3.盗賊ギルド
『数日後_キャラック船』
ザブ~ン ユラ~
学者「兄貴ぃぃ!!多分アレっすね!!」
盗賊「おぉぉやっと見つけたか…」
学者「良かったっす…やっと宿に泊まれそうっすね」
盗賊「やっぱ海図も羅針盤も無しじゃダメだな…地庄炉村に着いたら最優先で探すわ」
学者「これ勝手に入船出来るんすか?」
盗賊「知らん!!行ってみるしか無いだろ」
学者「そこらへん知ってる水夫も雇った方が良さそうっす」
盗賊「だな?お前金はどの位持ってる?」
学者「銀貨で400枚ぐらいと…金貨20枚って感じっす」
盗賊「結構持ってんな…俺は金貨15枚だ」
学者「もしかして俺っちの金をアテにして居やす?」
盗賊「帆が傷んでんだろ?張り替えにどんだけ掛かるか相場観が無いんだ…足りんかった場合はアテにする」
学者「盗賊ギルドの支援ってどんな感じか分からんのですか?」
盗賊「分からん…てか俺は姉御とあんま話せて居ないのよ」
学者「盗賊ギルドにどんな利が有るのか分からんすね…」
盗賊「ソレだソレ…どういう話になってるのかさっぱりな訳よ」
学者「もしかすると盛大に空ブルかも知れやせんね?」
盗賊「その場合は自力でフィン・イッシュまで行くだな」
学者「…この船で行けると思いやす?」
盗賊「まぁ海図と羅針盤がありゃ何とかなんだろ」
学者「雇う水夫次第になりそうっすね…」
盗賊「とりあえずだな…ここは布の産地で安く買える筈なんだ…ボロキレの帆を何とかすりゃ多分行ける」
学者「そんな簡単に思えんのですが…」
盗賊「おーし!!桟橋のど真ん中行くぞ!!降りる準備しとけ!!」
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『地庄炉村』
ザワザワ
ありゃ何処の商船かいな?
久しぶりに大きな船が入って来た思うたら荷を積んどらんらしいで?
学者「兄貴遅いっすねぇ…」
剣士「なにかトラブル有ったのかな?」
学者「船を調べられてるっすね…あ!!出て来やした」
剣士「なんか怒ってるね…大丈夫かな?」
タッタッタ
盗賊「クソがぁ!!要らん金取られちまった…」ブツブツ
学者「兄貴ぃ!何か有ったんすか?」
盗賊「商工会に入って居ない船は停泊するのに1日金貨2枚なんだとよ!!ほんなん知らんわ!!」
学者「うはぁ…高いっすね」
盗賊「おまけに空の荷室見て苦笑いしやがった…くそう!!」
学者「でも船を盗まれんで済みやすよね?」
盗賊「ううむ…傭兵雇ったと思えってか…にしちゃ1日金貨2枚は高い!」
学者「そうっすねぇ…長居出来んすねぇ」
盗賊「そうだ!!さっさと用を済ませて出て行くぞ」
学者「とりあえず今日は宿に入りやすよね?」
盗賊「悪いがお前の払いで頼む…俺はこの後海図と羅針盤買いに行かなきゃならん」
学者「宿は任せて下せぇ…そんで集合はどうしやす?」
盗賊「リコリコって言う酒場があるらしいんだが…そこで集合だな…適当に夕飯食っとけ」
学者「分かったっす…リッカさんとミライくんは俺っちと一緒で良いっすね?」
盗賊「おう!!ロボは俺と一緒だ」
学者「じゃぁ2人共一緒に行きやしょう…」スタ
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『宿屋』
ガチャリ ギーー
女将「あら?定期便が飛んで行ったばかりなのにお客さん?」
学者「どもども…部屋空いてるっすか?5人なんすけど…」
女将「丁度空いたばかりの部屋がありますよ…2人部屋が2つですがよろしい?」
学者「それで良いっす…一泊いくらっすか?」
女将「一部屋銀貨5枚なので合わせて10枚です…食事はどうされますか?」
学者「他で食べるんで要らんっす」
女将「ええと…少し片づけるので待って貰ってもよろしい?」
学者「分かりやした…銀貨10枚…ここに置きやすぜ?」ジャラリ
女将「水浴びは自由ですのでお待ちの間にどうぞ…湯がありますよ」
学者「おおぉぉ!!そら良いっすね」
剣士「姉さん!湯に入れるんだって!一緒に入ろう!」
学者「ええ!?良い年して一緒に入るんすか?」ジロ
剣士「なんで?ダメなの?」
学者「いやいや…別に良いんすが…」
剣士「先に入って来て良いかな?」
学者「まぁ好きにして良いっすよ…次俺っちも入るんで早くお願いしやす」
剣士「よし!行こう!」グイ
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『30分後』
ホクホク
剣士「はぁぁぁ…久しぶりに湯に浸かったよ」
学者「もどって来やしたね?部屋の準備が出来たみたいなんで休んでて良いっす」
剣士「何処かな?」
女将「ご案内します…こちらです」スタ
学者「後で呼びに行くんでゆっくりしてて下せぇ」
剣士「うん…姉さん!!宿屋なんて初めてだね…2人部屋だってさ」
女オーク「そうね…」
剣士「あぁぁワクワクするなぁ…」
女将「…こちらです…ではごゆっくり」スタ
ガチャリ バタン
剣士「へぇ?こんな風になってるんだ…ベッド…2つだね?」
女オーク「どっちが良いの?」
剣士「そんな…1つで良いに決まってるじゃない」ドサ
女オーク「ふぅぅぅ…気持ち良かった」ドサ
剣士「まだ時間が有るからあとで買い物に行こうよ…アランさんに金貨1枚貰ったんだよね?」
女オーク「無駄遣いはダメよ?」
剣士「分かってるさ…ここは布の産地だから姉さんの着替えを選んであげる」
女オーク「今ので十分よ」
剣士「ダメだよ…僕も姉さんを自慢したいのさ」
女オーク「人に見せられる姿では無いって自覚してる…」
剣士「そんな事無い…まぁ僕が選ぶから楽しみにしておいて」
女オーク「分かったわ…」
剣士「なんか落ち着かないなぁ…」ソワソワ
女オーク「抱っこして欲しいの?」
剣士「いつものして良い?」
女オーク「ダメよ直ぐにゲスさんが来るから…」
剣士「まだ来ないよ…」グイ
女オーク「もう…」
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『酒場リコリコ』
ワイワイ ガヤガヤ
金の鉱脈…そろそろ枯渇してるかも知れんなぁ…
硫黄がまだ少し掘れるだけ良いべ!!
錬金術師が居らんくなったで鉱石から金を抽出も出来んしなぁ…
盗賊「いよう!待ったか?」
ロボ「ピポポ…」ウィーン
学者「あ!!遅かったっすね…もう食事食い終わっちまいやしたよ」
盗賊「俺は酒が有れば文句無ぇ…お!?リッカどうしたその格好!!」
学者「なんかミライ君に買って貰ったらしいっす」
盗賊「良いじゃ無ぇか…ミライ!良い着替え選んだな?」
剣士「ここは布だけじゃ無くて染料も有名だったんだね…」ガブ モグモグ
盗賊「お…おぅ…それより何だ?ナッツ食ってんのか?」
剣士「ナッツはタダで食べられるんだってさ」ガブ モグモグ
女オーク「…」パクパク
盗賊「ヌハハハ!タダと聞いて食いまくってる訳か」
学者「タダっちゅうか…酒を注文したらの話なんすが…」
盗賊「何飲んでんのよ?」
学者「コブラ酒…頼んじまいやしたぜ?」
盗賊「何だ俺抜きで頼んだのか…ほんで?何かアクセス有ったか?」
学者「無いっすね…」キョロ
盗賊「まぁ良い!俺もそれ頼むわ」
学者「マスター!!コブラ酒追加っす」
マスター「あいにく3人分で終わりですね…珍しい酒なもんで」チラリ
盗賊「ぬぁぁぁ…じゃぁ他におすすめは何だ?」
マスター「芋酒…」
盗賊「まぁそれで良い!ボトルで頼む…いくらよ?」ジャラリ
マスター「これくらいで…」スッ
盗賊「ほぉ?割と安いな…ようし!やっと酒に有り着けた…早くクレ!」
マスター「どうぞ…」ゴトン
学者「ところで海図は調達出来やしたかね?」
盗賊「こっちの大陸の分はな?フィン・イッシュまでの海図はここじゃ手に入らん様だ」グビ プハァ
学者「それじゃ行けんじゃ無いっすか…」
盗賊「まぁ金が無くなりそうだから一度船でバン・クーバーまで戻っても良いけどな」グビグビ
学者「それが手堅いっすね…姉御と合流出来やすしね?」
盗賊「となると…手ぶらで戻るのも勿体無ぇから商船もどきの買い付けをしなきゃいけない訳だが…」
学者「地庄炉村で安い物と言うと…布と金鉱石…あと何っすかね?」
盗賊「う~む…ナッツか?…てか金鉱石を買ったら他に何も買えん気もするな」
マスター「お客さんは何処からこちらへお見えで?」チラ
盗賊「キ・カイから船で来たのよ…ちょっとした用事でな?」
マスター「ハハあの氷山を抜けて来たと?」
盗賊「まぁな?ここはキ・カイに比べりゃ天国よ…酒も飲めるしな?」グビ プハァ
マスター「今地庄炉村では大き目の商船がなかなか入って来ないので木材が掃けないで困ってるんですよ」
盗賊「おぉそういや切り揃えた木材が山積みになってたな?」
マスター「もしかして波戸場に停泊してる大き目の商船はお客さん達の船で?」
盗賊「そうだ…俺らに木材を運んで欲しいってか?」
マスター「いやいや…私は只の酒場のマスター…運んで欲しい人を知って居るだけですよ」
盗賊「そりゃ儲かる話なんか?」
マスター「なんとも言えませんねぇ…一応話を通してみましょうか?」
学者「兄貴ぃ…目的が逸れちまいやせんか?」
盗賊「まぁどうせバン・クーバーに戻るなら荷物満載で戻るのが良いだろう…話だけは聞いても良い気がするな」
マスター「宿泊している宿をお教え頂ければ使いを向かわせても良いですが?」
盗賊「ゲス!!説明しておけ!!ちっと俺はその辺の他の店で噂話でも聞いて来るわ…ロボ!行くぞ」スック
学者「分かりやした…俺っちはこの後どうしやす?」
盗賊「久しぶりに酒場に来てるんだ…自由にして良い!一応遊女も居る様だ」
学者「そうっすね!!リッカさんとミライ君も自由にしてて良いっすよ」
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『村道』
スタスタ…
盗賊「ふむ…今のが盗賊ギルドからの接触だな…」
ロボ「ピポ?」
盗賊「俺が来る前から監視されてんのよ…確かに他の客には気付かれん様にして居る」
盗賊「まぁ大体話は読めて来た…運びたいのは木材…ほんでどうせ監視役で商人に化けた誰かが同行する」
盗賊「だが…向こうにどんだけ利が有るのかイマイチ分からん」
盗賊「その辺の話は多分これからだな…さてどう来る?」
盗賊「宿屋で待って居た方が良いか…」
盗賊「ううむ…使いを夜間に寄越すとは考えにくい…もう一日待つのは金が勿体無いしなぁ…」
ロボ「ピピピ…」プシュー バタバタ
盗賊「んん?どうした?」
ロボ「ピピ…」ウィーン ユビサシ
盗賊「お?ヌハハなんだありゃ…仁王立ちしてんじゃ無ぇか…」
少女「おい!!お前!!」ズイ
盗賊「おっとぉ?…嬢ちゃん何か用か?」
少女「例の手紙は持って来ているか?」
盗賊「何の話よ?」
少女「とぼけるな!手紙を交換すると言ったのはお前達だろう?」
盗賊「ええと…悪りぃ!何の話か分からん」
少女「じゃぁ援助しないぞ」
盗賊「誰と援助交際する約束したが知らんが俺は人違いだ…」
少女「ニーナ…」
盗賊「なっ何!?姉御と?って事はお前が…」
少女「手紙を渡せ!」
盗賊「ちっと待て…声がデカい…手紙の話は聞いて居ない…てか姉御は戦場で負傷してここに来れなかったんだ」
少女「ちっ…先にやられたか…」
盗賊「おいおいどういう話か分からんのだが…もう少し分かる様に教えてくれ」
少女「秘密の手紙だ…それを持って居たからやられたんだ」
盗賊「なんだと!?姉御は今ミネア・ポリスで療養している筈だ…直にバン・クーバに戻って来るだろう」
少女「それは本当か?」
盗賊「間違い無ぇ…姉御は必ず帰って来る」
少女「明日の朝もう一度ここに来い…帰って相談してくる」
盗賊「お…おう…」---まさかこんなガキが盗賊ギルドに居るのか?---
少女「約束は守れよ!!」ピョン クルクル シュタ
盗賊「うぉ!!飛んだ…マジか…」アゼン
ロボ「ピポポ…」アゼン
盗賊「…なんか気のせいか濡れた犬の匂いが…」クンクン
盗賊「しかし…秘密の手紙か…気になる話だ」
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『宿屋_2人部屋』
ガチャリ バタン
学者「あら?兄貴もう帰ってたんすね…何してるんすか?」
盗賊「姉御の作った計画書を読み直してんだ…くそう!日付が無ぇ…」
学者「どうしたんすか急に?」
盗賊「盗賊ギルドから接触が有ったのよ…どうやら姉御が持ってる秘密の手紙というのが支援の条件らしい」
学者「手紙…」トーイメ
盗賊「お前何か知ってんのか?」
学者「あのっすねぇ…半年前の出来事なんすが…負傷した機動隊が持ってた白黒の書簡を姉御が持って行ったんす」
盗賊「なんだと!?詳しく話せ」
ニュー・ヤーク要衝攻略作戦の時っす…俺っちはかなり後方の衛生部隊に居たんすよ
すこし前方の砲兵部隊に居た姉御がっすね…負傷したその機動隊員を担いで俺っちの所に来たんす
左側頭部に銃創があって瀕死でした
俺っちは装着している兵装を全部脱がせて救急の処置をしてんすが
所持品の中に白黒の縞々が掛かれた書簡らしい物があったんすよ
姉御はそれを見てその書簡と機動隊員のドッグタグを持って行ったんす
学者「その後医療部隊の精鋭達が俺っちに変わってその機動隊員を何処かに連れて行きやした」
盗賊「…」
学者「兵装だけ残ったもんでこっそり頂いた訳なんす…」
盗賊「左側頭部というのは耳の後ろか?」
学者「そうっすね…多分アレっすよ…噂になってる電脳化した奴っす」
盗賊「ちぃぃぃ…機動隊の中に紛れ込んでる証拠を姉御が掴んだ訳だ…お前それが分かってて姉御をほったらかしにしたのか!」
学者「いやいや姉御はそれを上層に報告に行くのだとばっかり思って居やした」
盗賊「上層の何処に電脳化した奴が紛れてるか分からん!!だから組織と関係の無い盗賊ギルドに情報を渡そうとした…」
学者「そうも考えられやすね…今となってはなんすが…」
盗賊「くそう!今姉御が行った戦線は先月特別招集が掛かったやつだ…狙って招集掛けられたな」
学者「もしかしてとっくの昔にやられて…」
盗賊「まさか姉御が内ゲバに巻き込まれちまったとはよう!!」ドン!!
学者「まだ死んだと決まった訳じゃ無いっす…傭兵ギルド宿舎の叔母ちゃんは療養してるって…」
盗賊「そこに望みを掛けるしか無ぇ…くそ!!イライラすんぜ!!」
---頼む!!生きててくれ---
--------------
『翌朝_村道』
シュタタタ ドン!
盗賊「どわっ!!」ドテ
少女「お前!!スキが多い!!」
盗賊「なんだこのクソガキ!!背骨折れたらどうすんだ!!たたたた…」スリスリ
ウルフ「がうるるる…」
盗賊「おいおいなんだこのワンコ…そうかこのワンコの匂いか…」
少女「ワンコ言うな…超ウルフだ」
盗賊「ふん!!どっちでも良い!!…ほんで昨日の話はどうなったのよ?」
少女「お前!約束守れ…もう色々動き出してる…キャンセル出来ない」
盗賊「俺が約束を守れない場合は?」
少女「超ウルフの餌になる」
盗賊「ぶはははは…このワンコのか?」
少女「超・超ウルフも居る」
盗賊「あのな?こっちぁ真面目に話してんのよ…もうちっと大人と話がしたい」
少女「船に荷を積む…出発は明日の昼だ…遅れるな?」
盗賊「おい!!話聞いてんのか?」
少女「お前の船を見ろ…もう荷を積み始めてる」
盗賊「な…なんだとぅ!!うお!!何勝手な事やってんだ!!」キョロ
少女「お前いろいろ遅い…ノロマ!!」
盗賊「にゃろう!黙って聞いてりゃガキのクセに…」ダダ
少女「遅い!」ヒョイ クルクル シュタ
盗賊「分かった分かった…俺の負けだ…だから大人と話をさせてくれ」
少女「じゃぁ家の婆ちゃんと話せば良い」
盗賊「婆ちゃんだと?」
少女「婆ちゃん何でも知ってる」
盗賊「なるほど?ようし…その婆ちゃんの所まで連れて行け」
少女「お前追い付けるか?」シュタタ
盗賊「待てゴラ!!」ダダ
-------------
『宿屋』
ガチャリ バタン
学者「兄貴ぃ…何処行ってたんすか!!もう出発の準備整っていやすぜ?」
盗賊「悪い…モウロク婆ぁの長い話に付き合わされてだな…ったく無駄に時間使っちまった」
学者「どうするんすか?そろそろ宿屋出ないと迷惑かけちまいやす」
盗賊「ミライとリッカも居るな?…ちっと予定変更でもう一泊する」
学者「お?どういう事なんすかね…」
盗賊「どうやら盗賊ギルドの方は既に色々動き出しててな…もう船に荷入れしてんのよ」
学者「ええ!?急展開っすね…」
盗賊「なんか強引に動かれてて俺も訳分からん…成すがままって感じだ」
学者「そうすか…じゃぁもう一日ゆっくり出来るならガラクタ探しに行きやせんか?」
盗賊「俺はそういう訳にもイカンのだ…リッカとミライ!!」
剣士「え?僕?」
女オーク「!?」
盗賊「急ぎで船の横帆を張り替える…今日中に終わらせたいから手伝ってくれ」
剣士「うん…良いけど僕が役に立つかな?」
盗賊「お前は手先が器用だろ?布を縫い合わせて欲しいんだ」
剣士「あーーーおっけおっけ!!」
盗賊「…という訳でガラクタ探しはゲスだけで行ってくれ…俺よりお前の方が目利きだからな」
学者「分かりやした!!」
盗賊「ロボは俺と一緒な?」
ロボ「ピポポ…」クルリン
盗賊「じゃぁ夕方には宿に戻るつもりだからよろしく頼む!」
-------------
『キャラック船』
ガヤガヤ ドタドタ
木材は荷室に隙間なく積めぇ!!
残りの物資は船底だ!表示を忘れるな!?
剣士「これ…昨日の今日でどういう事かな?」タジ
盗賊「半ば強制的にこういう事になってんのよ…詳しい話は誰に聞いても分からんだとよ」
剣士「まぁ…荷室は空だったから良いんだけどさ…」
盗賊「兎に角責任持って荷を運ばにゃならんくなった…今までみたいにチンタラ出来なくなった訳よ」
剣士「チンタラって…」
盗賊「このメインマストの横帆が全然意味無くてな…速度が出なかったんだ」
剣士「そうだったんだね」
盗賊「後ろの三角帆と同じ様にしたい訳だ…帆下駄も吊り変える必要がある」
剣士「そっか!!でっかい三角帆にしたいんだね?」
盗賊「そういう事だ…ほんでリッカにはかなり重労働をしてもらう事になる…大丈夫だな?」
女オーク「丁度体を動かしたかった所…狭い部屋で縮こまって居たから…」
盗賊「ようし!!そうと決まったらやるぞ!!」
剣士「僕は布を縫い合わせて行けば良いね?」
盗賊「うむ…船尾楼の中に買い付けた布と糸を入れてある…沢山は無いから無駄の無い様にな?」
剣士「おっけ!!」
盗賊「ほんでな?外した横帆…ぼろ布なんだが手が空いたらハンモックでも作ってくれ」
剣士「おぉ!!工夫し甲斐があるなぁ…」
盗賊「任せた…じゃぁリッカ!!帆下駄に上がるぞ!来い!!」スルスル
--------------
『メインマスト』
グイ グイ ギリギリ
盗賊「ロープワークは俺がやるからリッカはしっかり帆下駄を支えて居てくれ」ギュッ
剣士「縫い合わせた布って帆下駄に取り付けて行って良い?」
盗賊「やり方分かるか?」
剣士「後ろの三角帆と同じでしょ?」
盗賊「まぁやってみろ」
剣士「大丈夫さ!ロープワークも得意なんだ」グイ グイ ギュゥ
女オーク「だんだん重たくなって来た…」グググ
盗賊「ちっと待ってくれ…反対側をロープで引っ張ってやる」ダダ
女オーク「船を作るのって中々大変なのね…むむむ!!」グググ
--------------
『夕方』
ぶはぁぁぁ ドタ
盗賊「やっと終わった…もうクタクタだわ」グター
女オーク「ふぅ…良い運動だった」
盗賊「さすがオークだ…豆しか食わんのになんでそんなに体力あんのよ…」
女オーク「イヤミ?」
盗賊「あぁ悪い…嫌味のつもりは無い…ミライは何処行った?」キョロ
女オーク「木材を持ってウロウロして居たから何か作ってると思う」
トンテンカン トントン
盗賊「その様だ…そろそろ宿屋へ戻るから呼んで来てくれ」
女オーク「分かったわ…」スタ
盗賊「ロボ!こっち来い…もうフラフラでよう…お前にもたれ掛からんと転びそうだ」
ロボ「ピポポ…」ウィーン ピタ
盗賊「どうよ?俺達の新しい家がどんどん出来上がっていくのは?」
ロボ「ピポポ…」クルクル
盗賊「そうか嬉しいか!!この船で向こう側に連れて行ってやる」ペチン
ロボ「ピピ…」ピタ
盗賊「…夕日が眩しいな?…」トーイメ
ロボ「…」ジー
盗賊「そういや孤児院からも夕日が良く見えたな?」
ロボ「…」
盗賊「俺はよう…あん時と同じ様な空気と同じ様な夕日を見るたび…もう一回まぶた閉じたら戻れる気がしてなぁ…」
盗賊「周りは色々変わっちまったが…頭ん中何も変わん無ぇ…なんだろうな?この虚しい感じ」
盗賊「お前はどう思うんだ?」
ロボ「ピポポ…」
盗賊「そうか…」トーイメ
---もっかいやり直せるなら…---
---いつもそう思うんだ---
『酒場リコリコ』
ワイワイ ガヤガヤ
盗賊「いよーう!やっぱ此処に居たか…」
学者「兄貴ぃ!!待っていやしたぜ?」
盗賊「今日も席が一杯だな?」
マスター「ハハお陰様で…何を飲まれますか?」
盗賊「昨日と同じ奴で良い…」ジャラリ
マスター「どうぞ…」ゴトン
盗賊「ふぅぅ…働いた後はやっぱ酒だな…」キュポン グビ
学者「リッカさんとミライ君はどうしたんすか?」
盗賊「まだ船で木材加工やってる…終わったら此処に来る筈だ」
学者「何作ってるんすか?」
盗賊「椅子やらテーブルやら…まぁ…何も無かったから丁度良い」
学者「そら快適になりやすね」
盗賊「それよりガラクタ漁りはどうなった?」
学者「一杯有りやしたよ…ボロッボロの錆び錆びだったんすが使えそうな物は回収してきやした」
盗賊「…で?プラチナは?」
学者「ウヒヒヒ…どうも機械の基板の中にプラチナが使われてる事知らんかったみたいっすね…ウハハハ」
盗賊「よし!でかした!!…それでロボを温める装置作れる訳だ」
学者「今は油が無いんで船に戻ったら作りやす…楽しみにしてて下せぇ」
盗賊「良かったなぁ?」ペチン
ロボ「ピポポ…」クルクル
学者「それで…この村回ってて思ったんすが…この村かなり良い村っすね?」
盗賊「んん?何がだ?」
学者「何て言うんすかね…あんまり差別が無いんすよ…人間以外の種族が多いんす」
盗賊「ふむ…そういやそうだな…ギスギスして無ぇ」
学者「オークも居るしドワーフも居やすね…あと尻尾生えたエルフ?みたいのも居るんす」
盗賊「まぁフィン・イッシュ領だからな…」
学者「俺っち此処に住んでも良いかなと思いやした」
盗賊「お前はダメだ…手癖が悪くて折角の良い雰囲気を台無しにしちまう…内ゲバに巻き込まれる様な事をな」
学者「兄貴ぃ…俺っちも改心しやすよ…」
ガチャリ ゴトン
盗賊「んん?何だソレ?」
学者「あぁコレ…ガラクタの中で発掘したクロスボウっすね…2つあるっす」
盗賊「錆びっ錆びじゃ無ぇか…」
学者「錆び落としたら使えやすぜ?…一世代前の武器なんで微妙なんすが無いよりマシっす」
盗賊「ボルトは?」
学者「探したんすが無かったっすね…使えそうな鋼材も少し拾って来たんで誰かに作って貰いやしょう」
盗賊「ほぅ?鋼材なんか落ちてたんか」
学者「いやいやキラーマシンの一部っす…宿屋に置いてあるんで明日船に運びやしょう」
盗賊「収穫上々か…」
学者「兄貴は何か物資調達して無いんすか?」
盗賊「俺はもう金が無ぇ…帆の材料を買って終わりよ」
学者「あららら…ちっと食料買っといた方が良いんすが…」
盗賊「お前金有るだろう…任せた」
学者「やっぱそうなりやすよねぇ…トホホ」
盗賊「バン・クーバに戻ったら返してやる」
学者「本当っすよ?」
---------------
『深夜_村道』
アオ~~~ン アオ~~~ン
盗賊「今晩はヤケにウルフが騒がしいな?」
学者「月のせいじゃ無いっすか?」
盗賊「満月か…なるほど…」
剣士「これさ…ウルフ同士何かお話してるんじゃないかな?」
盗賊「なんだお前?ウルフの言葉が分かるってか?」
剣士「分からないけど…なんかそんな気がするなぁ…てさ?」
盗賊「そんな事よりちっと俺は仕事に行って来る」
学者「マジすか…」
盗賊「盗賊ギルドからの接触がガキんちょだけだったもんだからよ…指示してるのが何処のどいつか知りたい訳よ」
剣士「あ!!もしかして小さな女の子?」
盗賊「お!?お前の所にも行ってたんか?」
剣士「お前ーーって言いながら追いかけて来るんだ」
盗賊「ソレだソレ!!そいつからの接触しか無いんだ」
剣士「すごいすばしっこい子でさ…ビックリだよ」
盗賊「何か言ってたか?」
剣士「背中を撫でろって…」
盗賊「なぬ!?」
学者「ウハハハハなんで急に撫でろって言うんすかね?」
剣士「分からないよ…撫でてあげたら喜んで返ったよ」
盗賊「まぁ…行動が意味不明なんだ…俺はそのガキんちょの家を知ってるから今からちっと偵察よ」
学者「そういう事っすね」
盗賊「俺一人で行って来るからロボの事を頼む」
学者「分かりやした」
盗賊「先に寝ててくれ…じゃぁな!」スタ
--------------
『民家』
ヌキアシ… サシアシ…
盗賊「…」コソーリ
盗賊「…」---しかし盗賊ギルドのアジトが何処なのかさっぱり分からんとはな---
盗賊「…」---連絡手段も何もかも分からん---
アオ~~~ン ワンワン
盗賊「…」ビク
盗賊「…」---ちぃぃウルフが近いぞ?どこだ?---
少女「お前ーー!!」ダダ ユビサシ
盗賊「どわっ…」タジ
盗賊「…」---くっそあいつ何で起きてんのよ---
盗賊「…」---こりゃハイディングするしか無ぇ---
スゥ…
盗賊「…」---なんで俺の居場所が分かったんだ?---
盗賊「…」---アイツ…ウルフと通じてんな?---
盗賊「…」---ガキと思って舐めてたらダメな様だ---
盗賊「…」---今度は風下から行ってやる---
タッタッタ
盗賊「…」---ようし!この場所なら---
スゥ…
盗賊「…」キョロ
少女「あれ?」キョロ
盗賊「…」ニマー
少女「あれあれあれ?」ウロウロ
少女「ちちーー匂い消えたぁ」
男の声「んぁぁ…もう遅いから早く寝ろぉ」
少女「多分どこかに隠れてる」
男の声「ほら撫でてやるから…寝るんだ」
盗賊「…」---父親が居たか---
盗賊「…」---声は覚えたぜ?---
ワンワン ガウルルル シュタタ
盗賊「…」---くっそウルフが邪魔過ぎる---
盗賊「…」---まぁ良い退散する---
スゥ…
盗賊「…」---こりゃ正体暴くの難義しそうだ---
盗賊「…」---もうちっと他当たって見るか---
--------------
--------------
--------------
『翌朝_宿屋』
グゥゥ スピーー
学者「兄貴ぃ!!起きて下せぇ」ユサユサ
盗賊「んが?」パチ キョロ
学者「昨夜も遅かったんすね?買い出しに行きやすよ?」
盗賊「あぁ悪い…リッカとミライはどうした?」ゴシゴシ
学者「ガラクタを船に運んで貰いやした…そのまま船に乗ってる筈っす」
盗賊「そうか…ええと…何すんだっけな…」
学者「食料とか必要な物の買い出しっすよ…早く行かんと明るい内に出港出来やせんぜ?」
盗賊「そうだっけか…なんか夢見てて混乱しててよ…」スック
学者「なんか寝言を呟いていやしたね…聞き取れんかったんすが」
盗賊「ガキの頃の夢だ…」
学者「とりあえず食料調達っすね」
盗賊「運ぶのシンドイな…」
学者「宿屋で荷車借りられるっす」
盗賊「おぉ!そりゃ良い!」
学者「ええと酒と香辛料も必要になりやすよね…あと薬」
盗賊「そうだな…樽を多めに仕入れんとイカンな」
学者「そうっすね…水も汲む必要がありやすね」
盗賊「ヤバいな…急ぐか!」
学者「へい!!」
--------------
『キャラック船』
ザブン ギシギシ
剣士「荷を積み終わって今日は誰も居ないね…」ポカーン
女オーク「そうね?どうなって居るのかしら…」
剣士「昨日の続きやろうか」
女オーク「まだ作るの?」
剣士「おが屑とボロキレが余ってて勿体無いじゃない」
女オーク「ボロキレの袋におが屑を詰めて行けば良いのね?」ガッサ
剣士「うん…あとは僕が縫って行く…今晩寝るのが楽しみだね…」ヌイヌイ
女オーク「このおが屑…良い匂いがする」クン
剣士「スプルースって言ったけ?柔らかい木で香りも良いし好きだよ」
シュタタタ スタ
剣士「あ!!あの子又来た…」
少女「おいお前!!この船どうやって動かす?」
剣士「ええと…帆を張って動かすんだけど…」
少女「帆?これか?」ピョン ピョン シュタ
剣士「危ないよ!!…それに君じゃ多分広げられない」
少女「ふぬぬぬぬ!!」グイ グイ
剣士「ええと…もしかして君もこの船に乗る…のかな?」
少女「当たり前だ」
剣士「まさか君一人って事は無いよね?」
少女「ちちが来る…それと超ウルフも来る」
剣士「そうか…安心したよ」
女オーク「超ウルフって?」
少女「名は他に有る…でも明かせない」
剣士「ハハ…ええと君の名は何て言うのかな?」
少女「お前ー!!人に名を聞く時は先ず名乗れ」
剣士「あぁゴメン…僕はミライ…そして彼女がリッカ」
少女「ミライ…リッカ…覚えた」
剣士「君は?」
少女「明かせない…そういう決まり」
剣士「アハハハやられたなぁ…まぁ良いや…どうだい?こっちでちょっと手伝わないかい?」
少女「ミライ…お前何作る?」
剣士「う~ん…これ何て言うんだ?おが屑のクッション?布団かなぁ…やわらかくて気持ち良いんだよ」
ピョン ボフッ
剣士「ちょちょ…まだ早い」アセ
少女「おぉぉ!!何だコレ」ゴロン ゴロン
剣士「今ね?これを沢山作ってるんだ…手伝ってくれたら君にもあげるよ」
少女「何する?」
剣士「おが屑を集めて欲しい…沢山必要なんだ」
少女「何処に有る?」
剣士「船の荷室に木材が一杯積んで有るんだけどおが屑も一緒に落ちてるのさ」
少女「分かった…でも一番大きいのを貰う…良いか?」
剣士「おけおけ!ちょっと大きいのも作るよ」
少女「待ってろ!」シュタタタ
女オーク「ウフフ…上手く言い包めたわね?」
剣士「そんなつもり無いけどね?早く仕上げたいだけだよ」
女オーク「じゃぁ急いで作りましょう…」ガッサ
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『昼頃』
ザブン ギシ
盗賊「よっこらぁ!!」ドスン
剣士「樽?」
盗賊「水汲んで来たんだ…甲板の上で良いから適当に並べて置いてくれ」
剣士「あ…うん…よいしょ!!」ヨッコラ ヨッコラ
盗賊「リッカ!!まだ有るから運ぶの手伝ってくれぇ!!」ダダ
女オーク「分かったわ…」スタ
少女「お前ーーー!!」ヒョコ
盗賊「どわっ…なんでそこに居るのよ…」タジ
少女「お前!!昨日何した!?」
盗賊「な…何の事だ?」
少女「お前来た事知ってる…お前の匂い分かる」
盗賊「知ら無ぇなぁ…何の事だ?」
少女「とぼけるな!!どうやって消えた?」
盗賊「ガキに付き合ってる暇無ぇんだ!!俺は忙しいからサッサと其処を下りろ!!」
剣士「あ!!アランさん…この子も船に乗るんだってさ」
盗賊「何!?マジか…」
少女「当たり前だ!!さっさと秘密教えろ」
盗賊「いやぁ…どうもお前苦手だ…乗るなら乗るで大人しくしてろ!!」
少女「あ!!ちちーーー」ノシ
盗賊「ナヌ!?」キョロ
中年の男「これはどうも…」ペコリ
盗賊「あ…あぁ…どうも」---こいつが盗賊ギルドの奴か?---
中年の男「娘が迷惑をかけて居ませんか?」
盗賊「大迷惑なんだがよう…」
少女「お前ーーー!!」バタバタ
中年の男「アッハッハ…騒々しい娘で済みません」ペコリ
少女「ちちーーー!!早く乗れ!!」
盗賊「ええと…話が俺にあんま伝わって来て居ないんだが…」
中年の男「どうかお察しを…因みに私はその手の者ではありません」
盗賊「んん?…と言うと?」---こいつもしらばっくれる気か?---
中年の男「私はこの村の自警団の者で名をリコルと言います…娘の護衛に雇われたと言えば通じますかね?」
盗賊「雇われ…つまり雇い主は明かせないと言いたいのか?」
中年の男「いえいえ娘に雇われた…」
盗賊「ヌハハハ…そらちびっ子一人船に乗せる訳にもイカンだろうな?そらそうだ」
中年の男「重ねて言いますが…私はその手の者では無いので事情は殆ど知りません…娘に雇われた傭兵だと思って下さい」
盗賊「ケッ!!まぁ良く分からんが船に乗るんだな?勝手にシロい!!」
中年の男「ご理解頂けた様で…あともう一匹乗りますのでよろしくお願いします」ペコリ
盗賊「一匹?」
シュタタ シュタタ
盗賊「くぁぁぁ…あのワンコか…」
ウルフ「ガウルルル…」フリフリ
盗賊「もう良い!!おいリッカ!!急いで荷を積んでくれ…俺はもう一回荷を運ばなきゃならん」
女オーク「分かったわ…」
盗賊「ミライ!!他に乗る奴が居たら話を聞いといてくれぇ」
剣士「おっけー!!」
盗賊「じゃぁ次で最後だから出港の準備も頼むな?行って来る」ダダ
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