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26.旧港町から北へ



『一週間後_旧港町近海』



ザブン ググググ



盗賊「ぁぁぁぁさぶ…雪降ってんじゃ無えか…」


航海士「日暮れには到着するで~!!」


盗賊「おう!!帆角はこのままで良いんか?」


航海士「俺等がやるで下船の準備せーやぁ!!」



シュタタタ



剣士「アランさん!!仕立てた装備品だよ」


盗賊「おう!寒かったんだ…てかペラッペラだな…」


剣士「ボロキレとワニの皮しか無かったからさ…」


盗賊「こりゃ毛皮とか補給せんと寒くて敵わん…」ブル


剣士「丁度燃やせる木屑も底が付いたし陸に上がれて良かったよ」


盗賊「しかし…あっちゅう間に寒い地域に来ちまった…」


剣士「世界は寒冷化してるとカゲミさんが言ってたよ…まぁ僕は寒い方が慣れてるけど」


盗賊「ミライ!ちっとリッカとラス呼んで船尾楼の方に来てくれんか?」


剣士「うん…どうしたの?」


盗賊「到着後の事を説明しておきたいんだ…お前等は船に残って留守番になるからよ」


剣士「わかった!!姉さん呼んで来る!!」シュタタ




『船尾楼』



…ほんでだ…船に残るのはドワーフ2人とミライとリッカ


後は助けた小僧だ…面倒見役でロボも残ってくれ


船に残る理由はただ船の番をしてるだけじゃ無くてドワーフの海賊が立ち寄るのを待つのもある


情報を交換してその後の行先を決めたい…滞在する期間は長く見て2カ月だな…


一応ドワーフ2人にラスのベレッタを一つづつ持たせる…


ガトリングも船に残すから襲われる事が有っても何とかなる筈だ


金と宝石はミライもリッカもそれぞれちゃんと持ってんな?上手く使いながらしばらくここで生活しててくれ


俺等はシン・リーンに向かってリカオンと接触するのを待ちながら捕らわれのマルコがどうなっちまってるのか探る



盗賊「なんか質問あっか?」


剣士「ねぇ!!船を改造しても良いかな?船大工のガッツさんが言うには帆装をもっと改善出来るみたい」


盗賊「ほう?まぁ期間があるからやっても構わんが…金無いぞ?」


剣士「何とかするよ…ほら?黒曜石のアクセサリーとか余ってるから売ったって良いんだ」


盗賊「じゃぁ頼む…出来次第によっちゃ俺が後で金を払う」


剣士「よっし!!陸に上がったら使わせて貰える鍛冶場とか有るかなぁ…」ワクワク


闇商人「あぁ…旧港町は町としての機能は全部備わってるからきっと鍛冶場も有る筈だよ」


剣士「おぉ!!姉さん!!武器を作り替えられるよ!!」


盗賊「まぁ最低1ヶ月ぐらいは此処に居る事になるだろうから上手くやってくれ」


女ハンター「それで…私達の行動予定は?」


盗賊「とりあえず船を降りて一旦宿に入るがシン・リーンまでの移動手段は聞いてみないと分からん」


女ハンター「まさか徒歩と言う事は無いでしょうね?」


盗賊「馬車ぐらいあんだろ…あぁソリか」


闇商人「ここで収穫した魚を内陸に運ぶ商隊とか居る筈さ…まぁまず情報集めだね」


盗賊「バヨネッタ持ってる3人は武器が見えん様にマントにしっかり隠せな?」


女ハンター「そんな事分かってる」


盗賊「一応冒険者という体で行くから武装はちゃんとして行ってくれ」




『旧港町_桟橋』



ガコン ギシギシ


碇降ろしてかまんで~


おっけ~~!!! ガラガラ



盗賊「やっと着いたか…てか結構他に船が有る…」


闇商人「今時期は魚の収穫時期らしいよ…みんな低床のキャラベル船だね」


盗賊「漁船に桟橋の高さ合わせてんのな…こっちは高すぎて飛び降りにゃならん」


闇商人「まぁ船の侵入防止になって良いじゃ無いか」


盗賊「まぁそうだが…船に誰か一人残っとかんと誰も上がれんくなっちまう」


闇商人「何言ってるんだい…桟橋からは梯子が掛けられるじゃないか」


盗賊「おおそうか…要らん心配か」


闇商人「さて皆降りようか!宿を探さないといけない」


学者「一番乗りっす~」ピョン スタ


戦士「ふぅぅ…やっとベッドで休めるか…」ピョン スタ


盗賊「じゃぁミライとリッカ!!あと船は頼むな?」


剣士「うん!!任せて!!」


盗賊「悪いが俺らは宿屋行くな?」ノシ


剣士「行ってらっしゃ~い!!」ノシノシ




『宿屋』



カランコロン…



店主「いらっしゃいませ…お泊りで?」


盗賊「おぉ5人だ…部屋空いてるか?」


店主「ベッドが2つしかありませんが大部屋ならお休みになれるかと…」


盗賊「結構客入ってんのな?」キョロ


店主「はい…お陰様でこれで満室になります」


盗賊「いくらだ?」


店主「大部屋は一晩銀貨10枚ですが…よろしいですか?」チラリ


盗賊「頼むわ!!」ジャラリ


店主「お食事は隣の酒場の方でどうぞ…水浴びは湯がありますのでご自由に…」ジロジロ


闇商人「アラン!僕はすこし市場の方を見て来るよ」


盗賊「俺は酒場行こうと思ってたんだ…後でそっちに来い」


戦士「私は部屋で待つとするよ…ミルクはどうする?」


少女「ううむ…カゲミと一緒に散歩する」


戦士「ではしばらく自由と言う事で良いね?」


盗賊「そうだな…俺は酒場だから気が向いたら来い…じゃラス!行くぞ!」グイ


女ハンター「え!?どうしてアランと一緒に行動なのよ」


盗賊「なんだ嫌だってか?」


女ハンター「水浴びしたいの…フン!」


学者「兄貴ぃ…俺っちが付き合いやすよ」


盗賊「しゃぁ無えゲス行くぞ!水浴び終わったらラスも来いよ!」




『酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



マスター「いらっしゃいませ…お二人で?」


盗賊「今ん所はな?後で連れが来るからテーブルが良いんだが…空いて無さそうだな」キョロ


マスター「とりあえずカウンターにどうぞ」


盗賊「ええと…確かエール酒が名産だったな?」


マスター「ございます…お二人とも?」


学者「俺っちもそれで良いっす…ちっと食事も出して下せぇ」ジャラリ


盗賊「お!?お前のおごりか?」


学者「いやいやお宝が結構入ったんでここは俺っちが払いやすよ」


盗賊「そういや俺は分け前貰って無えな…」


学者「兄貴は居なかったもんでしゃーないす」


盗賊「ちぃぃ…」


マスター「お客様は冒険者様で?」


盗賊「まぁそんな所だ…ここの客も大体そんな感じな様だな?」キョロ


マスター「イエティ狩りですね…毛皮が高く売れますので」


盗賊「ほーん…イエティって何だ?」


マスター「大型の獣ですよ…クマより強くて毛皮に価値があるんです」


学者「兄貴!クエスト依頼の張り紙が有りやすね…買取品目も結構あるっす」


マスター「お客様はどちらからお見えになったのですか?」


盗賊「まぁあちこちふらついてだな…今日ここに来た訳だ」


マスター「ではまだ事情を何も知らない様ですね」


盗賊「事情?」


マスター「西の森で異形の魔物が現れる様になって近隣の村から人が押し寄せて居るのです」


盗賊「西?森?なんか有ったか?」


マスター「昔はエルフの森南部とか言われて居た森ですね…旧セントラルの基地が有ったそうです」


盗賊「ほーん?」


マスター「森の中は雪の影響が少ないのでそこで暮らす人も居た訳です」


盗賊「なるほど…やたら強い魔物が出る様になって困ってる訳か」


マスター「はい…」


盗賊「そういう情報を出して冒険者を誘導してんだな?」


マスター「いやいやお客さんも人が悪いですねぇ…」


盗賊「コブラ酒2杯…タンブラーで頼む」


マスター「コブラ酒とはまた珍しいお酒ですねぇ…残念ながら用意して居りません」


盗賊「そうか…まぁ良い」


学者「兄貴…それどういうこってすか?」


盗賊「ちっと確認しただけよ…どうもその筋とは関係なさそうだな」


マスター「はい…お待たせいたしました…エール酒とお食事です」


盗賊「おぉ!!まず食って飲むぞ」ガブリ


学者「いやー久しぶりの上手そうな料理っすね」モグ


盗賊「ところでマスター…俺等シン・リーンに行きたいんだがどうやって行けば良い?」モグ


マスター「北に2日ほど行けばハジ・マリの町という場所が有ります…そこから気球を使うのが一番早いですね」


盗賊「おぉ!気球をまだ飛ばしてる所があんのか」


マスター「ハジ・マリ聖堂までは商隊が出ていますのでソリに乗せて貰えると良いですね」


盗賊「そら良い話が聞けたわ」


マスター「それはどうも…」




『テーブル席』



ワイワイ ガヤガヤ


わりーな!俺わ金持って無ぇんだ他当たってくれぇ


俺っちは金持っていやすぜ~ウヒヒヒ


うふぅ~んいけずぅぅ



マスター「…こちらになります…どうぞ」


盗賊「お!!来たな?こっちだこっち!!ラスは俺の隣に座れ」


女ハンター「呆れた…カゲミ…やらせておいて良いの?」


盗賊「おぉどうしたんだカゲミ!!又深くフードなんか被ってよ」



ドサ



盗賊「んん?なんだこのマントは」


闇商人「マントじゃない…フードとクロークさ」


盗賊「俺に装着しろってか?」


闇商人「早い話そうだね…面倒毎になりたく無ければね」


盗賊「どういう事よ?」


闇商人「…」パサ


盗賊「人相書きか?ちっとこれ古く無えか?」


闇商人「その通りさ…後は察しがつくよね」


盗賊「まさかこりゃ…」


闇商人「白狼の盗賊団一味…1億金貨だとぉ!?」


学者「兄貴有名人っすねぇ…」


盗賊「いや俺じゃ無えよ」


闇商人「僕も別人さ…でも似てるのは仕方が無い」


盗賊「ちぃぃ…しゃぁ無えな…」ファサ


女ハンター「この酒場にも入り口に貼ってあったわ?」


盗賊「そら気付かんかったわ」


学者「兄貴がこんだけ似て書かれてるって事は…海賊王の娘2人も…こんな顔してるって事っすね…」


盗賊「だから俺じゃ無えって…てかこれミライとリッカに届けた方が良いな」


闇商人「そうだね…因みにその人相書きはこの町に冒険者が来る様にわざわざ貼り出されてる物だよ」


盗賊「んん?客寄せのネタってんだな?」


闇商人「ウォンテッドが有効なのか知らないけれど…面倒事が起きそうだよね?」


盗賊「もうちっと寄せてソックリさんっちゅうノリで行くのはどうだ?」


闇商人「アハハ…なるほどそういう逃れ方も有るか…」


盗賊「ラスはもうちょい派手な装備で行けばそれなりに似る…ゲスはどうにもならんなぁ…」


女ハンター「私は今のままで結構!」


盗賊「まぁ隣に来て座れよ…俺はお前を待ってたんだ」グイ


女ハンター「ちょっと引っ張らないで!」


闇商人「とりあえずあまり目立つ真似はしない様に…さてラスさん少し食べようか」


盗賊「おうおう!お前等に残しといたのよ…肉あるぞ肉!!」


女ハンター「何コレ…少しかじった跡が有る…」


盗賊「味見しといた…かなり美味い」


女ハンター「ねぇゲス…この人どうしてこうなの?」


学者「平常運転すねぇ…どうしようも無いっす」グビグビ


盗賊「そういやミルクはどうした?宿屋帰ったんか?」


闇商人「シカの肉を買ってあげたんだ…お腹が膨れたら眠いと言って宿屋に戻ったよ」


盗賊「そうか…ほんじゃリコルはもう来んな…土産持って帰らんとな」


闇商人「船酔いが冷めるまでしばらく何も食べたく無いんじゃない?」


盗賊「酒飲めば一発で良くなるんだがな?ヌハハ」


闇商人「それで…酒場で何か良い情報聞けた?」


盗賊「んあ?…ハジ・マリの町まで行けばそっから気球に乗ってシン・リーンに行けるんだとよ」


闇商人「おぉ!!それなら丁度良いな…実は明日ヘラジカとソリを借りる事にしたんだ」


盗賊「借りる?」


闇商人「まぁちょっと高いんだけどねハジ・マリの町まで行って返却すれば出費は最低限で済む」


盗賊「いくらしたんよ?」


闇商人「金貨20枚さ…返す時に16枚戻って来る…損失分を埋めるのに何を運ぶか迷ってた所さ」


盗賊「商売する気なんか?」


闇商人「それが普通らしい…皆をソリに乗せたら物資があまり運べないでしょ?だからどうしようかと思ってた」


盗賊「別に金貨なんざジャンジャン使っちまえば良いだろ」


闇商人「君は気楽で良いねぇ…宿屋に泊まるのにもお金が必要になる…ここで食事するのにもね?」


盗賊「じゃぁこうするぞ!!食料だけちょろっと乗せて途中で狩りしながら行くのよ」


学者「お!?イエティ狩りっすね?」


盗賊「そういうこった…毛皮がえらく高級品らしい」


闇商人「なるほど…僕達なら商隊に入って移動しなくても行けそうだね」


学者「俺っち買取品の値段を確認してきやす」ダダ


盗賊「明日早速行くか?」


闇商人「暖を取る為の物資を少し買い入れないといけない…毛皮とか炭とか…揃うのは昼過ぎになりそうだよ」


盗賊「もう一泊宿代使うのも勿体無いから物資が揃い次第行くぞ」


女ハンター「話は決まりね?」


盗賊「おう!飲むぞ!」


女ハンター「私は戻って横になるわ」


盗賊「おいおい今来たばっかりでそら無えだろ」


女ハンター「早く戻らないとベッドが無くなってしまう」


盗賊「わーったわーったベッドはお前が使って良いからもうちっと付き合え」


女ハンター「皆聞いた?」チラ


闇商人「ハハ…まぁベッドが足りないのは初めから分かってたからさ」


盗賊「おーし!!酒だ酒ぇ!!」




『翌日_宿屋』



んががが ぐぅぅぅ



闇商人「じゃぁラスさんソリの有る場所は大丈夫だよね?」


女ハンター「大丈夫よ」


闇商人「僕達は物資調達してソリに乗せておくからアランが起きたらソリの方に連れて来て」


女ハンター「分かった…」


学者「兄貴は酒飲んで寝たら中々起きんので起こすのに工夫してみて下せぇ」


女ハンター「…」ゲシゲシ


盗賊「んが?ぐぅぅぅぅ」zzz


闇商人「じゃぁ行こうか…リコルさん!軽く市場を案内するよ」


戦士「おぉ済まないねえ…」スタ


少女「父ぃ…着替えが欲しいぞ」シュタ


戦士「すこし市場を見回ろうか…」



ガチャリ バタン



盗賊「ふごーーーーすぅぅぅ…」zzz


女ハンター「はぁぁぁどうして私がアランの面倒見なのか…」ゲシゲシ


盗賊「むにゃ…ミファ…待て…」モゾ


女ハンター「え!?」---ミファ---



ロボの事ね…


そういえばアランがいつもお金を持って居ないのはエリクサーを手に入れる為…


船の中でロボに出来る事を与えて安全に過ごさせてるのも…多分考えがあっての事…


この人…なんか不思議…不思議と色んな事を許せてしまう


もしかすると私は焦がれて居るのかも知れない…ロボと同じ様に扱って欲しいと…



『ヘラジカのソリ』



オエッ ブルルル



管理人「あんさん達カゲミ言う商人の連れかいな?」


女ハンター「そう…ここで待つ様に言われているの」


管理人「まだ荷入れが済んどらん様じゃで幌の中に入って待っとるがええ…寒いじゃろう」


女ハンター「じゃぁ待たせて貰う…アラン!幌の中に…」


盗賊「おう!うぅぅぅ寒ぶ」ブルブル


女ハンター「風が当たらない分少しはマシね…」


盗賊「こりゃ暖が無いと耐えれんぞ…」


女ハンター「酔い覚ましには丁度良いわ」


盗賊「ちっと昨夜は飲み過ぎたな…反省しとる」


女ハンター「寝言でロボの事を言ってたわ」


盗賊「おうそうよ…不吉な夢だ」


女ハンター「不吉?」


盗賊「ロボを失っちまう夢だ」


女ハンター「いつも夢は覚えていないと言うのに昨夜の夢は覚えて居るのね」


盗賊「んんん…ちっと違う感覚だな…なんでだろな?」


女ハンター「因みに失ってどうなるの?」


盗賊「あんま覚えて無え…もっかいやり直してる気はする」


女ハンター「あ!!」


盗賊「んん?」


女ハンター「船でカゲミに教えて貰った事が…」トーイメ


盗賊「何ヨ?」


女ハンター「この世界は夢幻なんだって…カゲミの探して居るマルコと言う人が研究していたらしい」


盗賊「ほーん…俺の夢と何か関係あんのか?」


女ハンター「分からないけれど夢で見るのはもう一つの別の世界の出来事…それを夢幻と言うらしいの」


盗賊「まぁ良く分からん…てか寒いからもっと寄れ」グイ


女ハンター「ちょっとどういうつもりよ!?」


盗賊「お前もガキの頃はこうやって誰かと一緒に暖を取った事あんだろ」


女ハンター「…」


盗賊「俺等は境遇も似た者同士よ…あんま遠くに行くな」


女ハンター「ロボもこうやって一緒に暖まって?」


盗賊「あいつは鉄で出来てて暖まらんが暖めてやらんと脳の温度が下がって眠っちまう」


女ハンター「そう…」


盗賊「不憫なもんだ…」



ドヤドヤ ドヤドヤ


あららら?そら無ぇ~っすよ…ちゃんと帰って来るんすかね?


まぁ大丈夫さ…とりあえず預からせて貰う



盗賊「お!?あいつら来たな?」


闇商人「あ…アラン!!もう来てたのか」


盗賊「おうおう待ちくたびれたぞ…てか寒くて敵わん」


学者「ちょちょちょ…兄貴はラスさんと出来ちゃってるんすか?」


盗賊「そらお前ずっと前からそうよ」


女ハンター「違う!他に暖を取る手段が無かった!」


闇商人「ハハハ炉も何も無ければ確かに寒いねぇ…炭と火鉢を買って有るからソリに乗せよう」


盗賊「おう!こっちに寄越せぇ!!火を起こすぞ」


闇商人「リコルさん荷物持ちありがとう」


戦士「いやいや体が鈍って居た所だから丁度良かった」ドサー


学者「兄貴ぃ…毛皮も仕入れて来たんで敷物にして下せぇ」ドサ


盗賊「荷物はこんだけか?」


闇商人「少ないけど2日分の食料はちゃんとあるよ…お酒もね?」チャプ


盗賊「おーし!ほんじゃもう行けるな?」


戦士「さぁミルク!ソリに乗って出発だ」


少女「分かった!父も早く乗れ」シュタ


盗賊「おい…こりゃもしかして馭者は俺か?」


闇商人「他に居ないじゃないか…僕達はバヨネッタで警戒する役だよ」


盗賊「ぐは…おいリコル!お前馭者やった事あるよな?」


戦士「無いが…私に出来るなら交代出来ん事も無い」


盗賊「くっそまぁ良い…毛皮一枚俺が使うからな」


闇商人「この火鉢で湯を沸かせるから後で革袋に入れてあげるよ」


盗賊「ったりめえだ!おらサッサと乗れ!出発すんぞ!」




『雪原』



オエッ ブルルル ドスドス



学者「ソリは馬車と違って快適じゃ無いっすか…揺れが全然違いやすね」


戦士「そうだねぇ…速度も意外と早い」


盗賊「お前等幌の中でヌクヌクしてて良いな?俺は風が当たってクッソ寒いんだが…」


闇商人「まぁまぁ…ほら湯の入った皮袋だよ」スッ


盗賊「おおう…おおお!!こりゃ良い…」ホカホカ


闇商人「アラン!道は分かるかい?」


盗賊「先行してる商隊の跡が残ってる…これに付いて行きゃ良いんだろ?」


闇商人「そうだね…もう出発が半日遅れてるから追い付くのはムリだろうけどね」


盗賊「商隊の休憩地で追いつく感じになるんじゃ無えか?」


闇商人「そうなると真夜中だね…そんな時間までソリを動かせると思えないけど…」


盗賊「あぁぁソリの跡を見失っちまうか…」


学者「うまい具合に月が上がってくれば雪の中は明るいっすよ?」


闇商人「そう急ぐ事も無いさ…楽しみながら行こう」


戦士「カゲミ君の言う通りだ…雪の中でキャンプするのも一興」


少女「…」クンクン キョロ


戦士「んん?ミルクどうした?」


少女「ウルフィが何かに追いかけられてるな…何だこの匂い…」クンクン


盗賊「敵が居たら遠吠えすんだろ?」


少女「敵じゃ無い…多分他のウルフだ」


学者「ウルフは他のウルフを食う事なんかあるんすか?」


少女「無い…多分縄張りに入ったから追いかけられてるんだ」


盗賊「この辺はウルフも多いってか…襲われたら敵わんな」


少女「こっちに来るぞ…ゲス!!ソリの幌を開け」


学者「え!?飛び乗る感じっすか?」ドタドタ


少女「急げ!」


学者「へいへい…」バサ



ピョン ドサー



闇商人「うわぁ!!火鉢が危ない…」ドタドタ


少女「縄張りが有るからウルフィだけで行かせられんな…」ナデナデ


ウルフ「クゥ~ン…」


盗賊「おお丁度良い!!ワンコを俺の所に寄越せ…そいつはモサモサだろ」


少女「ワンコじゃないウルフィだ…いじめるなよ?」


盗賊「おぉこっち来いこっち来い…膝の上に乗れ」


少女「しかしここのウルフも粗ぶってるな…なんでだろう?」


盗賊「昨夜酒場で聞いて来たぜ?こっちにも例の異形の魔物が出てるんだとよ」


少女「そういう事か…森の中で居場所無くなったか…」


闇商人「んん?ちょっと待って…今の話って何?」


学者「なんか森の中に旧セントラルの基地があったらしいんすが…そこに異形の魔物が来る様になったらしいっす」


闇商人「ふむ…気になる話だな…」


盗賊「どうせムン・バイと同じなんだろ?」


闇商人「いや…異形の魔物はエルフと戦って居る筈なのにどうして各地に散らばったのかだね」


盗賊「お前この間言ってただろ…没落貴族が関わってるってよ?」


闇商人「うん…つまり森の中にもムン・バイと同等の何かが有ると言う事だね」


学者「カゲミさん…もしかしてムン・バイと地下で繋がってるかもっすね」


闇商人「そうだね…そう考えると辻褄が合いそうだ」


盗賊「まぁ俺等にはあんま関係無い話だ…気にすんない」


闇商人「いや仮にだ…フィン・イッシュやシン・リーンにも地下が通じていたとしたら?」


盗賊「なぬ?」


闇商人「戦力不在の今が攻め時だったりしないか?」


盗賊「おいおいおい…」


戦士「ふむ…ドラゴンがどうしてムン・バイにまで飛んで来ていたのか…」


闇商人「フィン・イッシュにもだね…戦地はシャ・バクダの筈なのに…」


学者「良く考えるとな~んか嫌な感じっすね…」


闇商人「そこら辺の情報が出て来ないのは水面下でやって居るからだ…今それが表面化し始めてる」


盗賊「ちっとその辺の情報にもうちょい敏感になっとく必要が有りそうか…巻き込まれん様に立ち回らんとイカン」




『夜_廃屋』



ガサガサ ゴソゴソ



盗賊「良い所に廃屋見っけたな?…誰かのキャンプ跡も残ってる」


学者「屋根がありゃ良かったんすが…」キョロ


盗賊「まぁここで火を起こせるだけ良いだろ…俺はちっとヘラジカの餌で木の皮剥いで来るから適当に焚火頼む」


学者「わかりやした…」ガサガサ


戦士「何か手伝うかね?」


学者「燃えそうな木材を探して来て欲しいっす」


戦士「お安い御用だ…」ダダ


闇商人「僕達はソリの中で休んでて良いのかい?」


学者「ずっと座りっ放しじゃ体きつくないすか?」


闇商人「まぁそうなんだけど…火鉢で温まるとなかなか離れられなくてねぇ…」


学者「焚火の方がこうダイレクトに暖まりやすぜ?」


闇商人「じゃぁ少し動くか…」ノソ


学者「焚火跡にまだ炭が残ってるんでとりあえずこいつに火を点けやしょう」チッチ メラ


闇商人「燃える物だね…ええと…」キョロ


戦士「カゲミ君ちょっと手伝ってくれ…」ズルズル


闇商人「おぉ!?朽ちた馬車じゃないか」


戦士「どうやら他の誰かもこの馬車から木材を使った様だね」バキバキ


学者「木材は一晩分で良いんでそんな一杯要らんす…次使う人の為に残しときやしょう」


戦士「あと…言いにくいんだが人骨が散乱して居るのはどう思うかね?」


学者「ええ!マジすか…」


闇商人「これ焚火の跡はそんなに古く無いよね…」


学者「ここでキャンプしてて襲われた感じっすね…」


戦士「やっぱりそう見えてしまうか…」


学者「遺留品は何か無いっすか?」


戦士「何も無い…その後誰かに盗られてしまったと考えようか」


女ハンター「ウフフ…面白そう…」ノソリ


学者「こりゃ狩りが始まる感じっすか?」


女ハンター「この廃屋におびき寄せる感じで狙撃すれば大抵の魔物は狩れると思うわ」


学者「何が襲って来るかなんすが…」


女ハンター「どうせ例のイエティでしょ?防弾装備を身に付けていない魔物なんか一発で終わり」


学者「ちっと襲われるのに備えて準備しときやすか…」


戦士「私はもしかして囮の餌役になる…という事だろうか?」


女ハンター「大丈夫…近付く前に倒せるから」


学者「もしイエティだったら毛皮が金貨6枚で売れやす」


闇商人「おぉ!!イイネ!!」




『深夜』



ターン!



女ハンター「2匹目…アラン!毛皮を剥いで来て」


盗賊「おうおう…人使いが荒いな…」ダダ


学者「こりゃ出番無さそうっす…ちっと横になりやすぜ?」


女ハンター「分かった…交代する時起こすから先に寝て」


学者「へ~い…ぐぅ…」zzz


戦士「あの…何と言ったか…アルミラージだったか?肉はどうする?」


闇商人「持って帰りたい所だけど重くなるよね…まぁ角と毛皮だけで良いさ」


戦士「まぁ明日食べる分だけ良い部分を持ち帰るか…」


少女「父ぃ!!良い所はウルフィに残せ」


戦士「分かった分かった…毛皮を剥ぐのを手伝って来る」ダダ


女ハンター「肝心のイエティが出で来ないのだけれど…」キョロ


闇商人「アルミラージの死体を放置しておけばそのうち来るかもね」


女ハンター「あの角と毛皮でいくらになるか聞いて?」


闇商人「いや…良く分からないんだけどゲス君が持って帰ろうと言うからね」


女ハンター「高く売れないのだったら徒労になってしまいそう…」


闇商人「毛皮はまぁまぁの質だよ?汚れて無いのが良い」


女ハンター「イエティの毛皮が高価なのはどうしてなのか知って?」


闇商人「大きいからさ…長い毛で大きな面積があるのはイエティくらいなんじゃ無いかな?」


女ハンター「細かくするともう価値が無い?」


闇商人「そうだね…どうして?」


女ハンター「狙撃する場所よ…胴体だと背中に大きな穴が開いてしまう」


闇商人「あぁ…それは良くない」


女ハンター「頭だけピンポイントで狙わないと…」



『翌朝_ヘラジカのソリ』



オエッ ブルルル ドスドス



盗賊「はぁぁぁ結局俺は一睡も出来て無いんだが…」


学者「俺っちが変わりやしょうか?」


盗賊「おう頼むわ…ちっと横になりてぇ」


学者「幌の中は暖かくて快適っス…幌に被せたイエティの毛皮で全然違いやすよ」


盗賊「うるせぇ!早く変われ!!」


学者「へいへい…これ手綱持ってるだけで良いんすよね?」


盗賊「自分でやって覚えろタワケ」ドター


女ハンター「見張りは私がやっておくから休んで良いわ」


盗賊「お前も寝て無いだろ」


女ハンター「慣れてる…」


盗賊「フン!まぁ良い…2時間ぐらいで起こしてくれ…そこで交代だ」


戦士「夜間は魔物に襲われる事を思うと単独で移動するのは中々大変だねぇ…」


闇商人「ハハ…まぁだから商隊を組んで移動するのさ」


戦士「私も今の内に休ませて貰う」


女ハンター「商隊にはもう追い付けない?」


闇商人「ムリだろうね…向こうは僕達よりも早くから移動を開始してる筈…」


女ハンター「そう…」


闇商人「早く物資運搬するのは利益に直結するからちゃんと交代する計画とか立ててるんだよ」


学者「これもう一泊キャンプする感じになりやすか?」


闇商人「う~ん…又変な所でキャンプするくらいなら真夜中になっても良いから到着させたいね」


学者「夜間迷わん様なら行っちゃいやすね」


闇商人「そうだね…向こうに着いてさえしまえば魔物に襲われる事も無いと思う」


学者「いやぁしかし…昨夜だけで多分金貨20枚は稼ぎやしたね…ウヒヒヒ」


闇商人「君は寝て居て何もしていないじゃ無いか」


学者「いやいやいや…どんな時も均等配分が原則っす…仲間割れしない為のルールっすねぇ」


闇商人「ヤレヤレ…」




『昼過ぎ』



ドドドド ドドドド



学者「ちっと下りになって速度出せる様になりやした…」


盗賊「ううん…」パチ キョロ


戦士「お?起きた様だね?」


盗賊「結構寝た感じがするな…ううん」ノビー


戦士「今昼過ぎだ…ラシャニクア君とカゲミ君は仮眠している」


盗賊「そうか…俺はもう起きたからリコルは眠きゃ仮眠して良いぞ」


戦士「私はもう良い…昨夜の大きなウサギの肉を焼いたが要るか?」


盗賊「美味いんか?」


戦士「まぁ普通のウサギと変わらん」


盗賊「じゃぁちっと貰う…」


戦士「酒を飲みながらで丁度良いぞ?」ポイ


盗賊「しかしまぁ…魔物を食うってのもな…」ガブ モグ


戦士「どうだ?」


盗賊「うむ…まぁまぁだ」モグモグ


戦士「味付け次第で美味しく食べられそうだ」


盗賊「確かに…なんだっけな…アルミラージだったか…肉も食えるなら狩りには丁度良い」


戦士「まぁ少し危なさそうな魔物だがね…」


盗賊「おいゲス!あいつの角は価値あんのか?」


学者「買い取り品目に入っていやしたね…一本金貨2枚なんで毛皮と肉も合わせれば美味しい魔物っすよ」


盗賊「狩りが出来りゃこの辺じゃ食いっ逸れなくて済みそうか…」


学者「なんすか…ここに住む気っすか?」


盗賊「いや…ミライとリッカの今後の事よ」


学者「あらら?そんな事まで考えてるんすね」


盗賊「正直船もあいつ等にやっても良いと思ってんのよ…家替わりにな?」


学者「船無いとホムンクルス探しに行けんですぜ?」


盗賊「いやその後の話よ」


学者「あぁそーいう事っすね」


盗賊「ここは割と穏やかな感じだからあいつ等に合ってそうだと思ってな」


学者「海賊王の娘を探すってのはどーなってんすか?」


盗賊「ドワーフの伝手が有るんならここで待ってりゃ良いんじゃ無えか?」


学者「そういや酒場でその噂を聞くの忘れていやしたね」


盗賊「手掛かり有ったじゃ無えか…手配書だが…」


学者「いやいやいや…そら情報古過ぎっすよ」


盗賊「つまりそういう事なんだと思うぞ?」


学者「あぁぁぁ…探しても無駄って事っすか…」


盗賊「もう伝説になっちまってんのよ…そういう存在を追ってると言うのは自覚せんとイカン」


学者「兄貴も1億金貨だったっすね」


盗賊「俺じゃ無え…ありゃ俺の親父だ」


学者「やっぱそうだったんすね」


盗賊「隠してるつもりは無かったが…自慢する事でも無えしな」


戦士「不思議なのだが何故港町に手配書が何枚も残って居るのかね?」


盗賊「昔お袋に聞いた話だが隠れ家が有るんだとよ…何処に有るのかは知らん」


学者「出生の地とかそんな感じなんすかね?」


盗賊「さぁな?ただ港町に住んでる奴らにしたら知った顔の奴が白狼の盗賊なもんであんなことやってんだろ」


戦士「だとしたら隠れ家の場所を聞いて見ても良いねえ」


盗賊「興味無えよ」


学者「お宝残ってたらどうしやす?」


盗賊「そんな親父じゃ無え…ん?ヤベエ忘れてた…」


学者「お?」


盗賊「大事な人の墓が有るとか言ってたな…」


学者「こりゃ何か有りやすね…」


戦士「帰りに寄って行けば良い」





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