36.古代人達
『数日後_デッキ』
ザブ~ン ユラ~リ
航海士「今何処に向かっとるんや?」ドタドタ
盗賊「おぉ動けるようになったか」
航海士「お陰様や…ガッツも直に来よるで?」
盗賊「ちっと船尾楼の隙間風が気になってたんだ…直して貰いたい」
航海士「ほんで何処に向かってて今何処に居るんよ?」
盗賊「行先は名も無き島だ…同緯度域を維持しながら西に向かってる」
航海士「ドワーフ領に行く気になったんやな?」
盗賊「まぁな?一応名も無き島がある場所は大体分かった…てかその場所知ってんだろ?」
航海士「そやな…海図に記す訳に行かんから俺に船頭を任せてもろうて良いか?」
盗賊「そら助かる」
航海士「デッキに出とって体が冷えたやろ?中に入っとっても良いで?」
盗賊「昼間船室に籠るのもどうも性に合わなくてよ…」
航海士「分かるわ…やがデッキに出るのは程ほどが良いで?」
シュタタ スタ
剣士「アランさん!!」
盗賊「おぉミライ!!元気になったみたいだな?」
剣士「なんとかね…ゲスさんに聞いたけど僕肝臓が凄い傷んでたみたい…大分良くなったよ」
盗賊「そら結構…あんま無理すんなよ?」
剣士「ねぇカゲミさんからこのミスリルナイフ渡されたんだけど…」スッ
盗賊「おうそれは俺が見つけた宝物よ…多分海賊王の娘アイリーンの忘れ物だ」
剣士「貰って良いの?」
盗賊「お前にやる…そのナイフで弓の加工をやってた様なんだ…お前なら使いこなせるだろ」
剣士「おおおおおお!!大事にしなきゃ…」
盗賊「ほんでミライが動けるならちっと頼みたい事が有ってな?」
剣士「何?」
盗賊「船首楼側の炉を焚いて肉か何か焼いて欲しいんだ…ここん所レーションしか食って無くてよう」
剣士「肉…肉…買ってない」
盗賊「ぬぁぁぁ!肉なしか…くっそトナカイ持って帰りゃ良かった」
剣士「魚ならいっぱいある…これ練り物にして肉みたいに焼いて見ようか?」
盗賊「ほう?とりあえずレーション以外の物を口に入れたい訳よ」
剣士「おけおけ!!姉さんと一緒に作って来る」シュタタ
盗賊「頼んだ!!」
『荷室』
ゴソゴソ ガサガサ
闇商人「アラン!何か探し物かい?」
盗賊「んあ?干し肉あった筈だろ」ゴソゴソ
闇商人「ハハ食べ物を探してるのか…干し肉はもうカチカチでスープにしないと食べられないよ」
盗賊「スープか…それでも良いな」
闇商人「僕が作ってあげようか?丁度僕も肉が食べたかった所さ」
盗賊「ミライが船首楼の炉に火を入れたからよ…ちっとマシな食い物をだな…」
闇商人「マイ!!君は料理が出来ると言って居たね?」
魔法使い「ハテノ自治領に伝わる御馳走なら…」
盗賊「おぉ!!それ頼むわ」
闇商人「この御馳走がなかなかイケるんだよ…殆どが芋なんだけどね」
盗賊「芋…まぁ良い…レーション以外の物が食えれば文句無え」
闇商人「香辛料は僕が隠し持ってるんだ…材料を持って船首楼の方に行こう」
魔法使い「ええと…アレと…コレと…」
盗賊「いやしかし積み荷が結構一杯だとは思ってたが…どんぐりやらキノコやら…」
闇商人「仕方ないねぇ…船をミライ君達に任せていたから補給した物はミライ君好みの物になってしまったのさ」
盗賊「お前マイって言うのか?」
魔法使い「あ…はい…」タジ
盗賊「荷室に籠って無いでちっとは外に出て来い」
魔法使い「いや…邪魔になるかなと思って…」
盗賊「ミライの傭兵なんだろ?ミライに付いて回わりゃ良いのよ」
魔法使い「あまりミライに構うとリッカさんが…」
盗賊「おっとそりゃ切実な問題だな?なるほど近付けんのか…ほんじゃゲスに付いて回れ」
魔法使い「ゲス…キモ!」
盗賊「だはははは…お前なかなかはっきり言うな?」
闇商人「アラン…まぁマイは同じハテノ自治領の出身だから僕が面倒を見るさ」
盗賊「そうだカゲミがもっと外に出りゃ良いのよ」
闇商人「マイ!付いておいで…船を案内する」スタ
魔法使い「うん…」スタ
『船尾楼』
チリーン
ロボ「ピポポ…」ウィーン
盗賊「おうロボ!機嫌良さそうだな?」
ロボ「ピピ…」チリンチリーン
少年「ふがーー!!」クルクル
学者「その鈴でフーガ君を操ってるの分かりやす?」
盗賊「舵輪を小僧にやらせてるんだな?」
学者「そーっすね…フーガ君はロボの手足になってくれてるっすよ…俺っちはもう舵握らんで良いっす」
盗賊「おーし!小僧…お前にコレをやる…デリンジャーだ」スチャ
少年「ふが?」??
盗賊「これでロボを守れ…もう二度と悪い奴に掴まるな…」ポイ
少年「うあああ…」パス
学者「フーガ君…その武器はめちゃくちゃ危ないんで気を付けて下せぇ…悪い奴にだけ使うんす」
少年「…」ボーゼン
盗賊「お前に任せときゃロボは安心だ…頼むな?」ナデナデ
少年「うがあああああ!!」
ガチャリ バタン
剣士「アランさん!!魚の団子焼いて来たよ!!」
盗賊「おお待ってた!!」
剣士「後でカゲミさんもスープを持って来るから美味しく食べられるさ」
盗賊「おーし!ほら小僧!!お前が先に食え…食って体力付けろ」
少年「あう!!」パクパク
学者「フーガ君食が出て来やしたね…」
盗賊「腹いっぱい食わして訓練するぞ」
剣士「アハ…なんか僕も食べたくなってきちゃったなぁ」
盗賊「食え食え!!食ったら甲板で立ち合いだ」
剣士「よーし!もう一回作って来よう…待ってて!!」シュタタ
学者「…」---兄貴の言葉は魔法…なんか分かって来やしたよ---
チリーン チリンチリーン
『食事後』
ゲフーーー
盗賊「あぁ食った食った…うぃー」
闇商人「…ふむふむ…それでミライ君達が倒したのは異形の魔物とリッチという魔物…」
剣士「うん…旧港町の憲兵と関わった様子は無いけど…何処かで繋がってると思う」
学者「異形の魔物が旧港町を襲いやすくする為に憲兵が働いていた感じっすね?」
剣士「きっとそうだよ…」
闇商人「連絡手段が何か有るのか…それとも予め襲って来るのに合わせて動いたのか…」
学者「目的が良く分からんすよね」
闇商人「電脳化の者の目的は多分賢者の石さ…それを突然入手したから急遽移動しようとしたんだ」
学者「異形の魔物とは組んで無いって事なんすかね?」
闇商人「さぁ?」
盗賊「マッチポンプだな…上手く異形の魔物を引き入れてシン・リーンに組み入るんだ」
剣士「僕はその邪魔になって居た感じかな?」
盗賊「今聞いた話ならそうなる…只分からんのが異形の魔物がなんで港町を襲うかだ」
闇商人「それは異形の魔物が旧セントラルの没落貴族と組んでたとすると港が欲しいと思う」
盗賊「港を占拠してどうすんのよ?」
闇商人「物流以外に考えられないね」
盗賊「ううむ…没落貴族…」
闇商人「ちょっと情報が足りないから盗賊ギルドで何か話が聞けると良いけどね」
女ハンター「ちょっと口を挟む…もしも異形の魔物に銃器が渡ったらどうなると思う?」
学者「弓じゃ無くて銃器っすか…手に追えんくなりそうっすね」
女ハンター「それを条件に電脳化の者が異形の魔物を動かしてる…」
闇商人「なるほど…出来ない話じゃない」
剣士「あれ?そもそも異形の魔物って何が目的だったんだろう?」
闇商人「エルフと戦って…あれ?なんでそうなる?」
剣士「エルフの目的は?」
闇商人「精霊樹を守る事だ…」
剣士「なんで?」
闇商人「精霊樹を守る理由…あれ?待てよ…」
学者「何か気付きやしたかね?」
闇商人「異形の魔物は地上からエルフを攻め切れない…だから武器が欲しい…港が欲しい理由になる」
剣士「エルフが精霊樹を守る理由から話が逸れちゃったよ」
闇商人「あぁゴメン…確かにその理由がちゃんと分からないね」
女ハンター「精霊樹が集中端末だと言う可能性は?」
闇商人「えええ!?又新説が出て来たな…」
盗賊「その集中端末を復活させるのにエルフが邪魔だってか…」
学者「あらららら?それなら話が全部通っちゃうじゃ無いすか」
闇商人「つまり異形の魔物に武器が行き渡ったら攻められるのはエルフ…」
学者「武器を手に入れる為に港が欲しい…」
盗賊「ムン・バイは既に奴らの手中だ…ほんで旧港町も手に入れたい」
闇商人「もっと手っ取り早いのはフィン・イッシュだよ…だからこのタイミングで軍隊が遠くに遠征したんだ」
盗賊「リカオンが慌ててフィン・イッシュに戻った理由か…」
闇商人「その手引きを没落貴族と電脳化の者がやっている…全部話が通ってしまうな…」
学者「な~んか俺っち思うんすが…旧セントラルの第3皇子ルーデウス…こいつ黒幕じゃないすか?」
闇商人「そんな気もするね」
学者「こっちの大陸の覇権を狙ってるとか…そんな理由で電脳化の奴らと組んでる気がしやすよ」
学者「そいつが魔王っす…魔王ルーデウス」
盗賊「あぁぁ聞きたく無え聞きたく無え!!俺は関係無えぞー!!」スック
女ハンター「…」チラリ
ガチャリ バタン
『甲板』
ザブ~ン ユラ~リ
盗賊「ぉぉぉやっぱ寒いな…」グビ プハァ
女ハンター「どうして話から逃げるの?」スタ
盗賊「んん?魔王の話なんざ聞きたく無えよ」
女ハンター「魔王から逃げる訳?」
盗賊「俺は相手になれる器じゃ無え…仲間守るのに手一杯だ」
女ハンター「魔王と言うのは比喩…分かってる?」
盗賊「あんま首突っ込んで仲間を危険に晒したく無え…俺一人ならまぁ良いがそうもならんしな」
女ハンター「話変える…名も無き島に行った後の予定は?」
盗賊「んんんん…あんま考えて無いんだが…用が済んだらリコルに会いに行く約束したもんだからな」
女ハンター「そう…」
盗賊「前にも言った事あるがホムンクルスの体をお前にもなんとか出来るかも知れんぞ?」
女ハンター「鼻の事?」
盗賊「お前が良いならっていう話だ」
女ハンター「アランはどう思ってるの?」
盗賊「俺はお前がお前ならそれで良い」
女ハンター「私はこのままで良い…これが私…」
盗賊「ヌハハそうか…酒飲むか?」チャプン
女ハンター「一口…」ゴク
盗賊「良いねぇ…酒付き合ってくれる奴はお前しか居無えな…」グビ プハァ
女ハンター「じゃぁ私にも付き合って」
盗賊「ん?何よ?」
女ハンター「次の扉を開けに行く」
盗賊「…」ジロリ
女ハンター「殲滅戦…地下での戦いなら慣れてる…武器が相手に渡る前に潰す」
盗賊「そりゃお前…魔王に戦いを挑むと言ってんだぞ?」
女ハンター「何故なら私はアイリーン一派だから…それが夢だったから」
盗賊「こりゃ驚いた…そうか…ううむ…只まぁちょっと待て」
女ハンター「どのくらい?」
盗賊「まずはロボを救う…俺は同時に色々こなせるほど器用じゃない」
女ハンター「一歩づつね…何処かで狭間に入ってしまいそう」
盗賊「お?上手い事言うな?まぁ今は情報が足りんのだ…下手に動くと色々見失う」
女ハンター「その結果が…あの憲兵が残した言葉…」
盗賊「友よ…去らばか…」
女ハンター「私はあの時ちゃんと話せば理解し合えるんじゃ無いかと思った」
盗賊「もう終わった事だ…奴らのせいで大勢の人間が死んでるのも事実…」
女ハンター「賢者の石を渡せば何か変わるのではとは思わない?」
盗賊「俺も考えてる…でもあの賢者の石は助けた小僧の大切な誰かだったのよ…渡せる訳無いだろう」
女ハンター「…」
盗賊「争いとはそんなもんだ…だから無くならん」
女ハンター「なんか嫌な世の中…」
盗賊「そこで生きて行かなきゃらん訳だ…出来るだけリスク回避してな?」
女ハンター「約束は守って貰うから…お酒に付き合った代わりに…」グイ ゴクゴク
盗賊「おいおい俺の酒だ!!一気に飲むんじゃ無え!!」グイ
女ハンター「飲むと少し寒さが無くなるのね?」
盗賊「だろ?ちっと体動かすか?」
ブン カーン!!
おおっと危無え…ちっと動きが見え見えだ
カーン カーン キーン
『立ち合い』
ヒュン ヒュン カン バシ!
魔法使い「ふぅ…」スチャ
盗賊「おお!!お前槍を結構使えるじゃ無えか!!」
魔法使い「ハテノ自治領では全員武器を使える様に訓練するから…」
盗賊「槍が一番得意なんか?」
魔法使い「槍が一番魔法と相性が良いんだ…先端に魔力の集中が出来る」
盗賊「やって見ろよ」
魔法使い「それはこんな立ち合いでやるのは危ない」
盗賊「くそう!見て見たかったな…」
女ハンター「次私が立ち会っても?」
盗賊「おう!行ってみろ…間合いに入るのが大変だぞ?」
魔法使い「ども…お願いします」スチャ
女ハンター「…」ダダ
カーン カーン バシ!
学者「なんか楽しそうな事やっていやすね?」
盗賊「ゲスもちっと体動かして行け!暖まるぞ?」モクモク
学者「なはは兄貴は湯気が出とるじゃ無いすか」
盗賊「マイが結構槍を使えるもんでな…あれで魔法とコンビが出来るならかなり良い線行く」
学者「ラスさん押されて居やすね?」
盗賊「ダガーじゃ槍に不利だ…でも良い訓練になる」
学者「いやぁぁマイさんは良く回りやすね?目が回らんのですかね?」
盗賊「槍を薙ぎで使うって所が玄人だ…ありゃ実戦慣れだな」
学者「ほんじゃそれなりに強いパーティに入ってたんすね」
盗賊「その辺聞き出しとけよ」
学者「あたたた…この間添い寝迫ったら嫌われたみたいでしてね」
盗賊「ぐは…それでキモイとか言われてんのか…」
学者「立ち合いでもう一回アタックして来やすかねぇ」
盗賊「おし!行って来い!!」バチーン
学者「あたたた…」
ダダダ
次俺っちが立ち合いやりやす
ゲッ…ゲス…
おなしゃーす!!
女ハンター「ふぅ…一発も当てられなかった」
盗賊「まぁ槍相手じゃしょうが無え…懐に入れんだろ?」
女ハンター「うん…どうやって戦えば?」
盗賊「体術使って崩して行くしか無いんだ…槍を振り回せんくするんよ」
女ハンター「体術…」
盗賊「お前は割と脚力が有るから飛び込んで肩を当てて行くだな…ちっと食らうが腕を掴んじまえば良い」
女ハンター「なるほど…」
盗賊「あんま体術に持ち込むと練習にならんから上手く混ぜて行け」
女ハンター「分かった」
ヒュン ヒュン バシ!!
あたたた…
嫌ぁぁ来ないでぇぇ!!
ビシ バシ!!
『船首』
トンテンカン トンテンカン
船大工「後は仕上げとくんでミライ君は荷室の樽を持って来るでがんす」
剣士「おっけー!!これで寒い思いしなくて湯に浸かれるね」
船大工「さっそく湯を沸かすでがんすか?」
剣士「始めに姉さんに入って貰いたい…小屋も温めておきたいさ」
船大工「じゃぁ湯を沸かしておくでがんす」
剣士「お願い!!樽持って来るよ!!」シュタタ
盗賊「おうおう…何作ってるかと思えば…こりゃ水浴び場か?」
船大工「そうでがんす…寒くてここが使えんかったんでちょっとした小屋にしたでがんす」
盗賊「またヘンテコな船になっちまったな…」
船大工「船首楼が少し大きくなったと思えば良いでがんすよ」
盗賊「荷室がビタビタにならんで良いと言えば良いか…」
船大工「此処は汚れた湯をそのまま流せば良いんで便利でがんす」
カーン カーン カーン
盗賊「んん?敵か!?」ダダ
船大工「えらいこっちゃえらいこっちゃ…」ドタドタ
『デッキ』
ダダダダ
盗賊「どうした!?」
女オーク「右方向に船が見えたわ」
盗賊「霧が張って見難いな…ラス!!見張り台上がってるか!?」
女ハンター「見えてる…軽キャラック!この船と同じくらい…海賊では無さそう」
盗賊「こんな所で行き違いか…向こうの動きは?」
女ハンター「帆を張って無い」
盗賊「なぬ!?」
女ハンター「船員も見えない…難破船?」
航海士「アラン!!どないするんや~!!このまま行ってええんか!?」
盗賊「何言ってんだ!お宝目の前に俺が素通りする訳無いだろう」
航海士「近付いてええんやな?」
盗賊「難破船だってんなら物資乗ってる可能性が高い…お宝探しだ!!」
学者「うひょーーー!!こりゃアゲアゲっすねぇ…ウヒヒヒ」
盗賊「おいゲスお前…なんだその顔は…」
学者「いやいや愛のムチって言うんすか?マイさんにボコボコにされてでしてね…」
盗賊「しょうがない奴だな…一応何が乗ってるか分からんからバヨネッタ装備しとけ」
学者「へいへい…マイさんお薬塗って下せぇぇぇ」ドタドタ
女ハンター「…」シラー
『難破船』
ガコン ギシ ギシ
航海士「接弦やぁ!!ロープ掛けやぁぁ!!」
船大工「がってん!!」ドドド
盗賊「あーーーーなんだこの海賊みたいなノリは…」
学者「まぁまぁ…元がドワーフの海賊なんでしょうがないっす」
盗賊「まぁ行くか!!ラスは船に待機だ…万が一の狙撃に備えてくれ」
盗賊「乗り込むのは俺とゲス…ほんでカゲミだな」
学者「あ…カゲミさん寝てるっすね」
盗賊「マジか…ほんじゃマイで良い付いて来い」
魔法使い「ええと…もしかしてゲスと一緒に?」
盗賊「お前等仲良さそうだろ」
学者「ウヒヒヒ…そうっすよねぇ…ヌフフフフ」
剣士「アランさん!僕も行って言い?資材が無いか見たいんだ」
盗賊「体の具合は良いんだな?」
剣士「大丈夫!良くなってる」
盗賊「まぁ4人か…まず生存者探すんだ」
剣士「うん分かったよ」
盗賊「よし行くぞ!」ピョン スタ
学者「マイさん行きやすぜ?手を…」スッ
魔法使い「う…」
学者「そんな照れんで下せぇ」グイ
魔法使い「嫌ぁぁぁ!!」ダダダ
『難破船の船尾楼』
ギシギシ…
盗賊「おっとこりゃ…」
剣士「座ってるのって…石造…もしかしてホムンクルス?」
盗賊「それしか考えられん…ゲス!!下の荷室行って他の奴居無いか見て来い…マイはその後を続け」
学者「分かりやした!!マイさんこっちっす」スタ
魔法使い「う…」
盗賊「ミライ!この船の傷み具合でどれぐらい放置したのか分かるか?」
剣士「半年から1年かな…帆を張り替えればまだまだ使える船だよ」
盗賊「場合によっては船を丸ごと頂きたい…布は余って無いよな?」
剣士「一応張り替える前の布は荷室に入ってる…でも小さいよ」
盗賊「ロープで引っ張るのは出来んのか?」
剣士「ちょっとガッツさんに相談してみようか?」
盗賊「頼む…」
剣士「聞いて来るね!」シュタタ
『荷室』
ドタドタ
盗賊「ゲスこっちはどうよ?」
学者「全部で6体…みんなベッドで横になったまま石化していやすね…」
盗賊「機動隊の兵装とか残って無いか?」キョロ
学者「何も無いっす…でも荷は結構色々残ってるっすよ」
盗賊「おぉ!!旧式だが大砲がある…荷室の側壁が開く訳か」キョロ
学者「武器類もそこそこあるんで並みの海賊並みには戦えたみたいっすね」
盗賊「この感じだと接弦させてドテッパラにドカンと当てるやり方でイケる…やっぱ欲しいなこの船」
学者「兄貴この船丸ごと持って行く気なんすね?」
盗賊「まだまだ使えそうだからよ…」
魔法使い「ねぇ…何か見た事の無い機械がある」
学者「どれっすか?」
魔法使い「これ…何だろう?」
学者「ムム!!本当っすね…」
盗賊「ゲスでも分からんという事は誰も分からんな…」
学者「これ全部調べるのに時間掛かりそうっすよ」
盗賊「やっぱどうにかして船を引っ張って行く様に考えんとイカンな…」
スタスタ
盗賊「おおカゲミ!!エライ物見つけたぞ!」
闇商人「その様だね…この船はホムンクルスの墓場かい?」
盗賊「見ての通りだ…だが機動隊の兵装は持って居なかった様だ」
闇商人「なるほどね…4000年前から箱舟に乗ってきた人には一般の人も居る訳だ」
盗賊「んん?訓練を受けた軍の関係じゃ無い奴らって事か?」
闇商人「状況的にそう見える…石化したのは賢者の石の寿命切れだろうね」
盗賊「一応頭部の機械は外しておくか…」
闇商人「いや…それはゴミだよ…形を保ったまま海にでも沈めるのが弔いだと思う」
盗賊「ふむ…こいつら賢者の石探して航海してたって感じか…」
闇商人「何処に行こうとしてたのか気になるね」
盗賊「船尾楼に日誌が有ったぜ?」
闇商人「見たよ…でも文字が違ってて読めない…解読するのは相当労力が要りそうだ」
盗賊「そら残念だ…」
学者「いまちっとピーンと来たんすけど…」
盗賊「言ってみろ」
学者「キャラック船と言えば旧セントラルが良く使ってる船じゃないすか…」
闇商人「そうだね…昔は商船でも良く使われて居た様だよ」
学者「没落貴族の中にもうずっと昔からホムンクルスが混じってたんじゃないすか?」
闇商人「なるほど…」
学者「その時代から色々知ってるもんだから貴族の地位になってた…」
学者「ほんでその当時貴族が何をしようとして居たのか?…聞いた話だとドリアードっていう植物と一体化っす」
学者「それってつまり生き残りじゃなかったんすか?賢者の石の代わりに…」
闇商人「面白い…その仮説だと没落貴族と電脳化の者の繋がりを説明できる」
学者「中にはこうやって身内だけで賢者の石を探しに出た人も居る…寿命尽きちまいやしたが」
闇商人「根底に有るのはホムンクルスの寿命だね…賢者の石のエネルギー切れと言った方が良いか」
盗賊「そらつまり賢者の石一個でそいつらの多くが救われるって事か…」
闇商人「4000年の時を超えて生き抜いたホムンクルスの命が今尽きかけてる…」
学者「いろいろ事件を起こす動機としては十分だと思いやす…仲間の命なんで」
闇商人「逆にその弱みに僕達の側が付け込んでしまって居るのかもね…例えば国同士の取り引きで…」
盗賊「具体的に誰だと思ってる?」
闇商人「ルーデウス…」
学者「俺っちもなんかそう思いやす…なんも証拠無いんすが…」
『甲板』
ギシギシ
航海士「しっかりロープ張れや!!」グイグイ
女オーク「フンッ!!ムムム」グイグイ
航海士「そうやそうや!!船と船をしっかり接弦させるんや!!」
船大工「そのまま保持しておいて欲しいでがんす…」ドタドタ
航海士「はよせいや!!」グググ
トンテンカン トンテンカン
船大工「放して良いでがんすよ…あとはマスト間にロープ張ってしっかり突っ張れば一先ず連結でがんす」
剣士「マスト上がるのは僕が言って来る!!」シュルシュル
船大工「全部のマストを均等に突っ張るでがんす!!」
剣士「おっけー!!」
航海士「次俺はどうすれば良いんや?」
船大工「木材切って渡し板作るでがんす…3つぐらいあれば強度の補強にもなるでがんす」
航海士「ほな木材持って来るわ」ドスドス
ドタドタ ゾロゾロ
盗賊「おお!仕事早いな…こりゃデカイ双胴船か…」
剣士「即席だよ…嵐に耐えられる強度じゃ無さそう」
盗賊「これで2隻とも移動は出来るんだろ?」
剣士「ガッツさんが言うにはこれが一番現実的だって」
盗賊「これ舵はどうなる?」
剣士「両方操作しなきゃいけないからちょっと大変だね」
盗賊「なるほど…誰かこっちに乗らにゃイカンか」
闇商人「あぁ僕がこっちに乗っても構わない…色々調べたい事も有るしね」
魔法使い「良かったら私もこっちに…」
学者「ええ!?そら危ないんで俺っちもこっちに乗りやす」
魔法使い「危ないと言うなら向こうに乗る…」
盗賊「おいおい面倒くさいなお前等…カゲミは良いがお前等は2人ともダメだ」
魔法使い「ぐぬぬ…」
剣士「僕と姉さんがこっちに乗ろうか…船の補修もあるし」
盗賊「それが良かろう…最低限カゲミが凍えん様に暖も必要だ」
剣士「任せて!なんか物資が結構乗ってたから色々できる」
盗賊「ほんで船の連結はまだ掛かるんか?」
剣士「うん…あと2~3時間は掛かると思う…あちこち補強が必要だし帆も張らなきゃ」
盗賊「そうか…まぁ俺は暇になるから湯でも沸かしとくわ」
剣士「あーお願い!作業終わったらみんな湯に浸かりたいよね」
盗賊「とりあえず積もってる雪を運ぶか…この雪を溶かして湯にするんだよな?」
剣士「うん!!飲料用も作って置いて貰えると良いかな」
盗賊「おーし!ゲス!!後の探索は任せた!!」
学者「へ~い!!はいはいマイさん船首楼の方を調べに行きやしょう」グイ
魔法使い「ちょ…手を握らないで…」ゾゾゾ
『難破船の船尾楼』
ガチャリ バタン
盗賊「いようカゲミ!湯を沸かしたんだ…リッカの次に浸かれるぞ?」
闇商人「あぁ今忙しい…ラスかマイに行って貰ってよ」
盗賊「そうか…てか何か発見したんだな?」
闇商人「書物だね…ちょっとビックリ事実が書かれててね」
盗賊「んん?なんか俺らに関係しそうなんか?」
闇商人「ギンジャール家…君に分かるかな?」
盗賊「ああああ…確かリカオンの天敵の…ええとなんつったっけな…そうそうシルヴァ・ギンジャール」
闇商人「僕はその人を知らないんだけど…どうもギンジャール家はホムンクルスに関わって居る様なんだ」
盗賊「ほう?」
ホムンクルスは脳の機械の中に有る賢者の石がないと石化してしまうのは分かって居るよね…
それはつまり子孫を残せないと言う事なんだよ
仮に生まれて来ても母親から血液の供給がなくなってしまうとその子は石化してしまう
でもギンジャール家は人間とホムンクルスの間に子供を授かる事に成功していた様なんだ
その子はホムンクルスの遺伝子を引き継ぎながら石化しない能力を獲得していたのさ
盗賊「ほーん…それがシルヴァ・ギンジャールか?」
闇商人「いやいやその人は置いておいて…」
実は僕の近くに居たんだよ…ハテノ自治領の方にさ…
その子は生まれながら足が不自由で貴族の中で忌み嫌われる存在になってしまったんだ
そして孤児院を巡って辿り着いたのがハテノ自治領さ…まだそこに居る筈なんだよ
ここにある書物は日記みたいな物だ…その子の親がこの船に乗って居たのさ
盗賊「今の話からするとホムンクルスが繁殖出来る可能性を言ってるんだな?」
闇商人「そうだね…彼らは人間と交配する事で新たな命を得る事が出来る…その一人目がハテノ自治領に居るのさ」
盗賊「ふむ…ギンジャール家…キ・カイ王家に嫁いだ貴族か」
闇商人「キ・カイの中で自由に動き回れる地位獲得の為だね…多分機動隊の基礎を作った組織に思う」
盗賊「この船はギンジャール家の物か?」
闇商人「残念ながらそれは断定出来ない…只ギンジャール家の中の誰かが乗ってた…この日記の持ち主だろうね」
盗賊「生まれながら足が不自由…そういやキ・カイの孤児院に居た気もするな…」
闇商人「君も会った事が有るか…実はカイネさんがしばらく面倒を見て居たんだよ」
盗賊「お袋が…」
闇商人「足が動かない原因も調べてた…当時は分からなかった様だけど今何となく分かったよ」
盗賊「石化か…」
闇商人「だろうね?全身じゃなくて一部だけの石化で済んだ…これで説明できる」
盗賊「待てよ待てよ…シルヴァ・ギンジャールはフィン・イッシュ女王と一緒に幽霊船に扮してどっか行った」
闇商人「あ…そうか…」
盗賊「つまりだ…電脳化の奴らと繋がってそうな奴が女王のすぐ傍に居る訳だ」
闇商人「ああああ!!思い出した…女狐のお銀…シルヴァの事か…裏の世界で裏切者の汚名がある」
盗賊「こりゃリカオンに報告する案件だな」
『巨大な双胴船』
バサバサ グググググ
航海士「帆を順番に開くんやぁ!!」ドドド
船大工「がってん!!」ドドド
盗賊「おぉ動き始めたな…なんか手伝うか?」
航海士「連結具合を試しながらの帆走やから手を出さんでええ!!」
盗賊「そうか…ほんじゃまぁ見とるわ」
航海士「そやそやおまん今どの海域に居るか把握しとるか?」
盗賊「もう分からんくなった…なんでよ?」
航海士「この海域は遥か昔の幻影が残っとる海域で知らんで来ると迷うんや」
盗賊「ほーん…」
航海士「ここに来る船は大抵名も無き島を探して迷うんよ…あの難破船もそうやと思うてな」
盗賊「んん?じゃぁ石化した奴らは名も無き島を目指してたって話になるか?」
航海士「多分そうやな…航路がまだバレとらん様やがちっと用心せなアカン」
盗賊「ほほーう…良い話が聞けたぜ」
航海士「ほんでな?もうしばらく行ったら幻影が見え始めるで?」
盗賊「そら楽しみだ」
航海士「それをノードライン言うてな?先に行っとくが目まいで倒れる事があるから気を付けるんや」
盗賊「突然目まいが起きるってか?」
航海士「ううむ…なんちゅったらええんやろ…突然時間が巻き戻る感じや」
盗賊「まったく分からんヌハハ」
航海士「あまり騒ぐなや?」
盗賊「みんなにそう言っとくわ」
航海士「ほんならおまんらはゆっくりしとき…帆走は俺らに任せるんや」
盗賊「おう!!」




