マスター「その冒険者の中ににシン・リーンの魔術師が居る事も有って誰も太刀打ち出来ないのが原因ですねぇ」


盗賊「なるほどな?」


マスター「エール酒…お待たせいたしました」コトリ


盗賊「おぉ飲むぞ…おいマスター!軽いつまみも頼む」


マスター「ご用意致します…」スタ


女ハンター「じゃぁマイ!乾杯」チン


盗賊「おいおい俺も混ぜろ…」


女ハンター「アランはボトルのまま飲むでしょう?」



ドタドタ ゾロゾロ


いらっしゃいませ!ご予約の?


そうだ…奥のテーブルだな?


はい!!座ってお待ちください



男「お…お前!!」


盗賊「んあ?」グビグビ


男「この野郎!!」


盗賊「なんだお前か…止血は済んだんか?」


親玉「おい…ここで揉め事は止せ…ドワーフと取引が出来なくなる」


男「むぐぐ…ん?」チラリ


女ハンター「…」シラー


男「ラ…ラシャニクア?」


親玉「なんだと?」ズイ


男「通りでヤケに危ない傭兵を連れてる訳か…」


女ハンター「構わないで…」プイ


親玉「ラシャニクア…どういうつもりだ?傭兵団を抜けたのに情報を聞きつけて来たのか?」


女ハンター「関係無い…そっちにはもう関わらないから」


親玉「戻って来ても良いのだ…お前の腕は評価している」


女ハンター「もう関わらないって言ったでしょう」


盗賊「おいおい俺の連れに勝手に構うな!失せろ!」


親玉「フフそれは失礼…行くぞ」スタ



ドタドタ ゾロゾロ


おい見たか?あのラシャニクアがクロスボウ装備してんぞ?


どうせ弾薬切れだ…仕入れに此処まで来てんだろ


ライフル無しか…地に落ちたなウハハハハハ



盗賊「おい…今の奴見た事無いんだが…」


女ハンター「ナンバー2…アランは知らなくても良い」


盗賊「なんだか気まずい感じになっちまったな」


女ハンター「あいつ等最低の男達だから耳を貸さないで」グビグビ


盗賊「…」---なるほど…嫌な思いをして来た訳か---





『1時間後』



ワイワイ ガヤガヤ



闇商人「あー居た居た…」スタ


盗賊「おぉカゲミ!取引はどうだ?」


闇商人「思った通りレーションは一瞬で売れたよ…布の買い付けが高くてねぇ…少しマイナスかな」


盗賊「武器の方は?」


闇商人「まぁまぁ売れてる…全部売り切るのは1~2週間掛かるかもね」


女ハンター「さっき少し小耳にしたけれど…弾薬なんか流通してる?」


闇商人「市場では見て居ないねぇ…硫黄と硝石…石炭は有るから作ろうと思えば作れるのかも知れないね」


盗賊「炉は売ってたりしないよな?」


闇商人「そう簡単には見つからないさ…でも…僕の勘でここには無さそう」


盗賊「やっぱそうだよなぁ…手詰まりだな…こりゃ」


闇商人「マイ?君が使うと思って少しだけど硫黄とか触媒を仕入れて置いた」スッ


魔法使い「ありがとう…これで炎の魔法も使える」


闇商人「アラン!君が持ってる金貨を預からせて貰って良いかい?」


盗賊「おう?どうすんだ?」


闇商人「残りの武器が売れない事にはしばらく資金が厳しくてね…買い付けが出来ないのさ」


盗賊「スリが居るから気を付けろ」ジャラ


闇商人「分かってるよ」


女ハンター「アランが持つよりトラブルになら無さそうで安心」


闇商人「もう何か起きたのかな?」


盗賊「俺がスられそうになってそいつをナイフでぶっ刺した…ほんで酒場の奥で飲んでる」


闇商人「アハ…あぁぁあそこのテーブルか」


女ハンター「あそこには構わないで…ロストノーズの連中だから」


闇商人「じゃぁ弾薬の情報はそこからなんだ?」


盗賊「どした?なんか怪しい事でもあるんか?」


闇商人「市場の表向きは何も無い…でも大抵裏が有るんだ…レーションが一瞬で売れたのも繋がって居そうだと思ってね」


盗賊「ほーん…」


闇商人「ちょっと明日から探りを入れて見るよ…もしかしたら弾薬の入手も出来るのかも知れない」




『夜_酒場の外』



ヒュゥゥゥ



闇商人「ラス遅いね…体が冷えてしまう…」ブルル


盗賊「外で待ってろと言うから待つしか無いだろう…」


魔法使い「火魔法!」メラ


闇商人「おぉ!!助かる…」スリスリ


盗賊「これどんだけ継続すんだ?」


魔法使い「燃やせる物が無ければ10秒程度…久しぶりだからちょっと試してみただけ」



ガチャリ バタン



女ハンター「ごめん待たせた」スタ


盗賊「話は何だった?」


女ハンター「ロストノーズに戻れって…断って来た」


盗賊「何回もしつこいな?」


女ハンター「どうせ私の体が目当て…薬打たれて自由効かなくさせられるの分かってる」


盗賊「そらもう関わらん方が良い」


女ハンター「マイも気を付けた方が良い…あいつ等女は誰でも従わせられると思ってるクズだから」


魔法使い「分かった…」


盗賊「ほんじゃお前等船に戻れ…俺はちっと仕事だ」


闇商人「あれ?宿は?」


盗賊「宿は囮で借り放しよ…まぁ俺が寒さ凌ぎに使う」


女ハンター「どうする気?ロストノーズには関わらない方が良い…あいつ等もライフル持ってるから」


盗賊「ほんなん分かっとる…ちっと情報収集するだけだ」


女ハンター「寒いから狙撃の援護なんかする気無い」


盗賊「わーってる…ちっと盗み聞きするだけだから俺に構わんで湯に入って寝ろ」


女ハンター「フン!!カゲミ!マイ!船に戻る」スタ


盗賊「じゃぁな?朝には戻る」ノシ




『翌日_キャラック船』



ザブン ギシギシ



女ハンター「…まだ帰って来ない」イラ


闇商人「寒いから船尾楼に入っておきなよ」


女ハンター「カゲミはこれから市場へ?」


闇商人「まぁね…仕入れも十分じゃ無いししばらくは市場と往復さ」


女ハンター「アランを見かけたら早く帰って来る様に伝えて」


闇商人「アランなら心配無いさ…珍しいね?君がそんなにイラつくなんて?」


女ハンター「…」---不要な情報を知られたくないだけ---



スゥ…



盗賊「よう…ぁぁぁクソ寒い」ガタガタ


闇商人「おかえりアラン!ラスが君の事が心配で寒いのに外で待ってたんだ」


女ハンター「ちょっと違う!!」


闇商人「ハハハじゃぁ僕は行って来るから用が有ったら市場の方で…」ノシ


盗賊「ラス…湯を沸かして無いか?」ガタガタ


女ハンター「今から沸かすのに少し時間が必要」


盗賊「頼む…体の芯から冷え切っとる」


女ハンター「とりあえず船尾楼の中に…」


盗賊「おう…」ヒョコ ヒョコ


女ハンター「足をどうしたの?」


盗賊「寒すぎて上手く動かせんのだ…」ヒョコ ヒョコ





『樽風呂』



ザブー モクモク



盗賊「どぁぁぁぁ熱ぃぃぃぃぃ」グター


女ハンター「まだ湯の温度が低いから足し湯が必要な筈…」


盗賊「熱く感じるのは体が冷え切ってるからか…お前も寒いだろう…小屋の中に入れ」


女ハンター「狭いんだけど…」


盗賊「凍えるよりゃマシだろ」グイ


女ハンター「…」


盗賊「しかしこの樽風呂に初めて入ったが…こりゃ天国だな」グター


女ハンター「それで?なにか情報は聞けて?」


盗賊「あいつ等よう…同じ宿屋に泊まってんのよ」


女ハンター「でしょうね…宿屋の入り口でゴタゴタしたのだから」


盗賊「俺等を付け狙ってる感じは無さそうだ…どうやらドワーフと取引が済むまでは大人しくしている様だ」


女ハンター「ドワーフって…ドワーフの海賊の事?」


盗賊「そこまで分からん…だが奴らのガレオン船がこっちに向かってるらしい」


女ハンター「ガレオン船…もしかして…」


盗賊「ヌハハ…どうやら縁が在りそうだ…フィン・イッシュ沖で一戦やった船だろう」


女ハンター「ほとんど地球の反対側なのに…」


盗賊「どういうルートで来てるか知らんがミネア・ポリス周辺で仲間乗せて来るんだとよ…ほんでここで補給だ」


女ハンター「じゃぁ先に来てる連中は調達?」


盗賊「だろうな?全部で6人…ライフルは持って無さそうだ…短銃は有るかも知れんが…」


女ハンター「目的はやっぱりシン・リーンへ向かう為?」


盗賊「口頭で話してるのを聞いただけだから詳しく分からんのだが地下でのゲリラ戦を想定している様だ」


女ハンター「奴らの得意な戦い方…」


盗賊「俺が思うに旧エルフの森南部にあるセントラルの秘密基地だろう」


女ハンター「そこに工作で潜入してる電脳化の者を追ってるという立場な訳ね」


盗賊「そういう事だ」


女ハンター「それって異形の魔物側に付いているという見立てになる…もっと言うとルーデウスの下」


盗賊「まぁそれぞれ思惑が有って誰が敵なのか分からんな…もしかすると電脳化の奴らも俺らの敵じゃ無いかも知れん」


女ハンター「電脳化の者は純粋に賢者の石を求めて暗躍している様に見えて来た」


盗賊「シン・リーンに賢者の石を作らせようとしてるのはそう言う事かもな?」


女ハンター「ルーデウスは向こうの大陸の覇権…やっぱり悪者はルーデウスに見えてしまう」


盗賊「じゃぁそこに汲みしようとするロストノーズから銃器を奪って置くと言うのは選択として有りっちゃ有りだ…」


女ハンター「そんな事出来る?」


盗賊「あのガレオン船に乗ってた大砲は旧式だった…つまり500メートルぐらいまでは寄れる」


女ハンター「私の狙撃…」


盗賊「うむ…船のマストを全部折っちまえば難破船になる…やるとしたらそういう封じ込め方だな」


女ハンター「何隻来るとか…何を積んでるとか…もう少し情報が欲しい」


盗賊「まぁどうせ2週間ぐらいは滞在するんだからその間に情報収集だな」


女ハンター「私もロストノーズに戻ると言う素振りを見せれば内側に入れるかもしれない」


盗賊「ダメだ!それは俺がゆるさん…元の男に抱かれる様な真似は止せ」


女ハンター「…」ドキン



---知られたく無い事を知られてしまったかも知れない---


---あの最低な男達に…何度も何度も---




『船尾楼』



ガチャリ バタン



盗賊「あぁぁぁ生き返った…ちっと俺は寝るわ」ドター


女ハンター「食事は?レーションあるけど…」スッ


盗賊「またソレか…まぁひと口かじって横になる…一緒に毛皮包まるか?」モグ


女ハンター「昨夜は良く寝たから結構」


盗賊「お前が居ないと寒いんだがなぁ…」バサッ


女ハンター「…」---いつの間にアランの女になったのか---



ドタドタ



航海士「アラン!寝るんかいな?」


盗賊「んあ?」


航海士「ちぃと狩りに行かんかと言いたかったんやが…」


盗賊「俺は眠たい…ラスとマイが暇してるから連れて行きゃ良いだろ」


航海士「それも良えなぁ…」


女ハンター「何を狩るつもり?」


航海士「トナカイを囲っとる小屋が何回もベヒモスに襲われとるらしいんよ」


盗賊「ほう?良い金稼ぎじゃ無えか…ベヒモスは角も牙も売れるし肉も食えるぞ」


航海士「ちっとデカいらしいんやが…俺が囮になるで雷魔法で動きを封じれば簡単やろ」


女ハンター「マイと相談してくる…」スタ


盗賊「ラス!!バヨネッタは出来るだけ使わないでクロスボウ使え」


女ハンター「分かってる…見られたく無いのでしょう?」


盗賊「分かってりゃ良い…下手に見せると奪いに来るかも知れんからな?」


航海士「ほな俺は装備整えて準備しとるで外で待っとるな?」


女ハンター「用意出来たら行く…」


盗賊「今晩の酒代頼むわぁ…俺ぁ寝る!!」ゴロン





『夕方_船尾楼』



ガチャリ バタン



闇商人「あれ?」キョロ


盗賊「んあ?」グター


闇商人「アラン一人かい?」


盗賊「おう…今起きた所だ」


闇商人「またベヒモス狩りに行ったのかな…」


盗賊「どういう事だ?」


闇商人「狩ったベヒモスを僕に処分してくれと言って何処かに行っちゃったんだ…まぁお金は後で良いか」


盗賊「ほーん…ほんじゃあいつ等上手く稼いでる訳か」


闇商人「大きなベヒモスだったからね…ちょっとした噂になってるよ」


盗賊「ほう?まぁバヨネッタ持ってりゃ大概の魔物は倒せるだろ」


闇商人「バヨネッタは使って居なさそうだね…多分魔法で上手く倒せてるのさ」


盗賊「そら結構なこって…ちっと腹減ったから酒場にでも行って来るわ」スック


闇商人「ベヒモスの肉が出回ってるから良い食事にありつけるかもね」


盗賊「おおおおお肉か!そうだ肉を食いたかった…ベヒモスはデカイブタだから結構美味い」


闇商人「僕は湯にでも浸かってゆっくりしておくから気にしないで行っておいで」


盗賊「そうするわ…今日は軽く食ったら戻るからそう伝えてくれ」


闇商人「うん…」





『酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



マスター「いらっしゃいませ…今日はお一人で?」


盗賊「まぁな?とりあえず酒をだな…あれ?」


マスター「はい…」


盗賊「だぁぁぁぁ金が無え!!」ゴソゴソ


マスター「はぁ…」


盗賊「ぐはっ…しまった…カゲミに金を全部渡したんだった…」


マスター「ええと…どうしましょう?」


盗賊「くそう!!出直すわ…」



スタスタ



親玉「これで良かったら飲んで行くか?」ドン チャプン


盗賊「んあ?俺は乞食じゃ無え」ジロリ


親玉「昨日の詫びだと言えば良いか?」


盗賊「ほーん…まぁ出直すのも寒いし…貰っとくか」


親玉「俺達は奥のテーブルで飲んでるから興味があったら話に入っても良いぞ?」


盗賊「興味が出て来たらな?」


親玉「ではこれで失礼する…」スタ


マスター「ハハ…良かったですねぇ…これワインですよ…まだボトルに半分以上残って居ますね」


盗賊「まぁ儲けた…」グビ プハァ


マスター「お客さんいつまでこの町に滞在を?」


盗賊「あと10日ぐらいか?商船なもんだからよ…荷物空で戻る訳にイカンくてな」


マスター「皆さん同じですねぇ」


盗賊「どういう事よ?」


マスター「この町は物価が高いから買い付けが上手く進まないのですよ…そのお陰でこうして繁盛してる訳ですが…」



ガハハハハ


あのラシャニクアがクロスボウで魔物と戦ってんのよ


弾薬売ってやると言えば又コロっと股開くかもしれんぞ?


いい加減その話は止めろ


戦場の女神が落ちたもんだ…只の梅毒持ちに成り下がりやがったグハハハ




盗賊「…」グビグビ ゴクン


マスター「一気飲み…ですか…」


盗賊「ちっと懐に何も無いもんだから帰るわ」


マスター「ハハ…又のお越しを…」


盗賊「うぃ…げふぅぅ…マズい酒だ…」ヨタヨタ




『キャラック船』



ドタドタ


切り開いた肉は船首楼に入れて置けば凍るやろ!!


角と牙は売れるから別にしておいて



盗賊「こりゃ…狩ったベヒモスを持って帰るつもりか?」


闇商人「そうだね…ここで売るより持って帰った方が良いと思ってね」


盗賊「ほーん…」


闇商人「帰って来るのが随分早かったじゃないか」


盗賊「俺はお前に金を全部預けてるの忘れててよ…」


闇商人「あーーーそうだったねゴメンゴメン忘れてた…今出すよ」


盗賊「今日はもう良い…船で飲むわ…ラスとマイは何処行ったのよ?」


闇商人「今2人で湯に浸かってる…丁度僕が入った後さ」


盗賊「やる事無くなっちまったなぁ…」


闇商人「情報集めは良いのかい?」


盗賊「そんな気も無くなっちまってよ…」


闇商人「じゃぁ今日はゆっくりして明日から狩りに行くと良い…ベヒモスが少なくなって今度はオーガが出て来そうなんだって」


航海士「そうなんや…オーガは群れとるで危ないらしい」


盗賊「牙が確か金貨6枚ぐらいだったな…小銭稼ぎに丁度良いか…」


闇商人「アランは弓を使うよね?」


盗賊「そうなるか…」


闇商人「サーペントの毒を仕入れておいてあげるよ…なんか安いんだ」


盗賊「どんな毒なのか知ってるか?」


闇商人「ええと…」


航海士「血液凝固や…オーガは食えんで丁度ええ!!」





『船尾楼』



ガチャリ バタン



女ハンター「あら?アラン戻ってたのね…」ホクホク


盗賊「今日はお前と寝ようと思ってな?」グビ プハァ


女ハンター「昼間十分寝たのでは?」


盗賊「暖も無しで一人で寒かっただけだ」


女ハンター「石炭は沢山あるのに…」


盗賊「そんなん焚きっぱなしでいつ死ぬか分からんだろうが」


女ハンター「まぁ良いわ…」スタ


盗賊「おい何処行くのよ?」


女ハンター「マイが戻って来て恥ずかしく無いの?…此処は皆が通る場所」


盗賊「そんなん気にした事無え」


女ハンター「私は気にするから」


盗賊「分かった分かった…ほんじゃ酒飲むの付き合え」


女ハンター「どうしたの?今日…なんか変…」


盗賊「うるせぇ…オラそこに座って飲め」


女ハンター「仕方ないわね…」ストン


盗賊「どうよ?今日の狩りは?」


女ハンター「マイの魔法が足止めで優秀…近距離からクロスボウをベヒモスの急所に当てて割と楽に倒せた」


盗賊「クロスボウ結構使えるだろ?」


女ハンター「ボルトを回収して使い回せるから経済的」


盗賊「止めはゴッツの斧だな?」


女ハンター「そう…一発で頭を割れる」


盗賊「ほんで明日からは俺がオーガを相手する訳か…」


女ハンター「え!?アランも一緒に?」


盗賊「その予定だ」


女ハンター「じゃぁ狩った獲物を運ぶのが捗る…」


盗賊「ぐは…その役か…」


女ハンター「ソリを借りると言う手も有りそう…兎に角獲物を運ぶのが大変なのよ」


盗賊「ソリがありゃもっと稼げそうなんか?」


女ハンター「イエティと一緒で血の匂いを嗅ぎつけて来るタイプの魔物に思う」


盗賊「定点狩りが出来そうな訳か…イメージ出来て来た」ファサ


女ハンター「あのね…勝手に毛皮に入れるの止めて貰える?重たいんだけど…これ敷物でしょう?」


盗賊「そう堅い事言うな…こうすりゃ暖かいんだ…ホレ酒だ!飲め」グイ


女ハンター「もう!!」ゴク




『数日後』



ドルァァァ ドサー



盗賊「ウハハハ!!今日も肉が大漁だぁ!!」


航海士「早う解体せんと硬くなってまうで」ドタドタ



スタスタ



闇商人「アラン!帰って来たね…待ってたんだ」


盗賊「んん?何か有ったか?」


闇商人「向こうの方…一番外れの桟橋…」ユビサシ


盗賊「お!?ガレオン船…」


女ハンター「ちょっとスコープで確認する」ゴソゴソ


闇商人「どうやらあそこで他の船から荷の積み替えをやってる」


盗賊「ほう?」


闇商人「弾薬が見つからない訳だ…元々海上取り引きだったというオチさ」


盗賊「売れたレーションはどうなってる?」


闇商人「行先は分からないけど…多分ガレオン船に積まれるだろうね」


盗賊「ラス!向こうの船の様子はどうよ?」


女ハンター「知った顔が何人も…ロストノーズ総動員で船に乗って居そう」


盗賊「こりゃ陸に居りてあんま顔を合わせん方が良さそうだ」


闇商人「ちょっと陸から離れた方が良いかもね…向こうはこっちの船の事を知ってる様だから」


盗賊「なぬ?」


闇商人「狩りで少し目立ってしまったからね…当然と言えば当然だよ」


盗賊「知ってるってのはどういう事だ?」


闇商人「見ての通り商船で物資が沢山積み込まれてる…肉とか石炭とか…硫黄も」


盗賊「そら襲われるという見方だな?」


闇商人「補給ってそういう事だったりするでしょう」


女ハンター「あいつ等なら考えそう…襲うつもりで泳がされてたのかも知れない」


航海士「なんや!!もう出港相談しとるんか?」


盗賊「てかゴッツ!ドワーフの海賊はどうなってんのよ?」


航海士「居らんのや…わざわざこんな寒い辺境までなかなか来ん様やな」


盗賊「ドワーフと取引がどうのこうの言ってたんだけどな…」


航海士「硫黄の取り引きの事や無いんか?ドワーフからやないと買えんからなぁ」


女ハンター「スナイパーライフルを持って居たらもう射程に入って居るからいつ撃たれてもおかしくない」


盗賊「ふむ…俺等を殺せばラスもマイも…カゲミもあいつ等のおもちゃにされそうだ」


航海士「船を出すんか?」


盗賊「しょうが無え…荷の積み替えやってる隙に距離置くぞ」


闇商人「布が量揃って居ないけど…仕方ないか」


盗賊「陸に置きっぱなしの物は無いな?」


闇商人「売れ残りの武器だけだね」


盗賊「ほんなんもうイラン!!碇上げるぞ!!」ドタドタ




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